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第8章 ノルキア帝国戦争
第81話 武闘大会2
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展示会場の隣りは芝生やベンチがあって、子供が遊べるスペースになっているようね。
周囲は背の低い柵で囲まれ公園のようになっていて、砂場や滑り台、ブランコなどで子供達が遊んでいた。
「ねえ、ウィッチア。あそこで遊んでいる子供、羽の魔道具を付けているわよ」
「えぇ~、なんですって!」
ワタシが苦労して開発した魔道具。なんでこんな所にあるのよ! 急いで行ってみるとローブ姿に宗教用の仮面を付けたリビティナが子供と一緒に遊んでいる。
「おや、ウィッチアにヒアリス。いらっしゃい」
「なんで、あんたがこんな所に……それよりもワタシの魔道具、何で子供が使って遊んでいるのよ」
あれは戦場で、敵陣を飛び越えて後方の部隊を叩くための武具。子供の遊び道具じゃないのよ!
「戦争も終わって平和になったんだからさ、こういう使い方が一番だよ。ほら妖精族と一緒に空を飛んで楽しそうだよ」
クマ族の子供が飛行ユニットを背負って、妖精族のインストラクターと手をつないで一緒に飛んでいる。
「あれはワタシが苦労して作った物よ。それを子供なんかに……」
「ボクが開発した浮かぶキックボードも一緒に使ってもらっているし、子供が喜んでいるんだからいいじゃないか」
浮かぶキックボード? 木の板に乗って移動している子供が何人かいる。
「リビティナ。まさかあれって、魔国の宮廷魔導士が乗って林の中を走っていた武具じゃないの!」
後方の部隊を攻撃した時に、地上から攻撃してきた魔術師。ワタシが飛ぶ速度並みに地上を走っていた。
秘密兵器をこんな所で披露して、どういうつもりなのよ。リビティナってバカなの!
「眷属の子供達にも人気の遊び道具さ。ウィッチアも乗ってみるかい」
木の板の先端から上に延びる棒には、両手で握る取っ手が付いていた。羽は付いていないけど確かに浮かび上がっているわ。乗って蹴り出してみるとスッ~と前に進む。
取っ手のハンドルを左右に傾けると曲がってくれるし、前後に傾けると加速したりブレーキがかかる。
子供用という事でリミッターが付けられているけど、加速すればワタシの飛行ユニットと同じ速度になるようね。何なのよこの魔道具は! 魔力を流すこともなく、簡単な操作で誰でもコントロールできる。
こんな高度な技術を、子供の遊び道具として開発したですって。
「何なのよ! 何なのよ! 何なのよ!!」
「これ、これ。ウィッチア。癇癪を起さないでね。リビティナ様、なかなか面白い道具のようですわね」
「そうだろう。なんでウィッチアは怒ってるんだろうね」
その後、リビティナは会場を案内してくれると言って一緒に付いてくる。
「ほらあそこの展望台から、魔王城の遺跡や周りの景色を見る事ができるんだ」
リビティナが指差した所は、木の柱と屋根が二段になっている建物。下が土産物店で、その一番上が展望台になってるみたいね。階段を登ると柵に囲まれた広い場所で遠くの森の先まで見渡せる。
「あそこの人集りは何かしら」
「双眼鏡を設置していてね、周りの景色が眺められるんだ。こっちに来てよ」
展望台の端に三本の支柱が立っていて、その上に金属の筒が二つ並んだ物。それが遠くを見るための道具だと聞かされた。遠見の魔道具? これ程大きくはないけど、それならキノノサト国にもあるわ。
料金を取ってその魔道具を一般人にも見せているようね。新しい観光施設のための実験をしていると言っていたわ。
