正しい魔法の使い方

kumazaki0308

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2.いつもの日常。

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電車に乗るといつものように端っこの席に座る。

いつもなら、俺の隣は誰も座らないのだけれど、今日は女子高生が座った。
電車から降りて、会社まで歩いていると、自転車に乗った中学生に元気に挨拶をされた。

今日はなんだか調子が良い気がする。


会社に出社し、いつものように作業を淡々とこなす。
無事に午前の仕事を終えて、昼休憩にオンラインバンキングで、消費者金融から借りているお金の返済手続きをした。
36歳、独身、実家暮らし、彼女なし友達なし 

気づけば俺は、そんな人間になっていた。


スマホを触っていると、会社の先輩が俺に話しかけたそうに近づいてくるが、俺はスマホの画面を見続けて無視をする。
先輩は、遠い親戚で、既に両親は他界している。
今は実家で一人で暮らしているらしい。
奥さんはいなくて自炊もしないので、毎日コンビニ弁当を食べている。
昼休みは、ほぼ毎日のように俺に話しかけてくるが、俺はもううんざりしているので、冷たい対応を取る。

何か、先輩に未来の自分を重ねてしまい、イライラしてしまうのだ。


仕事が忙しかったので、今日は久しぶりに2時間残業をした。
いつもなら、1時間で帰るから割と身体が疲れている。
帰りの電車に乗るために、駅に来た。

いつもと違う時間。


車内は学生で溢れかえっていた。
高校生だ。
電車の中で勉強している子もいれば、友達とがやがや談笑している子もいる。
俺は、ドアの出入り口に突っ立ち、スマホをいじる。

俺の高校時代は、嫌な思い出でいっぱいだ。
いじめられていたし、付き合った彼女ともすぐに別れた。勉強は嫌いじゃなかったけど、学校という空間にいるのが耐えられず、俺は高卒で就職することにした。

嫌なことを思い出すから、楽しそうにしている高校生達を見るのが苦痛だ。

早く家に帰りたい。






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