5 / 9
第5話
しおりを挟む
銀狼族は、太古に起きた戦争の時に亜人の帝国を守るために奮闘した一族である。
しかしその戦争のせいで一族の戦死者は多数にのぼり、人手不足になっていた。
しかし、それでもそれなりに幸せな暮らしを送っていたのだ。その日までは。
だが、それを再び壊したのが、人間であったのだ。
教会はかつての対戦で軽くはない傷を負わされた銀狼族が弱っているのを好機と見たのだろうか。銀狼族に多大な懸賞金をかけた。
その額はゆうに家が2個立つほどの金額で、賞金稼ぎや賊は銀狼族を追い回し始めた。
最初のうちこそ種族の力の差で撃退できていたが、そこで諦めないのが人間という種族のずる賢いところだ。
次に彼らは人質を取り始めた。
子供や女を人質にとり、助けに来た者を殺し、あとに子供も女も殺し、虐殺を始めたのだった。
元々、基礎的なパフォーマンスは銀狼族の方が人間よりはるかに高かったのも一因だろうか、人間の僻みというか妬みというか、ともかくそんな負の感情から虐殺は更にエスカレートした。
そんな地獄の中、私の家族は命からがら追っ手から逃れようとしていた。三日三晩泣く暇もなく森の中を走った。
だが、奴らも一筋縄では行かず、ついに母親が捕まってしまう。
奴らは本拠地に母親を連れて行き、高いやぐらに処刑場を作った。そして、私をおびき出すために、大声で叫び続けたのだった。
出てこい。来なければ母親が死ぬぞ。
何時間も、何時間も叫ばれるその声に、行けばどちらも殺されるとわかっていると言うのに私は近づいてしまった。
親が殺されるのを、黙って見ていられなかった。
どうしようもなく、無力さをかみしめながら処刑場のすぐ近くに行った私の頭の中に、声が響いてきた。
「「逃げなさい」」
声がした方を向くと、母親が穏やかな目でこちらを見ていた。それは、いつもと変わらない日常を感じさせるとともに、もう取り戻せない尊い日々を感じさせた。
あぁ、もうあの頃には戻れないんだ。
泣きそうになる目を抑え、意を決して走り出した。それから暫くした時、日が暮れ始めた頃だったか、後ろで爆音が聞こえ、振り返ると奴らの本拠地が燃えていた。
その炎の含む魔力は、間違いなく母親のもので、それだけで母親が全ての力を使って爆発魔法を使ったということがわかった。
それをみて、母親の方へと反射的に走り出しそうになるも、反対方向へと駆け出した。
目にたまるのは、涙。
口にたまるのは、噛み締めたことによって流れ出した血だった。
しかしその戦争のせいで一族の戦死者は多数にのぼり、人手不足になっていた。
しかし、それでもそれなりに幸せな暮らしを送っていたのだ。その日までは。
だが、それを再び壊したのが、人間であったのだ。
教会はかつての対戦で軽くはない傷を負わされた銀狼族が弱っているのを好機と見たのだろうか。銀狼族に多大な懸賞金をかけた。
その額はゆうに家が2個立つほどの金額で、賞金稼ぎや賊は銀狼族を追い回し始めた。
最初のうちこそ種族の力の差で撃退できていたが、そこで諦めないのが人間という種族のずる賢いところだ。
次に彼らは人質を取り始めた。
子供や女を人質にとり、助けに来た者を殺し、あとに子供も女も殺し、虐殺を始めたのだった。
元々、基礎的なパフォーマンスは銀狼族の方が人間よりはるかに高かったのも一因だろうか、人間の僻みというか妬みというか、ともかくそんな負の感情から虐殺は更にエスカレートした。
そんな地獄の中、私の家族は命からがら追っ手から逃れようとしていた。三日三晩泣く暇もなく森の中を走った。
だが、奴らも一筋縄では行かず、ついに母親が捕まってしまう。
奴らは本拠地に母親を連れて行き、高いやぐらに処刑場を作った。そして、私をおびき出すために、大声で叫び続けたのだった。
出てこい。来なければ母親が死ぬぞ。
何時間も、何時間も叫ばれるその声に、行けばどちらも殺されるとわかっていると言うのに私は近づいてしまった。
親が殺されるのを、黙って見ていられなかった。
どうしようもなく、無力さをかみしめながら処刑場のすぐ近くに行った私の頭の中に、声が響いてきた。
「「逃げなさい」」
声がした方を向くと、母親が穏やかな目でこちらを見ていた。それは、いつもと変わらない日常を感じさせるとともに、もう取り戻せない尊い日々を感じさせた。
あぁ、もうあの頃には戻れないんだ。
泣きそうになる目を抑え、意を決して走り出した。それから暫くした時、日が暮れ始めた頃だったか、後ろで爆音が聞こえ、振り返ると奴らの本拠地が燃えていた。
その炎の含む魔力は、間違いなく母親のもので、それだけで母親が全ての力を使って爆発魔法を使ったということがわかった。
それをみて、母親の方へと反射的に走り出しそうになるも、反対方向へと駆け出した。
目にたまるのは、涙。
口にたまるのは、噛み締めたことによって流れ出した血だった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる