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2話 ママ友
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2話 ママ友
入園式から数日後、ひろみは再び幼稚園に足を運んでいた。敏明との話題に上がっていた保護者同士の親睦会に参加するためだ。ひろみは、うちの家庭は他とは違う、と言わんばかりにしっかりと着飾り、堂々たる態度で案内された席に座っていた。
ひろみは入ってくる他の保護者に逐一目を向けては、服装、所持している物、見た感じの年齢など、事細かに観察をしていた。
(この幼稚園に入ってくるだけあって、それなりの気品・教養はありそうな人たちだけど…、私と同レベルの人は少ないわね。まぁいいわ。ここでしっかりと、貴方達との器量の差を見せつけてやるんだから。)
ひろみの生来の性格から、夫や息子に関してもさることながら、何より自分自身が周囲より格上であると認めさせることに執心する癖があった。他の保護者が入ってくるたびに観察することも、この癖に起因するものであった。
職員の号令で、保護者同士の親睦会の開催を宣言された。まずは、親睦会の開催に際して、幼稚園の園長が挨拶のため登壇した。
「皆様、本日はお忙しい中、この度の親睦会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。フェアリー幼稚園園長として、厚く御礼申し上げます。」
園長は齢60になるとは思えないほどの毅然さを持ちつつ、気品漂い穏やかな人物であることが伝わってきた。
「本日の親睦会は、これから皆様のお子様が、私共の運営する園内に留まらず、園の外でも広く交友を持ち、より充実した生活を送っていただくためにも、皆様に親睦を深めていただきたいという趣旨で催させていただきました。ささやかではございますが、軽食のご用意もございますので、お召し上がりくださいませ。最後にこの度の親睦会が、皆様にとって良き出会い、そして良きつながりとなりますことをお祈り申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。」
保護者達は聞いているだけで自分たちの方が恐縮するような、園長の挨拶に圧倒された様子で大きな拍手を送った。ひろみも同じく感銘を受け、他の保護者と同じく盛大な拍手を送った。
その後、職員からの今回の親睦会の説明を受け、親睦会の会場に案内された。親睦会の会場へ行く道すがらでは、園児達が教室で過ごしている様子も見ることができ、保護者達は自分の子どもを見つけ、子どもも親の姿を見つけると、嬉しそうに大きく手を振ったり、ピースサインをしたりする無邪気な姿を見せていた。弘明はというと、入園式で聞いた通りすでに複数の友人を作ったようで、お絵描きに没頭しているようであった。ひろみは、息子の姿を見て、あの様子じゃこちらに気づくことはなさそうだ、と思い、我が息子らしいとくすっと笑いお絵描きに没頭する息子の姿を見送った。
(敏明さんほどじゃないけど、確かに弘明にとって初めての集団生活だから、園内でどう過ごしているか気にはなっていたけど、あの様子だと大丈夫そうね。良かった。)
ひろみは内心ほっと胸を撫で下ろし、職員の誘導に従って親睦会の会場となる部屋へ案内された。親睦会の受付を済ませた際、アルファベットが印字されたカードを渡されており、会場は大体4人から5人1組で班となるよう席が配置してあった。その机には、園長が挨拶で言っていた軽食が配膳されてあったが、とても一般で言われるところの軽食とは思えないような、豪勢な茶菓子、様々な種類の紅茶、コーヒーが振る舞われていた。
(予想以上だわ…。英国式のアフタヌーンティーじゃない、これ。)
ひろみは幼稚園側の親睦会の振る舞いに一瞬圧倒されたが、圧倒されている場合じゃないと気を取り直し、自分の班の席に着席した。班には、3人の女性が近づいてきて挨拶をしながら着席した。ひろみは、例の悪癖を発動させて、凝視こそしないが3人の女性の観察を始めた。
(…3人とも大したことないわね。まぁ、中流家庭より少し上くらいってところかしら。)
ひろみは、まずはこの3人に対して、自分たちの家庭はいかに格が違うかを見せつけるための方法を模索し始めた。
(色々ネットで見てみたけど、一番はママ友関係は舐められたら終わり。弘明のためにもここで私も頑張らなきゃ。)
職員のアナウンスで、自己紹介と子どもの紹介から始め、あとは軽食を楽しみながら歓談をするよう促された。日本人の特性なのか、こう言った場で、ファシリテーターや便宜上の班のリーダーなどをおかないと、誰から話し始めるかと無言の牽制が始まってしまう。ひろみはこの状況を予見しており、堂々と先陣を切って自己紹介を始めた。
「初めまして。岡田ひろみと申します。息子は弘明と言いまして、みどり組です。夫と3人で暮らしておりまして、夫は大手電機メーカーの営業部長をしております。よろしくお願いします。」
ひろみはわざわざ自身の夫の会社まで自己紹介の中に折り込み、満面の笑みで挨拶をした。完全に自身の班の主導権を握った、と感じたひろみは、時計回りに自己紹介していただけますか、と促した。ひろみに紹介を促された女性は、照れ笑いをしながら、じゃあ…、と切り出し、紹介を始めた。
「成川祥子と申します。息子は涼太と言いまして…」
ひろみの仕切りで班の自己紹介はとんとん拍子に進んで行った。ひろみと同じ班になったのは、成川、清水、そして林絵里という3名の女性だった。
「初めまして、林絵里と申します。子どもは里香と言いまして、岡田様と同じくみどり組です。趣味で裁縫や手芸をやっておりまして、よく子どもと一緒に人形を作っては遊んだりしています。どうそよろしくお願いいたします。」
自己紹介も終わり、ひろみの班は歓談に入っていった。
「こんなこといきなり聞いて申し訳ないんですけど、皆さん大体同じ年齢なんですかね?」
そう切り出したのは、林絵里と名乗った女性だった。
「と言うのも、もし皆さん同い年であるなら、もっと距離を縮められるように、気兼ねなく話せたらなと思ったので。」
「私は35歳です。成川さんや清水さんは?」
「私も、今年で35歳ですね。」
「私は今年で36歳です。ですけど、林さんが仰るように、これから交流させていただくなら、年齢なんて気にしないで気軽に話したいと思いますわ。」
「じゃあ、堅苦しく敬語もやめて、気軽に話しましょう。疲れますものね。」
絵里の提案で、班内では和やかな雰囲気が漂い始めた。一方でひろみは、その雰囲気に合わせた表情を作りつつ、気兼ねなく話せる関係性は築きたいが、主導権を一瞬奪われたことに苛立ち、自分がこの班の中で一番であることをアピールするためにはどうすべきかと考えさせられることとなった。
(もう…、こういうこと言う人いると嫌なのよね。せっかく私が班を仕切る役をかって出てあげたのに、台無しじゃない。)
内心ではそう悪態をつきながらも、会話の流れに合わせて、いかに自分や自分の家庭が他の人より上か、ということを自慢する機会を虎視眈々と窺っていた。
そこでひろみは、当初の目的を思い出し、ある話題を切り出した。
「そういえば、皆さんのお子様は、もう習い事とかされてますの?」
もし、他の家庭で既に習い事をさせているなら、弘明にも勧めてみようという魂胆からの質問だった。
「うーん、うちは祖母が花道の師範をやってて、習い事とまでは言えませんけど、よく祖母にお花の扱い方とかを教えてもらってる程度かな。」
「あら、清水さんのところは花道なの?うちは祖父が茶道の教室をやってるの。うちの子、渋い趣味してて、抹茶が好きなの。だから、祖父の家に行くたびにお茶と和菓子を食べてるのよー。」
ひろみは成川と清水の会話に、内心驚愕していた。ひろみの家庭は、裕福ではあったが花道や茶道などは誰も縁がなく、裕福であることを除けば一般家庭と何ら変わりはない。
(何なのよ、この人たち…。このままじゃ、弘明が置いてかれるじゃない。…いや、この人たちと無理に同じ土俵に立つ必要はない。それに、弘明はお絵描きができる。もう一回、絵画教室を探すことも検討しなきゃ…)
「岡田さん?大丈夫??」
「え!?ええ…」
「具合でも悪いの?無理しないほうがいいわ。」
「大丈夫、ちょっと考え事してただけなの。」
