梨里杏とリリア ⚜️二十歳の夜、二人は世界を越えた⚜️

星ノ律

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第一章:動き出す世界

⚜️ 18:一度きりの花火

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◤ 梨奈は、エルデリアでも子どもを産んでいた……それを皮切りに、リアノスは私の知らなかった事実を次々と話し始めた…… ◢

 お母さんとリアノスの出逢い、二人のリリアの誕生、そして別れに至るまでの話……どれを聞いても、ひっくり返るほどに驚いた。

 その中でも、お母さんを分身させた話を聞いた時には、開いた口が塞がらなかった。『魔法界の変態』という異名でさえ、生ぬるいと感じたほどだ。

 それにしても、我ながらなんて人生を歩んできたんだ……いや、より壮絶なのは、お母さんのほうなのかもしれない……


「私……ここに来た瞬間から、確認したかったことがあるの。——でも、今の話を聞いていて、それは無理かもしれないって思い始めてる」

「——聞くのが怖いのか?」

 私は無言で頷いた。

「そうだ……お前の想像通り、現状地球へ帰ることは難しい。——だが、私もただ手をこまねいているだけではない。どこにも影響を与えないゲートを作れないだろうか、他の解決方法はないだろうかと、日々研究を重ねている。——お前に辛い思いをさせているのは、重々承知している。もう少しだけ、私に時間をくれないだろうか」

「リリア様……? リアノス様は、今まで不可能と言われていた魔法を、いくつも完成させてきました。だからきっといつか、リリア様たちが救われるような魔法を完成されるのではと、ノラは考えております。——もちろん、その魔法の殆どは、墓場まで持っていかねばならぬものばかりですが」

「お、おい、ノラ」

 そんなやりとりに、私はクスッと吹き出した。

 今は気持ちが高ぶっているからだろうか。あんな凄い魔法を発動して、少しいい気分になったからだろうか。本当に少しの間でいいなら、エルデリアで過ごしてもいいのかな、なんて思い始めてる。

 ただ、私はまだ、このエルデリアに来て一夜たりとも過ごしていない。一人を迎えた夜がやってきた時、初めて本当の寂しさが押し寄せるのかもしれない。


「ところでリリア。今日の魔法も凄かったが、地球ではどんな魔法の使い方をしていたんだ?」

「地球では全然使ってなかったよ。私が幼い頃から、魔法は使っちゃいけないって、ずっとお母さんに躾けられてきたから。だから、物心ついてから魔法を使ったのは、たったの一度きりなんだ」

「そ、そうだったのか……で、その一度きりってのは、どんな魔法だったんだ?」

 リアノスは、本当に魔法が好きなのだろう、身体を乗り出して話の続きを促した。

「私には萌って友達がいたの。とても温かくて、とても優しくて、とても正義感の強い子。そんな萌が旅行に行こうって誘ってくれたんだ、しかも二人だけで。18歳のときだったかな」

 リアノスだけでなく、後ろにいるノラもジッと耳を傾けている。案外ノラも、魔法の話は好きなのかもしれない。

「その頃の私は……凄く普通に憧れていたの。お父様が聞いたら悲しむかもしれないけど、魔法が使えない普通の子に。好きな人ができた時に、このことがバレたらどうしよう? 旅行を誘ってくれた萌に対してもそう。魔法を使えるなんてことがバレたら、嫌われちゃうだろうなって。——そんな気持ちを引きずったまま、旅行に行っちゃったの。萌に申し訳ない、って気持ちを抱えたままで……」

 リアノスは、どこか申し訳無さそうに私の話に頷いた。

「そんな私に気付いたのか、萌が言ってくれたの。『思ってること吐き出しちゃえば?』って。『全部、私が受け止めてあげるから』って。——だから、私全部言っちゃったの。私、普通じゃないのって。使いもしない魔法なんて持ってるんだよって。バカみたいでしょ!? って」

 つい興奮して、声が大きくなってしまう。

「私ね……正直笑われると思ってた。なのに、萌ったら私と一緒に泣いていたの。小さな体で、私のこと抱きしめてくれて。梨里杏の言えない秘密、私が共有してあげるって、そう言ってくれて……」

 そう言って涙を溢れさせた私のせいか、ノラもそっと目尻をぬぐった。

「そもそもその日は、旅館から花火大会を見ようって旅行だったんだ。その話を終えて、旅館の屋上へと上っていったんだけど、他の人はみんな下りてきてるところで。屋上に着いたときには、私たち二人だけだったの。ちょうど、花火大会が終わったところで」

「そこで……見せてあげたんだな?」

「そう。一度しか使わないから見ておいてって。私のお母さんしか見たことがない、私の魔法をって。——そして、空に向け放ったんだ。夜空いっぱいに広がる大きな花火を」

 その花火の音に驚いたのか、一度は下りていった宿泊客が、屋上まで戻ってきたのを思い出す。

 私が今日、自分の魔法を信じられたのは、この日の花火のおかげかもしれない。

 だって……その時の花火も、私が思い描いた通りに放てたから。
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