10 / 47
第一章:動き出す世界
🌐 10:地球の子
しおりを挟む
「なっ、なにこれ、美味しい……」
並々と入ったスープの中に、細長い麺というものがたゆたっている。これは、ラーメンという食べ物らしい。
「ほんと? それは良かった。今日のお昼は私だけだと思っていたから、何も用意してなかったのよ。——ちなみにね。こうやって食べると、もっと美味しいわよ」
お母さんはそう言うと、「ズズッ」と啜ってラーメンを食べた。
お、音を立てて食べるの……!? そういう食べ方は下品だと、エルデリアでは子供の頃からずっと教えられてきた。 でも、今日から私は地球の子だ。お母さんがすすめてくれるのなら、やってみようと思う。
「ほっ、ホントだ! スープと麺を一緒に食べられるって感じ? なんかさっきとは違う!」
お母さんのように上手くは啜れなかったけど、それでも随分と美味しくなったように感じる。少しだけ地球の子に近づけたのかもしれない。私はフフッと微笑んだ。
ラーメンを食べ終え、元の梨里杏が使っていた部屋のベッドで横になっている。お母さんとリクスは、リビングで昔話に花を咲かせているようだ。
それにしても、スマホって凄い——
私が未だに知らない地球のことはもちろん、メッセージアプリってのを遡れば、交友関係だって分かってしまう。
その中でも、親友の萌って子はとても良い子のようだ。会話を遡れば遡るほど、彼女に嘘をつきたくないという気持ちが強くなってくる。彼女とは、今後も会うことになると思うが、私は彼女を騙し通せるだろうか。自分で言うのもなんだけど、そんな自信はまったくない。うーん……後でお母さんに相談してみるか……
その他は……梨里杏が通っていた、大学の友達からもちょこちょことメッセージが届いている。
そんな感じでスマホ画面をスクロールしていると、萌から来た着信のボタンに思わず触れてしまった。
「もう、梨里杏! なんで全然返事してくれないのよ! 何度も何度もメッセージ送ってるっていうのに!」
「ごっ、ごめんね……えーと、色々とあって……」
「もう、色々って何!? ——で、どう? 今日は会えないの? 誕生日プレゼントも、まだ渡せてないし」
あ。そう言えば『沖縄から帰ってきたから会おう!』と、萌からメッセージが入っていたっけ。
「わ、分かった! あ、会おう!」
私はその場の勢いで、萌と会う約束をしてしまった。
***
「そんな格好をすると、あなたがリリア゠セリュージュだってこと忘れちゃいそうになるわね。当然だけど、よく似合ってる」
私は地球にいた梨里杏の服を着てみた。驚くほど軽くて伸縮性もあり、とても着心地がいい。特に気に入ったのが、ブラジャーという下着だ。背中や肩が少しチクチクとするが、激しい動きでもしっかりと胸を守ってくれそうだ。
「ありがとう、お母さん。でさ、萌に本当のことは言わない方がいいよね……? 私はエルデリアからやってきた別人ってことは……」
私がそう言うと、お母さんは「うーん」と考え込んでしまった。
「あなたたち本当に仲が良かったから、嘘を突き通せるとは思わないのよね……かと言って、エルデリアから来たなんて言われても萌ちゃんも困るだろうし……」
「そういやお母さんは、梨里杏に魔法を使わせなかったって言ったよね? ——一体、どうして?」
「どうしてって……梨里杏を見せ物にされたく無かったからかな……有名になってチヤホヤされたかもしれないけど、その反面、気持ち悪がられることもあっただろうから。出来るだけ、普通の子として育ってほしかったのよ」
普通の子か……お母さんの言ってることも分かる気がする。
「じゃ、とりあえずは、今までの梨里杏として会うようにするよ。後は、萌に会ってから考えてみる。——じゃ、行くよリクス」
「——行くも行かないも、私に選択権はございません。どうぞご自由に、どこへでもお運びください」
ん……? なんだ、このリクスの態度は。
「ハハハ、リクスったら、スマホにやきもち焼いてるんじゃない? 梨里杏、さっきからずっとスマホ触ってるから」
ああ、なるほどそういうことか。スマホがリクスの上位互換って言ったことも、根に持っているのかもしれない。
私は拗ねるリクスをバッグに入れ、家を出た。
