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第三章:それぞれのバトル
🌐 46:Yo!Tuber来たる!
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◤ 山寺との試合後、私は自分の力を疑うことをやめた。今の実力は努力の結晶、決してチートなんかではない。そして試合の翌日から、プロボクサーを目指す日々は始まっていた—— ◢
「おはようございます!」
「おはよう!」
山寺と試合をしてから、一週間。家が近所ということもあり、毎朝山寺と一緒に走るようになった。太陽はまだ、ビル群の向こう側に隠れている時間。スーッと通り抜けていく風が心地いい。
「梨里杏、確か今日だったよね? ジャンクさんが来てくれるの」
「ええ……私ホントは、乗り気じゃないんですけど……」
「ええっ、何言ってんのよ! 人気Yo!Tuberに取り上げてもらえるなんて、そうそうないよ? 出たくても出られない人の方が多いってのに」
「アハハ……まあ、それもそうですよね。——ペース走、入りますよ!」
私はスマートウォッチを確認し、速度を上げた。
今日は、四方ジムにジャンク小園というYo!Tuberがやってくる。その目的はなんと、私への取材ということだ。四方会長は、この手の依頼は断ると思っていたが、私の予想は外れたようだ。
後ろを振り返ると、山寺が必死でついてきている。持久力には自信がないという山寺だが、たった一週間でかなり食らいつくようになってきた。彼女はきっと、まだまだ強くなる——
***
「おはようございます!」
声を張り上げ、ジムの扉を開けた。
多くの人が顔見知りとなった今、皆が笑顔で返事をかえしてくれる。誰もが何かしらの目標を持って、このジムに来ている。その笑顔は、一様にキラキラと輝いていた。
「梨里杏さん、おはようございます! もう、いらしてますよ!」
私を手招きする姫香の隣には、昼にも関わらずサングラスをかけた男性が立っていた。彼は私を認識すると、笑顔で頭を下げる。
「初めまして、梨里杏さん! 私、ボクシング系Yo!Tuberやってます、ジャンク小園です! 今日は宜しくお願いします!」
「桜井梨里杏です……こちらこそ、お願いします。——と、とりあえず着替えてきますね」
私が更衣室へと向かうと、姫香がついてきた。
「姫香、今日学校は?」
「中間試験中だから、終わるの早いんですよ。——って言うか、ジャンクさんが来てくれるのに、家でジッとなんてしてられませんよ」
ジャンク小園——
20代前半で日本タイトルを総なめにし、その勢いのまま世界戦へ挑戦。だが、大方の予想を覆し、大きな判定差をつけられ敗退してしまう。その後小園は、周囲に惜しまれる中、あっさりと引退してしまったらしい。ちなみに、ガラクタという意味もある『ジャンク』と付けたのは、Yo!Tuberになってからだそうだ。
「にしても……ファンデも塗ってないのに肌ツルツルですね、梨里杏さん。ホント、羨ましい」
「よく見てんのね、姫香ってば……それより、会長は? まだ来てないの?」
「多分だけど……会長、ジャンクさんのこと好きじゃないんですよ。きっと私が助言しなかったら、今回の件も無かったかもですよ。——ねえねえ、お手柄でしょ? 私!」
ああ、姫香が四方をけしかけたのか……ああ見えて、四方は姫香に甘いからな……
***
更衣室を出ると、ジャンクの隣に四方が立っていた。時計を見ると、約束していた取材時間ピッタリ。姫香が言うように、四方は本当にジャンクのことを好きじゃないのかもしれない。
「おつかれ、梨里杏。彼が小園武雄だ」
「四方さん、挨拶はしましたって! あ……あと、今はジャンク小園なんで。撮影中は、ジャンクでお願いしますね」
ジャンクは頭を掻きながら、ヘコヘコと四方に頭を下げた。
「皆さんこんにちは! ジャンク小園の『拳闘解体新書』始まりました!! 今回お邪魔しているのは、元・日本フェザー級チャンピオンの四方明さんが運営する、四方ジムにお邪魔しております! こんにちは、四方会長!!」
「ああ、こんにちは。今日はよろしく」
「そしてそして! 今日のメインはその隣にいらっしゃる、桜井梨里杏さん! 先月辺りにSNSで大バズリした彼女、知っていらっしゃる方も多いことでしょう! こんにちは、梨里杏さん!!」
「こ……こんにちは、桜井梨里杏です……」
「いやいやいやいや……最近ルッキズムに関して、うるさい世の中ではありますが……言っていいですか? いや、言わせてください!! もう、かわいい!! こんなにかわいいのに、強いってどういうことですか、梨里杏さん!!」
ガンガン詰めてくるジャンクに、「いえいえ」と顔の前で小さく手を降る私。見た目通りの、圧の強さだ。
「それにしても、ジャンク小園の拳闘解体新書。プロじゃないボクサーを取り上げるのは、今回が初めてなんですよ。しかも、学生タイトルも持ってないですよね、梨里杏さんは?」
「え、ええ……」
ま、まあ……エルデリアの闘神祭での優勝なら、何度かしているんだけど……
「と、今回の撮影は、チャンネル始まって以来の初めてづくしの構成となっております。そしてそして、なんと! 撮影の最後には、とびきりのサプライズ提案をさせて頂きたいと思っています!! それでは……ジャンク小園の拳闘解体新書、本編スタートッ!!」
と、とびきりのサプライズ提案……?
