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第7話
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「ん………」
ここは…?私は死んだのだろうか。さっき賊に追い詰められて…あれ、それからどうなったのだろうか?
少し体を起こして周りを見ようとすると、あることに気がついた。傷口が治療されているのだ。
素人目にも高そうとわかる布と、それを抑えている革製のベルト。血を抑えるために使われたのだろうか、確かに血は止まっていて、さっきまでのグロテスクな鮮血は目に入らない。
しかも、さっきまで寝ていたから気がつかなかったが、今まで見たことのない造りの暗い緑色をした服が毛布代わりにかけられていた。
…何処かの……軍服だろうか。昔、一度だけ帝国の首都に行った時に軍人が来ているのを見たことがある。しかし、これほどしっかりした作りではなかった気がする。
誰かが、助けてくれたのだろうか。
手足に枷もはめられていないし、奴隷商や賊に捕まったわけではなさそうだ。
近くには焚き火がされていて、暖がとれるようになっている。そして、火がよく当たる場所に魚がかけられていて、焼き魚まで作られている。
本当に、誰が……?
そう思っていると、足音が聞こえた。
それに気がついて音のする方向を見ようとすると、首をそちらに向ける前に話しかけられた。
「お、良かった。生きてたみたいだな」
上半身を薄い砂漠色のシャツに身を包み、腕まくりをしていて、腰元には無骨ながらも凶悪さを滲み出している刀を携えている男は、二十代くらいに見えた。
同い年くらいかな…?
「あ、貴方が助けてくれたんですか?」
少し声をうわずらせながら、尋ねてみる。
「そう……だな、偶々とはいえ、助けたのは私だ」
そうか、この人が私を。
だとしたら、意識が消える土壇場でかすかに聞こえた地獄の底から響く声ような声も、この人のものだろうか。
そう思うと温和な彼の雰囲気も、飾りのように見えかけたが、初対面の人に対してここまでしてくれる人が悪い人だとは思えなかった。
「ありがとう、ございます」
「…日本語が通じるんだな。外国の方だと思っていたが……」
「日本語…?日本とは何ですか?」
○
絶句した。
先ほども銃器すら持たない中世山賊のような奴らがいたり、銀髪の、これまた中世のライトアーマーのような鎧と丈の短いフードケープを着ている少女がいたり、訳がわからなかったりもしたが、それにしたって、今回のは無視できない。
「日本を…知らないのか?」
尋ねると、彼女は申し訳なく思ったのか、それともこちらの機嫌を損ねたと思ったのか、首をすくめながら言う。
「すみません。知らないです」
「……………そうか、因みにここの地名は分かるか?」
「えっと、多分ですけど。帝国領のアメジスト地方だと思います」
「……ユーラシア大陸という言葉に、聞き憶えはないか?」
「いえ、聞いたことないです」
「そう……か」
ユーラシア大陸は、世界中の人が知っている常識的なものだ。目の前の少女が日本語を話していることからも、辺境の地だとは思えないし、帝国領という言葉にもアメジスト地方という言葉にも聞き覚えがない。
そう、こちらの常識が全く通じず、まるで別世界のようだ……って、別世界か。
確かに彼方より科学力もないようだし、自然が多く残っていて、中世の小説の中のようだし。
さらに、私は確かに向こうで絞首刑になった訳だし。
「なぁ、私は故郷から遠く離れた場所に来たみたいで、どうすればいいか分からないんだが、この世界での生き方を教えてもらえないだろうか?」
「…そうですか。まぁ、助けてもらった御恩もありますし、その位ならお安い御用ですよ」
「感謝する」
この場所に来て出逢ったのが、この少女で良かったな。なんて、今の自分の年齢が20代になっている事をさらさら忘れながら、中身30も半ばに入っている陸軍中尉は思うのだった。
そう、この少女との出会いが、新しい物語の始まりであったのだ。
ここは…?私は死んだのだろうか。さっき賊に追い詰められて…あれ、それからどうなったのだろうか?
少し体を起こして周りを見ようとすると、あることに気がついた。傷口が治療されているのだ。
素人目にも高そうとわかる布と、それを抑えている革製のベルト。血を抑えるために使われたのだろうか、確かに血は止まっていて、さっきまでのグロテスクな鮮血は目に入らない。
しかも、さっきまで寝ていたから気がつかなかったが、今まで見たことのない造りの暗い緑色をした服が毛布代わりにかけられていた。
…何処かの……軍服だろうか。昔、一度だけ帝国の首都に行った時に軍人が来ているのを見たことがある。しかし、これほどしっかりした作りではなかった気がする。
誰かが、助けてくれたのだろうか。
手足に枷もはめられていないし、奴隷商や賊に捕まったわけではなさそうだ。
近くには焚き火がされていて、暖がとれるようになっている。そして、火がよく当たる場所に魚がかけられていて、焼き魚まで作られている。
本当に、誰が……?
そう思っていると、足音が聞こえた。
それに気がついて音のする方向を見ようとすると、首をそちらに向ける前に話しかけられた。
「お、良かった。生きてたみたいだな」
上半身を薄い砂漠色のシャツに身を包み、腕まくりをしていて、腰元には無骨ながらも凶悪さを滲み出している刀を携えている男は、二十代くらいに見えた。
同い年くらいかな…?
「あ、貴方が助けてくれたんですか?」
少し声をうわずらせながら、尋ねてみる。
「そう……だな、偶々とはいえ、助けたのは私だ」
そうか、この人が私を。
だとしたら、意識が消える土壇場でかすかに聞こえた地獄の底から響く声ような声も、この人のものだろうか。
そう思うと温和な彼の雰囲気も、飾りのように見えかけたが、初対面の人に対してここまでしてくれる人が悪い人だとは思えなかった。
「ありがとう、ございます」
「…日本語が通じるんだな。外国の方だと思っていたが……」
「日本語…?日本とは何ですか?」
○
絶句した。
先ほども銃器すら持たない中世山賊のような奴らがいたり、銀髪の、これまた中世のライトアーマーのような鎧と丈の短いフードケープを着ている少女がいたり、訳がわからなかったりもしたが、それにしたって、今回のは無視できない。
「日本を…知らないのか?」
尋ねると、彼女は申し訳なく思ったのか、それともこちらの機嫌を損ねたと思ったのか、首をすくめながら言う。
「すみません。知らないです」
「……………そうか、因みにここの地名は分かるか?」
「えっと、多分ですけど。帝国領のアメジスト地方だと思います」
「……ユーラシア大陸という言葉に、聞き憶えはないか?」
「いえ、聞いたことないです」
「そう……か」
ユーラシア大陸は、世界中の人が知っている常識的なものだ。目の前の少女が日本語を話していることからも、辺境の地だとは思えないし、帝国領という言葉にもアメジスト地方という言葉にも聞き覚えがない。
そう、こちらの常識が全く通じず、まるで別世界のようだ……って、別世界か。
確かに彼方より科学力もないようだし、自然が多く残っていて、中世の小説の中のようだし。
さらに、私は確かに向こうで絞首刑になった訳だし。
「なぁ、私は故郷から遠く離れた場所に来たみたいで、どうすればいいか分からないんだが、この世界での生き方を教えてもらえないだろうか?」
「…そうですか。まぁ、助けてもらった御恩もありますし、その位ならお安い御用ですよ」
「感謝する」
この場所に来て出逢ったのが、この少女で良かったな。なんて、今の自分の年齢が20代になっている事をさらさら忘れながら、中身30も半ばに入っている陸軍中尉は思うのだった。
そう、この少女との出会いが、新しい物語の始まりであったのだ。
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