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第三章:それぞれのバトル
⚜️ 36:白い砂
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「リリア、ここもだ……」
「ひっ、ひどい……」
私は思わず目を背けた。
そこには、男性が女性をかばうような形の死体が残されていた。死体といっても、頭髪から肌までがすべて真っ白だ。その上、身体の一部は崩れかけている。私たちは静かにドアを閉じ、その家を出た。
私とジルハートのペア、そして、アルフィナとエイルのペアで、フィオリ村の家屋を一軒一軒まわっている。まだどこかで、生き残っている人がいるかもしれないからだ。
「道端にチラホラあった、白い砂の塊はここの住人だったんだな……時々、服が落ちていたのは、彼らが着ていたものだったのか……一度馬車に戻って、アーシェルに報告——」
「ジルハート見て。向かいの家の2階の窓。さっき、誰かが顔を出した」
私はジルハートの話を遮って、その窓を指さした。
「ん……? 誰もいないようだが」
「——そのまま見てて、また顔を出すかもしれない」
そう言ってから30秒ほど経った頃だろうか。私の予想通り、誰かが顔を覗かせると、またすぐに引っ込めてしまった。
「子どもだったな。行ってみよう、リリア」
「おーい! 俺たちは君の味方だ! 出てきてくれないか!!」
家に乗り込むと恐怖感を与えるだろうと、ジルハートは玄関の前で大声を出した。しばらく待つと、先程の子どもがまた顔を見せる。どうやら、男の子のようだ。
「安心してくれ! 俺たちも君と同じ、人間だ! ここまで降りてきてくれないか!!」
その子どもは再び顔を引っ込めると、しばらくして玄関を飛び出してきた。そしてジルハートの胸に飛び込むと、声を上げて泣き出した。
ジルハートは彼が落ち着くまで待っているのか、屈んで彼を抱きしめ続けている。
「落ち着いたか? 喉が乾いたとか、お腹が減ったとかないか?」
「ど、どっちも……」
「そうか、分かった。じゃ、俺たちの馬車に行こう」
ジルハートは彼の手をとり、私たちの馬車へと向かう。
「俺はジルハート。そして、彼女はリリア。君の名前は?」
「ルオル……今年で6歳」
「6歳か。俺は22歳だ、これからよろしくな」
ルオルは顔を上げ、「うん」と返事をした。
***
「そ……そうか、ずっと一人で隠れていたのか……怖かっただろう、寂しかっただろう、ルオル……」
夢中で食事をとるルオルの背をさすり、目を真っ赤にしたアーシェルが言う。同じく戻ってきていたアルフィナも、ハンカチを目に当てていた。
「押入れの隙間から見てたんだ。僕のおじいちゃんが殴られるところを」
「——ルオル、大丈夫か? 辛いなら無理して話さなくて大丈夫だぞ」
ジルハートの言葉に、ルオルは首を横に振った。
「そうか……ルオルは強いな。で、殴ったのはどんな奴だった? 青い目がひとつの奴か?」
「うん、そう。そして、殴られたおじいちゃんは、すぐに動かなくなっちゃった。そして、おじいちゃんに手を当てたと思ったら、砂の塊みたいになったんだ」
私たちは顔を見合わせた。やはりここの村人たちは、あのマナトゥムにやられたようだ。
「私たちが訪れた家々でも、白い砂が残されていました。ルオルくんの前で言うのも酷ですが、形が残っていたものも結構ありました」
うーん、とアーシェルが唸る。なにか思い当たることがあるのだろうか。
「シークスの修理と並行して、あのマナトゥムも色々と調べている。どうやら、アイツのコアは手の平にあるようなんだ。手を当てたということは、多分……」
ルオルの前ということもあり、最後まで話さないのだろう。想像するに、手の平から人間のなにかを吸収したと言いたいのだろう。
「アタシ、もう一度探索に出る。ルオルみたいな子が、まだいるかもしれない」
「そうだな、アルフィナ。よし、俺たちも行こう。アーシェル、ルオルを頼む」
