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第三章:それぞれのバトル
⚜️ 34:自我も持てないガラクタ
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私がエルデリアに降り立って、ちょうど一ヶ月。こちらに来た日が誕生日だったこともあり、時の節目がわかりやすい。
新たにモエを仲間に加えた私たちは、北へ北へと進んでいる。長らく平和が続いているエルデリアに感謝しているのか、どの村を訪れても盛大な歓迎を受けた。出立前にアーシェルが言っていた、地方の不穏な動きというものは本当にあるのだろうか。
「昼食の時間だが、次の村フィオリまであと少しだ。しばらく、辛抱してほしい!」
アーシェルが後ろを振り向き、大声で言った。アルフィナが、「はあい」と弱々しく返事をする。小柄でスリムなアルフィナだが、こう見えて大食漢なのだ。
「ああ……早くモエちゃんの料理食べたいなあ……」
「モウ少シノ 辛抱デスヨ アルフィナサン」
今日のモエは濃紺のローブを着ている。最初は服を貸し渋っていたアルフィナだったが、モエの料理を食べてからというもの、積極的に貸してくれるようになった。
「今日の服も似合ってるわよ、モエちゃん。うん。いい、いい」
アルフィナはそう言って、少し曲がっていたモエの襟を直しだした。誰のことも呼び捨てるのに、モエだけには“ちゃん”を付けるアルフィナだった。
***
フィオリの村に入ってすぐ、アーシェルが右手で私たちを制した。
「と……止まれ! なにかおかしくないか、この村……?」
「ええ、確かに……人の気配が全くありませんね……あと、あそこ。屋根が大破しています」
エイルが指さした先には、屋根がなく、真っ黒に焼け焦げた家があった。
「緊急事態だ、馬車から出ろシークス。キミたちも油断するな。各自、周囲を警戒、死角をつくるんじゃないぞ」
馬車の荷台から、シークスというマナトゥムが降りてきた。アーシェルが作った、戦闘用の人型マナトゥムだ。防御性能を高めるためか、騎士の鎧を纏っている。
「モ、モエ、そんな所に立つと前に進めないよ」
モエは私を守るつもりなのか、私の真ん前に突っ立った。
「イエ、コレハ非常事態デス。私ガ リリア様ヲ オ守リイタシマス」
「リリア! モエは邪魔だ! 馬車に退避させておいてくれ!」
「——ってことなの、モエ。少しの間、馬車でジッとしていてくれない?」
「イイエ、私ノ視力ハ人間デ言ウトコロノ15ヲ超エマス。斥候トシテ オ役ニ立テルハズデス」
モエが振り返ってそう言った。モエが私の言葉を聞き入れないのは初めてのことだ。
「分かった! じゃ、モエも斥候として付いてこい!」
私たちは馬車をその場に置き、村の中心部へと進んでいった。
***
皆が無言で一歩一歩進んでゆく。隣にいるアルフィナの呼吸が速い。私と同じく、かなりの緊張状態にあるのだろう。
「皆様! 右前方、屋根ノ上!」
モエが声を上げた。全員の視線が一斉にそちらへと向かう。
「あ、あれもマナトゥムなのか……?」
そこには、鍛え抜かれたような身体を持ったマナトゥムがいた。ひと目でマナトゥムだと分かったのは、単眼のガラス玉のような青い目を持っていたからだ。
「まだ生きている奴がいたのか。——ん? そのガラクタと骨董品のマナトゥムは何だ? まさかとは思うが、護衛なのか?」
そのマナトゥムはモエと違い、人間と変わらない流暢さで言葉を発した。表情は無いくせに、首の角度のせいだろうか。明らかに挑発しているのが分かる。
「ガ……ガラクタとはシークスのことか……ぼ、僕のマナトゥムに向かって、よくも……」
「落ち着け、アーシェル。とりあえず奴の話を聞こう。敵で間違いないとは思うが、少しでも情報を得たほうがいい」
「そ、そうだな……ジルハート。——おい! 何故、この村には誰もいない! そして、お前は何者だ!」
アーシェルが言うと、そのマナトゥムはスタッと屋根から降りてきた。動きも軽やかで無駄がない。私の心臓の鼓動が速さを増していく。
「1つ目の回答は、俺が殺したからだ。2つ目の回答は、俺はマナトゥムによって作られたマナトゥムだ。人を殺すためだけに存在している」
「マ、マナトゥムによって作られただと……? それは、どういうことだ!?」
「ん? 頭が悪いのか? 今言った言葉の通りだ。マナトゥムが、マナトゥムの為に作ったマナトゥムだよ」
「お、お前のような奴は、何体もいるのか……?」
「いるにはいるが、殆どが壊れているな。——質問はそれくらいでいいか?」
「さ、最後にもう一つ聞かせてくれ。どうして、お前たちは復活した……?」
「それに関しては、俺は知らん。——じゃ、死ね」
そのマナトゥムは一瞬屈んだかと思うと、一直線にアーシェルへと飛びかかってきた。
ガキンッ!!
