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第一章:動き出す世界
⚜️ 07:私がここに来た理由
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2人を倒したノルドは、何故か急に動きが鈍くなった。獲物を探す獣のように、その場をウロウロと彷徨いはじめる。ノルドがこのような動きをするのは、開始以降始めてのことだ。
「きっとノルドは、魔力の感知だけを頼りに動いていたのでしょう。もしかすると目は飾りで、何も見えていないのかもしれません。私たちが魔力を抑えている今、居場所が分からないのだと思います」
「ってことは、確実に残るのは魔力のないリリアか……アタシたちが、魔力を抑えるのにも限界があるしな……チッ、なんか腑に落ちないけど!」
「そうなりますね……リリアさんには分からないと思いますが、魔力を抑えるってことは、息を吐き続けるようなものなのです。あの状態でよく耐えていると思いますよ、ジルハートさんは……」
隣りにいるアルフィナとエイルは、必死で呼吸を整えているようだった。
ちょっと待って……?
何もしていない私が狙われないってことは、私には魔力が無いってこと……?
い、いや、違う……ジルハートに助けられた時、ノルドは私に向かって駆けてきたじゃないか。
そう思った瞬間、ノルドがこちらに顔を向けた。
「グルァアアアァァッ!!」と雄たけびを上げながら、突如ノルドは私めがけて突進してくる。
「なっ、なに!? リリアさん、棄権するんだ! あなたは何も出来ない!!」
い、今更、棄権なんてどうすればいいのよ……
地球では魔法を使っちゃダメと言われ……なのに、こっちに来たら来たで魔力は無いですって……!?
そっ、そんなの、認めない……! 絶対に、認めないっ!!
私はノルドに対し、両方の手のひらを向けた。
そう。子供の頃は、この手のひらで何でも出来た。
パンを温めることだって、火を起こすことだって、風を呼び起こすことだって。
「あなたを怒らせたら怖い」
お母さんが何気に言った一言で、何日も落ち込んだことだってある。
だからきっと……きっと、この怪物だって抑えることが出来る……
遠くから、私に「逃げろ!」と叫ぶジルハートの声が聞こえる。
大丈夫、ジルハート。私はきっとやれる——
「じゃなかったら……私がここに来た理由がないじゃないっ!!」
そう叫んだ瞬間、手のひらから凄まじい光弾が解き放たれた。大気は轟音で震え、私の両足は地面を削りながら後退してゆく。
一直線にノルドへと突き進んだその光弾は、ノルドの巨体を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。
***
「こ、これにて、試験を終了とする……ご、合格者は……え、ええと……し、しばし待たれよ」
壇上の男が、皇帝ゼルヴァンと皇子アーシェルに相談をしている。合格者は3名の予定だったが、4名残ってしまったからだろう。
私がノルドを吹き飛ばしてから、不思議と闘技場は静まり返っていた。私の想定外の魔法に驚いてしまったのだろうか。だがきっと、一番驚いているのは私自身だ。
「たった今、アーシェル様から合格者の確認を取らせていただいた。名前を呼ばれた者は、王族席の前まで来るように。まずは、ジルハート゠リンヴァルト。次に、アルフィナ゠バルクレア。そして、エイル゠ロゼリード。そして最後に、リリア゠セリュージュだ。当初3名の予定だったが、残った4名は合格に値するとアーシェル様からお言葉をいただいた。感謝するように」
壇上の男の通達が終わると、観衆から大歓声が上がった。力が抜けてしまった私は、その場にヘナヘナと座り込んでしまう。
「リリア……凄かったじゃないか……いつの間に、あんな魔法を使えるようになったんだ」
隣にいたジルハートが屈み込んでそう聞いた。彼はまだ、肩で息をしている。
「お、お父様に力を開放してもらったっていうか……そっ、そんな感じかな……?」
「そっか……リアノスさんって、やっぱスゲー人なんだな。——っていうか、それならそうと先に言っとけよ。距離が近かったら、二度目の瞬間移動を使っちまうところだったぞ」
「ごっ、ごめん、ジルハート。そ、それと……さっきは助けてくれてありがとう」
私がそう言うと、ジルハートはフッと笑って横を向いた。
「きっとノルドは、魔力の感知だけを頼りに動いていたのでしょう。もしかすると目は飾りで、何も見えていないのかもしれません。私たちが魔力を抑えている今、居場所が分からないのだと思います」
「ってことは、確実に残るのは魔力のないリリアか……アタシたちが、魔力を抑えるのにも限界があるしな……チッ、なんか腑に落ちないけど!」
「そうなりますね……リリアさんには分からないと思いますが、魔力を抑えるってことは、息を吐き続けるようなものなのです。あの状態でよく耐えていると思いますよ、ジルハートさんは……」
隣りにいるアルフィナとエイルは、必死で呼吸を整えているようだった。
ちょっと待って……?
