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第一章:動き出す世界
⚜️ 13:私のための自己紹介
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「リリア、それは本当なのか……? キミが記憶を無くしてしまったというのは……?」
アーシェルは信じられないという表情で、私の顔を覗き込んだ。
「え、ええ……お父様のことを辛うじて憶えてるくらいで、そのほかは殆ど憶えてないというか……」
この部屋にいる者たちは、「おぉ……」という重たいため息を一様に漏らした。
「アーシェル、こういうのはどうだろう? 俺たちのこと、少しずつリリアに話してみないか? まあ、自己紹介のようなものだ。もしかすると、それがキッカケになって、少しは記憶が戻るかもしれない」
「ああ、それはいいなジルハート! じゃあ早速、右端にいるエイルから始めようか。よろしく頼む」
ジ、ジルハート! あなたは、なんて素敵な提案をしてくれるっていうの! 隣でアルフィナが「めんどくさ」って呟いたけど、そんなのどうでもいいくらいに!
「承知しました、アーシェル様。私の名前はエイル゠ロゼリード。齢は今年で十九歳、白祈院の出身です。——あ、リリアさん。白祈院は分かりますか?」
私が首を横にふると、エイルは続けた。
「白祈院とは、回復魔法や祈祷を主に扱う修道院のことです。私はここで生まれ、ここで育ち、ここで学んできました。ちなみに、先程のアーシェル様への『参加者は無事なのか』という質問ですが、それに関してはご安心ください。代々、白祈院のメンバーは選律の儀が開催される度、サポーターとして参加させて頂いております。闘技場周りに控えていた、白装束の面々。彼らが白祈院のメンバーなのです」
そう言えば、そのような格好をした人たちが、周りにいたような気がする。負傷した者はすぐに運び出し、彼らの魔法で治療しているそうだ。本日も含め、死傷者が出たことは一度もないらしい。
「そして私に関しては、得意とするのは回復系の魔法、攻撃系は得意ではありませんが、風系を少し。そんなところでしょうか。——そうそう。ここから距離はありますが、白祈院の分院に、記憶を呼び寄せることの出来る老婆がいると聞いています。旅の途中に立ち寄るのもいいかもしれません」
きっ、記憶を呼び寄せるですって……!? そ、そんな事をされたら、逆に困るんですけど……
「あ、ありがとうございますエイルさん。そ、その……私とはどの程度のお知り合いだったのでしょうか……?」
私がそう言うと、エイルは驚いた表情でジルハートと顔を見合わせた。
「本当に全てをお忘れなんですね……私は修道院の出ということもあって、ここにいらっしゃる御三方に比べるとお付き合いは浅い方です。魔法協会や魔法評議会でお顔を合わせていた程度でしょうか」
「ちょ、ちょっと待てエイル」
淡々と答えたエイルに、ジルハートがストップをかけた。
「そんな言い方をしたら、お前たちはただの顔見知りみたいじゃないか。お前たちには格闘技っていう、共通の趣味があっただろ。よく、その話で盛り上がっていたじゃないか。——そういや、リリア。格闘技に関してはどうなんだ? 流石に身体が憶えてるとかないのか?」
かっ、格闘技!? わ……私が!?