ひろみの頭の中で、様々な考え方が逡巡したからか、名前を呼ばれていることに気づかなかった。
「えっと、林さんのところは?何か習わせたりしてるの?」
「うちの子は特に習わせてるものはないかな。本人が興味を持ち始めたら考えようと思ってるんだけど、今は私と手芸するのが楽しいみたいで。週末になると、いつも手芸店に行って、作りたい人形を買ってきては作ってるの。」
「でも、針とか使うんでしょう?危なくないの?」
「今は、小さな子でも危なくないような道具があって、専用のキットとかもあるの。だからと言って、1人で作らせたりはしないけどね。いつも、私と一緒に少しずつ作るようにしてる。」
「岡田さんのところは?」
「え、ええ、うちも特には習い事はしてないんだけど、絵を描くのが大好きな子でね。近々、絵画教室に通わせてあげようかなって考えてるの。あとは、紙に何かを書くってことが好きみたいで、絵本に書かれてる字を一つずつ覚えて、字を書く練習をしてるわ。」
「すごーい、もうひらがなの練習してるのね。私はもう、幼稚園で教えてもらえるから任せちゃおうと思ってたんだけど、弘明くんに教えてもらうようにうちの子に言っておこうかなぁ。」
「うちの子も、最近少しずつ読めるようにはなったんだけど、書くことはできなくて。うちも弘明くんに教えてもらいなさいって宣伝しておこうかなぁ。」
ひろみは、成川と清水の反応に気をよくして、何とか正気を取り戻した。
(敏明さんには止められそうになったけど、字の読み書きの練習をさせておいてよかったわ。でも、いずれ追い抜かれる時が来るかもしれない…。自分の名前くらい、漢字で書けるように教えていこうかしら。)
親睦会も終盤に入り、すっかり打ち解けた4人は、SNSの連絡先を交換した。4人で話せる「ママ友チャット」と題してグループチャットを作成し、何か困ったことや悩み事があったら、お互いに助け合おう、と取り交わし、親睦会は終了となった。
親睦会終了時刻は、園児達が退園する時刻と重なっており、ひろみは弘明を拾って帰宅の途についた。
「幼稚園はどう?楽しい?」
「楽しい!先生すっごく優しいよ。」
「そう、それは良かった。お友達もできた?」
「うん!りょーた君って子と、りかちゃんって子と、きょーこちゃんって子!」
「あら、そうなの。実はね、ママもその子達のママとお友達になったのよ。」
「ママすごーい!ママもたくさんお友達できた!」
「他のママ達も、弘明のことすごーいって言ってたわよ。ひらがなを読んだり書いたりできることをすごく褒めてたわ。もし、お友達が教えてって言ってきたら、教えてあげてね。」
「うん!」
何の因果か、今日親睦会で打ち解けたママ友の子ども達は、子ども達同士でも繋がりを作っていた。成川の子どもが涼太、清水の子どもが京子、そして絵里の子どもが里香だった。
(一時はどうなるかと思ったけど、いい滑り出しね。花道や茶道なんて、どうだっていいわ。弘明にもできることはたくさんあるんだから。このままリードを保つためにも、油断は禁物ね。)
そうこう考えているうちに自宅に到着し、ひろみは弘明の面倒を見ながら夕飯の支度に入った。しばらくすると敏明が帰宅し、3人で食卓を囲む。
「幼稚園はどうだ、弘明。楽しいかい?」
「うん!お友達たくさんできたよ!」
「そうか、それは良かった。お友達のことをパパに教えてほしいな。」
「まずねー、りょーた君って子とお友達になった!お絵描きして仲良くなったんだよ!あと、きょーこちゃん!お家の絵を描いてたら、お花いっぱい描いてくれたんだ!あとあと、りかちゃん!僕たちがお絵描きしてたら、りかちゃんがひとりぼっちだったから、一緒にお絵描きしよって言って、仲間に入れてあげた!」
「そうかー、たくさん友達できて良かったな。喧嘩せずに、仲良くするんだよ。」
「うん!」
敏明は幼稚園の生活ぶりを聞いて安心したのか、ほっとした様子だった。
「しかも面白いのが、この子の友達のママたちと親睦会で一緒になって。ママ友にもなったのよ。」
「そうか、今日親睦会だって言ってたな。しかも弘明の友達のお母さん方とママ友になったとは…、すごい偶然だな。」
「班わけがされてたんだけど、多分、それぞれの班はクラスで固められてたんだと思うわ。だって、全員みどり組だったんだもの。」
「なるほどね。園側でも色々考えてくれたわけだ。」
3人は食事を終えると、ひろみは後片付け、その間に敏明と弘明はお風呂に入って行った。
(敏明さんに、絵画教室のこともう一回話してみよう。あと、漢字の勉強もさせたいのよね。何て説得したら折れてくれるかしら…。)
ひろみ自身も敏明とは長年の付き合いから、漢字の勉強をさせたいと言い出したならば、「もう少し先でいいんじゃないか」と日和見主義な返答が来ることは予見できていた。絵画教室も、散々調べ上げた挙句、目をつけたところが期待はずれだったことから、曖昧なままになってしまっている。この二つを敏明に納得させるため、多方面から方策を練りに練り上げ、弘明が眠った後、敏明を呼び出して話を切り出すことにした。
「ねえ、敏明さん。ちょっと相談なんだけど。」
「来るとは思ってたよ。親睦会で何かあったかい?」
「それがね、今日同じ班になったお母さん達とはママ友つながりを作れたんだけど、そのうちの2人の子どもが、花道や茶道をしてるって言うのよ。」
「…まさか、弘明に無理やり花道や茶道を習わせたい、ってわけじゃないよね?」
「そんなことは考えてないわ。それに、入園前からひらがなの読み書きを教えてたおかげで、勉強面では弘明が優秀だって証明できたしね。」
「それは良かった。君と弘明の努力の結果だね。」
「それはいいんだけど、ひらがなやカタカナはこれから幼稚園で少しずつみんな練習していくわ。あの子は簡単についていけると思うし、クラスでも一番にはなれると思う。でも、それじゃ足りないと思うの。だから、自分の名前だけでも漢字で書けるように、明日から練習させちゃダメかしら。」
「漢字かぁ…。」
敏明は、弘明をどうしてもクラスの中で一番にしたいというひろみの熱意を日々受け止めていることから、どう返事すべきか迷っていた。
(僕としては、ゆっくり覚えていったらいいんじゃないかと思うんだけどなぁ。でも、ひろみは言い出したら聞かないし…。いつもの「あれ」でいくか。)
「君の気持ちはわかったよ。そんな難しい漢字でも無いだろうから、教えてやってもいいと思う。けど、弘明が辛がったり、嫌がったりしたら、辞めてやってほしい。前々から言ってるから君も理解してると思うけど、幼少期に感じ取ったトラウマは、後々の成長に響く。それで、小学校の授業を真面目に受けなくなるのは、君にとっても本意じゃないだろう?」
「…ええ。」
「だったら、弘明が嫌がったらすぐやめる。それを僕と約束してほしい。」
「わかったわ。無理はさせないようにするから。」
ひろみが素直に承諾した様子を見て、敏明は内心ほっと胸を撫で下ろした。そしてひろみはすかさず、絵画教室のことも切り出した。
「あと、やっぱり絵画教室には通わせたいと思ってるの。でも、この前行ったところは通わせたくない。…職場の人に、良い絵画教室とか、絵について勉強できる施設がないか、聞いてみてもらえない?多少遠いところでも、私が必ず送り迎えはするし、それで家事を疎かにすることもしないと約束する。だから…。」
「わかった、協力するよ。でも、ここのところ会社も繁忙期だから、少し時間がかかるよ。それでもいい?」
「良いわよ、仕事が優先だもの。何か聞けたら、私に教えて。」
ひろみは、弘明に関する悩みが消えてスッキリしたのか、ふうとため息をついた。
「君は本当に、教育熱心だな。子どもが産まれるまでは、そこまで熱心になるとは思ってなかったよ。」
「私も妊娠した頃は、元気に育ってくれればそれでいいと思ってたわ。でも、弘明がどんどん成長していく姿を見てたら、とにかくできることは何でもやってあげたいって思うようになったのよ。…今日はもう疲れたわ。休みましょ。」
「そうだね、君も親睦会で疲れたろう。お疲れ様。」
「あなたも、お仕事お疲れ様。」
夫婦は互いのことを労いつつ、普段通り寝室に入って弘明を護るように間に挟んで布団に入った。敏明は仕事の疲れからか、すぐに寝息を立て始めたが、ひろみは敏明を説得できたことから、明日からの弘明への教育方針で頭をいっぱいにし、ひたすら考えを巡らせていた。
(弘明は、絶対に他の子に負けちゃダメ。恥をかかせないためにも、明日から頑張らないと。)
ひろみは、睡魔に意識を引き摺り込まれるまで様々なことを考え続け、起きた時にはいつもの朝を迎えていた。
入園式から数日後、ひろみは再び幼稚園に足を運んでいた。敏明との話題に上がっていた保護者同士の親睦会に参加するためだ。ひろみは、うちの家庭は他とは違う、と言わんばかりにしっかりと着飾り、堂々たる態度で案内された席に座っていた。
ひろみは入ってくる他の保護者に逐一目を向けては、服装、所持している物、見た感じの年齢など、事細かに観察をしていた。
(この幼稚園に入ってくるだけあって、それなりの気品・教養はありそうな人たちだけど…、私と同レベルの人は少ないわね。まぁいいわ。ここでしっかりと、貴方達との器量の差を見せつけてやるんだから。)
ひろみの生来の性格から、夫や息子に関してもさることながら、何より自分自身が周囲より格上であると認めさせることに執心する癖があった。他の保護者が入ってくるたびに観察することも、この癖に起因するものであった。
職員の号令で、保護者同士の親睦会の開催を宣言された。まずは、親睦会の開催に際して、幼稚園の園長が挨拶のため登壇した。
「皆様、本日はお忙しい中、この度の親睦会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。フェアリー幼稚園園長として、厚く御礼申し上げます。」
園長は齢60になるとは思えないほどの毅然さを持ちつつ、気品漂い穏やかな人物であることが伝わってきた。
「本日の親睦会は、これから皆様のお子様が、私共の運営する園内に留まらず、園の外でも広く交友を持ち、より充実した生活を送っていただくためにも、皆様に親睦を深めていただきたいという趣旨で催させていただきました。ささやかではございますが、軽食のご用意もございますので、お召し上がりくださいませ。最後にこの度の親睦会が、皆様にとって良き出会い、そして良きつながりとなりますことをお祈り申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。」
保護者達は聞いているだけで自分たちの方が恐縮するような、園長の挨拶に圧倒された様子で大きな拍手を送った。ひろみも同じく感銘を受け、他の保護者と同じく盛大な拍手を送った。
その後、職員からの今回の親睦会の説明を受け、親睦会の会場に案内された。親睦会の会場へ行く道すがらでは、園児達が教室で過ごしている様子も見ることができ、保護者達は自分の子どもを見つけ、子どもも親の姿を見つけると、嬉しそうに大きく手を振ったり、ピースサインをしたりする無邪気な姿を見せていた。弘明はというと、入園式で聞いた通りすでに複数の友人を作ったようで、お絵描きに没頭しているようであった。ひろみは、息子の姿を見て、あの様子じゃこちらに気づくことはなさそうだ、と思い、我が息子らしいとくすっと笑いお絵描きに没頭する息子の姿を見送った。
(敏明さんほどじゃないけど、確かに弘明にとって初めての集団生活だから、園内でどう過ごしているか気にはなっていたけど、あの様子だと大丈夫そうね。良かった。)
ひろみは内心ほっと胸を撫で下ろし、職員の誘導に従って親睦会の会場となる部屋へ案内された。親睦会の受付を済ませた際、アルファベットが印字されたカードを渡されており、会場は大体4人から5人1組で班となるよう席が配置してあった。その机には、園長が挨拶で言っていた軽食が配膳されてあったが、とても一般で言われるところの軽食とは思えないような、豪勢な茶菓子、様々な種類の紅茶、コーヒーが振る舞われていた。
(予想以上だわ…。英国式のアフタヌーンティーじゃない、これ。)
ひろみは幼稚園側の親睦会の振る舞いに一瞬圧倒されたが、圧倒されている場合じゃないと気を取り直し、自分の班の席に着席した。班には、3人の女性が近づいてきて挨拶をしながら着席した。ひろみは、例の悪癖を発動させて、凝視こそしないが3人の女性の観察を始めた。
(…3人とも大したことないわね。まぁ、中流家庭より少し上くらいってところかしら。)
ひろみは、まずはこの3人に対して、自分たちの家庭はいかに格が違うかを見せつけるための方法を模索し始めた。
(色々ネットで見てみたけど、一番はママ友関係は舐められたら終わり。弘明のためにもここで私も頑張らなきゃ。)
職員のアナウンスで、自己紹介と子どもの紹介から始め、あとは軽食を楽しみながら歓談をするよう促された。日本人の特性なのか、こう言った場で、ファシリテーターや便宜上の班のリーダーなどをおかないと、誰から話し始めるかと無言の牽制が始まってしまう。ひろみはこの状況を予見しており、堂々と先陣を切って自己紹介を始めた。
「初めまして。岡田ひろみと申します。息子は弘明と言いまして、みどり組です。夫と3人で暮らしておりまして、夫は大手電機メーカーの営業部長をしております。よろしくお願いします。」
ひろみはわざわざ自身の夫の会社まで自己紹介の中に折り込み、満面の笑みで挨拶をした。完全に自身の班の主導権を握った、と感じたひろみは、時計回りに自己紹介していただけますか、と促した。ひろみに紹介を促された女性は、照れ笑いをしながら、じゃあ…、と切り出し、紹介を始めた。
「成川祥子と申します。息子は涼太と言いまして…」
ひろみの仕切りで班の自己紹介はとんとん拍子に進んで行った。ひろみと同じ班になったのは、成川、清水、そして林絵里という3名の女性だった。
「初めまして、林絵里と申します。子どもは里香と言いまして、岡田様と同じくみどり組です。趣味で裁縫や手芸をやっておりまして、よく子どもと一緒に人形を作っては遊んだりしています。どうそよろしくお願いいたします。」
自己紹介も終わり、ひろみの班は歓談に入っていった。
「こんなこといきなり聞いて申し訳ないんですけど、皆さん大体同じ年齢なんですかね?」
そう切り出したのは、林絵里と名乗った女性だった。
「と言うのも、もし皆さん同い年であるなら、もっと距離を縮められるように、気兼ねなく話せたらなと思ったので。」
「私は35歳です。成川さんや清水さんは?」
「私も、今年で35歳ですね。」
「私は今年で36歳です。ですけど、林さんが仰るように、これから交流させていただくなら、年齢なんて気にしないで気軽に話したいと思いますわ。」
「じゃあ、堅苦しく敬語もやめて、気軽に話しましょう。疲れますものね。」
絵里の提案で、班内では和やかな雰囲気が漂い始めた。一方でひろみは、その雰囲気に合わせた表情を作りつつ、気兼ねなく話せる関係性は築きたいが、主導権を一瞬奪われたことに苛立ち、自分がこの班の中で一番であることをアピールするためにはどうすべきかと考えさせられることとなった。
(もう…、こういうこと言う人いると嫌なのよね。せっかく私が班を仕切る役をかって出てあげたのに、台無しじゃない。)
内心ではそう悪態をつきながらも、会話の流れに合わせて、いかに自分や自分の家庭が他の人より上か、ということを自慢する機会を虎視眈々と窺っていた。
そこでひろみは、当初の目的を思い出し、ある話題を切り出した。
「そういえば、皆さんのお子様は、もう習い事とかされてますの?」
もし、他の家庭で既に習い事をさせているなら、弘明にも勧めてみようという魂胆からの質問だった。
「うーん、うちは祖母が花道の師範をやってて、習い事とまでは言えませんけど、よく祖母にお花の扱い方とかを教えてもらってる程度かな。」
「あら、清水さんのところは花道なの?うちは祖父が茶道の教室をやってるの。うちの子、渋い趣味してて、抹茶が好きなの。だから、祖父の家に行くたびにお茶と和菓子を食べてるのよー。」
ひろみは成川と清水の会話に、内心驚愕していた。ひろみの家庭は、裕福ではあったが花道や茶道などは誰も縁がなく、裕福であることを除けば一般家庭と何ら変わりはない。
(何なのよ、この人たち…。このままじゃ、弘明が置いてかれるじゃない。…いや、この人たちと無理に同じ土俵に立つ必要はない。それに、弘明はお絵描きができる。もう一回、絵画教室を探すことも検討しなきゃ…)
「岡田さん?大丈夫??」
「え!?ええ…」
「具合でも悪いの?無理しないほうがいいわ。」
「大丈夫、ちょっと考え事してただけなの。」
ひろみの頭の中で、様々な考え方が逡巡したからか、名前を呼ばれていることに気づかなかった。
「えっと、林さんのところは?何か習わせたりしてるの?」
