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第一章:動き出す世界
🌐 17:初めての友達
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「リアノスは私を抱きかかえて、再び地球へとゲートをくぐったの。病院へ戻ると、看護師さんたちに酷く怒られたわ。『こんなタイミングでいなくなる人なんて、初めてです!』って。リアノスは、ただただ平謝りしてたっけ」
「もちろんいたんですよね……? 地球にも、こっちで生まれた梨里杏が……」
「ええ、もちろん。昨日まで、地球にいた方の梨里杏がね。——そして、5日ほどで私は退院して、梨里杏と自宅へ戻ったの。その翌日だったかな。リアノスがエルデリアへのゲートを閉じてしまったのは」
ゲートを閉じる際、繋がっていたのはお父様の部屋とお母さんの部屋。お父様もお母さんも、クローゼットにゲートが繋がっていたようだ。
「じゃあ、それっきりなんですね……リアノスさんと話をされたのは……」
「それがね、ゲートは一瞬では閉じなかったの。一気に辞書くらいの大きさにまで縮んだんだけど、そこからはジワジワと閉じていく感じで」
「じゃ、じゃあ、お話なんかは出来たとか?」
「そう。日々小さくなるゲート越しに、私たちは毎日会話をしたわ。お互いの梨里杏を見せ合ったりしながらね。ゲートが消しゴムくらいの大きさになる頃なんて、二人とも泣いてばかりだった」
その頃を思い出すのか、お母さんは目を潤ませながら話を続けた。
「そして、確かその頃だったと思う。こっちにいた梨里杏が、魔法を使ったのは。それをリアノスに伝えると、えらく喜んでた。『こっちのリリアもしばらくだろう』なんて言ってね」
「——お父様は悲しんでた? 私がいつまで経っても魔法を使わないことを」
「魔法だけに関して言うと、正直そうね。だけど、それ以外は愛されて育てられたはずよ。それはきっと、あなたが一番知っていると思う」
そしてその約1週間後、二人をつなぐゲートは完全に消滅したという。
***
「じゃ、そろそろ……今回、梨里杏たちが入れ替わらなきゃいけなかった理由を聞いていい?」
「えっ? 梨奈さんもまだ知らないんですか?」
「うん。梨里杏がここに来たのは、今日のお昼だから。——萌ちゃんも一緒に聞いてくれる?」
萌は「もちろんです」というと、真剣な眼差しを私に向けた。
「お父様はあれからも、時々例の魔法書に目を通してた。エルデリアと地球が対になってると書かれてた、あの魔法書ね。ゲートが閉じてから、接近は緩やかになったけど、今もエルデリアと地球は接近を続けてるらしくて。で、その理由が……」
「あなたたちってこと……?」
私は無言で頷いた。
「魔法を使える梨里杏がエルデリアに、魔法を使えない私が地球にいるのが、本来の姿なんじゃないかって。本来存在すべき場所に、戻そうとしてるんじゃないかって。それでまた、お父様は新たな魔法の研究に取り組み始めたの。——今度は、私たちを入れ替える魔法を」
「り……梨奈さんや梨里杏には悪いけど、リアノスさん酷くない……!? 梨里杏たちは物じゃないんだよ……? そんな簡単に人を入れ替えるとか言い出すなんて……」
「ありがとう、萌ちゃん……あなたの言う通りよ。本当にリアノスは酷い人。——でもね、地球やエルデリアが滅びないためには仕方なかったのよ、きっと」
涙が溢れそうなのか、萌は目尻を拭った。
「そして、その魔法を使えるのは、十年周期なんだって。私の年齢のね。でも、私が十歳の時にはまだ、その魔法を見つけ出せなかったみたいで。——そして、二十歳になった今日。見ての通り、その魔法は成功したの」
「それで……あなたたちが入れ替わったことで、問題は解決するの? リアノスはなんて言ってた?」
「100%の確証はないけど、限りなく解決へ近づくはずだと言ってた。多分、これで大丈夫だろうって……」
きっとこれで、私が説明すべきことは話し終えたはずだ。二人はどんな思いで、この話を聞いていたのだろうか。萌はさっきから、ずっと下を向いている。
「梨里杏は……ひとりぼっちになるって分かってて、こっちに来たの……?」
萌は下を向いたまま、私に聞いた。
「そうだね……カッコつけるわけじゃないけど、私たちのせいでエルデリアと地球を無くしちゃうわけにはいかないから……」
「そ、それなのに……私ったら何も知らず、あんな酷いこと言っちゃったんだね……梨里杏のこと、お店に置いてけぼりにしちゃって……」
萌はそう言うと、テーブルにポタポタと涙を落とした。
「泣かないでよ……萌。——私、こんな話をきいてくれるだけで感謝してるんだから……きっと本当のことなんて、お母さんにしか言えないって思ってた。だから本当に感謝してる。——ありがとう、萌」
「わっ、私に出来ることがあったら、何でも言って。いつでも力になるから」
萌は涙目の顔を上げて、力強くそう言った。
「じゃ……なってくれない? 私の初めての地球の友達に」
