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第三章:それぞれのバトル
⚜️ 35:破邪旋風の儀
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「こっ、こいつ!!」
ジルハートはマナトゥムに対し、強烈な衝撃波を放った。マナトゥムは両腕をクロスして防御したが、その姿勢のまま向かいの壁まで吹き飛ばされた。
「す、すまない、アーシェル! シークスがいなかったら危ないところだった」
「反省は後だ、ジルハート! ——それより、どうだ? やったのか……!?」
崩れたレンガの壁から、砂埃が立つ——
誰もが、起き上がってくるなと願ったことだろう。だが、そんな期待も虚しく、壁の中からガラガラと音を立て、マナトゥムは立ち上がった。
「驚いたな……こんな魔法を使える奴がいたとは。どうりで、俺に対して大口を叩くわけだ……」
マナトゥムはそう言って、自身の右腕をプラプラとさせた。どうやらジルハートの衝撃波で、右腕が破壊されたようだ。
「このくらいの破損、仲間が見つかればすぐに直せる。運が良かったな、お前たち。今回は見逃してやるが、次に会った時は——」
「その口を閉じろ、からくり人形。誰がお前を逃がすと言った」
エ、エイルッ!?
私たちは一斉にエイルに視線を向けた。そんなエイルの言葉遣い、一度だって聞いたことがない。
「——みなさん、伏せて!!」
エイルはそう叫ぶと、低い姿勢で右手を天に向けた。そして、その手を地面に叩きつけるように振り抜き、咆哮を上げた。
「破邪旋風の儀!!」
次の瞬間、マナトゥムは周りのレンガと共に、凄まじい突風で空中に放り上げられた。その突風はやがて竜巻となり、取り込んだマナトゥムを激しく回転させてゆく。
「ハァッ!!」
右手を竜巻に向けたエイルが再び咆哮を上げると、竜巻の中のマナトゥムは一瞬でバラバラになってしまった。
エイルによる風魔法の余波か、私たちの周りを風が吹き抜けていく。そしてその風が止むと、レンガとバラバラになったマナトゥムがそこかしこに落ちてきた。
「エイル……あんな魔法も使えたんだ……」
「ええ……白祈院の中では奥義扱いなので、そうそう見せるものじゃありませんが……」
エイルの呼吸が少し荒い。破邪旋風という魔法も、そこそこの体力を消耗するようだ。風が止み、皆が立ち上がる中、アルフィナはなかなか立とうとしなかった。
「どうしたの……? アルフィナ」
「なっ……なんでもないわよ……」
そう言ったアルフィナの身体が激しく震えている。
「すみません、風を強く起こしすぎました。これを纏っておいてください、少しは寒さも凌げると思います」
そう言ってエイルは、アルフィナの肩にフードの付いたローブをかけた。
向こう側では、アーシェルたちがマナトゥムの破片を拾い集めている。一体、何に使うのだろうか。
***
馬車に戻り、遅い昼食を取る。こんなに静かな昼食は、継承の巡礼に出てからは初めてのことだ。
だが、それは無理もないことだろう。
村の人々は殺され、アーシェルが作ったシークスも破壊された。そしてなにより、次は自分たちが殺されるかもしれない。今までボヤケていた恐怖が、現実として迫ってきたのだから。
カチャカチャとナイフとフォークの音だけが響く中、アーシェルが口を開いた。
「こんな雰囲気になるのは仕方のないことだ。無理に明るく振る舞う必要もない。ただ、僕が今からやることだけ共有しておきたいと思う。シークスの修理と、エイルが破壊したマナトゥムの分析だ。もしかしたら、シークスは今より強くなるかもしれん。期待していて欲しい」
「——偉いな、アーシェルは。もう、次のことまで考えてるんだ……アタシなんて、今日のことさえ何も出来なかったのに……」
それを聞いたアーシェルは、フォークを置いてアルフィナに身体を向けた。
「どうした、アルフィナ……? 今日はエイルが素早く動いてくれたから、キミは何も出来なかっただけだ。実際、リリアだって動けなかった」
私はアーシェルの言葉に頷いた。
「そ、そういう話じゃない……アタシ……怖くて怖くて仕方なかったの……途中から足が震えだして、立ってるのがやっとだった。アイツが『今回は見逃してやる』って言った時、正直ホッとしたの。目の前からいなくなってくれるって、この恐怖から解放してくれるんだって。なのに、みんなは前を見て、ちゃんと魔法も放って……凄いなって……アタシは何のために、ここにいるんだろうって……」
アルフィナはそう言うと、ポタポタとテーブルに涙を落とした。
「そんなの当然だ、アルフィナ……お前も見てただろう、最初に攻撃された時、俺が動けなかったのを。正直、シークスがいなかったらアーシェルはどうなっていたか……俺も変わんないよ、お前と」
「ジルハートの言うとおりだ。今日の僕だって、シークスにジルハート、そしてエイルと助けてもらってばかりじゃないか。——気負わなくていい、アルフィナ。動けない者がいたときには、代わりの誰かが動けばいいんだ。僕たちには、助け合える仲間がいるじゃないか」
声を上げて泣き出したアルフィナに、そっとモエはハンカチを手渡した。
ジルハートはマナトゥムに対し、強烈な衝撃波を放った。マナトゥムは両腕をクロスして防御したが、その姿勢のまま向かいの壁まで吹き飛ばされた。
「す、すまない、アーシェル! シークスがいなかったら危ないところだった」
「反省は後だ、ジルハート! ——それより、どうだ? やったのか……!?」
崩れたレンガの壁から、砂埃が立つ——
誰もが、起き上がってくるなと願ったことだろう。だが、そんな期待も虚しく、壁の中からガラガラと音を立て、マナトゥムは立ち上がった。
「驚いたな……こんな魔法を使える奴がいたとは。どうりで、俺に対して大口を叩くわけだ……」
マナトゥムはそう言って、自身の右腕をプラプラとさせた。どうやらジルハートの衝撃波で、右腕が破壊されたようだ。
「このくらいの破損、仲間が見つかればすぐに直せる。運が良かったな、お前たち。今回は見逃してやるが、次に会った時は——」
「その口を閉じろ、からくり人形。誰がお前を逃がすと言った」
エ、エイルッ!?
