ドラゴンの居る、何でも屋。~目指せ遥かなるスローライフ!~

水瀬 とろん

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第4章

第90話 新時代へ

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 民主連邦国と貿易を行う事を決めてしばらくして、今度は人族の国から提案を受けた。我が国の南半分を占める砂漠地帯。その砂漠を緑化したいと提案してきた。

「首相。これはどういう事でしょ」

 人族の国はあの巨大な船を建造した国だ。相当な技術力を持つ国だと言うのは分かる。
5年を目途に、砂漠の一部を緑化し穀倉地帯に変えると言う。その資材と技術は人族の国が出し、我らは労働力を提供し共同で事業を進める。

「私は紛争終結の協定を結んだ時、アンデシン国の方々と話をした。その時、人族の国は信用できると聞いた。えにしを結べるならそれに越したことはないと」

 民主連邦国は色々な国が集まった地域だという。その中で人族の国は、ひと際発展した国で盟主と呼ばれているそうだ。直接話を伺いたいと連絡すると、担当大臣を送ると返事があった。

 間もなくして我が国に大臣を含む使節団が送られてきて話を聞く事になった。

「……と、このように雨を降らせる施設、川を作る工事を行い砂漠に作物を作っていくのじゃ」

 技術顧問と呼ばれているまだ幼く見える人族の女性。その者の言う事は夢物語にしか聞こえない。乾いた砂漠の大地に川を作り雨を降らせる? 本当にそんな事ができるのか。

「民主連邦国内の砂漠も、緑地化して今は穀倉地帯となっておる。今回はこの土地の気候に合わせて新たに降雨施設を作る予定じゃ」

 まずは1年間実験を行い、できる場所から施設を建設し、3年で緑化、5年で穀倉地にすると言う。
大陸の技術は優れていると聞いてはいるが、このような事が実現できるのか。

 だが我らにはメリットが多い。設備の一部費用と労働力を提供しなければならないが、穀倉地となった土地は我らの物になる。不毛の大地が多く、何もない砂の国と言われる事もある我が国。この事業が成功すれば食料問題、土地の問題がすべて解決する。
今までのように無理に他国に攻め入り、土地を奪う必要もなくなる。


 そして1年と半年が過ぎた頃、砂漠地帯の海岸付近の実験場に行き驚いた。

「なぜここに山がある! これは人工の山なのか」

 白く曲線を描く山。自然にできた山ではなく、計算された曲線が人工の山であることを物語っている。石のブロックを組み合わせたと思われる物が遥かな高さまで積み上がっている。

「首相、来てくれたか」

 あの幼い技術顧問が出迎えてくれた。

「これはいったい……」

「ここには良い砂と鉱物が多くて助かっておるぞ。1区画だけじゃが降雨施設ができておる」

 1区画とはいうが、町がいくつも入るような広大な土地。城壁どころの高さではないこの施設。

「これをあなたが作ったのか? どれほどの高さがあるのだ」

「手を上げた大人の250倍の高さがある。造ったのはワレではなく、ここの国民じゃ。ワレは作り方を教えたまでじゃ」

 人族の国には始まり神という者がおり、その者の設計でこの山を作ったと言う。海から吹きつける強い風をこの山で上空高くに上げることで雨が降ると言う。私にはさっぱり理解できないが、まさに神の所業。

 この山より東側には確かに雨が降り、大地に草が生え始めている。

「この山を南に伸ばしていき、緑地帯を増やしていく計画じゃ。この反対の東側は山脈からの雪解け水を地上の運河に流し、既に緑地化されておるぞ」

 山脈の向こう側にはアンデシン国があり、川も流れていて森が続いている。だが我が国には川が無かったはず。そこに人工の川を作ったと言う。

「実験は順調じゃ。来年には穀物を植える実験もできるじゃろう」

 この不毛の大地が緑に覆われる。これが大陸の技術、いや人族の技術か。遥か高さにまでそびえる白い山を見上げる。

 その山の内部は空洞があり、中央には道ができている。そこには宙に浮く馬のない馬車が走り、左右の建物には人が住む事ができる。外部の光を取り入れて明るいが直接日が当たらず涼しい。

 この上も同じような構造になっていて、道ができていると言う。

「内部全てを石で埋める必要は無いからな。その空間を利用しておるだけじゃ」

 宙に浮く車に乗り南の端、現在工事中の場所へと移動する。

「あの巨大な機械で石を作っているのか」

 道の端、石を作る機械が何台も連なって先に続いている。機械の左右には石が並び、その石は別の機械で上へと運ばれて積み上げていく。

「あの機械は砂とそれを固める材料、それに海水を入れると、勝手に石のブロックを作るようになっておる。この砂漠にはその材料が無尽蔵にあるから、いくらでも作れるぞ」

 機械に砂などの材料を運び入れる作業を我が国民がしている。見知らぬ機械を使いこなし大量の砂を運んでいる。
この巨大な機械も、この部分が完成すると前に移動して次の区域へ進んでいくと言う。

「あのような重い石を運び上げるのは蒸気の力を使っているのですか」

 大陸には蒸気で走る列車があると言う。大きな力を産む蒸気の機械。

「いや、この海岸には良い海流があってな。水中の水車で発電した電力を使っておる。この国は良い資源とエネルギーがあるのう」

 ここは何もない砂の大地。まだ幼いと見えるこの人族の手にかかれば、この様な山をも作れる力となるのか……。

 これならば、戦乱に明け暮れていた我が国も、変わる事ができるだろう。
このような新時代への扉を開けてくれた、この者達に私は感謝する。



 ---------------------
【あとがき】
 お読みいただき、ありがとうございます。

 今回で第4章は終了となります。
 次回からは 第5章 開始です。お楽しみに。

 お気に入りや感想など頂けるとありがたいです。
 よろしくお願いいたします。
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