「そ、そんなの……当たり前じゃない、私はずっとずっと……」
声を上げて泣き出した萌を、隣にいたお母さんがそっと抱き寄せた。
小さなリビングに、三人のすすり泣く声がこだました。
「もちろんいたんですよね……? 地球にも、こっちで生まれた梨里杏が……」
「ええ、もちろん。昨日まで、地球にいた方の梨里杏がね。——そして、5日ほどで私は退院して、梨里杏と自宅へ戻ったの。その翌日だったかな。リアノスがエルデリアへのゲートを閉じてしまったのは」
ゲートを閉じる際、繋がっていたのはお父様の部屋とお母さんの部屋。お父様もお母さんも、クローゼットにゲートが繋がっていたようだ。
「じゃあ、それっきりなんですね……リアノスさんと話をされたのは……」
「それがね、ゲートは一瞬では閉じなかったの。一気に辞書くらいの大きさにまで縮んだんだけど、そこからはジワジワと閉じていく感じで」
「じゃ、じゃあ、お話なんかは出来たとか?」
「そう。日々小さくなるゲート越しに、私たちは毎日会話をしたわ。お互いの梨里杏を見せ合ったりしながらね。ゲートが消しゴムくらいの大きさになる頃なんて、二人とも泣いてばかりだった」
その頃を思い出すのか、お母さんは目を潤ませながら話を続けた。
「そして、確かその頃だったと思う。こっちにいた梨里杏が、魔法を使ったのは。それをリアノスに伝えると、えらく喜んでた。『こっちのリリアもしばらくだろう』なんて言ってね」
「——お父様は悲しんでた? 私がいつまで経っても魔法を使わないことを」
「魔法だけに関して言うと、正直そうね。だけど、それ以外は愛されて育てられたはずよ。それはきっと、あなたが一番知っていると思う」
そしてその約1週間後、二人をつなぐゲートは完全に消滅したという。
***
「じゃ、そろそろ……今回、梨里杏たちが入れ替わらなきゃいけなかった理由を聞いていい?」
「えっ? 梨奈さんもまだ知らないんですか?」
「うん。梨里杏がここに来たのは、今日のお昼だから。——萌ちゃんも一緒に聞いてくれる?」
萌は「もちろんです」というと、真剣な眼差しを私に向けた。
「お父様はあれからも、時々例の魔法書に目を通してた。エルデリアと地球が対になってると書かれてた、あの魔法書ね。ゲートが閉じてから、接近は緩やかになったけど、今もエルデリアと地球は接近を続けてるらしくて。で、その理由が……」
「あなたたちってこと……?」
私は無言で頷いた。
「魔法を使える梨里杏がエルデリアに、魔法を使えない私が地球にいるのが、本来の姿なんじゃないかって。本来存在すべき場所に、戻そうとしてるんじゃないかって。それでまた、お父様は新たな魔法の研究に取り組み始めたの。——今度は、私たちを入れ替える魔法を」
「り……梨奈さんや梨里杏には悪いけど、リアノスさん酷くない……!? 梨里杏たちは物じゃないんだよ……? そんな簡単に人を入れ替えるとか言い出すなんて……」
「ありがとう、萌ちゃん……あなたの言う通りよ。本当にリアノスは酷い人。——でもね、地球やエルデリアが滅びないためには仕方なかったのよ、きっと」
涙が溢れそうなのか、萌は目尻を拭った。
「そして、その魔法を使えるのは、十年周期なんだって。私の年齢のね。でも、私が十歳の時にはまだ、その魔法を見つけ出せなかったみたいで。——そして、二十歳になった今日。見ての通り、その魔法は成功したの」
「それで……あなたたちが入れ替わったことで、問題は解決するの? リアノスはなんて言ってた?」
「100%の確証はないけど、限りなく解決へ近づくはずだと言ってた。多分、これで大丈夫だろうって……」
きっとこれで、私が説明すべきことは話し終えたはずだ。二人はどんな思いで、この話を聞いていたのだろうか。萌はさっきから、ずっと下を向いている。
「梨里杏は……ひとりぼっちになるって分かってて、こっちに来たの……?」
萌は下を向いたまま、私に聞いた。
「そうだね……カッコつけるわけじゃないけど、私たちのせいでエルデリアと地球を無くしちゃうわけにはいかないから……」
「そ、それなのに……私ったら何も知らず、あんな酷いこと言っちゃったんだね……梨里杏のこと、お店に置いてけぼりにしちゃって……」
萌はそう言うと、テーブルにポタポタと涙を落とした。
「泣かないでよ……萌。——私、こんな話をきいてくれるだけで感謝してるんだから……きっと本当のことなんて、お母さんにしか言えないって思ってた。だから本当に感謝してる。——ありがとう、萌」
「わっ、私に出来ることがあったら、何でも言って。いつでも力になるから」
萌は涙目の顔を上げて、力強くそう言った。
「じゃ……なってくれない? 私の初めての地球の友達に」
「そ、そんなの……当たり前じゃない、私はずっとずっと……」
声を上げて泣き出した萌を、隣にいたお母さんがそっと抱き寄せた。
小さなリビングに、三人のすすり泣く声がこだました。
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