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第一章:動き出す世界
🌐 11:萌への告白
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萌に会うために、彼女との待ち合わせ場所に向かっている。
コスプレと呼ばれた服については、なんとか誤魔化せると思う。でも、赤い服の男を殴り飛ばした件は、どう説明すればいいだろう。格闘技の技術なんて、一朝一夕で身につくものじゃない。「実はこっそり練習してたの!」なんてのが、通用するとも思えないし。
結局いい考えが浮かばないまま、待ち合わせ場所のレストランに着いてしまった。
「梨里杏!」
小柄な女性が手を振って声をかけくれた。萌は写真で見ていた通り、とても愛らしい顔をしていた。
「ご、ごめんね、全然返事出来なくて」
「ううん、もういいよ。誕生日プレゼントとは別に、沖縄土産も持ってきたよ。さ、入ろう!」
電話では少し怒っていたように感じた萌だったが、今は落ち着いたようだ。萌は、カラッとした笑顔でそう言ってくれた。
私たちが入ったのは、広くて明るい、清潔感のあるレストランだった。こちらでは、ファミリーレストランと呼ばれているそうだ。テーブルひとつひとつに、大きなスマホのようなものが置いてある。どうやら、これで注文をするらしい。
「ホントは、もうちょっと雰囲気のあるお店がいいかなって思ったんだけどね。今日は話す内容的に、ガヤガヤしてる方がいいかなと思って」
萌はそう言って、ニコッと微笑んだ。
***
タブレットとやらで注文を終えて料理を待っていると、萌が例の動画を見せてきた。
「これ、ホント凄いよね。これが梨里杏だって気付いた時、めっちゃ驚いたもん。で、——やっぱ、使ったんでしょ?」
そう言うと萌は顔を近づけて、小声で言った。「魔法を」と。
い、いま……魔法って言った……? もしかして梨里杏は、萌に魔法を使えることを話していた……!?
「ご、ごめん萌……も、もう一度言ってくれる……?」
「もう……! 大きな声で言えないことって、分かってるくせに」
萌は再び顔を近づけて言った。
「魔法を使ったんでしょ? 青い服の男の子が危ないと思って」と。
萌は冗談で言っているんじゃない。彼女の雰囲気からも、本気で聞いているんだと伺い知れる。
「ご、ごめんね、萌。変なこと聞いちゃうけど、私が言ったんだよね? その……魔法を使えるって……」
もちろん、魔法の部分は小声で言った。
「もう、何言ってんのよ……今日の梨里杏、ちょっと変だよ? ——見せてくれたじゃない、初めて2人で泊まりにいった旅先で。飛び切り大きな花火を」
***
「えーーーっ!!」
大声を上げた萌に、多くの客が一斉に顔を向けた。萌は恥ずかしそうに、頬を赤らめる。
「い、いままでいた梨里杏とあなたが入れ替わったって……!? ちょ、ちょっと待って! 頭の整理が追いつかないんだけど!」
萌は小声ながらも、興奮してそう言った。頭の中でグルグルと回る思考に追いつかないのだろう、忙しなく萌の視線が動いている。
萌は梨里杏が魔法を使えると知っても、梨里杏を受け入れてくれていた。ならば、私と梨里杏が入れ替わったと知っても、受け入れてくれるんじゃないかと打ち明けたのだ。
「っていうか、し……信じてくれるの? 私の言ってること」
「梨里杏の言うこと、信じなかったことなんて一度もないでしょ? あっ、でも……今の梨里杏は、今までの梨里杏じゃないのか……なんだか、頭がこんがらがってきちゃった……」
萌は少し寂しそうな笑みを浮かべ、そう答えた。
「そ、そうだね、今の私はここにいた梨里杏じゃない。それと、言いにくいんだけど……前の梨里杏には多分……多分だけど、もう会えることはないと思うの」
そう言った瞬間、萌の表情がスッと変わった。
「あっちに行った梨里杏は、もちろん知ってたんだよね……? あなたと入れ替わっちゃうって事……そして、こっちには戻れなくなるかもしれないって事……」
萌は私から視線を逸らさず、震える声でそう聞いた。
「う、ううん……それを知っていたのは、私と私の父だけ。こっちのお母さんも知らなかったことなの……」
「そ……それって、どうなの……?」
萌の目に、みるみると涙が溢れていく。
「あ……あまりにも酷くない……? こっちの梨里杏の気持ちとか考えなかったの……!? 梨里杏のお母さんのことだって!!」
