とある女の身の上話

紅羽 もみじ

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1話 新生活の始まり

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1話 新生活の始まり
 桜の舞う季節。新生活のスタートに不安を抱きながらも、期待も膨らんでいく記念すべき日にふさわしい青空が広がる。とある一軒家では、この一家の主である岡田敏明と、その息子弘明が、晴れの舞台にふさわしい服装を身だしなみ良く着こなし、出発の時間を待っていた。

「おーい、ひろみ。そろそろ出発しないと、入園式の時間に間に合わないぞ。」
「わかってる!もうちょっとで済むから!!」

 敏明は、部屋の奥から聞こえてくる女性の声に、ため息をつきながらも優しい微笑みを浮かべている。

「ママ、まだかなぁ?」
「もう少しだって。ちゃんと間に合うから、もうちょっとだけ待ってような。」

 屈託のない息子の眼差しに、さらに優しい微笑みを浮かべて、敏明は優しく息子を諭した。
 数分後、奥から敏明の妻である岡田ひろみが駆け足で玄関を飛び出してきた。家族3人は、その勢いで車に一斉に乗り込んだ。

「弘明が心配してたぞ。ママまだかな、って。」
「今日つけようと思ってたイヤリングが見つからなかったのよ、仕方ないでしょ!ごめんねー、弘明。ちゃんと時間には間に合うからね。」
「渋滞してなければいいけどなぁ…。」
「大丈夫よ、いざとなったら貴方のお腹の調子が悪くて、落ち着くまで時間がかかったって言い訳する。」
「ええ…僕のせいにするの?」
「貴方は幼稚園とはたまにしか関わりないでしょ、私はこれからママ友との付き合いもあるの。初っ端から悪いイメージ持たれたくないから。」
「そりゃ大変だ。まぁ、間に合うだろう。君が準備に手間取ることを予想してたから、君には入園式の受付時間、ちょっと早めのを伝えてあったからね。」
「あら、じゃあ大丈夫ね。さっすが、私の旦那様。」
「お褒めに預かり光栄です。」

 一家は仲睦まじい会話を繰り広げながら、息子が入園する私立幼稚園、フェアリー幼稚園に向かう。敏明は息子が入る幼稚園に特に考えはなかったが、ひろみは私立の幼稚園に入れたいという強固な意志を持っており、ひろみの熱心な説得の上で、入園するに至った。ひろみ曰く、

「公立の子ども達の中には、年相応の教養すらない子もいる。そんな中に、弘明を入れたくない」

という意見が主だった。敏明は、その主張はどうかと思ったが、息子の可能性を広げると考えれば、私立幼稚園に入れることは大事な子どもにとって、いい経験になるだろうと考え、ひろみの私立幼稚園への入園させるという主張を承諾した。
 そして、入園式当日を迎えたひろみは、自分の子ども以上に期待に胸を膨らませていた。

「弘明ー、幼稚園入ったら何したい?」
「お絵描き!お友達たくさん作って、いろんなお絵描きしたい!」
「弘明の絵は上手だもんねー。たくさん描いて、お友達にプレゼントしてあげなさい。きっと喜んでくれるわよ。」

 ひろみは、弘明が入園した暁には、折を見て様々な習い事をさせようと画策していた。弘明が何に興味を示すかはわからないが、幼稚園での話を聞きながら、弘明にあった習い事を受けさせ、他の子ども達と歴然とした差をつけて卒園させよう、それが弘明のためでもある、と常々敏明にも話していたことだった。

「そういえば、この前話してた絵画教室はどうだったんだい?君が聞いてた前評判では、相当優良なところだったみたいだけど。」

 弘明は、幼稚園に入園する前から、絵を描くことが大好きで、これに目をつけたひろみは、弘明を絵画教室へ通わせようと考えていた。つい最近も、ひろみが広い情報網から拾い上げてきた絵画教室に見学に行ったところだった。

