けもみみ幼女、始めました。

暁月りあ

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ネフリティス村

10提案にょ

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 あのあと駆けつけたのはアルモネの旦那さんだった。
 シーマというその人はアドニスそっくりの狼獣人だ。

「初めましてにょ」
「初めまして、よろしく」

 こちらは普通の友好関係を結ぶべく普通に対応する。
 そこから商団の人々と合流して村に行き、村長に挨拶する商団と別れた。
 いつもよりもやや遅い時間に帰ると、全てが準備出来た状態で、テーブルを行ったり来たりするイリシャの姿があった。クラヴィも席に着いており、エテルネルを見つけるとおっと顔を明るくした。

「おかえりなさい。今日は少し遅かったわね!」
「た、ただいまにょ」

 勢い良く抱き着いてきたイリシャに身を任せながら2人に商団が来たことを伝える。朝食に遅れた理由は納得してくれたが、心配したのだと怒られてしまった。もう少し遅ければクラヴィも探しに行く予定だったとか。探される前でよかった。
 慌しく朝食を終えると、商団との交渉の為にクラヴィが呼び出され、イリシャとエテルネルで売るものの準備をする。とはいえ、処理した皮を荷台に乗せるくらいなのだが。

「こんにちは」

 準備を終えた時にやって来たのはアルモネだった。その後ろにはクラヴィやシーマもいる。

「少しお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「あらあら、商談なら後で……」
「そちらのエテルネルについて、ご相談があるので」

 アルモネの一言で、いつもほんわりとした雰囲気のイリシャがすっと表情を消した。怒っている顔よりも怖い、何を考えているのかわからない表情だった。

「私かにょ?」

 こてん、と首を傾げても苦笑で返されるということは、外では言い辛いことらしい。
 家の中へ入り、机を挟んで向かうと、そこはぴりぴりとした空気が流れていた。お茶を出すまでの間、誰もが口を開かず、エテルネルは思わずきょろきょろとしてしまう。
 漸く話し始めたのは、アルモネからだった。

「単刀直入に言うと、エテルネルを商団で引き取りたい」
「にょ!?」

 朝何も言われなかったのにどういう風の吹きまわしかとエテルネルは椅子の上に立ち上がる。

「どういうつもりかにょ、アルモネ。私は了承した記憶はないにょ!」
「馬鹿。お前みたいな爆弾びっくり非常識人を放っておけるわけないでしょ。ここでは止められる奴もいないのに」
「非常識はスラッガードや他の皆くらいにょ! 私は違うに!!」
「いーや、あのギルドにいた時点で非常識だから」

 ふりふりを手を振ったアルモネはクラヴィとイリシャを見る。2人は天啓人相手に怯えることなく、静かに見返した。

「エテルネルは、アルモネさん達と一緒にいたわけじゃないのか?」
「いえ、私はただの知り合いなだけ。この子は貴方方の手に負えない力をもっているので、こちらで常識を教えたいのです」
「常識なら、この村でも教えられますよ」

 イリシャの反論に、アルモネは目を細めた。

「いつでも自分達の命を奪える魔物に常識を教えられると?」
「アルモネ酷い!!」

 技能の力加減や、天啓人同士のコミュニティーなどは確かに天啓人同士の方が良い。だからイリシャの言い分は論点がずれているといっていいのだが、その例えは余りに酷いと思う。
 エテルネルが机をバンバン叩いて抗議をしていると、行儀が悪いとイリシャに怒られてしまった。渋々椅子に座り直したが、その頬はぷっくりと膨れている。

「それなら学園に通わせたらいいんじゃないか。あそこなら力加減も分かってくるし、友達も出来るだろう」

 今は無理だが、次の春にでもとクラヴィが提案すると、アルモネがぷすっと笑った。

「お友達……」
「アルモネ! そんなに死にたいにょか」
「エテちゃん言葉が悪いわ」

 事情を知らないからこそ、イリシャに言い返すことも出来ずにエテルネルは膨れるしかない。それにアルモネは更に笑う。
 後で絶対にぶっ飛ばすと心に誓いつつ、エテルネルはクラヴィを見た。

「学園には、誰でも入れるにょ?」
「何か一つ技能を持っていれば入れるから、余裕だと思うぞ」
「あれ、エテルネル本当に入っちゃうの?」

 意外に乗り気なエテルネルの返答に、アルモネはきょとんとした。本当にエテルネルが学園へ行くとは思っていなかったようだ。

「全力で暴れられないわよ」
「人を戦闘狂みたいに言うにゃ」

 アルモネを睨めば、何を言っていると呆れた表情を返された。こいつはエテルネルを戦闘狂だと思っているらしい。
 確かに、戦場に出れば大人も子供も関係なく相手を制圧すれば勝ちなのだから戦う。目の前にいる敵を瞬時に倒さなければ自分が倒される。殺られるまえに殺るのは常識だった。そんな戦場の前線で戦っていたのだから、普通の人よりも戦っていてもおかしくはないだろう。決して戦闘狂ではない。

「んー、でもあそこなら確かに……」

 悪巧みをいしているのかは分からないが、少し考えた後にふんふんとアルモネは頷いた。

「普通の家庭には厳しいとは思いましたが、確かに学園なら安心して任せられますね」

 ころりと空気を変えたアルモネは分かりましたと立ち上がった。

「この子の保護者にはそのように伝えます。学園の手続きはこちらで済ませておきますので、ご心配なく」
「確かに、手続きを俺が手続きをすると子供でもないのに怪しまれるからな」
「うちの子でいいじゃない」
「イリシャ」

 ありがたい申し出だが、クラヴィがイリシャを諌めた。そこまで考えてくれていたのは嬉しいが、いつかは此処から出て行くのだからどちらにしろ断っていただろう。
 苦笑したアルモネは最後に、この後エテルネルを散歩に誘っていいか聞かれてエテルネルは昼食後ならと答えたのだった。

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