萌はそう言うと、テーブルをバンッと叩いて席を立ってしまった。
テーブルの上に、私へのプレゼントと沖縄土産を残したままで。
コスプレと呼ばれた服については、なんとか誤魔化せると思う。でも、赤い服の男を殴り飛ばした件は、どう説明すればいいだろう。格闘技の技術なんて、一朝一夕で身につくものじゃない。「実はこっそり練習してたの!」なんてのが、通用するとも思えないし。
結局いい考えが浮かばないまま、待ち合わせ場所のレストランに着いてしまった。
「梨里杏!」
小柄な女性が手を振って声をかけくれた。萌は写真で見ていた通り、とても愛らしい顔をしていた。
「ご、ごめんね、全然返事出来なくて」
「ううん、もういいよ。誕生日プレゼントとは別に、沖縄土産も持ってきたよ。さ、入ろう!」
電話では少し怒っていたように感じた萌だったが、今は落ち着いたようだ。萌は、カラッとした笑顔でそう言ってくれた。
私たちが入ったのは、広くて明るい、清潔感のあるレストランだった。こちらでは、ファミリーレストランと呼ばれているそうだ。テーブルひとつひとつに、大きなスマホのようなものが置いてある。どうやら、これで注文をするらしい。
「ホントは、もうちょっと雰囲気のあるお店がいいかなって思ったんだけどね。今日は話す内容的に、ガヤガヤしてる方がいいかなと思って」
萌はそう言って、ニコッと微笑んだ。
***
タブレットとやらで注文を終えて料理を待っていると、萌が例の動画を見せてきた。
「これ、ホント凄いよね。これが梨里杏だって気付いた時、めっちゃ驚いたもん。で、——やっぱ、使ったんでしょ?」
そう言うと萌は顔を近づけて、小声で言った。「魔法を」と。
い、いま……魔法って言った……? もしかして梨里杏は、萌に魔法を使えることを話していた……!?
「ご、ごめん萌……も、もう一度言ってくれる……?」
「もう……! 大きな声で言えないことって、分かってるくせに」
萌は再び顔を近づけて言った。
「魔法を使ったんでしょ? 青い服の男の子が危ないと思って」と。
萌は冗談で言っているんじゃない。彼女の雰囲気からも、本気で聞いているんだと伺い知れる。
「ご、ごめんね、萌。変なこと聞いちゃうけど、私が言ったんだよね? その……魔法を使えるって……」
もちろん、魔法の部分は小声で言った。
「もう、何言ってんのよ……今日の梨里杏、ちょっと変だよ? ——見せてくれたじゃない、初めて2人で泊まりにいった旅先で。飛び切り大きな花火を」
***
「えーーーっ!!」
大声を上げた萌に、多くの客が一斉に顔を向けた。萌は恥ずかしそうに、頬を赤らめる。
「い、いままでいた梨里杏とあなたが入れ替わったって……!? ちょ、ちょっと待って! 頭の整理が追いつかないんだけど!」
萌は小声ながらも、興奮してそう言った。頭の中でグルグルと回る思考に追いつかないのだろう、忙しなく萌の視線が動いている。
萌は梨里杏が魔法を使えると知っても、梨里杏を受け入れてくれていた。ならば、私と梨里杏が入れ替わったと知っても、受け入れてくれるんじゃないかと打ち明けたのだ。
「っていうか、し……信じてくれるの? 私の言ってること」
「梨里杏の言うこと、信じなかったことなんて一度もないでしょ? あっ、でも……今の梨里杏は、今までの梨里杏じゃないのか……なんだか、頭がこんがらがってきちゃった……」
萌は少し寂しそうな笑みを浮かべ、そう答えた。
「そ、そうだね、今の私はここにいた梨里杏じゃない。それと、言いにくいんだけど……前の梨里杏には多分……多分だけど、もう会えることはないと思うの」
そう言った瞬間、萌の表情がスッと変わった。
「あっちに行った梨里杏は、もちろん知ってたんだよね……? あなたと入れ替わっちゃうって事……そして、こっちには戻れなくなるかもしれないって事……」
萌は私から視線を逸らさず、震える声でそう聞いた。
「う、ううん……それを知っていたのは、私と私の父だけ。こっちのお母さんも知らなかったことなの……」
「そ……それって、どうなの……?」
萌の目に、みるみると涙が溢れていく。
「あ……あまりにも酷くない……? こっちの梨里杏の気持ちとか考えなかったの……!? 梨里杏のお母さんのことだって!!」
萌はそう言うと、テーブルをバンッと叩いて席を立ってしまった。
テーブルの上に、私へのプレゼントと沖縄土産を残したままで。
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