けもみみ幼女、始めました。

暁月りあ

文字の大きさ
35 / 57
学園編

33週末のお出かけ ぱーと1

しおりを挟む
 週末。エテルネルの目の前で気分良さ気に鼻歌を歌っている少年が、手を降ってきた。

「では、また来週」

 そう別れを告げたのは待ちきれないという態度を全面に出したフォスターである。
 エテルネルは敗北を悟りつつ、苦笑と別れを返した。
 彼の姿が見えなくなってから、エテルネルとフィリアは動き出すことにした。

「あとで殿下と落ち合うの?」
「警護関係でそんなの出来るわけがないにょ。きっと、おねだりした時にもっと良い条件でも出されたんじゃないかにょ」

 少し遠い目になりながら、何も知らないクラスメイトの質問に答える。
 週末に来るまで毎日のようにエテルネルへフォスターが『おねだり』をしていたのは周知の事実だ。昨日、陛下の許可が出るなら良いと条件を出してしまったのが敗北の原因か。あの笑顔を見ていれば言わずとも結果はわかった。それをクラスメイトに話す必要はないだろう。
 ともあれ、エテルネルもあまり探索をしていない王都である。何度も王都の城下を歩いているフィリアに頼ってここは楽しませてもらうことにしよう。

「待ってたぞ」

 準備が終わった後、主に生徒が外出の時に使う門のところで待っていたのは、髪色をよくある茶髪に染めたフォスターであった。瞳の色も地味な色合いに変えており、【忍術技能《シノビスキル》】か【幻術技能《イリュージョンスキル》】の効果だと思われる。首から下げているペンダントが技能の発現場所であるようだ。
 服装もいつもより生地のランクを低くし、見た目からして殿下であることが分からないように工夫していることは【鑑定】からわかった。
 その隣で静かに立つ女性がぺこりとエテルネル達に頭を下げた。

「ご学友とお出かけと伺っております。護衛のウルドと申します。大人が介入しては不服かと存じますが、何卒ご容赦を」

 頭を下げた時にさらりと銀色の髪が揺れ、どこまでも澄んだ美しい水色の瞳が、フィリアの心臓を掴んだのは見ていればわかった。女性同士であるから色恋沙汰には発展しないだろうが、エテルネルの弟が渾身の力を込めて作り上げただけはある容姿キャラである。それに加えて精錬された仕草が、まだ幼い少女にとっては憧れの対象となる。
 肩を竦めたエテルネルは、フィリアが不快そうではないと判断し、王都初日に行動を共にしたウルドに頷いた。

「久しぶり。この前はお世話になったにょ」
「あれ、ウルド殿とエテは知り合いだったのか」

 驚くフィリアとフォスター。ウルドはいいのか、という視線を投げてきたので曖昧な笑みを返した。

「王都に行く途中の馬車で一緒になってにょ。ついでに安全な宿を教えてもらったにょ」
「そう、いえば、お父さん、お母さん、いない」
「まあ妊婦さんの傍に出来るだけいてほしいって頼んだのは私だからにぇ。王都に着けばなんとでもなると思ってたけど、ウルドがいて助かったにょ」
「なるほど、そういう経緯が」

 全て本当の話だ。ただ、それ以前の話を抜いているだけで。
 エテルネルの説明でフィリアとフォスターは納得したようだから、余計な話も必要はない。何故警護ではなく、そして呼び捨てなのかは道中とても気の置けない中になったとでもごまかしておけばいい。

「んじゃあ、そろそろ行こうにょ。今日はいっぱい楽しむんだからにぇ!」
「あぁ、そうだな!」
「うん。雑貨屋さん、近い、から。そこから、いこ」

 自己紹介もそこそこに動き出したエテルネル達は、フィリアの言うとおり、まずは雑貨屋から行くことにした。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...