「あそこはダメ。先生はいいんだけど、子ども達の品がないったら。」
「弘明はどんな反応だったの?」
「お絵描きがたくさんできて楽しい、って言ってたけど、私はあそこに弘明を通わせるのは反対。絵の具の入った入れ物をわざと倒して遊んで、絵の具だらけになってる子どももいたのよ。弘明が変な影響を受けて、家でも変な行動をするようになったら目も当てられない。だから丁重にお断りしてきました。」
「なるほどね。…弘明はまた行きたい、とか言い出さなかったかい?」
「そこはご心配なく。弘明には、絵画教室には遊びに行っただけ、って言ったし、しばらくしてから教室に行きたいって言い出したけど、あそこは無くなっちゃったんだって、って言っておいたから。残念そうにしてたけど、しばらくお絵描きに付き合ったら元通りになったわ。」
「ならいいけど…。あんまり、弘明に悲しい思いさせてやらないでくれよ。色んなところに連れていくのは、弘明のためになるけど…」
「私が通わせたくないって思ったら、そのフォローもちゃんとしてやってくれ、でしょ。わかってるわよ。」

 ならいいよ、と敏明は運転に集中を向けた。
 ひろみは、弘明が少しでも興味を示したものについては敏感に反応し、その興味ごとに当てはまる塾やら教室を探してきては、弘明を連れ出して見学に連れて行っていた。だが、今までひろみの希望通りの塾や教室に出会えたことはなく、弘明自身は楽しんでいても、ひろみが入塾させることを固く拒否した。敏明は、色んな経験をさせることは弘明にとって良いことだとは思うが、なにぶん、その塾や教室に入れるかどうかは「弘明がどう反応したか」ではなく、「ひろみの持つ基準をクリアしているかどうか」が指標になっているため、弘明がまた行きたい、と言ってもひろみは頑として連れて行かなかった。その度に弘明は残念そうな顔をするため、敏明は様々な塾や教室に連れていくことはいいが、ひろみが通わせたくない、と思ったら、弘明の気持ちに寄り添ったフォローをするように、と何度も念を押していた。教育熱心なひろみの暴走をコントロールすることも、夫である敏明の仕事の一つであった。
 一家を載せた車は幼稚園の駐車場に到着し、敏明は空いているところを探し当てて車を停車させた。

「よし!幼稚園着いたぞー。弘明、たくさんお友達作ろうな!」
「うん!」
「いい?車から降りたら、パパとママから離れちゃダメよ。迷子になっちゃうからね!」
「はーい!」

 弘明は、無垢な目で両親を交互に見ては、元気な返事をした。一家は車を降りると、駐車場に隣接して立っている、教会のような建物に向かっていった。

「ここは、何度見ても綺麗なところだね。何十年と伝統のある幼稚園とは君から聞いてはいたけど…。よほど学園の母体が力を持ってるんだな。」
「私の目に叶った幼稚園なんだから、当然よ。ここに弘明を入れれば、きっと優秀な子に育ってくれるわ。」
「ぼく、ゆーしゅーな子になる!」
「そのためには、色んなことに挑戦しなきゃな。友達と遊ぶことも大事だぞ!」
「うん!パパ!」
「弘明がここを卒園する頃には、どうなってるか、私も楽しみだわ。」

 仲睦まじい様子でそれぞれの胸に期待を膨らませ、岡田一家は入園式の受付を済ませた。ここで弘明は幼稚園の職員に連れられて、他の入園児の中に混じって行った。弘明を見送ったひろみは、敏明の顔を見て背中を平手で叩いた。

「ちょっと。」
「な、何?」
「何で貴方が不安そうなのよ。顔に全部出てるわよ。」
「いや、不安にもなるよ…、弘明にとって、初めての集団生活だし。弘明も、僕たちの顔を何度も見返してたし。」
「貴方がそんな表情するから、弘明に不安が移っちゃったのよ。一家の主人なんだから、しゃきっとしてよね!」
「相変わらず手厳しいな、君は…」

