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第三章:それぞれのバトル
⚜️ 37:甘える番
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「おーーーい!! 誰かいないかーーー!!」
「助けに来ました!! もう、ひとつ目の奴はいません!! いれば、声を上げてください!!」
私たちは声を出しながら住宅街を進んでいる。ルオルが言うには、あのマナトゥムが現れたのは5日前。水も飲めない環境でいるとしたら、今日あたりがデッドラインになる。
そんなふうに声を上げながらも、全ての家のドアを開けて回っている。声も出せないほど、衰弱している人がいてもおかしくないからだ。
「誰か来て!! 人がいる!!」
アルフィナが一軒の家のドアを開けて叫んだ。急いで駆けつけると、一人の男性が、玄関近くで横たわっている。年齢は30を越えたあたりだろうか。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……なんとか。君たちの声を聞いて、転がるようにして二階から下りてきたよ。それで……他の村人たちはどうなっている?」
その言葉に、私たちはお互いの顔を見合わせた。ジルハートは自分の役目だと感じたのか、「残念ながら」と男性に伝えてくれた。
「エイル、俺たちで彼を馬車まで運ぼう。運び終えたら、アーシェルの元までアルフィナが馬車を先導してやってくれ」
ジルハートがそう言うと、その男性は必死になって身体を起こそうとした。
「ちょ、ちょっと待ってください。もしかして、そのアーシェルというのは、アーシェル皇子様のことでしょうか……?」
ジルハートは「しまった」という顔をした。きっと、怪我人に気を使わせたくなかったのだろう。
そして、面倒な役目を押し付けるつもりなのか、ジルハートはエイルの肩をポンと叩いた。エイルは嫌な顔ひとつせず、男性の前にかがみ込む。
「こんな状況です、今は身分のことは忘れてください。とりあえず食事を取って、元気になることが最優先です。——ところで、身体はどうですか。今、痛い所などありませんか?」
「あ、ああ……階段から下りてくる時に、ここを……」
彼は左袖をまくると、大きく腫れた前腕部があらわれた。
「これは酷い……完治には至りませんが、楽になるとは思います」
エイルはそう言うと、彼の左腕に手の平を向けた。エイルが放つ青白い光が、少しずつ腫れを引かせていく。
「やはり、あなたたちは継承の巡礼に選ばれた方たちだったのですね……そんなことも知らず、私はなんて軽々しい口のきき方を……」
「おじさん……おじさんは何をしてる人なの?」
「わ、私ですか……? 私は、陶芸家です。この村には熟練者が多いので、私なんてまだまだ駆け出しみたいなものですが。——それが、何か?」
「アタシたちの中に、皿を焼ける人なんていないから。だから、そんなへりくだっちゃダメだよ。お皿がなかったら、私たち困るもの」
「お。アルフィナも少しは大人になってきたようだな。たった二週間の巡礼で、かなり成長したんじゃないか?」
そう言ってジルハートは、アルフィナの頭をポンポンと叩いた。
「ちょっ、子どもあつかいしないでよ!! おじさんの手当が終わったんなら、早く馬車まで運びなさいよ!!」
ジルハートは「ハイハイ」と笑いながら、エイルと一緒に男性を担ぎ上げた。
***
「みんな頼むから、そのままで聞いてくれ。横になっている者も起き上がらなくていい」
ここはフィオリ村の集会所。ルオルと陶芸家の男性を皮切りに、合計6名の生存者が見つかった。ベッドで横になっている3人も症状は重くなく、しばらくで回復に向かう見通しだ。
「残念なお知らせだが、村の探索はすべて終了した。結果、生き残っていたのは、キミたちだけということになる。身内や親しい友人を亡くした者が殆どだろう……心から、亡くなった者たちに追悼の意を捧げたいと思う」
アーシェルはそう言うと、自身の心臓辺りに右の手の平を添えた。ジルハートたちもやっているところを見ると、これがエルデリアの追悼の形なのだろう。私もこの村の人たちを想い、胸に手を添えた。
「そして、急なことで申し訳ないのだが、明日にはここを出ようと思っている。次の村、ピエトラを訪れるためだ。——そこで、どうだろう。僕たちと一緒にピエトラに行くというのは。幸い、ピエトラまでそう遠くはなく、横になっている3人だけなら馬車で運ぶことも出来る。子どもも入れて6人では、この村は住みにくいだろう」
「ア、アーシェル様……私たちはそこまでしていただいても、何もお返しするものがございません。そんなお言葉に甘えることは……」
ベッドで横になっていた老婆が身を起こしてそう言った。アーシェルは大げさに肩をすくめて見せる。
「僕は、対価を求めるような人間じゃない。僕だけじゃなく、ここにいる仲間もそうだ。僕たちに困ることが起きて、助けを求めることがあれば、その時はキミたちが助けてくれればいい。困った時はお互い様ってやつさ。今は、キミたちが甘える番なんだよ」
