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バイトもオーナーがスタッフに先に話をしてくれていたお陰で、僕が何も分からなくて新人と同じ扱いになっても、みんな嫌な顔をせずに面倒をみてくれた。
その中で不本意な意見を聞いたけれど。
「困ったことない?」「無事に戻ってきてくれて良かった」「体は平気?」は別にいい、「悠馬くんがいないとうちのお店の癒しがなくて」「相原、記憶失ってても可愛い」は、何だ?男に対しての言葉じゃないだろう。と頬を膨らませて怒っていると「小動物みたいで可愛い」とますます不本意なことを言われた。男女問わず失礼。オーナーは、笑ってるし。
僕は、厨房じゃなくて元々、フロアなようで、一通り教わって少し慣れてきた頃、夏ぐらいに辞めたアルバイトの人が遊びにきた、らしい。僕は、その日、ちょうど休みでいなかったため、後日、そのことを聞いたのだ。その人と僕は、仲が良かったらしく、僕はその人に懐いていたらしい。だから、僕のことを聞いてきたその人に、僕の出勤日を教えてあげちゃったけれど、問題ないよね?と女性スタッフが僕に意見を聞いてきたけれど、記憶がない僕に聞かれても何とも言えないしもう教えちゃった後なんだから今更ダメとも言えないしで、その日は、その人の話はそれで終わった。
◇◇◇◇
その話をしたのを忘れた頃、もうすぐラストオーダーになるという遅くの時間にその人は訪れた。
「いらっしゃいませー」
と店の奥で仕事をしていた僕の方にも来店の声が聞こえてくる。
「あっ、相原くん今日バイト入っていますよ?呼んできますね。」
という声が聞こえてきたので、そちらの方を除くとスタッフとは違う見慣れない姿が一緒にあるのに気づいた。その人を遠目に見て、ドクンと僕の胸を嫌な音がしたけれど、気のせいだと思って、僕を呼んだスタッフと一緒にその人の近くまで行った。
その人は、少し長めの黒髪で細身のちょっとチャラそうな人だった。服装のせいもあるのだろうとは思ったが。
「相原くん、この間いなかったから、この人が相原くんと仲が良かった津島さんだよ。津島さんは大学4年で卒論と就活で忙しくて夏にはバイト辞めちゃったんだけれどね」
僕はその人を見た瞬間、ドクドクと嫌な音を立てる心臓のせいで、スタッフの説明があまり頭に入ってこなかった。
「よぉ、悠馬。元気そうだな。この間来た時に聞いたんだが、お前記憶ないんだって。大変だな」
その人が僕を見ながら話し始めてハッとして慌てて、
「いえ、仲が良かったみたいですが、全く覚えてなくてすいません」
津島さんが近づいて耳元で「お前、俺といいことしたのも覚えてないの?」と囁いてきた。
僕はどんどん顔から血の気がなくなっていくのがわかった。その人から離れて津島さんが僕をニヤニヤと見ているのを見て体も震えてきた。
(この人のことも覚えていないはずなのに、どうして?)
少し離れたところにいた他のスタッフが僕の様子がおかしいのに気づいて「相原、大丈夫か?休んだ方がいいんじゃないか?」と心配そうに声をかけてきたのに対して「そうですね。ちょっと辛いので、オーナーに言います」一緒にいたスタッフと津島さんに「話の途中ですいません」と断って、厨房にいるオーナーのところまで急いで向かった。
厨房に入った瞬間に血の気がなくなった体を支えられなくなり、へたり込んでしまった。オーナーがすぐに気づいて
「大丈夫!?顔色悪いから、もう帰っていいよ」
「すいません、またご迷惑をおかけして」
「一人で帰れる?」
「友人…に迎えをお願いしますので、大…丈夫です」
力が入らなくなった足を頑張って動かして更衣室に向かった。
(大丈夫。大丈夫。何もされていない。)
頑張って落ち着こうと努力をしていたけれど、一向に不安は消えない。このままじゃ店に迷惑をまたかけると思い、震える手、震える声で大和へ電話した。すぐに電話に大和は出てくれた。
「もしもし、どうした?まだバイト中だったよな。」
「や…まと」
大和の声を聴いた瞬間に安心して涙がでてきた。涙で震える声で「今、家?」と聞いたら、すごい勢いで、
「お前、何があった?!今からお前のバイト先に迎えに行くから、そこで待ってろ」
「うん…」
◇◇◇◇
さすがにバイト先の中で待っているわけにはいかなかったから、先程の津島さんに会わない様に気を付けながら店の外で待っていた。
急いできてくれたようで、向こうから走ってくる大和が見えた。
「はあはあ、悠馬…、どうした?」
大和の姿を見て安心してまた涙がでてきた。そして津島さんに言われた言葉を思い出してまた体が震えた。
(怖い。どうして?あの人と何があったの?)
