僕らはロボットで宇宙《そら》を駆ける

ななくさ ゆう

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第一章 初めての宇宙《そら》

4.初めての無重力体験、初めての巨大ロボット

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 ソラが目を開けると、そこはもうビルの地下室ではなかった。
 白い壁と床と天井に囲まれた空間。床に立っているのに、なんだか体がふわふわしている。自分の体の重さが減ったような感じだ。
 トモ・エと舞子はいたが、他は先程までの地下室と何もかも違っていた。

「ここ、どこ?」

 ソラがつぶやくと、トモ・エが答えた。

「ここは宇宙です。地球の衛星軌道上にある私の宇宙船にワープしました」
「い、いや、ワープって……」

 いくらなんでもありえない……そう言いかけたのだが、目の前で起こったことに説明をつけるなら一番適切なような気もした。

「でも、宇宙なら無重力じゃないの?」
「ここはまだ地球の衛星軌道上ですから、厳密には地球の重力の影響下にあります。しかし、衛星軌道上を回っていますから、結果として本来ならば無重量状態になります」

 舞子の質問にトモ・エが答える。

「……意味がわからないんだけど?」
「つまり、地球製の人工衛星の中と同じです」
「だったら、どうして私たちの体は浮かばないのよ?」
「擬似重力発生装置を起動していますから。もっとも地球地表上の半分程度の擬似重力に設定していますので、少し体が軽く感じるはずです」

 それで、体がフワフワするするのか。

「下をご覧ください」

 トモ・エの言葉に、足元を見る。
 すると、真っ白だった床に青い星の姿が映しだされた。

「これって……」
「地球……」

 間違いなく、それはテレビや図鑑でみたことのある、宇宙から見た地球であった。

「これは映像ですが、この宇宙船からリアルタイムに撮影しているものです。これでも私の話が信じられませんか?」
「それは……」
「だって、ねぇ?」

 これだけのことが起きても、どうしても自分たちの中の常識が現実を否定しようとするのだ。

「では最後の証拠を示しましょう」
「え?」
「擬似重力発生装置を停止します」

 トモ・エがそう宣言した次の瞬間。
 ソラの体がふわっと浮かんだ。

「わ、わ、わわ?」
「ちょ、ちょっと!」

 舞子もまたソラに舞い上がる。トモ・エも宙に浮いているが慌てている様子はない。

「あ、きゃ、きゃああ」

 じたばたしているうちに、ソラと舞子はぶつかってしまった。それもソラの顔が舞子のお尻にあたってしまったのだ。

「い、いやぁぁぁ、エッチ!」
「ご、ごめん」

 ぶつかった反動で反対方向に飛びながら、ソラは謝った。
 舞子がズボンを穿いていて本当に良かった。スカートだったら大変なことになっていた。
 そんなことを考えていると、今度は壁にぶつかった。

「では、擬似重力を再び発生させます」

 トモ・エが言うと、再び重力が発生しソラと舞子は床に落下する。

「つ、痛ぅ」
「ちょっと、いきなりやらないでよ」

 2人して床に体を打ち据えて文句をいう。

「すみません。警告しても慣れていないお2人には、受け身は取れないだろうと思いましたので。もっとも、今は地球の重力の1/3くらいしか発生させていませんから、それほどは痛くないと思います」
「まあ、そう……かな」

 確かに、思ったほどには痛くなかった。

「どうでしょう? これで私の話を信じていただけましたか?」
「まあ、ねぇ」

 ソラが舞子の方を見ると、彼女もなんとなく納得したようだった。

「これで別のオチがあったらその方が驚きね。夢オチ以外ならだけど」
「さっき痛かったからね。夢じゃないと思うよ」

 ソラは舞子にそう言った。

「よかった」

 トモ・エの顔にホッとした表情が浮かぶ。アンドロイドだとしたらほんとうに良く出来ている。

「で、なんで私達を宇宙に連れて行きたいの? いや、もう宇宙に来てるみたいだけど」
「それはこれからご説明いたします。まずはついてきてください」

 舞子の問いにトモ・エがそう言って壁に近づいた。
 すると、壁に穴が開く。
 驚いた顔を浮かべる2人に、トモ・エが説明する。

「ただの扉です。ちょっと地球の扉とは違いますが、自動ドアみたいなものです」

 とりあえず、トモ・エの後を追い、扉をくぐり廊下に出る。
 3人で廊下の突き当たりまで歩くと、再び別の扉が開いた。
 その扉の先で、ソラと舞子は声を上げた。

「これ……うそでしょ……?」
「エスパーダ?」

 舞子とソラは呆然と声を出した。
 そこにあったのは2体の巨大ロボット――エスパーダであった。

「ゲームの上のものじゃなかったのか」
「あのゲームはエスパーダ操舵者訓練用シュミレータを改造したものです。
 私はエスパーダを操舵できる人間を探すため、あのゲームを日本で流行らせました。結果、あなた方がチャンピオンになったのです。
 残念ながら、時間は有限ですから、ゲームを流行させるのは日本に限定しました。日本を選んだのは面積がさほど広くなく、かつゲームプレイヤーの絶対数が多い国だったのと、アニメーション文化などによって巨大ロボットという存在にそこまで違和感を抱かないであろうことを評価したからです」

 ソラの体が自然と震える。
 何しろ、本物の巨大ロボット――エスパーダが目の前に現れたのだ。
 興奮しない方がどうかしている。

「これ、本当に動くの?」

 尋ねるソラに、トモ・エは頷く。

「パイロットさえいれば」
「トモ・エさんには動かせないわけ?」
「アンドロイドはエスパーダを操縦をできません。できるように設計されていないのです」

 なんとなく、話が見えてきた。

「つまり、エスパーダの操縦者を探していて、だから、バトル・エスパーダで優勝した僕達に宇宙に来てほしいってこと?」
「はい、その通りです」

 だが、少しおかしい気もする。

「でも、ここにこれがあるってことは、パイロットはいたんじゃないの?」
「いましたが、すでに死亡しました。悲しいことです」

 言葉はともかくトモ・エはさほど悲しそうには見えない。

 舞子は首をひねる。

「話が見えたような見えないような……」
「そうでしょうね。では最初から説明しましょう。まずは私を作製したイスラ星人の母星の話から……」

 トモ・エはそう言って話し始めた。同時に、前方の壁に映像が映る。

「あれが在りし日の惑星イスラです」

 たしかに、そこには地球と似た青い惑星が写っていた。

「在りし日のって……」
「はい。惑星イスラはすでにこの宇宙のどこにもありません」

 ソラの言葉に、トモ・エが目を伏せて答えた。
 そしてトモ・エによる惑星イスラとその生き残り達の話が始まった。
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