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32:車の中で
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町並みがゆっくりと過ぎていくのをお兄様と一緒に眺めます。
車内から失礼します。コーラルです。
そういえばこの世界の交通手段を言っていませんでしたね。
この世界というかこの大陸で使われているのは主に車です。
魔石で生み出された魔法で動く車、直訳すると魔石車だそうです。
詳しいことが3歳児にわかるわけがありません。
形は馬車の形をしています。
前世の車のように空気抵抗を気にした設計ではなく箱型ということですね。
馬を使わないし、業者台のところはオープンカーのように屋根がありません。
あ、どうやら仕舞ってあるだけで雨が振ってきたら屋根は取り付けられるそうです。
時速15キロ程度でしょうか。
車のように早くは走れないみたいですね。
重さによるでしょうけど馬車よりは少し早いくらいでしょうか。
「同じお家がいっぱい……」
「そうだよ。王都は景観が保たれるように何百年以上も前の建物の様式をそのまま採用しているんだ」
「おうと?」
そういえば、侯爵家なのに領地に行ったことがありません。
どこかレトロな空気が感じられる石畳の道路と白塗りの壁。そして屋根は赤茶色の家が殆どです。
何百年以上ものスタイルを維持するために、ですか。
確か前世でも外国にそういう国がありましたね。
外見はそのままで内装だけを変えていくような。
「王様が住んでいるお城とその周りの家の、城下町と呼ばれるところのことだよ。父上が騎士団長をしているから、ぼ、私達の住んでいるところは城下町でも王城に近いところなんだ」
お兄様、今、僕って言いそうになりましたよね。
そうは思いましたが突っ込んでは差し上げません。
頑張って大人への階段を上がろうとしているのです。
ここで指摘するのは野暮というものでしょう。
と、3歳と1ヶ月がなんかボヤいてみます。
幸いにここで茶化すような人はいません。
同席しているお父様は無表情ですしね。
優しい笑みのお兄様とは違った意味でいつもどおりです。
「きしだーちょー?」
「騎士団長、ね。王様や国を守る騎士達を纏める偉い人のことだよ」
子育てに都合がいいとかそういう理由ではなく、お父様が騎士団長だから私達も王都に居たんですね。
侯爵家当主でありながら騎士団長とは権力が集中しすぎでは?
お父様とはあまり合わないので実感が湧きません。
「とーたま、えらい?」
「ぐっ」
私が問いかければ、お父様は顔を背けます。
大丈夫ですかね。
お茶会に参加するのは私とお兄様だけです。
お父様は私達の為に態々時間をずらして出勤してくれているのでしょう。
それを思えば生まれた頃よりも歩み寄ろうとはしてくれているのですが。
「父上……」
お兄様が呆れています。
そう、お父様って少しばかり不器用というか。
「大丈夫だ。問題ない」
無表情で鼻血を出していて説得力があると思っています?
私もお兄様も半眼になってしまいます。
お父様はこのような方でしたでしょうか。
少しばかりこの先が不安です。
「コーラル。僕との約束は覚えているかな」
「やくしょく」
お父様を完全に放置することに決めた私達は別の話を始めます。
お茶会に参加するにあたっていくつか約束事をつくったのです。
安全に過ごすための約束ですね。
「すきう、言わない」
「そう、スキルのことは誰にも秘密」
1つ目はスキルを話さない、発動させない。
希少価値の高いと思われるスキルです。
知られたらどんなことになるか。
想像したくもありません。
「わるいこ、ちらない」
「嫌な感じの子には近寄らない、話しかけない」
私は外で母親を殺した呪い子と言われています。
それは恐らく3年経った今でも。
私の色はお母様譲り。
誰が見てもわかるその髪色に悪意のある言葉を放つ人はいるでしょう。
子供は残酷なもので、それを悪意とは知らずに放つ子もいるかも知れません。
知らぬ存ぜぬで無視をする。
それが2つ目の約束。
「にーしゃま、はにゃれにゃい」
「私から離れないこと」
3つ目はお兄様から離れないこと。
大抵の悪意からは遠ざけてくれるとのこと。
今回のお茶会ではお兄様は最年長グループです。
しかも侯爵子息であるお兄様の目の前で私を貶めるような馬鹿な子がいるとは思えません。
……ちゃんと礼儀作法を学んでいればですが。
