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第8章 ノルキア帝国戦争
第78話 帝国軍敗走
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帝国軍は、主力の中央部隊が敗れて帝都へ敗走し、代わりに帝都を守っていた部隊が前面に出てきたようだね。夜間に空を飛び敵の戦力を見て来たけど、魔国軍よりも多いね。
「補給部隊も入れておよそ二万の兵力だね。鬼人族の兵士が多かったよ」
「すると、帝都の守備隊が全部来ている感じですな」
帝国軍の全体の兵力を考えると、皇帝を守る近衛兵だけを城に残し、他の兵力全てを出しているとネイトスが推察する。
帝国も総力戦ということだね。ここが絶対防衛線で後ろは帝都のみ。決戦というより守りを固め、これ以上侵攻させないという構えだ。
「ねえ、ねえ。他に派遣してた部隊と合流はできないの」
「お城に聞いたら、こちらに向かっているから合流はできそうだよ。でも全部合わせても敵軍より少ないね」
東西の軍も敵を打ち破っているけど、多少の損耗はあるようだしね。
帝都に進軍する事はできなくても、ここで敵軍と睨み合うには充分だ。双方とも森を挟んだ高台に布陣してるけど、敵軍に動く気配は全くない。
「エルフィは一旦お城に帰って、状況を報告してくれるかい」
「ええ、分かったわ」
これからは外交による解決になるかな。お城では既にエリーシアが妖精族に仲介を頼んでいるはずだ。妖精族はノルキア帝国と国交があるけど、戦争の解決となるとキノノサト国の大将軍が皇帝に直接話をしないと駄目だろうね。
キノノサト国も派遣した兵から報告を受けて、今の状況は分かっているはずだ。終戦のための口添えはしてくれるかな。
敵とは膠着状態になっているけど、お城との通信も確立できているし、ここでのんびりと吉報を待つことにしよう。
「賢者様。もしよろしければ皆と食事などいかがでしょうか」
一緒に駐屯している部隊長さんが、リビティナがいるテントに訪れ夕食のお誘いに来てくれた。折角だからとネイトスやフィフィロ達も一緒に兵士達が集まる野営の食堂テントに行く。
「我ら魔王軍に乾杯!!」
リビティナ達が席に着くと、すぐに宴会が始まった。
「君がフィフィロ君か。あの時の魔術はすごかったな。お陰で俺達も命を救われたよ」
「い、いえ。オレはルルーチアを守りたくて、無我夢中でしているだけで」
「ルルーチアさんも、砲撃部隊を指揮してくれてるそうだな。こんな小さいのによく頑張ってくれている」
「あ、あの、私はリビティナ様に言われた通りにしているだけですので……」
ルルーチアの砲撃は正確で素早い。そのやり方を部隊のみんなに教えて最前線を支援してくれている。その功績は大きく、部隊全体にルルーチアの名は広まっている。
魔族の技官と言う立場だけど、ルルーチアちゃんと呼ばれて、砲撃部隊の兵士から慕われているようだ。
ウィッチアのSS級魔術を防いだフィフィロに至っては英雄だと称されているようだし、この兄妹の事を知らない者はいないようだね。
「賢者様の指揮の元、あの帝国を圧倒する戦いができております。魔王様にも攻撃に参加いただき、我ら兵士一同感謝しております」
部隊の中にいても、賢者と魔王を使い分けて戦っているから、部隊長も同一人物とは思っていない。魔王と直接話をした者は兵士の中にいなくて、相談事があればネイトスか賢者のリビティナに話を入れに来る。
「魔王様も、みんなの働きには満足しているよ。魔国の兵士も、王国からの増援部隊もよくやっていると言ってたからね」
「それはありがたいですな」
リビティナになら気さくに話をしてくれる。ここは軍の駐屯地だけど、仲間とキャンプしているような気分だよ。今ここにいる兵士達は、明日非番でお酒を飲んでもいい事になっている。送られてくる物資も豊富で、気兼ねなく宴会を楽しんでいるね。
「たまには、こういうのもいいですな」
「そうだね。この国を守ってくれている皆にも休息は必要だしね。ネイトスもちゃんと休息してくれよ」
ここまでずっと戦いばかりだった。里での暮らしが一番だけど、それを守るための戦いに参加してくている皆には本当に感謝しているよ。
二日後、また違う部隊から食事のお誘いを受けた。
今度は外でバーベキュー大会だ。夜になると魔獣の脅威はあるけど、敵が攻めてくることはない。警戒任務以外の兵は気楽に構えている。
「賢者様。これは昼間に狩ってきた大猪の肉なんです。どうぞお召し上がりください」
「ネイトス首相。今日持ち込まれたばかりのワインもあります。どうですか」
みんな思いおもいに楽しんで、盛り上がっているようだね。
「そういや、フィフィロはもう酒が飲めるんだったよな」
「ええ、もう成人してますよ。でもお酒は飲んだことないですね」
「それじゃ、このワインを少し飲んでみるか」
ネイトスに勧められて、木製のカップに注がれた赤ワインを飲んでいるけど大丈夫かな。
「おっ、さすが英雄様だ。いい飲みっぷりだぞ」
こら、こら。お酒の席でそんなに煽っちゃダメなんだぞ。ほら、しばらくするとフィフィロの足がもつれて転んでしまったじゃないか。
「に、兄さま! 大丈夫ですか!!」
まだお酒に慣れていないんだから、無茶しちゃダメだよ。ルルーチアに介抱されて自分のテントに帰って行ったよ。明日は二日酔いかな。
「ネイトス、はしゃぎ過ぎだよ」
「いいじゃないですか、リビティナ様。昼間は敵さんとは睨み合ったまま全く動かないんですから」
どちらの部隊も、高台に陣取っていて相手の様子がよく見える。あちらさんは昼間も夜も軍を動かさず静かだね~。まあ、負けているし、夜に宴会なんてする気分でもないだろうけど。
そう思っていると、次の日の夜。あちらさんも宴会をしだした。こちらに対抗して負けていないぞとアピールしているのかもしれないね。
しばらくそんな膠着状態が続いた後、お城から連絡が入った。終戦条約を結ぶから戦闘はせずに停戦してほしいとのことだ。
「これでようやく戦争も終わるね」
「長引かずに済んで良かったですな」
「エリーシアが外交を頑張ってくれたお陰かな」
一応停戦とはいえ、まだ部隊を引き上げる訳にはいかない。停戦などいつ破られるか分からないからね。
「ここはネイトスに任せて、ボクは一旦お城に戻るよ」
そう言って、最前線を後にしてお城に急ぐ。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。(詳細地図のみ)
小説の参考になさってください。
「補給部隊も入れておよそ二万の兵力だね。鬼人族の兵士が多かったよ」
「すると、帝都の守備隊が全部来ている感じですな」
帝国軍の全体の兵力を考えると、皇帝を守る近衛兵だけを城に残し、他の兵力全てを出しているとネイトスが推察する。
帝国も総力戦ということだね。ここが絶対防衛線で後ろは帝都のみ。決戦というより守りを固め、これ以上侵攻させないという構えだ。
「ねえ、ねえ。他に派遣してた部隊と合流はできないの」
「お城に聞いたら、こちらに向かっているから合流はできそうだよ。でも全部合わせても敵軍より少ないね」
東西の軍も敵を打ち破っているけど、多少の損耗はあるようだしね。
帝都に進軍する事はできなくても、ここで敵軍と睨み合うには充分だ。双方とも森を挟んだ高台に布陣してるけど、敵軍に動く気配は全くない。
「エルフィは一旦お城に帰って、状況を報告してくれるかい」
「ええ、分かったわ」
これからは外交による解決になるかな。お城では既にエリーシアが妖精族に仲介を頼んでいるはずだ。妖精族はノルキア帝国と国交があるけど、戦争の解決となるとキノノサト国の大将軍が皇帝に直接話をしないと駄目だろうね。
キノノサト国も派遣した兵から報告を受けて、今の状況は分かっているはずだ。終戦のための口添えはしてくれるかな。
敵とは膠着状態になっているけど、お城との通信も確立できているし、ここでのんびりと吉報を待つことにしよう。
「賢者様。もしよろしければ皆と食事などいかがでしょうか」
一緒に駐屯している部隊長さんが、リビティナがいるテントに訪れ夕食のお誘いに来てくれた。折角だからとネイトスやフィフィロ達も一緒に兵士達が集まる野営の食堂テントに行く。
「我ら魔王軍に乾杯!!」
リビティナ達が席に着くと、すぐに宴会が始まった。
「君がフィフィロ君か。あの時の魔術はすごかったな。お陰で俺達も命を救われたよ」
「い、いえ。オレはルルーチアを守りたくて、無我夢中でしているだけで」
