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第一章:動き出す世界
⚜️ 04:六環魔法塔
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◤ 地球からやってきたばかりの彼女を、馬車に乗せて連れ出したリアノス。さてさて彼らは一体、どこへ向かっているのでしょうか…… ◢
「リリアにもう一つ、我儘なお願いをしなくてはならない。それは、お前が地球からきた梨里杏だとは、絶対にバレてはいけないということだ。——非常に難しいということは分かっている。だが、なんとしてもやりきってもらいたい」
「も、もしバレたら、どうなるの……?」
「私は極刑に処される。——つまり、死刑だ」
リアノスは真顔で、彼の首の後ろにトントンと手刀を当てた。
「わ、分かった……気をつける。——それで今は、どこに向かってるの?」
「今向かっているのは、六環魔法塔という、試験会場だ。そこで、選律の儀という試験が行われる。その試験で、何としてでもお前に合格して貰いたいんだ。その合否に、我がセリュージュ家の存続が掛かっていると言っていい。もちろん、お前の名前は既にエントリーしてある」
も、もう……この人は、何から何まで勝手に……
「試験の内容ってどんな感じなの……? エルデリアとかいう国のことなんて、これっぽっちも知らないんだけど」
「そこは安心してくれ、リリア。そこで試されるのは魔法の力だ。お前が魔法を使えるということは梨奈から聞いている。しかも私の娘だ、きっと優秀な魔法使いに違いない」
「まっ、魔法!? わ、私は——」
馬車が急ブレーキを掛けたのか、私たちは激しく前のめりになった。
「リアノス様っ! 到着いたしました!!」
「ご苦労! 行くぞ、リリア」
リアノスは私の手を引き、馬車から飛び出した。駆け足で石造りの六環魔法塔へと向かう。
「急いでばかりですまんな。実は選律の儀は0時スタート、つまり今でさえ遅れてしまっているんだ。——あと、ここから先は私に対して『お父様』と呼び、敬語を使ってくれ。入れ替わりを疑われる要素は、少しでも消しておきたい」
すぐさま、セリュージュ家の従者が私たちの後にピタリとついた。
そんなことより、私が魔法を使わないようお母さんが厳しく躾けてきたのを、リアノスは知らないんだ……
私が魔法を使ったのなんて、物心ついてからは一度しかないのに……
***
塔の入口に立っている憲兵たちは、リアノスの姿を認めるとスッと下がり道を開けた。鋼鉄の鎧がガシャガシャと音を立てる。
「やっと来たか、リアノス! あと5分遅かったら、俺でもどうにもならなかったぞ!」
塔の入口をくぐると、赤髪の男に声をかけたられた。歳はリアノスと同じくらいだろうか。彼は声を潜めながらも、そう言ってリアノスに詰め寄った。
「ああ、助かったよザハート……残りの礼は明日にでも渡す」
「ああ、そうしてくれ。——それにしても、リリアでどうやって試験に合格するつもりなんだ? 息子には、一応手助けしてやれとは言っておいたが」
「そんな事までは頼んでおらん。とりあえず先を急ぐ、また後でな」
「今の男はザハート゠リンヴァルト。奴もああ見えて貴族、幼い頃からの友人でな。王族に顔が利くアイツに頼み込んで、ギリギリまで時間を引き伸ばしてもらっていたんだ」
リアノスは、声を潜めてそう言った。っていうか、それって、賄賂ってこと……? そんな事をしてまで、私は合格を勝ち取らなきゃいけないってこと……?
リアノスに遅れないよう、石造りのトンネルを進んでゆく。天井に吊られたランプが、頼りない光量で私たちを照らしている。やがて、大きな光が差し込む出口を抜けると、大歓声と共に広大な闘技場が現れた。
テレビでしか見たことないけど、これはまるで……
ローマのコロッセオだ……
「おい! 一体、いつまで待たせやがんだ!!」
「一番合格に遠い奴が、迷惑かけてんじゃねーぞ!!」
私たちが闘技場に入った途端、大きなブーイングが起きた。どうやら私は、期待も歓迎もされていないようだ。
「チッ、あいつら酒が入ってるからって強気になりやがって!! セリュージュ家のご息女に、なんて口ききやがる!!」
後ろに控えていたセリュージュ家の従者が声を上げた。
***
「やっと、揃ったようだな。本日は23年ぶりとなる選律の儀に、よくぞ集まってくれた。聞き及んでいるとは思うが、今回は我が息子、アーシェルの旅の従者となる者を選定したいと思う。お前たち市民の目でも誰が相応しいか、とくと見届けて欲しい。——それでは、アーシェル。今日のルールを説明してくれ」
壇上の玉座に座った男がそう言うと、観客席から盛大な拍手が起こった。彼の名は、ゼルヴァン゠オル゠エルデリア。この国の皇帝だそうだ。
「アーシェル……アーシェル゠オル゠エルデリアだ。本日は、深夜にこれだけの民が集まってくれたことに感謝する。早速だが、ルールの説明をしよう。今日は僕が作った、マナトゥムと闘って欲しい。説明するまでもないと思うが、鉄や木や皮革で組み上げた戦闘魔獣だ。もちろん、奴には僕の魔力をたっぷりと仕込んである。——さあ、それでは始めようか。ルールは簡単……この戦闘魔獣から、最後まで逃げ切れた3人! その3人を、僕の旅の従者とする!!」