両端に立つ監視役の兵士にリビティナが声を掛けて、三つ並んだ双眼鏡のひとつを見せてくれた。
これはすごいわね。上下逆さまにもなっていないし、明るくてくっきりと結ぶ像。あんな遠くの魔王城跡がはっきりと見えるわ。ヒアリス様もすごく驚いている。これが魔国の技術力……侮れないわね。
一方のリビティナはワタシ達に構う事なく、集まっている人達とおしゃべりしている。
「へぇ~、おばあさん、そんな遠くの村から来たんだ」
「貧しかった村が、魔王様と賢者様のお陰で豊かになりました。ここで賢者様にお礼が言えて、私はいつ死んでも構わないよ」
「そんな事言わずに、長生きしてよね」
「賢者様。俺も握手させてくれないか。あんた達には本当に感謝してるんだ」
リビティナの周りにどんどん人が集まって来ているわ。
「まあ、リビティナ様は人気者なんですね」
「あいつはちょっと変わっているだけですよ」
為政者が、住民と戯れるなんておかしなことなのよ。ほんとこの魔国は変わった国ね。
その後、リビティナの仲間が武闘大会に出場しているからと、一緒に予選会場に足を運ぶ。
「ほら、あの短剣を持った女の人。メルーラって言うんだけど、すごく強くて里の代表として出てもらってるんだ」
「確かに、相当の手練れのようね。あれは魔法耐性のある盾かしら。さっき魔法を弾いていたわね」
「内緒だけどね。あの盾、マダガスカル鋼の盾なんだよ」
「マダガスカルですって!」
「しっ~。静かにしてくれよ、ウィッチア」
大将軍に贈られた大きな物じゃなくて手持ちの小さな盾だけど、伝説級の盾をこんな所で使うだなんて……何を考えてるのよ。聞くとあの短剣もミスリル製の短剣だという。頭がクラクラしてきたわ。
それを聞いていたヒアリス様が疑問を口にする。
「でも、盾は黒くないですし、剣も白く光ってませんね」
「亜鉛メッキしているからね。きれいに磨いた鉄のように見えるだろう」
何らかの方法で、偽装しているようね。あのメルーラという人はマダガスカルの盾とミスリルの短剣を普段から使っていて、鉄の武器と同じように扱っている。
でもね、勇者が持つような伝説級の盾と剣。普通の武人なら緊張して、まともに扱えなくなる代物なのよ。
周囲は背の低い柵で囲まれ公園のようになっていて、砂場や滑り台、ブランコなどで子供達が遊んでいた。
「ねえ、ウィッチア。あそこで遊んでいる子供、羽の魔道具を付けているわよ」
「えぇ~、なんですって!」
ワタシが苦労して開発した魔道具。なんでこんな所にあるのよ! 急いで行ってみるとローブ姿に宗教用の仮面を付けたリビティナが子供と一緒に遊んでいる。
「おや、ウィッチアにヒアリス。いらっしゃい」
「なんで、あんたがこんな所に……それよりもワタシの魔道具、何で子供が使って遊んでいるのよ」
あれは戦場で、敵陣を飛び越えて後方の部隊を叩くための武具。子供の遊び道具じゃないのよ!
「戦争も終わって平和になったんだからさ、こういう使い方が一番だよ。ほら妖精族と一緒に空を飛んで楽しそうだよ」
クマ族の子供が飛行ユニットを背負って、妖精族のインストラクターと手をつないで一緒に飛んでいる。
「あれはワタシが苦労して作った物よ。それを子供なんかに……」
「ボクが開発した浮かぶキックボードも一緒に使ってもらっているし、子供が喜んでいるんだからいいじゃないか」
浮かぶキックボード? 木の板に乗って移動している子供が何人かいる。
「リビティナ。まさかあれって、魔国の宮廷魔導士が乗って林の中を走っていた武具じゃないの!」
後方の部隊を攻撃した時に、地上から攻撃してきた魔術師。ワタシが飛ぶ速度並みに地上を走っていた。
秘密兵器をこんな所で披露して、どういうつもりなのよ。リビティナってバカなの!
