やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと

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本編

嫌な予感

「ふん、お前にしては上出来だな。」

この目の前の男の尊大な態度は俺を一々イライラさせてくるが、話をさっさと終わらせたい為黙っている。
父のこの自信と生意気はどこから来るのだろうか。

「まさか本当にお前が王太子の側近になるとはなぁ。お前ごときがなれるなんて思ってもいなかった。」

相も変わらず隣には知らない女を侍らせている。こんな男が侯爵になっていることの方がおかしいってもんだ。
さっさとこいつが退位しないものかと思うが、女と仲良くやっている様を見るとまだまだ先は長いようだ。

「…はぁ、お前はうんともすんとも言わなくなったから面白くないな。前はピーピーとうるさく鳴いていたというのに。

無能な上に興味を引くことも出来ない奴め。興が冷める、さっさと出ていけ。」

一応の報告義務としてここに来ただけなのに散々な言われようだ。早く出ていきたかったから好都合だが。

父の品性の無さとはかけ離れた上品で重厚な扉から出ていき、外で待機していたハルと一緒に母の部屋へ行く。

「…レオベルト様は凄い人です。王太子の方に見出されて、他の貴族の方からもまだ幼いにも関わらず一目置かれ始めています。それに、ほかのご子息達と違って、レオベルト様はもう家業の1部をなさっていますし、その上……」

道中でハルは口をモゴモゴさせながらそう言った。父の侮辱の発言は耳のいいハルには聞こえていたはずだ。
父のただの当てつけに近い暴言に対抗するようにハルは一生懸命に俺を褒めた。

エルフという種族は全くと言っていいほど表情がない。美しい顔が石のように動かないから、不気味とも言われるし神秘的とも言われる。エルフであるハルも、前の時間軸では例にも漏れず表情が抜け落ちたようだったが、今では一緒にいると顔を赤くしたり青くしたりして、コロコロと表情が変わる。

それだけ心を開いてくれたんだな…

「いつも心配させてごめんな。」

思わす俺は背伸びしてハルの頭を撫でた。

「…っ?!へ、あ…」

ハルは顔を真っ赤にして服の袖をぎゅっと握って混乱してしまった。

「あ、いきなりごめん。大丈夫か?」

「あえ…は、はい!大丈夫、です。ただ、その、嬉しくて…」

ハルは頭を撫でただけで、まるで神からの祝福を受けたかのようにうっとりと目を細めていた。

そんなハルをみていると、図々しくも俺はこの世界に存在していいんだと思えてしまった。

廊下を歩いていても、ずっと幸せそうにしていて、自分はそんなに大した人間じゃないのにこんなに喜んでいて気まづいなぁと思いつつも、人から大切に思われるのは母以外には初めてで、なんだか心があったかくなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お母様、いらっしゃいますか?レオベルトです。」

「ええ、入って。」

ハルは外に居ようとしたが、俺は母にハルと会わせたくて中に入れた。

「話は聞いているわ。王太子の側近だなんて、レオは王太子に選ばれる程の人になったのね。よく頑張りましたね。」

お母様は微笑んで俺の頭を優しく撫でてくれる。

百合のようなお母様は、最近ますます痩せてきていて、何度もお見舞いにいってご飯を運んでも、中々食べられなくてどんどん衰弱していた。
だけど、お母様はいつまでも俺の事を気にかけてくれて、こうやって情報も収集してエンフィア家の経営を今も尚支えている。

そんなお母様は今日も俺に慈愛の笑みを浮かべてくれた。

「お母様…」

「でも、気をつけないといけませんよ。我がエンフィア家は海上貿易を司る家。政治の補助をするにしても、貿易に関する事を王家に口を出させてはいけない。貿易の権利はあくまで我々にあるのだと常に…げほっ、げほ…っ!」

「お母様っ!」

「っ、ふ、はぁ。…大丈夫よ。わたしは大丈夫。心配かけてごめんなさいね?」

「お母様…お父様は薬の手配をしてくれていますか?」

「ええ、最低限はしているわ。私がいなくなればエンフィア家が立ち行かなくなる事は理解しているみたい。」

「…そう、ですか。」

「そんな悲しい顔しないで。お母様はレオが幸せでいてくれれば、それでいいんだから。」

優しく微笑むお母様。
日に日に痩せ、声はか細くなり、元々儚げな雰囲気はさらに増している。

…俺を前の時間軸から愛してくれたお母様が、消えてしまう。前の時間軸のままだったら、俺が7歳になる頃にはもう…

「…お母様はいなくならないわ。レオ。いつまでもレオの傍にいる。泣く事なんて何も無いのよ。

それにね、レオの事を大事に考えてくれる人は私だけじゃない。」

「…え?」

お母様はにっこりと笑って、ハルを見つめた。

「僕…ですか?」

後ろに待機していたハルはたじろいた。

「そうよ。レオの事を一番に考えてくれているでしょう?ずっと寄り添う様にレオの事を見つめて、自分の事よりもレオの事を考えてくれている。

…ありがとう。レオの傍につねにいられない私は、レオを社交の場での全てから守ってあげられない。でも、貴方がいるだけで、レオは心強いと思うし、私も安心だわ。」

「僕はただの従僕です……レオベルト様の支えだなんて恐れ多いです」

ハルは震えて俯いてしまった。

「どうして?ハルは俺の心の支えだよ?」

思わず、俺はハルの手をとってそう語り掛けた。

「えっ、あ、てっ、手……」

申し訳なさそうに震え上がる代わりに、湯気が出そうな程茹で上がってしまったハルを見て、お母様はクスクスと笑った。

「あらあら、青春ね。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お母様の部屋を出て、俺は自分の部屋に戻ってきた。

「レオベルト様。王宮に向かう明後日に向けて新しい衣装が届いたようです。」

ハルが持ってきた正装は俺の髪に似た青っぽい黒の上質そうな布に俺の瞳に似た金の刺繍が施され、とんでもなく手が凝っているのが人目でわかった。

重厚でありながらも洗練された正装。目を奪われる程に美しい正装。

俺は息を飲んだ。

それは美しいからではない。

この正装は……


「レオベルト様……?お気に召しませんでしたか?」

ハルの困惑した声が聞こえる。


あぁ皮肉にも、俺が前の時間軸で王宮に呼ばれたアランを追いかけて王宮に不法で乗り込み、王太子との確執が生まれた時に来ていた一張羅と全く同じだった。

前の時間軸とは全然違う方向に話が進んでいるのに、この正装だけは前と寸分変わらないデザインだ。

これで王宮に行って王太子にあうだと……?不吉すぎる。

この服を見ただけで、王宮に行くのが元々嫌だったのに、なんだか嫌な予感がしてきた俺はハルの声も耳に入らず、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

作者です。

更新遅くなりすぎてしまい、ほんとうに申し訳ありません!💦

待ってくださった方がおりましたら、ほんとうに面目ないです……
これからはなんとか月1を保ちたいとは思っているので、どうか末永く宜しくお願いします
感想 34

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みんなの感想(34件)

すこってぃ
2026.01.05 すこってぃ

これからどうなってしまうんだー!
危機回避したいのに、可もなく不可もない対応しているのに……!
とても面白い作品で読み始めたらとまりませんでした

解除
aya
2025.09.04 aya

とても素敵な作品で一気に見てしまいました✨続きを楽しみにしています!

解除
るるぅ
2025.07.28 るるぅ

はじめまして
更新嬉しいです!楽しみに待ってまーす

解除

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