私たちは一斉にエイルに視線を向けた。そんなエイルの言葉遣い、一度だって聞いたことがない。
「——みなさん、伏せて!!」
エイルはそう叫ぶと、低い姿勢で右手を天に向けた。そして、その手を地面に叩きつけるように振り抜き、咆哮を上げた。
「破邪旋風の儀!!」
次の瞬間、マナトゥムは周りのレンガと共に、凄まじい突風で空中に放り上げられた。その突風はやがて竜巻となり、取り込んだマナトゥムを激しく回転させてゆく。
「ハァッ!!」
右手を竜巻に向けたエイルが再び咆哮を上げると、竜巻の中のマナトゥムは一瞬でバラバラになってしまった。
エイルによる風魔法の余波か、私たちの周りを風が吹き抜けていく。そしてその風が止むと、レンガとバラバラになったマナトゥムがそこかしこに落ちてきた。
「エイル……あんな魔法も使えたんだ……」
「ええ……白祈院の中では奥義扱いなので、そうそう見せるものじゃありませんが……」
エイルの呼吸が少し荒い。破邪旋風という魔法も、そこそこの体力を消耗するようだ。風が止み、皆が立ち上がる中、アルフィナはなかなか立とうとしなかった。
「どうしたの……? アルフィナ」
「なっ……なんでもないわよ……」
そう言ったアルフィナの身体が激しく震えている。
「すみません、風を強く起こしすぎました。これを纏っておいてください、少しは寒さも凌げると思います」
そう言ってエイルは、アルフィナの肩にフードの付いたローブをかけた。
向こう側では、アーシェルたちがマナトゥムの破片を拾い集めている。一体、何に使うのだろうか。
***
馬車に戻り、遅い昼食を取る。こんなに静かな昼食は、継承の巡礼に出てからは初めてのことだ。
だが、それは無理もないことだろう。
村の人々は殺され、アーシェルが作ったシークスも破壊された。そしてなにより、次は自分たちが殺されるかもしれない。今までボヤケていた恐怖が、現実として迫ってきたのだから。
カチャカチャとナイフとフォークの音だけが響く中、アーシェルが口を開いた。
「こんな雰囲気になるのは仕方のないことだ。無理に明るく振る舞う必要もない。ただ、僕が今からやることだけ共有しておきたいと思う。シークスの修理と、エイルが破壊したマナトゥムの分析だ。もしかしたら、シークスは今より強くなるかもしれん。期待していて欲しい」
「——偉いな、アーシェルは。もう、次のことまで考えてるんだ……アタシなんて、今日のことさえ何も出来なかったのに……」
それを聞いたアーシェルは、フォークを置いてアルフィナに身体を向けた。
「どうした、アルフィナ……? 今日はエイルが素早く動いてくれたから、キミは何も出来なかっただけだ。実際、リリアだって動けなかった」
私はアーシェルの言葉に頷いた。
「そ、そういう話じゃない……アタシ……怖くて怖くて仕方なかったの……途中から足が震えだして、立ってるのがやっとだった。アイツが『今回は見逃してやる』って言った時、正直ホッとしたの。目の前からいなくなってくれるって、この恐怖から解放してくれるんだって。なのに、みんなは前を見て、ちゃんと魔法も放って……凄いなって……アタシは何のために、ここにいるんだろうって……」
アルフィナはそう言うと、ポタポタとテーブルに涙を落とした。
「そんなの当然だ、アルフィナ……お前も見てただろう、最初に攻撃された時、俺が動けなかったのを。正直、シークスがいなかったらアーシェルはどうなっていたか……俺も変わんないよ、お前と」
「ジルハートの言うとおりだ。今日の僕だって、シークスにジルハート、そしてエイルと助けてもらってばかりじゃないか。——気負わなくていい、アルフィナ。動けない者がいたときには、代わりの誰かが動けばいいんだ。僕たちには、助け合える仲間がいるじゃないか」
声を上げて泣き出したアルフィナに、そっとモエはハンカチを手渡した。
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