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暗殺なんて、あんまりです!
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子供に出来ることなんて限られている。
もう少し大きくなればやれることだってあったのかもしれない。
こっそり身を守る護身術を自主練習したり、運動をしたり。
多少奇妙に思われてものらりくらり躱すことも可能だっただろう。
だが、3歳という年齢で出来ることはあまりにも少なかった。
(剣はだめ。かといって魔法はまだ魔素循環の訓練の段階。発現出来ても、花を一輪どうこうできる程度)
この世界には魔法が存在する。
すべての生物には魔力が存在し、1人に扱える魔法は一種類のみ。
自身の魔力を媒介として特殊な現象を生み出すことを指す。
特に魔力が多く、一定基準を超える魔法を扱える者を魔法使いと呼ぶ。
強いと言われているのは、火・水・土・風のように現象系の魔法使い。
魔法というのは想像がものをいう。人々の身近にある現象というのは応用も思いつきやすいからだ。
とはいえ、現象系の魔法が使えても、魔法使いと呼ばれるほど魔力量が多い者は少ない。
結局は魔力量によって扱える魔法の威力も変わるのだから。
魔法を制御する為に必要な訓練が魔素循環と呼ばれるもの。
体内にある魔力を自在に操るための訓練である。
転生したからといって一昼夜で暗殺者を返り討ちに出来るほどの実力は得られない。
これもまた、年齢を重ねて研鑽を積まなければならないことだった。
(そもそも私の魔法は攻撃特化の魔法じゃない。アマリリスの魔法も)
女性でも攻撃に長けた魔法使いはいる。
けれど、原作におけるリリィとアマリリスの魔法は残念ながらそういう魔法ではなかった。
(誰も殺されてほしくない。でも、私に彼女たちを守れる絶対的な何かはない)
ギュッと枕を掴んで思考の海に沈む。
前世で流行ったような物語のような主人公なら、きっととんでも魔法で乗り越えるのだろう。
産まれた頃から魔素循環の訓練をして、3歳ですでに達人レベルで使えるようになって。というように。
そんなこと、前世で凡人のリリィには出来ないのは当然であった。
魔素循環は勿論毎日行っている。それこそ、こうして思考しているときですら。
けれど、魔素循環の訓練をいくら行ったところで、リリィは自身の魔法で他者を殺すことは出来ないと感じていた。
(ものは使いよう。とはよくいったもの。私の魔法も使いようによっては誰かを殺せる)
原作を知っているため、リリィは自身の魔法がどのようなものかを知っている。
それはこれから先、とても大きなアドバンテージとなるだろう。
戦闘特化ではない、ゲームのヒロインと考えるならよくある魔法で。ゲームのリリィはその考えにも至らなかったのか、使っていなかった。しかし、考えようによっては他者に死を齎すのは容易に出来ることもわかっている。
(まだ訓練が足りてないだけじゃない。下手をすると自分も死ぬ。周りに誰かがいたらその人も)
誰かを守るために強くなりたいのに、守るべきものを殺してしまっては本末転倒も良いところだ。
結局その日も別のなにかを思いつくことは出来ない。
リリィに出来ることはただ一つだった。
「おねぇさま。いっしょに、ねんね。しよ?」
こてんと首をかしげるリリィ。
ふるふると震えながら、断りたいのにその言葉が出せないアマリリス。
「おねぇさま。おねがい」
「うぐぅ」
枕を抱きしめる力を強く、上目遣いに迫れば断ることが出来ないのを知っている。
「きょ、きょうだけ。きょうだけですよ」
その今日だけというのが6歳の誕生日当日まで続くのだが、割愛しておくとしよう。
「どうしましたか。いままで、いっしょにねるだなんていわなかったのに」
「ちょっと、さみしくて」
一緒にお布団に入ると、今日たまたま夜勤に当たったアマリリス専属の侍女が毛布をかけてくれる。
優しげにアマリリスとリリィを見守るこの侍女こそ、アマリリスの誕生日に亡くなる侍女だとリリィは確信していた。
