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第二章:新しい日常
⚜️ 21:旅立ちのバルコニー
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「おはようございます、リリアさん」
エイルは徒歩で来たのだろうか、彼は自身の身長ほどもあるリュックを背負っていた。
「おはよう、エイル。——す、凄い荷物だね」
「ああ、こんなの大したことありませんよ。遠征の時は、いつもこんな感じですから。——それより、どうです? 記憶の方は」
「うん……まだ、戻ってない感じ。でも、体の方は全然調子いいかな」
「ええ、それは見ていて分かります。先日より、ずっと落ち着いてらっしゃるようですから。——それでは、私は先にバルコニーへ向かいますね」
エイルにジッと見つめられてそう言われると、全てを見透かされているような気持ちになる。確か、彼はまだ19歳だったっけ……どこか、不思議な人。
「それでは、我々が見送れるのはここまでだ。荷物はこちらの馬車に積み替えてもらうよう、手配はしておいた。——それじゃ元気でな、リリア」
「ありがとう。——お父様も、皆さんもお元気で」
たった二週間と言えど、同じ屋根の下で暮らすと情が移るようだ。私たちは二人揃って、涙ぐんでいた。リアノスの後ろに控えていたディセルとノラに至っては、人目も憚らず涙を流している。
私とジルハート、そしてアルフィナは、王家の従者に先導されエルデリア城の中を進んでゆく。この城の上階にあるバルコニーで、出陣の門出を祝うとのことだ。
「も、もう、怒ってないか……?」
「あ……さっきはごめんジルハート、いきなり怒鳴っちゃったりして……」
「いや、怒ってないなら大丈夫だ。——あれからどうだ? 今も魔法は使えるのか?」
「うん。お父様に色々と手ほどきを受けたから、大丈夫だと思う。——ただ、不思議とあの時のような魔法は放てなくて」
選律の儀が終わった翌日から、私はリアノスによる魔法のレッスンを受けていた。魔法の実技を少しと、この世界の魔法のあり方を教えてもらった感じだろうか。
「そっかー……あれは、偶然の産物的なとこがあったのか。あのような光弾魔法、俺は放ったことがなくてさ。かなり色々と調べたんだけど、全然見つからなくて。——魔法式はどうなってんだ? あれは」
魔法式……こちらの世界では、呪文プラス頭に浮かんだイメージ、呪文プラス発動するための構えなど、魔法を生成するためのルールがある。基本的に、魔法を放つには何かしらの呪文が必要になるそうだ。
「わ、私の場合、イメージだけで生成出来ちゃうみたいで……」
それを聞いた、アルフィナとジルハートは揃って足を止めた。
「ちょっ、冗談だよね!? あの魔法、呪文無しで放ったってこと!?」
「はあっ!? 呪文を使ってないだって……? か、勘弁しろよリリア……そりゃ、いくら魔法書を読み漁っても見つからないわけだ……」
確か、リアノスも私と同じで、呪文なしでも魔法を放てると言っていたような……? もしかして、これは言っちゃいけないことだったの……?
***
「おお、よく来たな! ——クリス、席を外してくれ。出発の際にはまた声を掛ける」
バルコニーに着くと、既にアーシェルとエイルが待っていた。アーシェルは側にいた家臣たちを、バルコニーの外へと下がらせる。
「ご無沙汰だな、アーシェル。親父から聞いたんだが、今までの『継承の巡礼』は、大体的にやってたらしいじゃないか。国民が集まってくれて、俺たちを送り出してくれるみたいな。——今回はいいのか? こんなあっさりした感じで」
「今までは今までだよ、ジルハート。先日も夜中だってのに、国民たちは『選律の儀』のために足を運んでくれたんだ。彼らだって忙しい。僕たちのイベントのために、何度も足を運ぶ必要なんてないさ」
皇子なんてのは、決まって我儘なものだと思っていた。だが、アーシェルに限っては、そうでもないらしい。将来、この国を治める立場になるアーシェル。常に、それを見据えて生きているのだろう。
「ほら、見てくれみんな。この美しい景色を。門出の前に、みんなでこの景色を見ておこうと思ってさ」
アーシェルはバルコニーへ向けて、手を広げた。高台にあるエルデリア城からは、城下町とその先の港まで見下ろすことが出来る。雲一つ無い青空の下、心地よい風が通り過ぎた。
「見た感じ、リリアはまだ記憶は戻っていないようだな。体の調子はどうだ?」
「え、ええ……体の調子はとても良いです。魔法の方も、少しずつ使えるようになっています」
「そうか、それは良かった。それはそうとリリア、無理して敬語なんて使わなくていいんだぞ。以前のキミのように、普通に話してくれればいい。——ついでと言ってはなんだがエイル、キミもだ」
「ハハハ、私は今のままで大丈夫ですよ。この方がラクですから」
「フフッ、そうか。もちろん、無理にとは言わん。——さあ、いよいよ始まるな、僕たちの旅が。無事に戻ってきた時には、またここで乾杯でもしようじゃないか」
