梨里杏とリリア ⚜️二十歳の夜、二人は世界を越えた⚜️

星ノ律

文字の大きさ
4 / 47
第一章:動き出す世界

⚜️ 04:六環魔法塔

しおりを挟む
◤ 地球からやってきたばかりの彼女を、馬車に乗せて連れ出したリアノス。さてさて彼らは一体、どこへ向かっているのでしょうか…… ◢

「リリアにもう一つ、我儘なお願いをしなくてはならない。それは、お前が地球からきた梨里杏だとは、絶対にバレてはいけないということだ。——非常に難しいということは分かっている。だが、なんとしてもやりきってもらいたい」

「も、もしバレたら、どうなるの……?」

「私は極刑に処される。——つまり、死刑だ」

 リアノスは真顔で、彼の首の後ろにトントンと手刀を当てた。

「わ、分かった……気をつける。——それで今は、どこに向かってるの?」

「今向かっているのは、六環魔法塔ろっかんまほうとうという、試験会場だ。そこで、選律せんりつという試験が行われる。その試験で、何としてでもお前に合格して貰いたいんだ。その合否に、我がセリュージュ家の存続が掛かっていると言っていい。もちろん、お前の名前は既にエントリーしてある」

 も、もう……この人は、何から何まで勝手に……

「試験の内容ってどんな感じなの……? エルデリアとかいう国のことなんて、これっぽっちも知らないんだけど」

「そこは安心してくれ、リリア。そこで試されるのは魔法の力だ。お前が魔法を使えるということは梨奈から聞いている。しかも私の娘だ、きっと優秀な魔法使いに違いない」

「まっ、魔法!? わ、私は——」

 馬車が急ブレーキを掛けたのか、私たちは激しく前のめりになった。

「リアノス様っ! 到着いたしました!!」

「ご苦労! 行くぞ、リリア」

 リアノスは私の手を引き、馬車から飛び出した。駆け足で石造りの六環魔法塔へと向かう。

「急いでばかりですまんな。実は選律の儀は0時スタート、つまり今でさえ遅れてしまっているんだ。——あと、ここから先は私に対して『お父様』と呼び、敬語を使ってくれ。入れ替わりを疑われる要素は、少しでも消しておきたい」

 すぐさま、セリュージュ家の従者が私たちの後にピタリとついた。

 そんなことより、私が魔法を使わないようお母さんが厳しく躾けてきたのを、リアノスは知らないんだ……

 私が魔法を使ったのなんて、物心ついてからは一度しかないのに……


***


 塔の入口に立っている憲兵たちは、リアノスの姿を認めるとスッと下がり道を開けた。鋼鉄の鎧がガシャガシャと音を立てる。

「やっと来たか、リアノス! あと5分遅かったら、俺でもどうにもならなかったぞ!」

 塔の入口をくぐると、赤髪の男に声をかけたられた。歳はリアノスと同じくらいだろうか。彼は声を潜めながらも、そう言ってリアノスに詰め寄った。

「ああ、助かったよザハート……残りの礼は明日にでも渡す」

「ああ、そうしてくれ。——それにしても、リリアでどうやって試験に合格するつもりなんだ? 息子には、一応手助けしてやれとは言っておいたが」

「そんな事までは頼んでおらん。とりあえず先を急ぐ、また後でな」


「今の男はザハート゠リンヴァルト。奴もああ見えて貴族、幼い頃からの友人でな。王族に顔が利くアイツに頼み込んで、ギリギリまで時間を引き伸ばしてもらっていたんだ」

 リアノスは、声を潜めてそう言った。っていうか、それって、賄賂わいろってこと……? そんな事をしてまで、私は合格を勝ち取らなきゃいけないってこと……?

 リアノスに遅れないよう、石造りのトンネルを進んでゆく。天井に吊られたランプが、頼りない光量で私たちを照らしている。やがて、大きな光が差し込む出口を抜けると、大歓声と共に広大な闘技場が現れた。

 テレビでしか見たことないけど、これはまるで……

 ローマのコロッセオだ……

「おい! 一体、いつまで待たせやがんだ!!」

「一番合格に遠い奴が、迷惑かけてんじゃねーぞ!!」

 私たちが闘技場に入った途端、大きなブーイングが起きた。どうやら私は、期待も歓迎もされていないようだ。

「チッ、あいつら酒が入ってるからって強気になりやがって!! セリュージュ家のご息女に、なんて口ききやがる!!」

 後ろに控えていたセリュージュ家の従者が声を上げた。


***


「やっと、揃ったようだな。本日は23年ぶりとなる選律の儀に、よくぞ集まってくれた。聞き及んでいるとは思うが、今回は我が息子、アーシェルの旅の従者となる者を選定したいと思う。お前たち市民の目でも誰が相応しいか、とくと見届けて欲しい。——それでは、アーシェル。今日のルールを説明してくれ」

 壇上の玉座に座った男がそう言うと、観客席から盛大な拍手が起こった。彼の名は、ゼルヴァン゠オル゠エルデリア。この国の皇帝だそうだ。

「アーシェル……アーシェル゠オル゠エルデリアだ。本日は、深夜にこれだけの民が集まってくれたことに感謝する。早速だが、ルールの説明をしよう。今日は僕が作った、マナトゥムと闘って欲しい。説明するまでもないと思うが、鉄や木や皮革で組み上げた戦闘魔獣だ。もちろん、奴には僕の魔力をたっぷりと仕込んである。——さあ、それでは始めようか。ルールは簡単……この戦闘魔獣から、最後まで逃げ切れた3人! その3人を、僕の旅の従者とする!!」

 アーシェルが拳を上げて声を張り上げると、闘技場は割れんばかりの大歓声となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...