金属同士がぶつかるような、激しい音が鳴る。アーシェルの前に立ちふさがったシークスと、正面から激突したのだ。
「チッ、自我も持てないガラクタが!!」
マナトゥムは右手で横殴りにすると、シークスの頭部が千切れ飛んだ。
新たにモエを仲間に加えた私たちは、北へ北へと進んでいる。長らく平和が続いているエルデリアに感謝しているのか、どの村を訪れても盛大な歓迎を受けた。出立前にアーシェルが言っていた、地方の不穏な動きというものは本当にあるのだろうか。
「昼食の時間だが、次の村フィオリまであと少しだ。しばらく、辛抱してほしい!」
アーシェルが後ろを振り向き、大声で言った。アルフィナが、「はあい」と弱々しく返事をする。小柄でスリムなアルフィナだが、こう見えて大食漢なのだ。
「ああ……早くモエちゃんの料理食べたいなあ……」
「モウ少シノ 辛抱デスヨ アルフィナサン」
今日のモエは濃紺のローブを着ている。最初は服を貸し渋っていたアルフィナだったが、モエの料理を食べてからというもの、積極的に貸してくれるようになった。
「今日の服も似合ってるわよ、モエちゃん。うん。いい、いい」
アルフィナはそう言って、少し曲がっていたモエの襟を直しだした。誰のことも呼び捨てるのに、モエだけには“ちゃん”を付けるアルフィナだった。
***
フィオリの村に入ってすぐ、アーシェルが右手で私たちを制した。
「と……止まれ! なにかおかしくないか、この村……?」
「ええ、確かに……人の気配が全くありませんね……あと、あそこ。屋根が大破しています」
エイルが指さした先には、屋根がなく、真っ黒に焼け焦げた家があった。
「緊急事態だ、馬車から出ろシークス。キミたちも油断するな。各自、周囲を警戒、死角をつくるんじゃないぞ」
馬車の荷台から、シークスというマナトゥムが降りてきた。アーシェルが作った、戦闘用の人型マナトゥムだ。防御性能を高めるためか、騎士の鎧を纏っている。
「モ、モエ、そんな所に立つと前に進めないよ」
モエは私を守るつもりなのか、私の真ん前に突っ立った。
「イエ、コレハ非常事態デス。私ガ リリア様ヲ オ守リイタシマス」
「リリア! モエは邪魔だ! 馬車に退避させておいてくれ!」
「——ってことなの、モエ。少しの間、馬車でジッとしていてくれない?」
「イイエ、私ノ視力ハ人間デ言ウトコロノ15ヲ超エマス。斥候トシテ オ役ニ立テルハズデス」
モエが振り返ってそう言った。モエが私の言葉を聞き入れないのは初めてのことだ。
「分かった! じゃ、モエも斥候として付いてこい!」
私たちは馬車をその場に置き、村の中心部へと進んでいった。
***
皆が無言で一歩一歩進んでゆく。隣にいるアルフィナの呼吸が速い。私と同じく、かなりの緊張状態にあるのだろう。
「皆様! 右前方、屋根ノ上!」
モエが声を上げた。全員の視線が一斉にそちらへと向かう。
「あ、あれもマナトゥムなのか……?」
そこには、鍛え抜かれたような身体を持ったマナトゥムがいた。ひと目でマナトゥムだと分かったのは、単眼のガラス玉のような青い目を持っていたからだ。
「まだ生きている奴がいたのか。——ん? そのガラクタと骨董品のマナトゥムは何だ? まさかとは思うが、護衛なのか?」
そのマナトゥムはモエと違い、人間と変わらない流暢さで言葉を発した。表情は無いくせに、首の角度のせいだろうか。明らかに挑発しているのが分かる。
「ガ……ガラクタとはシークスのことか……ぼ、僕のマナトゥムに向かって、よくも……」
「落ち着け、アーシェル。とりあえず奴の話を聞こう。敵で間違いないとは思うが、少しでも情報を得たほうがいい」
「そ、そうだな……ジルハート。——おい! 何故、この村には誰もいない! そして、お前は何者だ!」
アーシェルが言うと、そのマナトゥムはスタッと屋根から降りてきた。動きも軽やかで無駄がない。私の心臓の鼓動が速さを増していく。
「1つ目の回答は、俺が殺したからだ。2つ目の回答は、俺はマナトゥムによって作られたマナトゥムだ。人を殺すためだけに存在している」
「マ、マナトゥムによって作られただと……? それは、どういうことだ!?」
「ん? 頭が悪いのか? 今言った言葉の通りだ。マナトゥムが、マナトゥムの為に作ったマナトゥムだよ」
「お、お前のような奴は、何体もいるのか……?」
「いるにはいるが、殆どが壊れているな。——質問はそれくらいでいいか?」
「さ、最後にもう一つ聞かせてくれ。どうして、お前たちは復活した……?」
「それに関しては、俺は知らん。——じゃ、死ね」
そのマナトゥムは一瞬屈んだかと思うと、一直線にアーシェルへと飛びかかってきた。
ガキンッ!!
金属同士がぶつかるような、激しい音が鳴る。アーシェルの前に立ちふさがったシークスと、正面から激突したのだ。
「チッ、自我も持てないガラクタが!!」
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