「控えておりますので、何かあればお呼びください。おやすみなさいませ、お嬢様方」
「「おやすみなさい」」
品よく一礼して控室に向かう侍女を見送って、リリィはアマリリスに向き直る。
仲の良い侍女は多いけれど、アマリリス専属の侍女はあの女性だけ。
性格が歪んでしまうほど、心に傷を受けるほどに親しいのは専属侍女だからだ。
「あなたも3さいなのだから、ひとりでねれるように、がんばりましょうね」
まるで母親でもあるかのうように、リリィの頭を優しくなでるアマリリス。
実際にそう優しい言葉をかけて、こうして迎え入れてくれるということは母にもそうされた記憶があるのだろう。
リリィにはない、母の記憶。
その姿は食堂の暖炉の上に飾られた絵で知っている。
成長したリリィに面差しがよく似た優しげな女性。
母親の命を代償に産まれたリリィを、アマリリスも父親も憎んではいけないとわかってはいても、感情というものはどうにもならないもので。原作のリリィは家族から疎まれて成長した。
現に今、アマリリスは違うが、父であるブルックスは実の娘を持て余している。
それでも、衣食住は保証され、教育も十分に受けている。それだけではなくアマリリスからは愛情も。
原作に比べてしまえば、きっと今の状態は最良なのだとも思えた。
「もうちょっと。おねぇさまのたんじょうびまでは……」
正確にはアマリリスが暗殺者に襲われるその日まで一緒に寝る。
リリィに取れる手段はそれしかなかった。
足手まといが増えて、更に被害者を出すのかもしれない。
けれど、原作では他家の者が出入りする誕生日。最も気が緩む深夜に襲ってきたのだから、リリィが起きて悲鳴を上げることだってできる。他の人を呼んで、アマリリスの守りを固めるためにも。
「しかたのないこ」
リリィの言葉はただの寂しがりやだと思ってくれたようで。
アマリリスは優しくリリィを抱きしめて眠りについた。
リリィも幼い体である故にとても眠たいのだが、体を慣らすためにアマリリスごしに見える窓の外をぼんやりと眺めて過ごした。
勿論、翌日寝過ごして叱られるのは当然のことではあったのだが。
もう少し大きくなればやれることだってあったのかもしれない。
こっそり身を守る護身術を自主練習したり、運動をしたり。
多少奇妙に思われてものらりくらり躱すことも可能だっただろう。
だが、3歳という年齢で出来ることはあまりにも少なかった。
(剣はだめ。かといって魔法はまだ魔素循環の訓練の段階。発現出来ても、花を一輪どうこうできる程度)
この世界には魔法が存在する。
すべての生物には魔力が存在し、1人に扱える魔法は一種類のみ。
自身の魔力を媒介として特殊な現象を生み出すことを指す。
特に魔力が多く、一定基準を超える魔法を扱える者を魔法使いと呼ぶ。
強いと言われているのは、火・水・土・風のように現象系の魔法使い。
魔法というのは想像がものをいう。人々の身近にある現象というのは応用も思いつきやすいからだ。
とはいえ、現象系の魔法が使えても、魔法使いと呼ばれるほど魔力量が多い者は少ない。
結局は魔力量によって扱える魔法の威力も変わるのだから。
魔法を制御する為に必要な訓練が魔素循環と呼ばれるもの。
体内にある魔力を自在に操るための訓練である。
転生したからといって一昼夜で暗殺者を返り討ちに出来るほどの実力は得られない。
これもまた、年齢を重ねて研鑽を積まなければならないことだった。
(そもそも私の魔法は攻撃特化の魔法じゃない。アマリリスの魔法も)
女性でも攻撃に長けた魔法使いはいる。
けれど、原作におけるリリィとアマリリスの魔法は残念ながらそういう魔法ではなかった。
(誰も殺されてほしくない。でも、私に彼女たちを守れる絶対的な何かはない)
ギュッと枕を掴んで思考の海に沈む。
前世で流行ったような物語のような主人公なら、きっととんでも魔法で乗り越えるのだろう。
産まれた頃から魔素循環の訓練をして、3歳ですでに達人レベルで使えるようになって。というように。
そんなこと、前世で凡人のリリィには出来ないのは当然であった。
魔素循環は勿論毎日行っている。それこそ、こうして思考しているときですら。
けれど、魔素循環の訓練をいくら行ったところで、リリィは自身の魔法で他者を殺すことは出来ないと感じていた。
(ものは使いよう。とはよくいったもの。私の魔法も使いようによっては誰かを殺せる)
原作を知っているため、リリィは自身の魔法がどのようなものかを知っている。
それはこれから先、とても大きなアドバンテージとなるだろう。
戦闘特化ではない、ゲームのヒロインと考えるならよくある魔法で。ゲームのリリィはその考えにも至らなかったのか、使っていなかった。しかし、考えようによっては他者に死を齎すのは容易に出来ることもわかっている。
(まだ訓練が足りてないだけじゃない。下手をすると自分も死ぬ。周りに誰かがいたらその人も)
誰かを守るために強くなりたいのに、守るべきものを殺してしまっては本末転倒も良いところだ。
結局その日も別のなにかを思いつくことは出来ない。
リリィに出来ることはただ一つだった。
「おねぇさま。いっしょに、ねんね。しよ?」
こてんと首をかしげるリリィ。
ふるふると震えながら、断りたいのにその言葉が出せないアマリリス。
「おねぇさま。おねがい」
「うぐぅ」
枕を抱きしめる力を強く、上目遣いに迫れば断ることが出来ないのを知っている。
「きょ、きょうだけ。きょうだけですよ」
その今日だけというのが6歳の誕生日当日まで続くのだが、割愛しておくとしよう。
「どうしましたか。いままで、いっしょにねるだなんていわなかったのに」
「ちょっと、さみしくて」
一緒にお布団に入ると、今日たまたま夜勤に当たったアマリリス専属の侍女が毛布をかけてくれる。
優しげにアマリリスとリリィを見守るこの侍女こそ、アマリリスの誕生日に亡くなる侍女だとリリィは確信していた。
「控えておりますので、何かあればお呼びください。おやすみなさいませ、お嬢様方」
「「おやすみなさい」」
品よく一礼して控室に向かう侍女を見送って、リリィはアマリリスに向き直る。
仲の良い侍女は多いけれど、アマリリス専属の侍女はあの女性だけ。
性格が歪んでしまうほど、心に傷を受けるほどに親しいのは専属侍女だからだ。
「あなたも3さいなのだから、ひとりでねれるように、がんばりましょうね」
まるで母親でもあるかのうように、リリィの頭を優しくなでるアマリリス。
実際にそう優しい言葉をかけて、こうして迎え入れてくれるということは母にもそうされた記憶があるのだろう。
リリィにはない、母の記憶。
その姿は食堂の暖炉の上に飾られた絵で知っている。
成長したリリィに面差しがよく似た優しげな女性。
母親の命を代償に産まれたリリィを、アマリリスも父親も憎んではいけないとわかってはいても、感情というものはどうにもならないもので。原作のリリィは家族から疎まれて成長した。
現に今、アマリリスは違うが、父であるブルックスは実の娘を持て余している。
それでも、衣食住は保証され、教育も十分に受けている。それだけではなくアマリリスからは愛情も。
原作に比べてしまえば、きっと今の状態は最良なのだとも思えた。
「もうちょっと。おねぇさまのたんじょうびまでは……」
正確にはアマリリスが暗殺者に襲われるその日まで一緒に寝る。
リリィに取れる手段はそれしかなかった。
足手まといが増えて、更に被害者を出すのかもしれない。
けれど、原作では他家の者が出入りする誕生日。最も気が緩む深夜に襲ってきたのだから、リリィが起きて悲鳴を上げることだってできる。他の人を呼んで、アマリリスの守りを固めるためにも。
「しかたのないこ」
リリィの言葉はただの寂しがりやだと思ってくれたようで。
アマリリスは優しくリリィを抱きしめて眠りについた。
リリィも幼い体である故にとても眠たいのだが、体を慣らすためにアマリリスごしに見える窓の外をぼんやりと眺めて過ごした。
勿論、翌日寝過ごして叱られるのは当然のことではあったのだが。
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