何もしていない私が狙われないってことは、私には魔力が無いってこと……?
い、いや、違う……ジルハートに助けられた時、ノルドは私に向かって駆けてきたじゃないか。
そう思った瞬間、ノルドがこちらに顔を向けた。
「グルァアアアァァッ!!」と雄たけびを上げながら、突如ノルドは私めがけて突進してくる。
「なっ、なに!? リリアさん、棄権するんだ! あなたは何も出来ない!!」
い、今更、棄権なんてどうすればいいのよ……
地球では魔法を使っちゃダメと言われ……なのに、こっちに来たら来たで魔力は無いですって……!?
そっ、そんなの、認めない……! 絶対に、認めないっ!!
私はノルドに対し、両方の手のひらを向けた。
そう。子供の頃は、この手のひらで何でも出来た。
パンを温めることだって、火を起こすことだって、風を呼び起こすことだって。
「あなたを怒らせたら怖い」
お母さんが何気に言った一言で、何日も落ち込んだことだってある。
だからきっと……きっと、この怪物だって抑えることが出来る……
遠くから、私に「逃げろ!」と叫ぶジルハートの声が聞こえる。
大丈夫、ジルハート。私はきっとやれる——
「じゃなかったら……私がここに来た理由がないじゃないっ!!」
そう叫んだ瞬間、手のひらから凄まじい光弾が解き放たれた。大気は轟音で震え、私の両足は地面を削りながら後退してゆく。
一直線にノルドへと突き進んだその光弾は、ノルドの巨体を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。
***
「こ、これにて、試験を終了とする……ご、合格者は……え、ええと……し、しばし待たれよ」
壇上の男が、皇帝ゼルヴァンと皇子アーシェルに相談をしている。合格者は3名の予定だったが、4名残ってしまったからだろう。
私がノルドを吹き飛ばしてから、不思議と闘技場は静まり返っていた。私の想定外の魔法に驚いてしまったのだろうか。だがきっと、一番驚いているのは私自身だ。
「たった今、アーシェル様から合格者の確認を取らせていただいた。名前を呼ばれた者は、王族席の前まで来るように。まずは、ジルハート゠リンヴァルト。次に、アルフィナ゠バルクレア。そして、エイル゠ロゼリード。そして最後に、リリア゠セリュージュだ。当初3名の予定だったが、残った4名は合格に値するとアーシェル様からお言葉をいただいた。感謝するように」
壇上の男の通達が終わると、観衆から大歓声が上がった。力が抜けてしまった私は、その場にヘナヘナと座り込んでしまう。
「リリア……凄かったじゃないか……いつの間に、あんな魔法を使えるようになったんだ」
隣にいたジルハートが屈み込んでそう聞いた。彼はまだ、肩で息をしている。
「お、お父様に力を開放してもらったっていうか……そっ、そんな感じかな……?」
「そっか……リアノスさんって、やっぱスゲー人なんだな。——っていうか、それならそうと先に言っとけよ。距離が近かったら、二度目の瞬間移動を使っちまうところだったぞ」
「ごっ、ごめん、ジルハート。そ、それと……さっきは助けてくれてありがとう」
私がそう言うと、ジルハートはフッと笑って横を向いた。
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