「そ、それも憶えてないみたい……ご、ごめんなさい……」
「あ、謝ることはねーよ。——ってか、あれほど極めた格闘技さえ覚えていないんだな。じゃあ、ついでに次は俺の自己紹介だ。名前はジルハート゠リンヴァルト、リンヴァルト家の次男だ。年齢は二十二歳、お前の二つ上だな。得意な魔法は……うーん、自分で言うのもなんだが、全般だ。使える魔法の多さでは、誰にも負けないと思っている。あとは……俺の親父とリアノスさんが親友ってこともあって、お前とは小さい頃から一緒に遊んでた仲だ。まあ言ってみれば、お前は俺の妹みたいなもんだな」
なるほど……私は妹ポジションだったんだ。何故か、少しだけホッとした私がいた。
「じゃ、次は私ね。アルフィナ゠バルクレア、十八歳。アンタやジルハートと違って、貴族の出ではないわ。バルクレア魔鉱交易商会ってとこの、まあ……自分で言うのもなんだけど、お嬢様ってところかしら。得意な魔法は、相手の魔法を吸収したり、利用したりするやり方ね。アタシは転力魔術って呼んでるけど。——なっ、なに笑ってんのよ、アーシェル!!」
「そっ、その割に、ノルドの時には……ククク、なっなんでもない」
「ま、まあ、家格ではリリアの方が上かもしんないけど、アンタたち貴族はバルクレア家があってこそ、成り立ってるようなものだからね。その辺はちゃんと覚えておいてよ」
「やめろよ、アルフィナ。俺にしてもお前にしても、家格なんて先祖たちが築いてきたものじゃないか。俺たち若い世代は、自分たちの実力で力を示していこうぜ」
ジルハートがそう言うと、アルフィナは「そんなこと分かってるわよ!」と横を向いた。
「若い世代は、自分たちで力を示せか……僕にとっても耳が痛い話だな、ハハハ……」
「何を言ってるんだ、アーシェル。お世辞でもなんでもなく、お前が作るマナトゥムは正真正銘の本物だ。あんなの作れる奴なんて、他にいない」
「そうか。その言葉、素直に受け取っておくよジルハート。——では、自己紹介は僕で最後だな。我が名は、アーシェル゠オル゠エルデリア。このエルデリア帝国を治める領主の長男だ。年齢はリリアと同じ二十歳。その歳になった故、この度の『選律の儀』にて選ばれた者たちと、『継承の巡礼』に出るというわけだ。親世代までは仕来りの色が強かったこの巡礼だが、今回は少しだけ勝手が違う。エルデリアの各地方から、不穏な話を耳にしているからだ。今回は、その辺りも解決していく旅になると思われる。——どうだい、リリア? 僕たちの事を少しは覚えてくれたかい?」
私は大きな声で、「はい!」とアーシェルに返事をした。
アーシェルは信じられないという表情で、私の顔を覗き込んだ。
「え、ええ……お父様のことを辛うじて憶えてるくらいで、そのほかは殆ど憶えてないというか……」
この部屋にいる者たちは、「おぉ……」という重たいため息を一様に漏らした。
「アーシェル、こういうのはどうだろう? 俺たちのこと、少しずつリリアに話してみないか? まあ、自己紹介のようなものだ。もしかすると、それがキッカケになって、少しは記憶が戻るかもしれない」
「ああ、それはいいなジルハート! じゃあ早速、右端にいるエイルから始めようか。よろしく頼む」
ジ、ジルハート! あなたは、なんて素敵な提案をしてくれるっていうの! 隣でアルフィナが「めんどくさ」って呟いたけど、そんなのどうでもいいくらいに!