アーシェルが拳を上げて声を張り上げると、闘技場は割れんばかりの大歓声となった。
「リリアにもう一つ、我儘なお願いをしなくてはならない。それは、お前が地球からきた梨里杏だとは、絶対にバレてはいけないということだ。——非常に難しいということは分かっている。だが、なんとしてもやりきってもらいたい」
「も、もしバレたら、どうなるの……?」
「私は極刑に処される。——つまり、死刑だ」
リアノスは真顔で、彼の首の後ろにトントンと手刀を当てた。
「わ、分かった……気をつける。——それで今は、どこに向かってるの?」
「今向かっているのは、六環魔法塔という、試験会場だ。そこで、選律の儀という試験が行われる。その試験で、何としてでもお前に合格して貰いたいんだ。その合否に、我がセリュージュ家の存続が掛かっていると言っていい。もちろん、お前の名前は既にエントリーしてある」
も、もう……この人は、何から何まで勝手に……
「試験の内容ってどんな感じなの……? エルデリアとかいう国のことなんて、これっぽっちも知らないんだけど」
「そこは安心してくれ、リリア。そこで試されるのは魔法の力だ。お前が魔法を使えるということは梨奈から聞いている。しかも私の娘だ、きっと優秀な魔法使いに違いない」
「まっ、魔法!? わ、私は——」
馬車が急ブレーキを掛けたのか、私たちは激しく前のめりになった。
「リアノス様っ! 到着いたしました!!」
「ご苦労! 行くぞ、リリア」
リアノスは私の手を引き、馬車から飛び出した。駆け足で石造りの六環魔法塔へと向かう。
「急いでばかりですまんな。実は選律の儀は0時スタート、つまり今でさえ遅れてしまっているんだ。——あと、ここから先は私に対して『お父様』と呼び、敬語を使ってくれ。入れ替わりを疑われる要素は、少しでも消しておきたい」
すぐさま、セリュージュ家の従者が私たちの後にピタリとついた。
そんなことより、私が魔法を使わないようお母さんが厳しく躾けてきたのを、リアノスは知らないんだ……
私が魔法を使ったのなんて、物心ついてからは一度しかないのに……
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塔の入口に立っている憲兵たちは、リアノスの姿を認めるとスッと下がり道を開けた。鋼鉄の鎧がガシャガシャと音を立てる。
「やっと来たか、リアノス! あと5分遅かったら、俺でもどうにもならなかったぞ!」
塔の入口をくぐると、赤髪の男に声をかけたられた。歳はリアノスと同じくらいだろうか。彼は声を潜めながらも、そう言ってリアノスに詰め寄った。
「ああ、助かったよザハート……残りの礼は明日にでも渡す」
「ああ、そうしてくれ。——それにしても、リリアでどうやって試験に合格するつもりなんだ? 息子には、一応手助けしてやれとは言っておいたが」
「そんな事までは頼んでおらん。とりあえず先を急ぐ、また後でな」
「今の男はザハート゠リンヴァルト。奴もああ見えて貴族、幼い頃からの友人でな。王族に顔が利くアイツに頼み込んで、ギリギリまで時間を引き伸ばしてもらっていたんだ」
リアノスは、声を潜めてそう言った。っていうか、それって、賄賂ってこと……? そんな事をしてまで、私は合格を勝ち取らなきゃいけないってこと……?
リアノスに遅れないよう、石造りのトンネルを進んでゆく。天井に吊られたランプが、頼りない光量で私たちを照らしている。やがて、大きな光が差し込む出口を抜けると、大歓声と共に広大な闘技場が現れた。
テレビでしか見たことないけど、これはまるで……
ローマのコロッセオだ……
「おい! 一体、いつまで待たせやがんだ!!」
「一番合格に遠い奴が、迷惑かけてんじゃねーぞ!!」
私たちが闘技場に入った途端、大きなブーイングが起きた。どうやら私は、期待も歓迎もされていないようだ。
「チッ、あいつら酒が入ってるからって強気になりやがって!! セリュージュ家のご息女に、なんて口ききやがる!!」
後ろに控えていたセリュージュ家の従者が声を上げた。
***
「やっと、揃ったようだな。本日は23年ぶりとなる選律の儀に、よくぞ集まってくれた。聞き及んでいるとは思うが、今回は我が息子、アーシェルの旅の従者となる者を選定したいと思う。お前たち市民の目でも誰が相応しいか、とくと見届けて欲しい。——それでは、アーシェル。今日のルールを説明してくれ」
壇上の玉座に座った男がそう言うと、観客席から盛大な拍手が起こった。彼の名は、ゼルヴァン゠オル゠エルデリア。この国の皇帝だそうだ。
「アーシェル……アーシェル゠オル゠エルデリアだ。本日は、深夜にこれだけの民が集まってくれたことに感謝する。早速だが、ルールの説明をしよう。今日は僕が作った、マナトゥムと闘って欲しい。説明するまでもないと思うが、鉄や木や皮革で組み上げた戦闘魔獣だ。もちろん、奴には僕の魔力をたっぷりと仕込んである。——さあ、それでは始めようか。ルールは簡単……この戦闘魔獣から、最後まで逃げ切れた3人! その3人を、僕の旅の従者とする!!」
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