けもみみ幼女、始めました。

暁月りあ

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ネフリティス村

13プレゼントにょ

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 村に帰れば商団の人々は既に店を広げており、小さな村が活気づいていた。
 この村の特産は毛皮やそれを加工した商品が主となる。それを商人たちと村人で交渉し、値段を決めたり物々交換をしたりするのだ。故に村人総出で買い出しや売りつけ、そして子供達の笑い声が木霊していた。

「アルモネは、店出さないにょか?」
「私はこの商団の取締役ってところだから、この商団全体が店みたいなものよ。まあ、自分自身で売りつけるのも勿論好きだけどね」

 流石執着があっただけに彼女は商人としての能力を開花させていたみたいだ。
 エスの時はそこまで大規模なキャラバンであろうとも、中身は天啓人。その入れ替わりは速く、誠商人としてやっていける今の方がとても活き活きとしているように見えて少し眩しいくらいだ。
 そのまま2人で露店を見て回ることになり、賑わう人々の中から顔見知りに果物などをわけてもらいつつ、知らない人には付いて行かないように注意されつつも露店を冷やかして回った。

「およ、これはラピスラズリかにょ?」

 その中で宝石を扱う露店に立ち寄ると、少年の域を出たばかりであろう青年が店番をしており、エテルネルとアルモネを快く出迎えてくれる。

「こんにちは。商団長、ハーフのお嬢ちゃん」
「こんにちにょ!」
「やっぱりあまり人は来ていないみたいね」

 元気よく挨拶をするエテルネルの隣で、分かったようにアルモネが青年に声をかけた。

「はい。まあ、王都や大きな街でもない限りこんなもんですよ」
「なんでかにょ?」

 青年の苦笑にエテルネルが首を傾げると、アルモネが丁寧に教えてくれる。
 青年が売っているのは宝石を加工した銀のアクセサリーを中心としたものだ。王都や大きな街ならば需要があるが、村などでは装飾よりも実用を中心とした物の方が売れやすい。それこそ、青年が売る物は質が高く、乗じて値段も相応。故に村人でも買うのは記念日やプロポーズなどのとっておきくらいだろう。
 アルモネの説明に理解を示したエテルネルは青年の売るアクセサリーへと視線を移した。

「ラピスラズリ、ルビー、サファイア、アメシスト、トパーズ、ダイヤモンド、オパール。なるほどにゃ、代表的な物はきちんと抑えているにぇ」
「私の商団にいるのだもの。そこらにある宝石店よりも求めるものは高いわよ」
「商団長はいつも手厳しいからなぁ」

 了解を経て1つラピスラズリのペンダントを手にとって【鑑定】してみるが、特別な付与はついていないものの、宝石の価値も高く、宝石を囲むように蔓が巻き付いたような装飾はとても繊細で美しい。これならば貴族の夫人に受けそうだ。

「良い品だにょ」
「それ気に入ったのかな」

 子供に壊されては堪らないと少しはらはらと見守っていたのだろう青年に、エテルネルはそっとペンダントを返して気に入ったことを伝える。大切に扱う手つきと褒め言葉に青年は気を良くして満面の笑みを浮かべた。

「……これ、幾らなの?」
「え、商団長?」

 横からアルモネが買うような素振りを見せたことに驚きを隠せない青年に、アルモネ自身は余裕の笑みを浮かべた。

「アルモネ。私は別に……」
「女の子なのに装飾品一つもってないのは勿体無いし、それに貴女に今恩を売っておく方が末永くお付き合いする上で有意義なことでしょう?」
「……どんな難題を突きつける気かにょ」

 エテルネルがとても嫌そうな顔をしても、彼女は特に気にすること無くそのままペンダントを買い上げた。

「それに、貴女【特殊付与】の熟練度は高かったから、身を守る物一つくらいは作れるでしょう」

 ボソッと目の前にいる青年に気づかれないように呟いたその言葉に、エテルネルは溜息を吐きながらも受け取るしか選択肢はなくなってしまった。
 精巧に作られたペンダントは天啓人達が作った物に比べれば劣るが、それでも良い品であることには変わりなかった。彼女がこうして渡してくるということは、これを基準、もしくは高級であるという感覚を叩きこめということだろう。
 今貰ったペンダントをまじまじと見てみると、防御力は【鑑定】で見たところ+2と表示されている。アクセサリーの防御力などこれくらいなものだろう。むしろ、エスの時NPCから買えるアクセサリーは見た目以外の機能はなく、防御力はなかったのだから青年は随分腕利きの彫金師のようだ。

 彼女が言う【特殊付与】とは、【生産技能《メイキングスキル》:特殊付与】のことである。身に付けるアクセサリーや服、武器などの装備品だけではなく、箱や花束など様々な物に対して技能を付与することが出来る技能だ。
 しかし、技能と言っても、取得している技能しか付与することが出来ない。それに魔法はともかく剣などの道具を使う攻撃系の技能はそもそも【特殊付与】は出来ない仕様になっているので、今思いつくものとしたら【魔法技能《マジックスキル》》【回復技能《ヒーラースキル》】【補助技能《アシストスキル》】【召喚技能《サモンスキル》】【能動技能《オートスキル》】くらいなものだろう。
 もう1つ言えば、アクセサリーに使用している宝石の純度や価値、そして技能自体の熟練度などの条件が必要とされるため、技能の中でも【特殊付与】は特に条件が多い技能。故に、その熟練度を上げている者は自ずと生産系に傾倒してプレイしていたか廃人かの二択に分かれてくるというものだ。

「アルモネ、ありがとにょ」
「どういたしまて」

 礼を素直に言ったが、顔を上げた瞬間エテルネルは少し後悔した。
 アルモネの顔にははっきりと【特殊付与】をした時は【鑑定】させろと言っていた。彼女よりもエテルネルの方が【特殊付与】の熟練度が高いだけにその結果も気になるのだろう。
 顔を引き攣らせながらエテルネルはペンダントを懐に仕舞ったのだった。

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