 夫婦は、職員の案内に従って、保護者席に着席した。ひろみは、改めて幼稚園の施設を見まわし、満足そうに息をついた。

(ここなら、弘明がしっかり成長できる教育を受けられる。あとは、弘明がここに通う子たちの中で一番になれれば、小学校に進学したときにはスタートダッシュできる。…絶対に、他の子に負けるようなことはあってはダメ。ここからがスタートよ。)

 職員のアナウンスで、入園式の開始が告げられた。敏明は初め不安そうな面持ちだったが、弘明が職員の言うことをしっかり聞いて、席で座っている姿を見ると、ほっと安心した表情を見せた。
 式は滞りなく終了し、園児達は職員の声掛けで退席し、それぞれの教室に案内されていった。保護者はそのまま残り、改めて幼稚園の紹介、教育方針、年間スケジュールなどの説明会を受けることとなった。

「……色々、行事があるんだね、ここ。」
「それも私がこの幼稚園を選んだ理由よ。楽しいイベントが多ければ、弘明だって楽しいでしょう。公立じゃこうはいかないわよ。」
「なるほどね。なるべく、運動会や文化祭の時は休みを取れるように頑張るけど、保護者同士の集まりとかは君に任せて大丈夫かい?」
「ええ、それは問題ないわ。むしろ、保護者同士の集まりも私の目当ての一つなのよ。」
「というと?」
「どんな子どもがいるのか、何か習い事をさせたりしてるのか、色々探りを入れられるでしょ。他の子たちに遅れをとるわけにはいかないの、弘明のためにもね。」
「……まぁ、ほどほどにね。」

 敏明は、自分の子どもにはのびのびと健康に育ってくれれば良し、と思っているが、ひろみはとにかく弘明を誰よりも秀でた人間に育て上げる、と強い意気込みを持っている。

(……弘明のことよりも、ひろみの方が心配になってきたな。他の親御さん達と仲良くしてくれたらいいけども…)

 敏明のそんな不安を他所にひろみは、ほら、園内見学ですって、早く来て!とぼうっとしている旦那の腕を引っ張って行った。

 ほぼ1日にわたる日程を終え、車に乗り込む頃には日が傾き始めていた。まだ幼い弘明は、体力を使い果たしたのか眠そうにしており、朝から気合十分だったひろみの顔にも疲労感が見えていた。

「今日は、何か出前でも取ろうか。君も、流石に疲れたろう?」
「そうね、丸一日のスケジュールだから覚悟はしてたけど、説明に案内に、って色々詰め込まれて疲れちゃったわ。弘明、何食べたい?」
「んー…、ピザ、食べたい。」
「じゃあ、弘明が大好きなお店のピザの出前を取ろう。今日の夕飯はパーティーだ!」
「ぱーてぃー?!」

 先ほどまでうつらうつらしていた弘明は、パーティーという単語に一転して元気を取り戻し、その様子を見て敏明は幸せそうな笑みを浮かべた。ひろみも気持ちは同じらしく、嬉しそうにしている息子を見て、今日はよく頑張ったからご褒美よ!と頭を優しく撫でた。
 出前でピザが届くと、弘明は疲れを忘れたかのようにはしゃぎ周り、夕飯は文字通りパーティーの様相となっていた。弘明は、自分は「みどり組」になり、先生は2人いてこんな人、友達はもう何人もできて、と次々と話を始めた。ひろみも敏明も、楽しそうに話す息子を見ているだけで、心が満たされる思いになっていた。

(やっぱり、この幼稚園を選んで正解だった。弘明の様子や幼稚園の雰囲気次第では、小学校も私立にしてもいいかもしれないわ。)

 フェアリー幼稚園に入園が決まった当初、ひろみは小学校のことまで視野に入れて弘明のこれからのことを敏明に熱弁していたが、気が早すぎる、もう少し落ち着こう、と一度宥められていた。だが、ひろみの頭の中では既に、弘明の先々のことを考え始めていた。
 夕飯で騒ぎ切ったことで、いよいよ体力を使い果たした弘明は、敏明とお風呂に入り、寝支度を済ませると直ぐに寝付いていった。