「ルルーチアさんも、砲撃部隊を指揮してくれてるそうだな。こんな小さいのによく頑張ってくれている」
「あ、あの、私はリビティナ様に言われた通りにしているだけですので……」
ルルーチアの砲撃は正確で素早い。そのやり方を部隊のみんなに教えて最前線を支援してくれている。その功績は大きく、部隊全体にルルーチアの名は広まっている。
魔族の技官と言う立場だけど、ルルーチアちゃんと呼ばれて、砲撃部隊の兵士から慕われているようだ。
ウィッチアのSS級魔術を防いだフィフィロに至っては英雄だと称されているようだし、この兄妹の事を知らない者はいないようだね。
「賢者様の指揮の元、あの帝国を圧倒する戦いができております。魔王様にも攻撃に参加いただき、我ら兵士一同感謝しております」
部隊の中にいても、賢者と魔王を使い分けて戦っているから、部隊長も同一人物とは思っていない。魔王と直接話をした者は兵士の中にいなくて、相談事があればネイトスか賢者のリビティナに話を入れに来る。
「魔王様も、みんなの働きには満足しているよ。魔国の兵士も、王国からの増援部隊もよくやっていると言ってたからね」
「それはありがたいですな」
リビティナになら気さくに話をしてくれる。ここは軍の駐屯地だけど、仲間とキャンプしているような気分だよ。今ここにいる兵士達は、明日非番でお酒を飲んでもいい事になっている。送られてくる物資も豊富で、気兼ねなく宴会を楽しんでいるね。
「たまには、こういうのもいいですな」
「そうだね。この国を守ってくれている皆にも休息は必要だしね。ネイトスもちゃんと休息してくれよ」
ここまでずっと戦いばかりだった。里での暮らしが一番だけど、それを守るための戦いに参加してくている皆には本当に感謝しているよ。
二日後、また違う部隊から食事のお誘いを受けた。
今度は外でバーベキュー大会だ。夜になると魔獣の脅威はあるけど、敵が攻めてくることはない。警戒任務以外の兵は気楽に構えている。
「賢者様。これは昼間に狩ってきた大猪の肉なんです。どうぞお召し上がりください」
「ネイトス首相。今日持ち込まれたばかりのワインもあります。どうですか」
みんな思いおもいに楽しんで、盛り上がっているようだね。
「そういや、フィフィロはもう酒が飲めるんだったよな」
「ええ、もう成人してますよ。でもお酒は飲んだことないですね」
「それじゃ、このワインを少し飲んでみるか」
ネイトスに勧められて、木製のカップに注がれた赤ワインを飲んでいるけど大丈夫かな。
「おっ、さすが英雄様だ。いい飲みっぷりだぞ」
こら、こら。お酒の席でそんなに煽っちゃダメなんだぞ。ほら、しばらくするとフィフィロの足がもつれて転んでしまったじゃないか。
「に、兄さま! 大丈夫ですか!!」
まだお酒に慣れていないんだから、無茶しちゃダメだよ。ルルーチアに介抱されて自分のテントに帰って行ったよ。明日は二日酔いかな。
「ネイトス、はしゃぎ過ぎだよ」
「いいじゃないですか、リビティナ様。昼間は敵さんとは睨み合ったまま全く動かないんですから」
どちらの部隊も、高台に陣取っていて相手の様子がよく見える。あちらさんは昼間も夜も軍を動かさず静かだね~。まあ、負けているし、夜に宴会なんてする気分でもないだろうけど。
そう思っていると、次の日の夜。あちらさんも宴会をしだした。こちらに対抗して負けていないぞとアピールしているのかもしれないね。
しばらくそんな膠着状態が続いた後、お城から連絡が入った。終戦条約を結ぶから戦闘はせずに停戦してほしいとのことだ。
「これでようやく戦争も終わるね」
「長引かずに済んで良かったですな」
「エリーシアが外交を頑張ってくれたお陰かな」
一応停戦とはいえ、まだ部隊を引き上げる訳にはいかない。停戦などいつ破られるか分からないからね。
「ここはネイトスに任せて、ボクは一旦お城に戻るよ」
そう言って、最前線を後にしてお城に急ぐ。
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【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。(詳細地図のみ)
小説の参考になさってください。
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