アーシェルが城下町へと体を向けると、通り過ぎた風がアーシェルのマントを大きくなびかせた。
エイルは徒歩で来たのだろうか、彼は自身の身長ほどもあるリュックを背負っていた。
「おはよう、エイル。——す、凄い荷物だね」
「ああ、こんなの大したことありませんよ。遠征の時は、いつもこんな感じですから。——それより、どうです? 記憶の方は」
「うん……まだ、戻ってない感じ。でも、体の方は全然調子いいかな」
「ええ、それは見ていて分かります。先日より、ずっと落ち着いてらっしゃるようですから。——それでは、私は先にバルコニーへ向かいますね」
エイルにジッと見つめられてそう言われると、全てを見透かされているような気持ちになる。確か、彼はまだ19歳だったっけ……どこか、不思議な人。
「それでは、我々が見送れるのはここまでだ。荷物はこちらの馬車に積み替えてもらうよう、手配はしておいた。——それじゃ元気でな、リリア」
「ありがとう。——お父様も、皆さんもお元気で」
たった二週間と言えど、同じ屋根の下で暮らすと情が移るようだ。私たちは二人揃って、涙ぐんでいた。リアノスの後ろに控えていたディセルとノラに至っては、人目も憚らず涙を流している。
私とジルハート、そしてアルフィナは、王家の従者に先導されエルデリア城の中を進んでゆく。この城の上階にあるバルコニーで、出陣の門出を祝うとのことだ。
「も、もう、怒ってないか……?」
「あ……さっきはごめんジルハート、いきなり怒鳴っちゃったりして……」
「いや、怒ってないなら大丈夫だ。——あれからどうだ? 今も魔法は使えるのか?」
「うん。お父様に色々と手ほどきを受けたから、大丈夫だと思う。——ただ、不思議とあの時のような魔法は放てなくて」
選律の儀が終わった翌日から、私はリアノスによる魔法のレッスンを受けていた。魔法の実技を少しと、この世界の魔法のあり方を教えてもらった感じだろうか。
「そっかー……あれは、偶然の産物的なとこがあったのか。あのような光弾魔法、俺は放ったことがなくてさ。かなり色々と調べたんだけど、全然見つからなくて。——魔法式はどうなってんだ? あれは」
魔法式……こちらの世界では、呪文プラス頭に浮かんだイメージ、呪文プラス発動するための構えなど、魔法を生成するためのルールがある。基本的に、魔法を放つには何かしらの呪文が必要になるそうだ。
「わ、私の場合、イメージだけで生成出来ちゃうみたいで……」
それを聞いた、アルフィナとジルハートは揃って足を止めた。
「ちょっ、冗談だよね!? あの魔法、呪文無しで放ったってこと!?」
「はあっ!? 呪文を使ってないだって……? か、勘弁しろよリリア……そりゃ、いくら魔法書を読み漁っても見つからないわけだ……」
確か、リアノスも私と同じで、呪文なしでも魔法を放てると言っていたような……? もしかして、これは言っちゃいけないことだったの……?
***
「おお、よく来たな! ——クリス、席を外してくれ。出発の際にはまた声を掛ける」
バルコニーに着くと、既にアーシェルとエイルが待っていた。アーシェルは側にいた家臣たちを、バルコニーの外へと下がらせる。
「ご無沙汰だな、アーシェル。親父から聞いたんだが、今までの『継承の巡礼』は、大体的にやってたらしいじゃないか。国民が集まってくれて、俺たちを送り出してくれるみたいな。——今回はいいのか? こんなあっさりした感じで」
「今までは今までだよ、ジルハート。先日も夜中だってのに、国民たちは『選律の儀』のために足を運んでくれたんだ。彼らだって忙しい。僕たちのイベントのために、何度も足を運ぶ必要なんてないさ」
皇子なんてのは、決まって我儘なものだと思っていた。だが、アーシェルに限っては、そうでもないらしい。将来、この国を治める立場になるアーシェル。常に、それを見据えて生きているのだろう。
「ほら、見てくれみんな。この美しい景色を。門出の前に、みんなでこの景色を見ておこうと思ってさ」
アーシェルはバルコニーへ向けて、手を広げた。高台にあるエルデリア城からは、城下町とその先の港まで見下ろすことが出来る。雲一つ無い青空の下、心地よい風が通り過ぎた。
「見た感じ、リリアはまだ記憶は戻っていないようだな。体の調子はどうだ?」
「え、ええ……体の調子はとても良いです。魔法の方も、少しずつ使えるようになっています」
「そうか、それは良かった。それはそうとリリア、無理して敬語なんて使わなくていいんだぞ。以前のキミのように、普通に話してくれればいい。——ついでと言ってはなんだがエイル、キミもだ」
「ハハハ、私は今のままで大丈夫ですよ。この方がラクですから」
「フフッ、そうか。もちろん、無理にとは言わん。——さあ、いよいよ始まるな、僕たちの旅が。無事に戻ってきた時には、またここで乾杯でもしようじゃないか」
アーシェルが城下町へと体を向けると、通り過ぎた風がアーシェルのマントを大きくなびかせた。
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