死んじゃうなら、その命くれない?

星ノ律

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ep04:クラスメイト

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「皆さん、おはようございます。本当に突然なんだけど、今日からこのクラスで一緒に勉強することになった東雲悠真くんです。——じゃ、東雲くん挨拶してくれる?」

「は、はい。霞野かすみの市から越してきた東雲悠真です。今日からよろしくお願いします」

 そう言って一礼すると、教室内に大きな拍手が起きた。顔を上げると、藤崎彩奈が私に向かって手を振っている。

 肝心の桜庭眞白は……

 女子の中で唯一、私のことを見ていなかった。その視線は窓の外の校庭に注がれている。

「じゃ、東雲くん、一番後ろの空いてる席を使ってくれるかな。桜庭さん! 何かあったらフォローしてあげてね」

「分かりました!」

 大きな声で返事をした眞白に、教室がざわついた。そう、私は大きな声なんて出したことがなかったからだ。なかには、私の声を初めて聞いた生徒だっているかもしれない。ちなみに、眞白の隣の席になったのも、オジサンに言っておいたからだ。

「今日からよろしく」

 席に着いた私が言うと、眞白は笑顔で「こちらこそ」と返してきた。

 私は眞白の笑顔を見て息を呑んだ。それは、心の底から喜びを感じさせるような、眩しいほどの笑顔だったからだ。私でも、こんな笑顔を浮かべることが出来ただなんて……

 そして、私が眞白だった時とは違って、今日の眞白は前髪を上げている。容姿に自信が無かった私は、目に掛かるくらいに前髪を下ろしていた。大きなふちのメガネをかけているのも、その理由の一つだ。

 だが何故だろう、さっきの印象的な笑顔のせいだろうか。

 今日の眞白が幾分、可愛く見えるのは。


 眞白に落ち着きが無いのが気になっていたが、授業が始まってからもそれは変わらなかった。相変わらず、周りをキョロキョロと見回している。

 そ、そうか……

 ルーメア人の眞白にとって、今日が初めての高校生生活だ。いや、高校生生活どころか、地球で初めて生活する日なのかもしれない。見るもの全てが新鮮に見えているのだろう。

 出来ればすぐにでも、自分の正体を眞白に明かしたかった。昨日までの眞白とあまりにも違うと、眞白自身が不審に思われるからだ。だが、どのタイミングでそれを切り出そうか……そんなことを考えている間に、休憩時間のチャイムが鳴ってしまった。


***


 肝心の眞白は、休憩時間に入るとすぐに教室を出ていった。まだ見ていない場所の散策にでも行くのかもしれない。

「オス! 俺、瀬戸せと春人はると。で、こっちがいつも一緒にいる一ノ瀬いちのせじん。俺は帰宅部だけど、仁はテニス部の部長やってるんだ。これからよろしく!」

「な、なんだよ、勝手に俺の紹介まですんなよ……俺のことは仁って呼んでくれたらいいから」

 は、春人くんと仁くんが挨拶に来てくれた! 春人くんはチャラい感じに見えるけど、すごく優しい人だと思っている。私にも時々声をかけてくれていた、数少ない男子だ。

「よ、よろしく。お……俺のことも、悠真って呼んでくれたら大丈夫だから」

「えー、ホントに!? じゃ、私も悠真って呼んじゃっていい? 私のことは、彩奈で大丈夫だから!」

 いつの間にか、彩奈と明日香も近くにまで来ていた。私は「もちろん」と返事をしておいた。

「こんなこと、男に言ったことないけどさ……悠真ってマジイケメンだよなあ……その上、身長まであるし。羨ましーわ」

「ハハハ、春人も全然イケてる方だって。自信持ちなさいよ」

 彩奈はそう言って、春人の肩をポンポンと叩いた。

「ところで、悠真ってテニスやったことある? 経験者なんかだと最高なんだけど」

「いや、遊びでやったことあるけど、全然センス無かったよ。テレビで試合を見るのは嫌いじゃないんだけどね」

「そっか……俺んとこ、部員少なくて困ってんだよね……そうそう、とりあえずLINEだけ交換しとこっか」

 仁がスマホを取り出すと、春人や彩奈たちも「俺も」「私も」とスマホを取り出した。

「じゃ、私も!」

 いつの間にか教室に戻っていた眞白も、その輪に加わった。

「——うわっ! それ、いつのスマホなのよ。メーカーもどこのかわかんないし」

 眞白のスマホを見て、彩奈が笑った。

 お母さんが、リサイクルショップで買ってくれたスマホだ。私はこの古いスマホを見られるのが恥ずかしくて、学校で出したことがなかった。

「お前さあ……そういうこと言うなよ。俺だってつい最近だぞ、この最新型になったのは。——そうだ、眞白。ついでだから俺とも交換しとこうぜ」

 春人はそう言って、眞白に声をかけた。
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