「承知しました、アーシェル様。私の名前はエイル゠ロゼリード。齢は今年で十九歳、白祈院の出身です。——あ、リリアさん。白祈院は分かりますか?」
私が首を横にふると、エイルは続けた。
「白祈院とは、回復魔法や祈祷を主に扱う修道院のことです。私はここで生まれ、ここで育ち、ここで学んできました。ちなみに、先程のアーシェル様への『参加者は無事なのか』という質問ですが、それに関してはご安心ください。代々、白祈院のメンバーは選律の儀が開催される度、サポーターとして参加させて頂いております。闘技場周りに控えていた、白装束の面々。彼らが白祈院のメンバーなのです」
そう言えば、そのような格好をした人たちが、周りにいたような気がする。負傷した者はすぐに運び出し、彼らの魔法で治療しているそうだ。本日も含め、死傷者が出たことは一度もないらしい。
「そして私に関しては、得意とするのは回復系の魔法、攻撃系は得意ではありませんが、風系を少し。そんなところでしょうか。——そうそう。ここから距離はありますが、白祈院の分院に、記憶を呼び寄せることの出来る老婆がいると聞いています。旅の途中に立ち寄るのもいいかもしれません」
きっ、記憶を呼び寄せるですって……!? そ、そんな事をされたら、逆に困るんですけど……
「あ、ありがとうございますエイルさん。そ、その……私とはどの程度のお知り合いだったのでしょうか……?」
私がそう言うと、エイルは驚いた表情でジルハートと顔を見合わせた。
「本当に全てをお忘れなんですね……私は修道院の出ということもあって、ここにいらっしゃる御三方に比べるとお付き合いは浅い方です。魔法協会や魔法評議会でお顔を合わせていた程度でしょうか」
「ちょ、ちょっと待てエイル」
淡々と答えたエイルに、ジルハートがストップをかけた。
「そんな言い方をしたら、お前たちはただの顔見知りみたいじゃないか。お前たちには格闘技っていう、共通の趣味があっただろ。よく、その話で盛り上がっていたじゃないか。——そういや、リリア。格闘技に関してはどうなんだ? 流石に身体が憶えてるとかないのか?」
かっ、格闘技!? わ……私が!?
「そ、それも憶えてないみたい……ご、ごめんなさい……」
「あ、謝ることはねーよ。——ってか、あれほど極めた格闘技さえ覚えていないんだな。じゃあ、ついでに次は俺の自己紹介だ。名前はジルハート゠リンヴァルト、リンヴァルト家の次男だ。年齢は二十二歳、お前の二つ上だな。得意な魔法は……うーん、自分で言うのもなんだが、全般だ。使える魔法の多さでは、誰にも負けないと思っている。あとは……俺の親父とリアノスさんが親友ってこともあって、お前とは小さい頃から一緒に遊んでた仲だ。まあ言ってみれば、お前は俺の妹みたいなもんだな」
なるほど……私は妹ポジションだったんだ。何故か、少しだけホッとした私がいた。
「じゃ、次は私ね。アルフィナ゠バルクレア、十八歳。アンタやジルハートと違って、貴族の出ではないわ。バルクレア魔鉱交易商会ってとこの、まあ……自分で言うのもなんだけど、お嬢様ってところかしら。得意な魔法は、相手の魔法を吸収したり、利用したりするやり方ね。アタシは転力魔術って呼んでるけど。——なっ、なに笑ってんのよ、アーシェル!!」
「そっ、その割に、ノルドの時には……ククク、なっなんでもない」
「ま、まあ、家格ではリリアの方が上かもしんないけど、アンタたち貴族はバルクレア家があってこそ、成り立ってるようなものだからね。その辺はちゃんと覚えておいてよ」
「やめろよ、アルフィナ。俺にしてもお前にしても、家格なんて先祖たちが築いてきたものじゃないか。俺たち若い世代は、自分たちの実力で力を示していこうぜ」
ジルハートがそう言うと、アルフィナは「そんなこと分かってるわよ!」と横を向いた。
「若い世代は、自分たちで力を示せか……僕にとっても耳が痛い話だな、ハハハ……」
「何を言ってるんだ、アーシェル。お世辞でもなんでもなく、お前が作るマナトゥムは正真正銘の本物だ。あんなの作れる奴なんて、他にいない」
「そうか。その言葉、素直に受け取っておくよジルハート。——では、自己紹介は僕で最後だな。我が名は、アーシェル゠オル゠エルデリア。このエルデリア帝国を治める領主の長男だ。年齢はリリアと同じ二十歳。その歳になった故、この度の『選律の儀』にて選ばれた者たちと、『継承の巡礼』に出るというわけだ。親世代までは仕来りの色が強かったこの巡礼だが、今回は少しだけ勝手が違う。エルデリアの各地方から、不穏な話を耳にしているからだ。今回は、その辺りも解決していく旅になると思われる。——どうだい、リリア? 僕たちの事を少しは覚えてくれたかい?」
私は大きな声で、「はい!」とアーシェルに返事をした。
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