アーシェルはそう言うと老婆の元へ行き、「寝てなきゃダメだ」とシーツをかけた。
「助けに来ました!! もう、ひとつ目の奴はいません!! いれば、声を上げてください!!」
私たちは声を出しながら住宅街を進んでいる。ルオルが言うには、あのマナトゥムが現れたのは5日前。水も飲めない環境でいるとしたら、今日あたりがデッドラインになる。
そんなふうに声を上げながらも、全ての家のドアを開けて回っている。声も出せないほど、衰弱している人がいてもおかしくないからだ。
「誰か来て!! 人がいる!!」
アルフィナが一軒の家のドアを開けて叫んだ。急いで駆けつけると、一人の男性が、玄関近くで横たわっている。年齢は30を越えたあたりだろうか。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……なんとか。君たちの声を聞いて、転がるようにして二階から下りてきたよ。それで……他の村人たちはどうなっている?」
その言葉に、私たちはお互いの顔を見合わせた。ジルハートは自分の役目だと感じたのか、「残念ながら」と男性に伝えてくれた。
「エイル、俺たちで彼を馬車まで運ぼう。運び終えたら、アーシェルの元までアルフィナが馬車を先導してやってくれ」
ジルハートがそう言うと、その男性は必死になって身体を起こそうとした。
「ちょ、ちょっと待ってください。もしかして、そのアーシェルというのは、アーシェル皇子様のことでしょうか……?」
ジルハートは「しまった」という顔をした。きっと、怪我人に気を使わせたくなかったのだろう。
そして、面倒な役目を押し付けるつもりなのか、ジルハートはエイルの肩をポンと叩いた。エイルは嫌な顔ひとつせず、男性の前にかがみ込む。
「こんな状況です、今は身分のことは忘れてください。とりあえず食事を取って、元気になることが最優先です。——ところで、身体はどうですか。今、痛い所などありませんか?」
「あ、ああ……階段から下りてくる時に、ここを……」
彼は左袖をまくると、大きく腫れた前腕部があらわれた。
「これは酷い……完治には至りませんが、楽になるとは思います」
エイルはそう言うと、彼の左腕に手の平を向けた。エイルが放つ青白い光が、少しずつ腫れを引かせていく。
「やはり、あなたたちは継承の巡礼に選ばれた方たちだったのですね……そんなことも知らず、私はなんて軽々しい口のきき方を……」
「おじさん……おじさんは何をしてる人なの?」
「わ、私ですか……? 私は、陶芸家です。この村には熟練者が多いので、私なんてまだまだ駆け出しみたいなものですが。——それが、何か?」
「アタシたちの中に、皿を焼ける人なんていないから。だから、そんなへりくだっちゃダメだよ。お皿がなかったら、私たち困るもの」
「お。アルフィナも少しは大人になってきたようだな。たった二週間の巡礼で、かなり成長したんじゃないか?」
そう言ってジルハートは、アルフィナの頭をポンポンと叩いた。
「ちょっ、子どもあつかいしないでよ!! おじさんの手当が終わったんなら、早く馬車まで運びなさいよ!!」
ジルハートは「ハイハイ」と笑いながら、エイルと一緒に男性を担ぎ上げた。
***
「みんな頼むから、そのままで聞いてくれ。横になっている者も起き上がらなくていい」
ここはフィオリ村の集会所。ルオルと陶芸家の男性を皮切りに、合計6名の生存者が見つかった。ベッドで横になっている3人も症状は重くなく、しばらくで回復に向かう見通しだ。
「残念なお知らせだが、村の探索はすべて終了した。結果、生き残っていたのは、キミたちだけということになる。身内や親しい友人を亡くした者が殆どだろう……心から、亡くなった者たちに追悼の意を捧げたいと思う」
アーシェルはそう言うと、自身の心臓辺りに右の手の平を添えた。ジルハートたちもやっているところを見ると、これがエルデリアの追悼の形なのだろう。私もこの村の人たちを想い、胸に手を添えた。
「そして、急なことで申し訳ないのだが、明日にはここを出ようと思っている。次の村、ピエトラを訪れるためだ。——そこで、どうだろう。僕たちと一緒にピエトラに行くというのは。幸い、ピエトラまでそう遠くはなく、横になっている3人だけなら馬車で運ぶことも出来る。子どもも入れて6人では、この村は住みにくいだろう」
「ア、アーシェル様……私たちはそこまでしていただいても、何もお返しするものがございません。そんなお言葉に甘えることは……」
ベッドで横になっていた老婆が身を起こしてそう言った。アーシェルは大げさに肩をすくめて見せる。
「僕は、対価を求めるような人間じゃない。僕だけじゃなく、ここにいる仲間もそうだ。僕たちに困ることが起きて、助けを求めることがあれば、その時はキミたちが助けてくれればいい。困った時はお互い様ってやつさ。今は、キミたちが甘える番なんだよ」
アーシェルはそう言うと老婆の元へ行き、「寝てなきゃダメだ」とシーツをかけた。
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