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1-1章 少年織田信長
5話:婚姻
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数日後、那古野城にて。恒興と拓海は意外と仲良くやっていた。恒興が活発な性格なので拓海もそれに合わせるのは難しくなく、彼自身も第一印象と違って思ったより人当たりが良かったからだ。
「さて拓海。訓練だ」
「……よし。やろう」
最近大変なのは恒興がふっかけてくる訓練。要は木刀を使った打ち合いなのだが、これまでの人生でまともに剣を振ったことのない身からするとかなりキツい。それでも、これがないと先々生きていけないので必死に食らいついてる。恒興はやや呆れ気味だが。
「まず形が全くなってない! これまで人生どうやって生きてきたんだ」
「言われたこと……意識しようとしてるけど、なかなか上手くいかなくて……」
息を切らしながらもまた手に握っているそれを必死に振る。なんとなく部活を思い出す辛さだ。比べて何百倍もハードなのは考えないようにしよう。
「だから、まず背筋を伸ばしてこう構えてだな。それから目の前を見て……」
今は情勢的にも結構平和で、恒興も片手間で俺に時間を割けるらしい。隣国や内々で争いが起こると、信長が出陣ということも有り得るのでこうはいかないのだとか。だが平手政秀から、『昨年の初陣で~』という話を聞けたので今は信長の初陣が行われた翌年の1548年であることが分かった。こういう年号を謎に覚えているのが功を奏した。
となると、そろそろ織田家はある転機に突入する。そんな邪推が止まらない。
「拓海! 集中!」
「ごめん!」
信長がなぜ現代人と入れ替わったのか、経緯は知らない。彼はもう戦に出ているのだろうか。それならなんだか先を越されているみたいでモヤモヤする。
恒興の特訓のおかげで連日筋肉痛の俺に信長からまた呼び出しがかかった。場所はいつもの広間。もうこの部屋までの道は覚えた。
「そろそろ生活も慣れてきた?」
「夜寒いこと以外は。それに毎日大変だけど」
夜は着物一枚で寝ている。それでも隙間風が寒いのだ。
「それだけはどうにもならんね、けどもう1枚上に被せるのを追加は出来ると思うよ、値段もそんなにしないと思うし」
「マジか、助かる」
着物と言えば高級品のイメージだけど、この時代だと日用品なのだからそこまでの値段はしないらしい。それなら寒さも凌げるか。庶民でも廉価品を着ているイメージだし、そりゃそうか。
信長は腰を据え直して話題を変える。どうやらこっちが本題らしい。
「さっき、父親から知らせが届いてさ。よく分からんけど俺結婚することになるらしい」
そう言って手紙を見せてきた。和紙にくずし字が書いてあって……という誰もがイメージするようなものだ。このミミズみたいなくずし文字は読めないが、何を言っているかは分かる。
「信長と結婚することになるのは美濃国の斎藤道三の娘、帰蝶だな」
「帰蝶……なんか聞いたことある」
信長の妻として名前は現代にもよく通っている。知っている人も多いはずだ。
この頃の織田家は美濃国の大半を支配する斎藤家との戦いに苦しんでいた。詳しいことは割愛して、その戦いの結果として織田は斎藤との和睦を結んだのだ。和睦の印として信長の父は自身の嫡男と斎藤家の娘を結婚させることにした。言ってしまうと政略結婚だ。
「まあ……おめでとう?」
「はは、ありがとう」
それにしても、斎藤道三か。美濃のマムシなんて異名もあるが、どんな男なのだろうか。
「さて拓海。訓練だ」
「……よし。やろう」
最近大変なのは恒興がふっかけてくる訓練。要は木刀を使った打ち合いなのだが、これまでの人生でまともに剣を振ったことのない身からするとかなりキツい。それでも、これがないと先々生きていけないので必死に食らいついてる。恒興はやや呆れ気味だが。
「まず形が全くなってない! これまで人生どうやって生きてきたんだ」
「言われたこと……意識しようとしてるけど、なかなか上手くいかなくて……」
息を切らしながらもまた手に握っているそれを必死に振る。なんとなく部活を思い出す辛さだ。比べて何百倍もハードなのは考えないようにしよう。
「だから、まず背筋を伸ばしてこう構えてだな。それから目の前を見て……」
今は情勢的にも結構平和で、恒興も片手間で俺に時間を割けるらしい。隣国や内々で争いが起こると、信長が出陣ということも有り得るのでこうはいかないのだとか。だが平手政秀から、『昨年の初陣で~』という話を聞けたので今は信長の初陣が行われた翌年の1548年であることが分かった。こういう年号を謎に覚えているのが功を奏した。
となると、そろそろ織田家はある転機に突入する。そんな邪推が止まらない。
「拓海! 集中!」
「ごめん!」
信長がなぜ現代人と入れ替わったのか、経緯は知らない。彼はもう戦に出ているのだろうか。それならなんだか先を越されているみたいでモヤモヤする。
恒興の特訓のおかげで連日筋肉痛の俺に信長からまた呼び出しがかかった。場所はいつもの広間。もうこの部屋までの道は覚えた。
「そろそろ生活も慣れてきた?」
「夜寒いこと以外は。それに毎日大変だけど」
夜は着物一枚で寝ている。それでも隙間風が寒いのだ。
「それだけはどうにもならんね、けどもう1枚上に被せるのを追加は出来ると思うよ、値段もそんなにしないと思うし」
「マジか、助かる」
着物と言えば高級品のイメージだけど、この時代だと日用品なのだからそこまでの値段はしないらしい。それなら寒さも凌げるか。庶民でも廉価品を着ているイメージだし、そりゃそうか。
信長は腰を据え直して話題を変える。どうやらこっちが本題らしい。
「さっき、父親から知らせが届いてさ。よく分からんけど俺結婚することになるらしい」
そう言って手紙を見せてきた。和紙にくずし字が書いてあって……という誰もがイメージするようなものだ。このミミズみたいなくずし文字は読めないが、何を言っているかは分かる。
「信長と結婚することになるのは美濃国の斎藤道三の娘、帰蝶だな」
「帰蝶……なんか聞いたことある」
信長の妻として名前は現代にもよく通っている。知っている人も多いはずだ。
この頃の織田家は美濃国の大半を支配する斎藤家との戦いに苦しんでいた。詳しいことは割愛して、その戦いの結果として織田は斎藤との和睦を結んだのだ。和睦の印として信長の父は自身の嫡男と斎藤家の娘を結婚させることにした。言ってしまうと政略結婚だ。
「まあ……おめでとう?」
「はは、ありがとう」
それにしても、斎藤道三か。美濃のマムシなんて異名もあるが、どんな男なのだろうか。
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