ドラゴンの居る、何でも屋。~目指せ遥かなるスローライフ!~

水瀬 とろん

文字の大きさ
72 / 101
第3章

第72話 王都の作家2

しおりを挟む
「さあ着いたわよ。私達は一番左端の区域よ」

 みんなで歩いて行くと、先に到着していたユイトとイズホさんが見えた。

「おい、あんなところにドラゴンが2体もいるぞ。まさかあれを倒すのか!」

 私の後ろに隠れながら木の盾を構える。

「あれはキイエ様と、セミュー様よ。私達の味方だから安心して」

 恐々ながらキイエ様に挨拶して、すぐに私の横にやって来た。

「あそこに、茶色い毛の狼の魔獣がいるのが見えるかしら。あの群れを討伐するわ」

「かなりの数がいるようだが……」

「まあ、あれぐらいなら一度に倒せるわ」

 6、7匹の群れだ。いつものようにみんなに指示して討伐を始める。

「すごい唸り声を上げて向かって来るぞ。大丈夫なのか。うわっ、すごい魔法だな。あんなに連発して倒すのか!」

 初めて見る討伐の様子に興奮を隠せないようだ。
無事魔獣を討伐して、ユイトが倒した魔獣を解体している横でクシャリオさんが珍しそうに見ている。

「あんな解体までするんだな」

「私達だけでしょうね。普通は王都の解体業者に任せるの。ユイトはああいうのが得意なのよ」

「すまないが牙と、その鋭い爪をもらえないだろうか」

 記念に持ち帰りたいのだろう。

「ええ、結構よ。そんなのは売り物にならないしね」

 子供のように喜んでポケットの中に入れる。討伐も終わり、日も暮れた頃無事王都に戻って来れた。

「これで依頼は完了ね。どうでしたか?」

「いい経験をさせてもらって、色々と参考になったよ。ありがとう」

 満足してくれたようね。これでいい物語が書けるようになってくれたらいいんだけど。


 数日後。クシャリオさんがお店にやってきた。

「どうしたの。また冒険でもしたいの」

「いや、俺を連れて行って欲しい場所があるんだ」

 前とは違って少し思いつめた様子で話してくる。詳しい話を聞こうと応接室に入ってもらう。

「昔に1度だけ行った事がある場所なんだが、今は魔の森に囲まれていて行く事ができない。そこに俺を連れて行って欲しい」

 そこは昔、村があった場所のようだけど、今は誰も住んでいないため魔の森に飲み込まれてしまったらしい。近くに湖がある村で村の名前と大体の方角だけは分かると言っている。

「社長、それなら役所で調べてもらえばわかると思いますよ」

「そうね、まずはそこからよね。場所も分からないんじゃ行きようも無いしね」

 調べてから後で連絡すると言って、今日のところはクシャリオさんに帰ってもらった。

 役所に行って聞いてみると、22年前。その村はスタンピードの直撃を受けて廃村になった村だそうだ。魔獣暴走が起きれば王都からすぐに軍が派遣されるけど、間に合わず全滅したと言う。

 当時の古い地図を見せてもらうと、その村に赤いバツ印が打たれていた。

「クシャリオさんが言っていた湖も近くにあるから間違いないようね」

 持ってきた地図にその位置を書き写す。馬車だと5日程の距離だけど、もう道も無い。
やっぱりキイエ様に乗せて行ってもらうしかないわね。とはいえユイトだけじゃ心もとないし。