「珍しいね、いつもは絵本を読んでくれって頼みに来るのに。」
「疲れたんでしょ。新しい環境に入って、夕飯であれだけ騒げば体力も底をつくわよ。」
「そういう君は、まだ体力は有り余ってるようだね。」

 ひろみはノートパソコンを開き、私立の小学校の評判がまとめられたサイトを読み漁っていた。

「有り余ってるわけじゃないわよ。疲れた体に鞭打って調べてるだけ。…貴方の言いたいことはわかってる。入園したばかりで、小学校のことを相談するのはまだ早いって言うんでしょ。でも、リサーチするのは私の勝手なんだから、これくらい許してよね。」
「そこまで制限する気はないさ。君が先々のことを考えて、情報をとことん集めるっていうライフワークまで、僕が止める権利はないからね。」
「理解が早くて助かるわ。…ねぇ、弘明のこと、これからどうしたらいいと思う?」
「どうって?幼稚園での生活のこと?」
「私は、私立を選んで正解だと思ったわ。先生たちもしっかりしてるし、設備も充実してる。毎日ってわけではないけど、字を覚えたり書いたりする授業みたいな時間もあって、のびのび遊ぶ時間もとってある。…でも、これだけの好条件を弘明の成長に生かせなかったら意味がないでしょう?何かできることはないのかしら。」

 敏明は、うーん…と考えるフリをしながら、またひろみの悪い癖が出てきた、どうしたものか、と模索した。敏明がこれまで何年とひろみとの日々を共にして学んだことは、真っ向から否定するとひろみの教育熱心な感情に火をつけることとなり、止めることができなくなる、ということだった。

(前にも、入園前から先々のことまで相談するのは時期尚早だって言ったばかりだからな…。さて、どう止めたものか。)

 考えを巡らせた時、今日の入園式後の保護者説明会で、保護者同士の集まりがあると話していたことを思い出した。

「君は、保護者同士の集まりに基本的に参加する気なんだよね?」
「ええ、もちろん。」
「そこから情報を得て、動き出した方が効率的じゃないかな。君も、他の親御さん達の話から、習い事をさせてるかとか、色々と探るつもりなんだろう?そこから動き出しても、弘明は理解が早い子だから、追いつけると僕は思ってる。それに、授業みたいな時間もあるってことだから、弘明自身が勉強に楽しみを見出したら、幼稚園児も対象になってる塾に行ってみるのもいいと思う。それにはまず、弘明は幼稚園の生活に馴染むこと、君は他の親御さんから情報を集めること、この二つが必要だ…、と思うけど、どう?」

 ひろみは、夫の考えにふむ…と考える仕草をして、しばらく考え込んだ。

「…確かに、貴方の言う通りね。じゃあ、まずは、来週の保護者同士の親睦会から動き出さないといけないわね!弘明のためにも、とにかく聞いて回ってみるわ!」

 ひろみは悩みがなくなってすっきりしたのか、ノートパソコンをシャットダウンして椅子から立ち上がり、ぐーっと背伸びをして洗面台へ向かっていった。一方の敏明は、これで正解だったのか…?と心の中で引っかかりつつも、今日丸一日仕事の疲れから、眠気が襲ってきた。

(まぁ、一先ず様子を見るとしようか。暴走し始める時は大体わかるし…、疲れた。寝よう。)

 敏明は、ひろみより一足先に寝床に入り、しばらくすると寝支度を済ませたひろみも寝室に入ってきた。2人の間には、すやすやと眠る息子の姿。

「まぁ、君の中でたくさん心配事があるのはわかる。だからこそ、今日はもう休もう。疲れを溜めたら、考えることだってできないからね。」
「…そうね、貴方の言うとおりだわ。今日はお疲れ様。ありがとう。」
「君こそお疲れ様。お休み。」

 敏明は寝室の小さな灯りを消し、一家3人は深い眠りについていった。
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