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第一章:動き出す世界
⚜️ 05:逃げ場なき闘技場
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結局私は、リアノスに魔法を使っていなかったことを言う間もなく、闘技場へと向かうことになった。
っていうか、戦闘魔獣から逃げ切るって何……!? よくテレビでやってる、それに捕まっちゃいけないってやつ……?
そもそもなんで、私がこんなのに参加させられているの……!?
そんな気持ちのまま闘技場へ向かう私を、リアノスが追ってきた。
「リリア……今、ザハートから聞いたんだが、今回の試験はかなり厄介らしい。特に戦闘魔獣ってのが、かなり凶暴だということだ。——さっきは、何としてでも合格をと言ったが、危ないと思ったら戻ってこい。その時はその時で、また何か考えよう」
その時はその時か——
そもそも私は、なぜこの試験に合格しないといけないのか分かっていない。世界を救うとかいった話は、また別の話だと思っている。
太い格子の鉄柵扉を抜け、広大な闘技場の中へと足を踏み入れた。
足元に広がるのは、ちょっとやそっとじゃ削れそうもない強固な大地。周囲は高さ3メートルほどの鉄柵で囲まれ、その先には満席となった石造りの観客席がそびえている。
ふと見上げれば、頭上には満天の星空。こんなに美しい夜空を、私は見たことがない。
「リ、リリアッ!? なっ、なんて格好してんだ、お前」
同じく闘技場へと足を踏み入れた、長身の男性が声をかけてきた。
「えっ、えっと、これはお父様がお選びになった服を着ているだけで……」
「こ、言葉遣いまでおかしいじゃねえか……な、なんか悪いものでも食ったのか?」
まっ、まさか、試験前に正体がバレちゃうなんてことはないよね……?
っていうか、この彼……髪が真っ赤で、さっきリアノスと話していた幼馴染のおじさんとそっくりなんだけど。
「も、もしかして、お父様に私を手助けしてやれと頼まれましたか?」
「あ、ああ、そうだよ……ってか、その話し方は何だって言ってんだよ!!」
「ゴホン……静粛に。これで参加者十八名、全員闘技場へ入ったな。それでは、アーシェル様がお作りになられた、マナトゥムをこの闘技場へと招き入れ——は、はい? 何でございましょうか」
壇上で話す男に、アーシェルが何やら耳打ちをしている。
「ゴホン……そのマナトゥムは、ノルドという名前だそうだ。——それでは、先程説明があった通り、最後まで残った3名を合格とする。時間は無制限、それでは……第27回:選律の儀、只今より開始するっ!!」
男が話し終えると、目の前の巨大な扉が静かに開き始めた。ゴゴゴゴ……という扉の開く重低音と共に、観衆の歓声もヒートアップしてゆく。
そして扉が開ききった瞬間、暗闇の奥からノルドが飛び出してきた。
それは一瞬の出来事だった——
中央にいた、一人の男が弾き飛ばされたのだ。ノルドは鉄と木で組み上げられた、クマの姿をした化け物だった。象のような巨体に、鋭い鉤爪が光っている。
「ザッ、ザルフがやられたのか……?」
あれほどの大歓声を上げていた観衆が、一瞬で静まり返った。弾き飛ばされたザルフという男は激しく血しぶきをあげており、死んでしまったようにも見える。
ま、待って……何なのこれ……!?
もしかして私、ここで死んじゃったりするわけ……?
「リッ、リリア! お前は棄権しろ! とりあえず、俺から離れるんだ!」
赤髪の彼が言い終わるや否や、ノルドは彼の方へと顔を向けた。
「やっ、やはり!! コイツはきっと、魔力が高い奴から狙うように出来ている! 今のうちに逃げろ、リリアッ!!」
ノルドは近くにいた他の者には目もくれず、彼への元へと突進してきた。
「つっ、次はジルハートか!! こんな攻撃の仕方だと、弱いやつしか残らないぞ!!」
観衆の一人がそう叫ぶ。赤髪の彼はジルハートという名前らしい。
私は走ってジルハートから離れつつも、彼から目が離せなかった。彼も、もしかするとやられてしまうかもしれない……
だが、ノルドがジルハートに触れる直前、ノルドに向けたジルハートの手から何かが放たれた。
ドーン!!
そんな大音響とともに、ノルドの巨体が宙に浮く。強力な魔法のせいだろう、ジルハートの足元には大きな円形の窪みが出来ていた。
「オオオーーー!!」
観客席から大歓声が上がる。ノルドは大きな音を立て、地面に激突した。
た、倒した……!?
そう思った瞬間ノルドは起き上がり、今度は近くにいた女性に襲いかかった。そして彼女もまた、ザルフと同じように弾き飛ばされた。まるで、さっきと同じシーンが再生されているかのように、彼女も血しぶきをあげる。
わ、私はどうすれば……!?
逃げろと言ってくれたジルハートのおかげで、私はたまたまノルドから一番遠い場所にいる。もしかしたら、偶然にも最後の3人に残れる可能性もある。
だが、その迷いが私の逃走への判断を遅らせてしまった。
ノルドは何故か、急に進行方向を変え私へと向かってきたのだ。
逃げなきゃ……なのに、恐怖で身体が動かない。猛烈なスピードで迫ってくるノルド。私も弾き飛ばされる……何度か見たシーンが、私の頭の中を駆け巡った。
「逃げろって言っただろうが!!」
突然、目の前にジルハートが現れた。——しゅ、瞬間移動!?