私と同じく、四方も怪訝な表情を隠そうとはしなかった。
「おはようございます!」
「おはよう!」
山寺と試合をしてから、一週間。家が近所ということもあり、毎朝山寺と一緒に走るようになった。太陽はまだ、ビル群の向こう側に隠れている時間。スーッと通り抜けていく風が心地いい。
「梨里杏、確か今日だったよね? ジャンクさんが来てくれるの」
「ええ……私ホントは、乗り気じゃないんですけど……」
「ええっ、何言ってんのよ! 人気Yo!Tuberに取り上げてもらえるなんて、そうそうないよ? 出たくても出られない人の方が多いってのに」
「アハハ……まあ、それもそうですよね。——ペース走、入りますよ!」
私はスマートウォッチを確認し、速度を上げた。
今日は、四方ジムにジャンク小園というYo!Tuberがやってくる。その目的はなんと、私への取材ということだ。四方会長は、この手の依頼は断ると思っていたが、私の予想は外れたようだ。
後ろを振り返ると、山寺が必死でついてきている。持久力には自信がないという山寺だが、たった一週間でかなり食らいつくようになってきた。彼女はきっと、まだまだ強くなる——
***
「おはようございます!」
声を張り上げ、ジムの扉を開けた。
多くの人が顔見知りとなった今、皆が笑顔で返事をかえしてくれる。誰もが何かしらの目標を持って、このジムに来ている。その笑顔は、一様にキラキラと輝いていた。
「梨里杏さん、おはようございます! もう、いらしてますよ!」
私を手招きする姫香の隣には、昼にも関わらずサングラスをかけた男性が立っていた。彼は私を認識すると、笑顔で頭を下げる。
「初めまして、梨里杏さん! 私、ボクシング系Yo!Tuberやってます、ジャンク小園です! 今日は宜しくお願いします!」
「桜井梨里杏です……こちらこそ、お願いします。——と、とりあえず着替えてきますね」
私が更衣室へと向かうと、姫香がついてきた。
「姫香、今日学校は?」
「中間試験中だから、終わるの早いんですよ。——って言うか、ジャンクさんが来てくれるのに、家でジッとなんてしてられませんよ」
ジャンク小園——
20代前半で日本タイトルを総なめにし、その勢いのまま世界戦へ挑戦。だが、大方の予想を覆し、大きな判定差をつけられ敗退してしまう。その後小園は、周囲に惜しまれる中、あっさりと引退してしまったらしい。ちなみに、ガラクタという意味もある『ジャンク』と付けたのは、Yo!Tuberになってからだそうだ。
「にしても……ファンデも塗ってないのに肌ツルツルですね、梨里杏さん。ホント、羨ましい」
「よく見てんのね、姫香ってば……それより、会長は? まだ来てないの?」
「多分だけど……会長、ジャンクさんのこと好きじゃないんですよ。きっと私が助言しなかったら、今回の件も無かったかもですよ。——ねえねえ、お手柄でしょ? 私!」
ああ、姫香が四方をけしかけたのか……ああ見えて、四方は姫香に甘いからな……
***
更衣室を出ると、ジャンクの隣に四方が立っていた。時計を見ると、約束していた取材時間ピッタリ。姫香が言うように、四方は本当にジャンクのことを好きじゃないのかもしれない。
「おつかれ、梨里杏。彼が小園武雄だ」
「四方さん、挨拶はしましたって! あ……あと、今はジャンク小園なんで。撮影中は、ジャンクでお願いしますね」
ジャンクは頭を掻きながら、ヘコヘコと四方に頭を下げた。
「皆さんこんにちは! ジャンク小園の『拳闘解体新書』始まりました!! 今回お邪魔しているのは、元・日本フェザー級チャンピオンの四方明さんが運営する、四方ジムにお邪魔しております! こんにちは、四方会長!!」
「ああ、こんにちは。今日はよろしく」
「そしてそして! 今日のメインはその隣にいらっしゃる、桜井梨里杏さん! 先月辺りにSNSで大バズリした彼女、知っていらっしゃる方も多いことでしょう! こんにちは、梨里杏さん!!」
「こ……こんにちは、桜井梨里杏です……」
「いやいやいやいや……最近ルッキズムに関して、うるさい世の中ではありますが……言っていいですか? いや、言わせてください!! もう、かわいい!! こんなにかわいいのに、強いってどういうことですか、梨里杏さん!!」
ガンガン詰めてくるジャンクに、「いえいえ」と顔の前で小さく手を降る私。見た目通りの、圧の強さだ。
「それにしても、ジャンク小園の拳闘解体新書。プロじゃないボクサーを取り上げるのは、今回が初めてなんですよ。しかも、学生タイトルも持ってないですよね、梨里杏さんは?」
「え、ええ……」
ま、まあ……エルデリアの闘神祭での優勝なら、何度かしているんだけど……
「と、今回の撮影は、チャンネル始まって以来の初めてづくしの構成となっております。そしてそして、なんと! 撮影の最後には、とびきりのサプライズ提案をさせて頂きたいと思っています!! それでは……ジャンク小園の拳闘解体新書、本編スタートッ!!」
と、とびきりのサプライズ提案……?
私と同じく、四方も怪訝な表情を隠そうとはしなかった。
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