「うちの子は特に習わせてるものはないかな。本人が興味を持ち始めたら考えようと思ってるんだけど、今は私と手芸するのが楽しいみたいで。週末になると、いつも手芸店に行って、作りたい人形を買ってきては作ってるの。」
「でも、針とか使うんでしょう?危なくないの?」
「今は、小さな子でも危なくないような道具があって、専用のキットとかもあるの。だからと言って、1人で作らせたりはしないけどね。いつも、私と一緒に少しずつ作るようにしてる。」
「岡田さんのところは?」
「え、ええ、うちも特には習い事はしてないんだけど、絵を描くのが大好きな子でね。近々、絵画教室に通わせてあげようかなって考えてるの。あとは、紙に何かを書くってことが好きみたいで、絵本に書かれてる字を一つずつ覚えて、字を書く練習をしてるわ。」
「すごーい、もうひらがなの練習してるのね。私はもう、幼稚園で教えてもらえるから任せちゃおうと思ってたんだけど、弘明くんに教えてもらうようにうちの子に言っておこうかなぁ。」
「うちの子も、最近少しずつ読めるようにはなったんだけど、書くことはできなくて。うちも弘明くんに教えてもらいなさいって宣伝しておこうかなぁ。」
ひろみは、成川と清水の反応に気をよくして、何とか正気を取り戻した。
(敏明さんには止められそうになったけど、字の読み書きの練習をさせておいてよかったわ。でも、いずれ追い抜かれる時が来るかもしれない…。自分の名前くらい、漢字で書けるように教えていこうかしら。)
親睦会も終盤に入り、すっかり打ち解けた4人は、SNSの連絡先を交換した。4人で話せる「ママ友チャット」と題してグループチャットを作成し、何か困ったことや悩み事があったら、お互いに助け合おう、と取り交わし、親睦会は終了となった。
親睦会終了時刻は、園児達が退園する時刻と重なっており、ひろみは弘明を拾って帰宅の途についた。
「幼稚園はどう?楽しい?」
「楽しい!先生すっごく優しいよ。」
「そう、それは良かった。お友達もできた?」
「うん!りょーた君って子と、りかちゃんって子と、きょーこちゃんって子!」
「あら、そうなの。実はね、ママもその子達のママとお友達になったのよ。」
「ママすごーい!ママもたくさんお友達できた!」
「他のママ達も、弘明のことすごーいって言ってたわよ。ひらがなを読んだり書いたりできることをすごく褒めてたわ。もし、お友達が教えてって言ってきたら、教えてあげてね。」
「うん!」
何の因果か、今日親睦会で打ち解けたママ友の子ども達は、子ども達同士でも繋がりを作っていた。成川の子どもが涼太、清水の子どもが京子、そして絵里の子どもが里香だった。
(一時はどうなるかと思ったけど、いい滑り出しね。花道や茶道なんて、どうだっていいわ。弘明にもできることはたくさんあるんだから。このままリードを保つためにも、油断は禁物ね。)
そうこう考えているうちに自宅に到着し、ひろみは弘明の面倒を見ながら夕飯の支度に入った。しばらくすると敏明が帰宅し、3人で食卓を囲む。
「幼稚園はどうだ、弘明。楽しいかい?」
「うん!お友達たくさんできたよ!」
「そうか、それは良かった。お友達のことをパパに教えてほしいな。」
「まずねー、りょーた君って子とお友達になった!お絵描きして仲良くなったんだよ!あと、きょーこちゃん!お家の絵を描いてたら、お花いっぱい描いてくれたんだ!あとあと、りかちゃん!僕たちがお絵描きしてたら、りかちゃんがひとりぼっちだったから、一緒にお絵描きしよって言って、仲間に入れてあげた!」
「そうかー、たくさん友達できて良かったな。喧嘩せずに、仲良くするんだよ。」
「うん!」
敏明は幼稚園の生活ぶりを聞いて安心したのか、ほっとした様子だった。
「しかも面白いのが、この子の友達のママたちと親睦会で一緒になって。ママ友にもなったのよ。」
「そうか、今日親睦会だって言ってたな。しかも弘明の友達のお母さん方とママ友になったとは…、すごい偶然だな。」
「班わけがされてたんだけど、多分、それぞれの班はクラスで固められてたんだと思うわ。だって、全員みどり組だったんだもの。」
「なるほどね。園側でも色々考えてくれたわけだ。」