「当然だジルハート。僕とモエに任せておいてくれ」
私たちは再び、フィオリの住宅街へと入っていった。
「ひっ、ひどい……」
私は思わず目を背けた。
そこには、男性が女性をかばうような形の死体が残されていた。死体といっても、頭髪から肌までがすべて真っ白だ。その上、身体の一部は崩れかけている。私たちは静かにドアを閉じ、その家を出た。
私とジルハートのペア、そして、アルフィナとエイルのペアで、フィオリ村の家屋を一軒一軒まわっている。まだどこかで、生き残っている人がいるかもしれないからだ。
「道端にチラホラあった、白い砂の塊はここの住人だったんだな……時々、服が落ちていたのは、彼らが着ていたものだったのか……一度馬車に戻って、アーシェルに報告——」
「ジルハート見て。向かいの家の2階の窓。さっき、誰かが顔を出した」
私はジルハートの話を遮って、その窓を指さした。
「ん……? 誰もいないようだが」
「——そのまま見てて、また顔を出すかもしれない」
そう言ってから30秒ほど経った頃だろうか。私の予想通り、誰かが顔を覗かせると、またすぐに引っ込めてしまった。
「子どもだったな。行ってみよう、リリア」
「おーい! 俺たちは君の味方だ! 出てきてくれないか!!」
家に乗り込むと恐怖感を与えるだろうと、ジルハートは玄関の前で大声を出した。しばらく待つと、先程の子どもがまた顔を見せる。どうやら、男の子のようだ。
「安心してくれ! 俺たちも君と同じ、人間だ! ここまで降りてきてくれないか!!」
その子どもは再び顔を引っ込めると、しばらくして玄関を飛び出してきた。そしてジルハートの胸に飛び込むと、声を上げて泣き出した。
ジルハートは彼が落ち着くまで待っているのか、屈んで彼を抱きしめ続けている。
「落ち着いたか? 喉が乾いたとか、お腹が減ったとかないか?」
「ど、どっちも……」
「そうか、分かった。じゃ、俺たちの馬車に行こう」
ジルハートは彼の手をとり、私たちの馬車へと向かう。
「俺はジルハート。そして、彼女はリリア。君の名前は?」
「ルオル……今年で6歳」
「6歳か。俺は22歳だ、これからよろしくな」
ルオルは顔を上げ、「うん」と返事をした。
***
「そ……そうか、ずっと一人で隠れていたのか……怖かっただろう、寂しかっただろう、ルオル……」
夢中で食事をとるルオルの背をさすり、目を真っ赤にしたアーシェルが言う。同じく戻ってきていたアルフィナも、ハンカチを目に当てていた。
「押入れの隙間から見てたんだ。僕のおじいちゃんが殴られるところを」
「——ルオル、大丈夫か? 辛いなら無理して話さなくて大丈夫だぞ」
ジルハートの言葉に、ルオルは首を横に振った。
「そうか……ルオルは強いな。で、殴ったのはどんな奴だった? 青い目がひとつの奴か?」
「うん、そう。そして、殴られたおじいちゃんは、すぐに動かなくなっちゃった。そして、おじいちゃんに手を当てたと思ったら、砂の塊みたいになったんだ」
私たちは顔を見合わせた。やはりここの村人たちは、あのマナトゥムにやられたようだ。
「私たちが訪れた家々でも、白い砂が残されていました。ルオルくんの前で言うのも酷ですが、形が残っていたものも結構ありました」
うーん、とアーシェルが唸る。なにか思い当たることがあるのだろうか。
「シークスの修理と並行して、あのマナトゥムも色々と調べている。どうやら、アイツのコアは手の平にあるようなんだ。手を当てたということは、多分……」
ルオルの前ということもあり、最後まで話さないのだろう。想像するに、手の平から人間のなにかを吸収したと言いたいのだろう。
「アタシ、もう一度探索に出る。ルオルみたいな子が、まだいるかもしれない」
「そうだな、アルフィナ。よし、俺たちも行こう。アーシェル、ルオルを頼む」
「当然だジルハート。僕とモエに任せておいてくれ」
私たちは再び、フィオリの住宅街へと入っていった。
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