私の前に立ちふさがったジルハートは、さっきと同じようにノルドを弾き飛ばした。
だが次の瞬間、ジルハートもその場で膝から崩れ落ちてしまった。
っていうか、戦闘魔獣から逃げ切るって何……!? よくテレビでやってる、それに捕まっちゃいけないってやつ……?
そもそもなんで、私がこんなのに参加させられているの……!?
そんな気持ちのまま闘技場へ向かう私を、リアノスが追ってきた。
「リリア……今、ザハートから聞いたんだが、今回の試験はかなり厄介らしい。特に戦闘魔獣ってのが、かなり凶暴だということだ。——さっきは、何としてでも合格をと言ったが、危ないと思ったら戻ってこい。その時はその時で、また何か考えよう」
その時はその時か——
そもそも私は、なぜこの試験に合格しないといけないのか分かっていない。世界を救うとかいった話は、また別の話だと思っている。
太い格子の鉄柵扉を抜け、広大な闘技場の中へと足を踏み入れた。
足元に広がるのは、ちょっとやそっとじゃ削れそうもない強固な大地。周囲は高さ3メートルほどの鉄柵で囲まれ、その先には満席となった石造りの観客席がそびえている。
ふと見上げれば、頭上には満天の星空。こんなに美しい夜空を、私は見たことがない。
「リ、リリアッ!? なっ、なんて格好してんだ、お前」
同じく闘技場へと足を踏み入れた、長身の男性が声をかけてきた。
「えっ、えっと、これはお父様がお選びになった服を着ているだけで……」
「こ、言葉遣いまでおかしいじゃねえか……な、なんか悪いものでも食ったのか?」
まっ、まさか、試験前に正体がバレちゃうなんてことはないよね……?
っていうか、この彼……髪が真っ赤で、さっきリアノスと話していた幼馴染のおじさんとそっくりなんだけど。
「も、もしかして、お父様に私を手助けしてやれと頼まれましたか?」
「あ、ああ、そうだよ……ってか、その話し方は何だって言ってんだよ!!」
「ゴホン……静粛に。これで参加者十八名、全員闘技場へ入ったな。それでは、アーシェル様がお作りになられた、マナトゥムをこの闘技場へと招き入れ——は、はい? 何でございましょうか」
壇上で話す男に、アーシェルが何やら耳打ちをしている。
「ゴホン……そのマナトゥムは、ノルドという名前だそうだ。——それでは、先程説明があった通り、最後まで残った3名を合格とする。時間は無制限、それでは……第27回:選律の儀、只今より開始するっ!!」
男が話し終えると、目の前の巨大な扉が静かに開き始めた。ゴゴゴゴ……という扉の開く重低音と共に、観衆の歓声もヒートアップしてゆく。
そして扉が開ききった瞬間、暗闇の奥からノルドが飛び出してきた。
それは一瞬の出来事だった——
中央にいた、一人の男が弾き飛ばされたのだ。ノルドは鉄と木で組み上げられた、クマの姿をした化け物だった。象のような巨体に、鋭い鉤爪が光っている。
「ザッ、ザルフがやられたのか……?」
あれほどの大歓声を上げていた観衆が、一瞬で静まり返った。弾き飛ばされたザルフという男は激しく血しぶきをあげており、死んでしまったようにも見える。
ま、待って……何なのこれ……!?
もしかして私、ここで死んじゃったりするわけ……?
「リッ、リリア! お前は棄権しろ! とりあえず、俺から離れるんだ!」
赤髪の彼が言い終わるや否や、ノルドは彼の方へと顔を向けた。
「やっ、やはり!! コイツはきっと、魔力が高い奴から狙うように出来ている! 今のうちに逃げろ、リリアッ!!」
ノルドは近くにいた他の者には目もくれず、彼への元へと突進してきた。
「つっ、次はジルハートか!! こんな攻撃の仕方だと、弱いやつしか残らないぞ!!」
観衆の一人がそう叫ぶ。赤髪の彼はジルハートという名前らしい。
私は走ってジルハートから離れつつも、彼から目が離せなかった。彼も、もしかするとやられてしまうかもしれない……
だが、ノルドがジルハートに触れる直前、ノルドに向けたジルハートの手から何かが放たれた。
ドーン!!
そんな大音響とともに、ノルドの巨体が宙に浮く。強力な魔法のせいだろう、ジルハートの足元には大きな円形の窪みが出来ていた。
「オオオーーー!!」
観客席から大歓声が上がる。ノルドは大きな音を立て、地面に激突した。
た、倒した……!?
そう思った瞬間ノルドは起き上がり、今度は近くにいた女性に襲いかかった。そして彼女もまた、ザルフと同じように弾き飛ばされた。まるで、さっきと同じシーンが再生されているかのように、彼女も血しぶきをあげる。
わ、私はどうすれば……!?
逃げろと言ってくれたジルハートのおかげで、私はたまたまノルドから一番遠い場所にいる。もしかしたら、偶然にも最後の3人に残れる可能性もある。
だが、その迷いが私の逃走への判断を遅らせてしまった。
ノルドは何故か、急に進行方向を変え私へと向かってきたのだ。
逃げなきゃ……なのに、恐怖で身体が動かない。猛烈なスピードで迫ってくるノルド。私も弾き飛ばされる……何度か見たシーンが、私の頭の中を駆け巡った。
「逃げろって言っただろうが!!」
突然、目の前にジルハートが現れた。——しゅ、瞬間移動!?
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だが次の瞬間、ジルハートもその場で膝から崩れ落ちてしまった。
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