3人は食事を終えると、ひろみは後片付け、その間に敏明と弘明はお風呂に入って行った。
(敏明さんに、絵画教室のこともう一回話してみよう。あと、漢字の勉強もさせたいのよね。何て説得したら折れてくれるかしら…。)
ひろみ自身も敏明とは長年の付き合いから、漢字の勉強をさせたいと言い出したならば、「もう少し先でいいんじゃないか」と日和見主義な返答が来ることは予見できていた。絵画教室も、散々調べ上げた挙句、目をつけたところが期待はずれだったことから、曖昧なままになってしまっている。この二つを敏明に納得させるため、多方面から方策を練りに練り上げ、弘明が眠った後、敏明を呼び出して話を切り出すことにした。
「ねえ、敏明さん。ちょっと相談なんだけど。」
「来るとは思ってたよ。親睦会で何かあったかい?」
「それがね、今日同じ班になったお母さん達とはママ友つながりを作れたんだけど、そのうちの2人の子どもが、花道や茶道をしてるって言うのよ。」
「…まさか、弘明に無理やり花道や茶道を習わせたい、ってわけじゃないよね?」
「そんなことは考えてないわ。それに、入園前からひらがなの読み書きを教えてたおかげで、勉強面では弘明が優秀だって証明できたしね。」
「それは良かった。君と弘明の努力の結果だね。」
「それはいいんだけど、ひらがなやカタカナはこれから幼稚園で少しずつみんな練習していくわ。あの子は簡単についていけると思うし、クラスでも一番にはなれると思う。でも、それじゃ足りないと思うの。だから、自分の名前だけでも漢字で書けるように、明日から練習させちゃダメかしら。」
「漢字かぁ…。」
敏明は、弘明をどうしてもクラスの中で一番にしたいというひろみの熱意を日々受け止めていることから、どう返事すべきか迷っていた。
(僕としては、ゆっくり覚えていったらいいんじゃないかと思うんだけどなぁ。でも、ひろみは言い出したら聞かないし…。いつもの「あれ」でいくか。)
「君の気持ちはわかったよ。そんな難しい漢字でも無いだろうから、教えてやってもいいと思う。けど、弘明が辛がったり、嫌がったりしたら、辞めてやってほしい。前々から言ってるから君も理解してると思うけど、幼少期に感じ取ったトラウマは、後々の成長に響く。それで、小学校の授業を真面目に受けなくなるのは、君にとっても本意じゃないだろう?」
「…ええ。」
「だったら、弘明が嫌がったらすぐやめる。それを僕と約束してほしい。」
「わかったわ。無理はさせないようにするから。」
ひろみが素直に承諾した様子を見て、敏明は内心ほっと胸を撫で下ろした。そしてひろみはすかさず、絵画教室のことも切り出した。
「あと、やっぱり絵画教室には通わせたいと思ってるの。でも、この前行ったところは通わせたくない。…職場の人に、良い絵画教室とか、絵について勉強できる施設がないか、聞いてみてもらえない?多少遠いところでも、私が必ず送り迎えはするし、それで家事を疎かにすることもしないと約束する。だから…。」
「わかった、協力するよ。でも、ここのところ会社も繁忙期だから、少し時間がかかるよ。それでもいい?」
「良いわよ、仕事が優先だもの。何か聞けたら、私に教えて。」
ひろみは、弘明に関する悩みが消えてスッキリしたのか、ふうとため息をついた。
「君は本当に、教育熱心だな。子どもが産まれるまでは、そこまで熱心になるとは思ってなかったよ。」
「私も妊娠した頃は、元気に育ってくれればそれでいいと思ってたわ。でも、弘明がどんどん成長していく姿を見てたら、とにかくできることは何でもやってあげたいって思うようになったのよ。…今日はもう疲れたわ。休みましょ。」
「そうだね、君も親睦会で疲れたろう。お疲れ様。」
「あなたも、お仕事お疲れ様。」
夫婦は互いのことを労いつつ、普段通り寝室に入って弘明を護るように間に挟んで布団に入った。敏明は仕事の疲れからか、すぐに寝息を立て始めたが、ひろみは敏明を説得できたことから、明日からの弘明への教育方針で頭をいっぱいにし、ひたすら考えを巡らせていた。
(弘明は、絶対に他の子に負けちゃダメ。恥をかかせないためにも、明日から頑張らないと。)
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