でも、約束事を確認して思ったのですが、今更不安が増してきたのは何故でしょうねぇ。
車内から失礼します。コーラルです。
そういえばこの世界の交通手段を言っていませんでしたね。
この世界というかこの大陸で使われているのは主に車です。
魔石で生み出された魔法で動く車、直訳すると魔石車だそうです。
詳しいことが3歳児にわかるわけがありません。
形は馬車の形をしています。
前世の車のように空気抵抗を気にした設計ではなく箱型ということですね。
馬を使わないし、業者台のところはオープンカーのように屋根がありません。
あ、どうやら仕舞ってあるだけで雨が振ってきたら屋根は取り付けられるそうです。
時速15キロ程度でしょうか。
車のように早くは走れないみたいですね。
重さによるでしょうけど馬車よりは少し早いくらいでしょうか。
「同じお家がいっぱい……」
「そうだよ。王都は景観が保たれるように何百年以上も前の建物の様式をそのまま採用しているんだ」
「おうと?」
そういえば、侯爵家なのに領地に行ったことがありません。
どこかレトロな空気が感じられる石畳の道路と白塗りの壁。そして屋根は赤茶色の家が殆どです。
何百年以上ものスタイルを維持するために、ですか。
確か前世でも外国にそういう国がありましたね。
外見はそのままで内装だけを変えていくような。
「王様が住んでいるお城とその周りの家の、城下町と呼ばれるところのことだよ。父上が騎士団長をしているから、ぼ、私達の住んでいるところは城下町でも王城に近いところなんだ」
お兄様、今、僕って言いそうになりましたよね。
そうは思いましたが突っ込んでは差し上げません。
頑張って大人への階段を上がろうとしているのです。
ここで指摘するのは野暮というものでしょう。
と、3歳と1ヶ月がなんかボヤいてみます。
幸いにここで茶化すような人はいません。
同席しているお父様は無表情ですしね。
優しい笑みのお兄様とは違った意味でいつもどおりです。
「きしだーちょー?」
「騎士団長、ね。王様や国を守る騎士達を纏める偉い人のことだよ」
子育てに都合がいいとかそういう理由ではなく、お父様が騎士団長だから私達も王都に居たんですね。
侯爵家当主でありながら騎士団長とは権力が集中しすぎでは?
お父様とはあまり合わないので実感が湧きません。
「とーたま、えらい?」
「ぐっ」
私が問いかければ、お父様は顔を背けます。
大丈夫ですかね。
お茶会に参加するのは私とお兄様だけです。
お父様は私達の為に態々時間をずらして出勤してくれているのでしょう。
それを思えば生まれた頃よりも歩み寄ろうとはしてくれているのですが。
「父上……」
お兄様が呆れています。
そう、お父様って少しばかり不器用というか。
「大丈夫だ。問題ない」
無表情で鼻血を出していて説得力があると思っています?
私もお兄様も半眼になってしまいます。
お父様はこのような方でしたでしょうか。
少しばかりこの先が不安です。
「コーラル。僕との約束は覚えているかな」
「やくしょく」
お父様を完全に放置することに決めた私達は別の話を始めます。
お茶会に参加するにあたっていくつか約束事をつくったのです。
安全に過ごすための約束ですね。
「すきう、言わない」
「そう、スキルのことは誰にも秘密」
1つ目はスキルを話さない、発動させない。
希少価値の高いと思われるスキルです。
知られたらどんなことになるか。
想像したくもありません。
「わるいこ、ちらない」
「嫌な感じの子には近寄らない、話しかけない」
私は外で母親を殺した呪い子と言われています。
それは恐らく3年経った今でも。
私の色はお母様譲り。
誰が見てもわかるその髪色に悪意のある言葉を放つ人はいるでしょう。
子供は残酷なもので、それを悪意とは知らずに放つ子もいるかも知れません。
知らぬ存ぜぬで無視をする。
それが2つ目の約束。
「にーしゃま、はにゃれにゃい」
「私から離れないこと」
3つ目はお兄様から離れないこと。
大抵の悪意からは遠ざけてくれるとのこと。
今回のお茶会ではお兄様は最年長グループです。
しかも侯爵子息であるお兄様の目の前で私を貶めるような馬鹿な子がいるとは思えません。
……ちゃんと礼儀作法を学んでいればですが。
でも、約束事を確認して思ったのですが、今更不安が増してきたのは何故でしょうねぇ。
応援ありがとうございます!
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