「イズホさん。セミュー様に私も乗せて飛ぶことはできますか」

 セミュー様はキイエ様よりまだ体が小さく、いつもはイズホさん1人しか乗せていない。

「そうじゃな。おぬしは軽いし乗せられん事もないと思うが」

 一緒にセミュー様のいる森に行って聞いてみる。

「そうね。それほど長く飛ぶわけでもないし、あなたぐらいなら大丈夫ね」

 セミュー様にそう言ってもらい実際に2人乗ってみたけど、大丈夫そうだ。
翌日。クシャリオさんにお店に来てもらい、その村に行くことは可能だと伝える。

「でも今は魔の森の中。すごく危険な所だわ。そうまでしてなぜ行きたいの」

「俺がまだ駆け出しの頃、王都で出会った婚約者が眠る場所なんだ。スタンピードが起き全滅したその村に、いまだに怖くて行く事ができなかった」

 それ以来、心に棘が刺さった様な思いのまま、今まで誰とも結婚もせずこの王都で過ごしてきたと言う。

「今も魔獣は怖い。だが俺も変わらないと、いつまでもこのままじゃダメなんだ。君達とならその村に行くことができる。俺を連れて行ってくれ」

 2日後の朝。その全滅した村に向かって出発する。キイエ様にユイトとクシャリオさんに乗ってもらうけどユイトは機動甲冑ではなく軽鎧程度の装備だ。私もローブの装備でできるだけ軽くしている。

「まあ、ワレが付いているんじゃから心配せんでも良いわ。魔獣などワレの魔法で一捻りにしてやる」

 人の入らない森の中だけどキイエ様もいるし、大丈夫でしょう。ここからは鐘1つも掛からず飛んで行けるそうだし暗くなる前に帰って来れるわ。

「セミュー様。あの山の向こうに見える湖の近くです」

 空から見ると小さな湖が見えるけど村は見つからない。キイエ様に乗っているクシャリオさんが左の方を指差している。目的の村を見つけたようね。旋回しながら地上に近づいていく。

 空から見た村は完全に森に覆い尽くされていて、家の周りの石垣だけが木々の間から見え隠れする。村近くの丘に降り立つ場所を見つけて着陸し、ここからは徒歩で村に向かう。

「私達に離れないようにして付いて来て下さい」

「ああ、分かった。よろしく頼む」

 魔獣の鳴き声がする森の中。クシャリオさんは初めて魔の森に近づいた時のように怯えることもなく、しっかりとした足取りで私達に付いて来る。

 しばらくすると村の石垣が見えてきた。家は無く崩れた石垣と魔獣の足跡だけがそこにあった。村に入り歩き回った後、クシャリオさんが立ち止まる。

「ここだ、ここがミリティアの住んでいた家だ」

 恋人に1度だけ連れてきてもらったという生まれ故郷の家。ここで御両親に会い、結婚したいと告げたそうだ。

「今まで来れなくて、すまなかったな。こんな不甲斐ない俺のせいで、お前を死なせてしまった。もっと早く王都に迎い入れていたら……」

 片膝を突いて涙を流しながら後悔を口にするクシャリオさん。
当時お金もなく、王都に冬の間だけ出稼ぎに来ていた恋人を村に返して、結婚の準備をしている時にスタンピードが起きたそうだ。

 完全に破壊された家々。スタンピードの凄まじさが見て取れる。当時、軍から全滅した村の惨状を聞いたクシャリオさんはそれ以来怖くなり、王都を離れたことが無いと言っている。

 ここには遺品のような物は既に無く、土だけを大事そうに小さな壺に入れて持ち帰る。森を抜け、キイエ様がいる丘まで戻ってきた。

「ああ、そういえば、ここから湖を眺めながら二人将来の事を話したのを思い出したよ。メアリィさん。ここまで連れてきてくれて本当にありがとう」

 小さな壺を手に湖を見つめる続けるクシャリオさんをそっと見守る。

 王都に帰って来て1ヶ月後。お店にクシャリオさんがやって来た。

「俺の書いた物語が劇に採用されて、今度上演されるんだ。見に来てくれ」

 その劇はドラゴンに乗った少年が、恋人の元に苦難を乗り越えて会いに行く物語。どこにでもあるような平凡な冒険譚。
そのハッピーエンドに涙したのは私だけだろう。


---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。

今回で第3章は終了となります。
次回からは 第4章 開始です。お楽しみに。

お気に入りや感想など頂けるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...