並々と入ったスープの中に、細長い麺というものがたゆたっている。これは、ラーメンという食べ物らしい。
「ほんと? それは良かった。今日のお昼は私だけだと思っていたから、何も用意してなかったのよ。——ちなみにね。こうやって食べると、もっと美味しいわよ」
お母さんはそう言うと、「ズズッ」と啜ってラーメンを食べた。
お、音を立てて食べるの……!? そういう食べ方は下品だと、エルデリアでは子供の頃からずっと教えられてきた。 でも、今日から私は地球の子だ。お母さんがすすめてくれるのなら、やってみようと思う。
「ほっ、ホントだ! スープと麺を一緒に食べられるって感じ? なんかさっきとは違う!」
お母さんのように上手くは啜れなかったけど、それでも随分と美味しくなったように感じる。少しだけ地球の子に近づけたのかもしれない。私はフフッと微笑んだ。
ラーメンを食べ終え、元の梨里杏が使っていた部屋のベッドで横になっている。お母さんとリクスは、リビングで昔話に花を咲かせているようだ。
それにしても、スマホって凄い——
私が未だに知らない地球のことはもちろん、メッセージアプリってのを遡れば、交友関係だって分かってしまう。
その中でも、親友の萌って子はとても良い子のようだ。会話を遡れば遡るほど、彼女に嘘をつきたくないという気持ちが強くなってくる。彼女とは、今後も会うことになると思うが、私は彼女を騙し通せるだろうか。自分で言うのもなんだけど、そんな自信はまったくない。うーん……後でお母さんに相談してみるか……
その他は……梨里杏が通っていた、大学の友達からもちょこちょことメッセージが届いている。
そんな感じでスマホ画面をスクロールしていると、萌から来た着信のボタンに思わず触れてしまった。
「もう、梨里杏! なんで全然返事してくれないのよ! 何度も何度もメッセージ送ってるっていうのに!」
「ごっ、ごめんね……えーと、色々とあって……」
「もう、色々って何!? ——で、どう? 今日は会えないの? 誕生日プレゼントも、まだ渡せてないし」
あ。そう言えば『沖縄から帰ってきたから会おう!』と、萌からメッセージが入っていたっけ。
「わ、分かった! あ、会おう!」
私はその場の勢いで、萌と会う約束をしてしまった。
***
「そんな格好をすると、あなたがリリア゠セリュージュだってこと忘れちゃいそうになるわね。当然だけど、よく似合ってる」
私は地球にいた梨里杏の服を着てみた。驚くほど軽くて伸縮性もあり、とても着心地がいい。特に気に入ったのが、ブラジャーという下着だ。背中や肩が少しチクチクとするが、激しい動きでもしっかりと胸を守ってくれそうだ。
「ありがとう、お母さん。でさ、萌に本当のことは言わない方がいいよね……? 私はエルデリアからやってきた別人ってことは……」
私がそう言うと、お母さんは「うーん」と考え込んでしまった。
「あなたたち本当に仲が良かったから、嘘を突き通せるとは思わないのよね……かと言って、エルデリアから来たなんて言われても萌ちゃんも困るだろうし……」
「そういやお母さんは、梨里杏に魔法を使わせなかったって言ったよね? ——一体、どうして?」
「どうしてって……梨里杏を見せ物にされたく無かったからかな……有名になってチヤホヤされたかもしれないけど、その反面、気持ち悪がられることもあっただろうから。出来るだけ、普通の子として育ってほしかったのよ」
普通の子か……お母さんの言ってることも分かる気がする。
「じゃ、とりあえずは、今までの梨里杏として会うようにするよ。後は、萌に会ってから考えてみる。——じゃ、行くよリクス」
「——行くも行かないも、私に選択権はございません。どうぞご自由に、どこへでもお運びください」
ん……? なんだ、このリクスの態度は。
「ハハハ、リクスったら、スマホにやきもち焼いてるんじゃない? 梨里杏、さっきからずっとスマホ触ってるから」
ああ、なるほどそういうことか。スマホがリクスの上位互換って言ったことも、根に持っているのかもしれない。
私は拗ねるリクスをバッグに入れ、家を出た。
0
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる