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第二章:新しい日常
⚜️ 23:商談の狼煙
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「ねえ、ジルハート。あの馬たちはどんな訓練を受けてきたの? 逃げ出したりもせず、歩調も常に私たちに合わせてくれているし」
私たちの後ろを、二台の馬車がついてきている。馬を操る御者はおろか、御者台と呼ばれる運転席さえもない。馬車に関しての知識がない私は、その光景が不思議で仕方なかった。
「ハハハ、何言ってんだリリア。よく見てみろ、あの馬はアーシェルが作ったマナトゥムだ。——っていうか、俺じゃなくて先にアーシェルに聞いてやるべきだったな。本物の馬と間違えてただなんて、大喜びしたと思うぞ」
ジルハートは大笑いしながらそう言った。
そうか……アーシェルはこんなマナトゥムも作れるのか……
きっと、滅びたと言われている前世界のエルデリア人も、最初はこのような形でマナトゥムを使っていたのだろう。
「ほんとアンタって、頭が良いのか悪いのか分かんない子ね。ただの格闘バカかと思ったら、急に魔法のスペシャリストみたいになってるし。——ところでさ、ジルハート。リリアと二人で、女子同士の話をさせてもらっていいかな?」
私たちの話を聞いていたのか、アルフィナが振り返ってそう言った。
「お、おう、そうか。分かった」
ジルハートは前を行く、アーシェルとエイルの元へと駆けていく。
「——ふう。やっと二人きりになれた。アンタと、緊急で話したいことがあったのよね」
わ、私と二人きりで話したいこと……? しかも緊急……?
***
「ス、スニーカーを売りたい……?」
「そう。アンタが貸してくれたスニーカーの複製をね。お父様もスニーカーは大層気に入って、自分のサイズを作って既に履いてるくらいなの。あのクッション性……確かに、クセになるもんね。もちろん、アタシだって既に履いてるわよ」
そう言ってアルフィナは、クイッと足裏を見せた。アルフィナの靴は見た目こそ革靴だったが、靴底はスニーカーのソールだった。
「で、どうしてそれを私に聞くの……?」
「どうして聞くのって、アンタさあ……オリジナルを持ってたのはアンタでしょ? バルクレア魔鉱交易商会は、無断で複製したものを売るほど落ちぶれちゃいないの。販売するって決まったら、アンタにもお金は入るようにするし、権利だって独占したりはしない。——だから、もう一度聞くよ? 売っても構わない?」
「も、もちろん、大丈夫……」
「分かった。じゃ、あとはお父様と変態魔法使いで契約を結んで貰うわ」
そう言うとアルフィナは、オモチャにも見えるピストルのようなものを取り出した。
「あとで、契約してなかったなんて言わないでよ!」
アルフィナはそう言って、天に向けそのピストルを発砲した。ヒュルヒュルと上がっていたその弾は、丸く大きな煙の輪を上空で作り上げた。
「な、何なのあれ……?」
「お父様に向けた、アンタと契約完了したっていう狼煙。ああ見えて30分は消えないのよ、あの煙」
アルフィナは得意げに鼻を鳴らしてそう言った。
***
「——ところでさ。もう一つ、聞きたいことがあるんだけど」
契約の話が済んで10分も経った頃。アルフィナが、よそよそしくそう言った。アルフィナが質問の前に断りを入れるなんて珍しい。私は「何?」と続きを促した。
「ブ……ブラジャーってやつなんだけどさ……あれって、胸に着けるやつなんだよね……?」
アルフィナはそう言いながら、胸の前でブラのシルエットを指で形どっている。
「そ、そうだよ。——あれも売りたいって思ってるの?」
「い、いや、そうじゃなくて。あれ、アタシも着けてみたんだけど、何故かしっくりこなくて」
私はそう言ったアルフィナの胸を見た。
もし、私のブラジャーの複製を着けたのなら、絶対に合うはずがない。
「ブ、ブラジャーもね、スニーカーと同じようにサイズがあるの。しかも、スニーカーより複雑で、それこそ多種多様な……」
アルフィナはその一言で全てを察したのか、私の胸を凝視した。
「まっ、まだアタシは18歳! いっ、今でも少しずつ成長してるんだからっ!」
アルフィナはそう言うと、前を行く男子集団の元へズンズンと歩いていった。
私たちの後ろを、二台の馬車がついてきている。馬を操る御者はおろか、御者台と呼ばれる運転席さえもない。馬車に関しての知識がない私は、その光景が不思議で仕方なかった。
「ハハハ、何言ってんだリリア。よく見てみろ、あの馬はアーシェルが作ったマナトゥムだ。——っていうか、俺じゃなくて先にアーシェルに聞いてやるべきだったな。本物の馬と間違えてただなんて、大喜びしたと思うぞ」
ジルハートは大笑いしながらそう言った。
そうか……アーシェルはこんなマナトゥムも作れるのか……
きっと、滅びたと言われている前世界のエルデリア人も、最初はこのような形でマナトゥムを使っていたのだろう。
「ほんとアンタって、頭が良いのか悪いのか分かんない子ね。ただの格闘バカかと思ったら、急に魔法のスペシャリストみたいになってるし。——ところでさ、ジルハート。リリアと二人で、女子同士の話をさせてもらっていいかな?」
私たちの話を聞いていたのか、アルフィナが振り返ってそう言った。
「お、おう、そうか。分かった」
ジルハートは前を行く、アーシェルとエイルの元へと駆けていく。
「——ふう。やっと二人きりになれた。アンタと、緊急で話したいことがあったのよね」
わ、私と二人きりで話したいこと……? しかも緊急……?
***
「ス、スニーカーを売りたい……?」
「そう。アンタが貸してくれたスニーカーの複製をね。お父様もスニーカーは大層気に入って、自分のサイズを作って既に履いてるくらいなの。あのクッション性……確かに、クセになるもんね。もちろん、アタシだって既に履いてるわよ」
そう言ってアルフィナは、クイッと足裏を見せた。アルフィナの靴は見た目こそ革靴だったが、靴底はスニーカーのソールだった。
「で、どうしてそれを私に聞くの……?」
「どうして聞くのって、アンタさあ……オリジナルを持ってたのはアンタでしょ? バルクレア魔鉱交易商会は、無断で複製したものを売るほど落ちぶれちゃいないの。販売するって決まったら、アンタにもお金は入るようにするし、権利だって独占したりはしない。——だから、もう一度聞くよ? 売っても構わない?」
「も、もちろん、大丈夫……」
「分かった。じゃ、あとはお父様と変態魔法使いで契約を結んで貰うわ」
そう言うとアルフィナは、オモチャにも見えるピストルのようなものを取り出した。
「あとで、契約してなかったなんて言わないでよ!」
アルフィナはそう言って、天に向けそのピストルを発砲した。ヒュルヒュルと上がっていたその弾は、丸く大きな煙の輪を上空で作り上げた。
「な、何なのあれ……?」
「お父様に向けた、アンタと契約完了したっていう狼煙。ああ見えて30分は消えないのよ、あの煙」
アルフィナは得意げに鼻を鳴らしてそう言った。
***
「——ところでさ。もう一つ、聞きたいことがあるんだけど」
契約の話が済んで10分も経った頃。アルフィナが、よそよそしくそう言った。アルフィナが質問の前に断りを入れるなんて珍しい。私は「何?」と続きを促した。
「ブ……ブラジャーってやつなんだけどさ……あれって、胸に着けるやつなんだよね……?」
アルフィナはそう言いながら、胸の前でブラのシルエットを指で形どっている。
「そ、そうだよ。——あれも売りたいって思ってるの?」
「い、いや、そうじゃなくて。あれ、アタシも着けてみたんだけど、何故かしっくりこなくて」
私はそう言ったアルフィナの胸を見た。
もし、私のブラジャーの複製を着けたのなら、絶対に合うはずがない。
「ブ、ブラジャーもね、スニーカーと同じようにサイズがあるの。しかも、スニーカーより複雑で、それこそ多種多様な……」
アルフィナはその一言で全てを察したのか、私の胸を凝視した。
「まっ、まだアタシは18歳! いっ、今でも少しずつ成長してるんだからっ!」
アルフィナはそう言うと、前を行く男子集団の元へズンズンと歩いていった。
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