「眷属の子供達にも人気の遊び道具さ。ウィッチアも乗ってみるかい」
木の板の先端から上に延びる棒には、両手で握る取っ手が付いていた。羽は付いていないけど確かに浮かび上がっているわ。乗って蹴り出してみるとスッ~と前に進む。
取っ手のハンドルを左右に傾けると曲がってくれるし、前後に傾けると加速したりブレーキがかかる。
子供用という事でリミッターが付けられているけど、加速すればワタシの飛行ユニットと同じ速度になるようね。何なのよこの魔道具は! 魔力を流すこともなく、簡単な操作で誰でもコントロールできる。
こんな高度な技術を、子供の遊び道具として開発したですって。
「何なのよ! 何なのよ! 何なのよ!!」
「これ、これ。ウィッチア。癇癪を起さないでね。リビティナ様、なかなか面白い道具のようですわね」
「そうだろう。なんでウィッチアは怒ってるんだろうね」
その後、リビティナは会場を案内してくれると言って一緒に付いてくる。
「ほらあそこの展望台から、魔王城の遺跡や周りの景色を見る事ができるんだ」
リビティナが指差した所は、木の柱と屋根が二段になっている建物。下が土産物店で、その一番上が展望台になってるみたいね。階段を登ると柵に囲まれた広い場所で遠くの森の先まで見渡せる。
「あそこの人集りは何かしら」
「双眼鏡を設置していてね、周りの景色が眺められるんだ。こっちに来てよ」
展望台の端に三本の支柱が立っていて、その上に金属の筒が二つ並んだ物。それが遠くを見るための道具だと聞かされた。遠見の魔道具? これ程大きくはないけど、それならキノノサト国にもあるわ。
料金を取ってその魔道具を一般人にも見せているようね。新しい観光施設のための実験をしていると言っていたわ。
両端に立つ監視役の兵士にリビティナが声を掛けて、三つ並んだ双眼鏡のひとつを見せてくれた。
これはすごいわね。上下逆さまにもなっていないし、明るくてくっきりと結ぶ像。あんな遠くの魔王城跡がはっきりと見えるわ。ヒアリス様もすごく驚いている。これが魔国の技術力……侮れないわね。
一方のリビティナはワタシ達に構う事なく、集まっている人達とおしゃべりしている。
「へぇ~、おばあさん、そんな遠くの村から来たんだ」
「貧しかった村が、魔王様と賢者様のお陰で豊かになりました。ここで賢者様にお礼が言えて、私はいつ死んでも構わないよ」
「そんな事言わずに、長生きしてよね」
「賢者様。俺も握手させてくれないか。あんた達には本当に感謝してるんだ」
リビティナの周りにどんどん人が集まって来ているわ。
「まあ、リビティナ様は人気者なんですね」
「あいつはちょっと変わっているだけですよ」
為政者が、住民と戯れるなんておかしなことなのよ。ほんとこの魔国は変わった国ね。
その後、リビティナの仲間が武闘大会に出場しているからと、一緒に予選会場に足を運ぶ。
「ほら、あの短剣を持った女の人。メルーラって言うんだけど、すごく強くて里の代表として出てもらってるんだ」
「確かに、相当の手練れのようね。あれは魔法耐性のある盾かしら。さっき魔法を弾いていたわね」
「内緒だけどね。あの盾、マダガスカル鋼の盾なんだよ」
「マダガスカルですって!」
「しっ~。静かにしてくれよ、ウィッチア」
大将軍に贈られた大きな物じゃなくて手持ちの小さな盾だけど、伝説級の盾をこんな所で使うだなんて……何を考えてるのよ。聞くとあの短剣もミスリル製の短剣だという。頭がクラクラしてきたわ。
それを聞いていたヒアリス様が疑問を口にする。
「でも、盾は黒くないですし、剣も白く光ってませんね」
「亜鉛メッキしているからね。きれいに磨いた鉄のように見えるだろう」
何らかの方法で、偽装しているようね。あのメルーラという人はマダガスカルの盾とミスリルの短剣を普段から使っていて、鉄の武器と同じように扱っている。
でもね、勇者が持つような伝説級の盾と剣。普通の武人なら緊張して、まともに扱えなくなる代物なのよ。
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