カタカタと震える体を抱き締めながら、下を向いて考えた。考え事に夢中だったが、ふわっと温かいものに包まれたのを感じてビクッと肩を揺らすと耳元で大和の声が聞こえた。
「大丈夫だから、俺がそばにいるから、俺のことを考えて」
背中をポンポンとあやすように撫でられて震えていた体が落ち着いてきた。大和の胸にもたれかかるようにしていたら、「悠馬、何があったんだ?」と撫でながら聞いてきた。僕もどう説明したらいいかわからなく、このことを知られたら大和に軽蔑されるんじゃないかという不安もあり「んっ、ちょっと体の調子が悪くて不安になったんだよね」と当たり障りのない内容の説明をした。大和は納得していなかったようだが、僕がやっと落ち着いたのがわかったのだろう、それ以上は追求してこなかった。
震えが収まり、大和と一緒に家路についた。
◇◇◇◇
突然、電話があった。俺は、ちょうど風呂から上がり髪を乾かしているところだったが、電話の相手を見ると悠馬だった為、急いで電話に出た。
電話口の悠馬は、おびえているようだった。俺は内容をほぼ聞かないで、急いで悠馬のバイト先へ向かった。向かう最中は(悠馬、何があった。無事なのか。)とずっと不安な気持ちのまま走って悠馬のもとへ向かった。
悠馬が遠目に見えて、無事な姿を確認してホッと一息ついた。でも、明らかに態度はおかしい。何があったんだ。まだ記憶は戻っていないようだが。
悠馬を落ち着かせるために抱き締めたが、嫌がらずに俺の腕の中にいてくれたことに不謹慎にも嬉しくなった。悠馬に事情を聞いたが、明らかに違う説明をしている様子だったがやっと落ち着いたのをまた乱したくなくて追求をすることをやめた。
(俺に話してくれないのか。俺は頼りないのか。またお前を守れないのか。)
悔しい気持ちで悠馬と一緒に帰宅した。
その中で不本意な意見を聞いたけれど。
「困ったことない?」「無事に戻ってきてくれて良かった」「体は平気?」は別にいい、「悠馬くんがいないとうちのお店の癒しがなくて」「相原、記憶失ってても可愛い」は、何だ?男に対しての言葉じゃないだろう。と頬を膨らませて怒っていると「小動物みたいで可愛い」とますます不本意なことを言われた。男女問わず失礼。オーナーは、笑ってるし。
僕は、厨房じゃなくて元々、フロアなようで、一通り教わって少し慣れてきた頃、夏ぐらいに辞めたアルバイトの人が遊びにきた、らしい。僕は、その日、ちょうど休みでいなかったため、後日、そのことを聞いたのだ。その人と僕は、仲が良かったらしく、僕はその人に懐いていたらしい。だから、僕のことを聞いてきたその人に、僕の出勤日を教えてあげちゃったけれど、問題ないよね?と女性スタッフが僕に意見を聞いてきたけれど、記憶がない僕に聞かれても何とも言えないしもう教えちゃった後なんだから今更ダメとも言えないしで、その日は、その人の話はそれで終わった。
◇◇◇◇
その話をしたのを忘れた頃、もうすぐラストオーダーになるという遅くの時間にその人は訪れた。
「いらっしゃいませー」
と店の奥で仕事をしていた僕の方にも来店の声が聞こえてくる。
「あっ、相原くん今日バイト入っていますよ?呼んできますね。」
という声が聞こえてきたので、そちらの方を除くとスタッフとは違う見慣れない姿が一緒にあるのに気づいた。その人を遠目に見て、ドクンと僕の胸を嫌な音がしたけれど、気のせいだと思って、僕を呼んだスタッフと一緒にその人の近くまで行った。
その人は、少し長めの黒髪で細身のちょっとチャラそうな人だった。服装のせいもあるのだろうとは思ったが。
「相原くん、この間いなかったから、この人が相原くんと仲が良かった津島さんだよ。津島さんは大学4年で卒論と就活で忙しくて夏にはバイト辞めちゃったんだけれどね」
僕はその人を見た瞬間、ドクドクと嫌な音を立てる心臓のせいで、スタッフの説明があまり頭に入ってこなかった。
「よぉ、悠馬。元気そうだな。この間来た時に聞いたんだが、お前記憶ないんだって。大変だな」
その人が僕を見ながら話し始めてハッとして慌てて、
「いえ、仲が良かったみたいですが、全く覚えてなくてすいません」
津島さんが近づいて耳元で「お前、俺といいことしたのも覚えてないの?」と囁いてきた。
僕はどんどん顔から血の気がなくなっていくのがわかった。その人から離れて津島さんが僕をニヤニヤと見ているのを見て体も震えてきた。
(この人のことも覚えていないはずなのに、どうして?)
少し離れたところにいた他のスタッフが僕の様子がおかしいのに気づいて「相原、大丈夫か?休んだ方がいいんじゃないか?」と心配そうに声をかけてきたのに対して「そうですね。ちょっと辛いので、オーナーに言います」一緒にいたスタッフと津島さんに「話の途中ですいません」と断って、厨房にいるオーナーのところまで急いで向かった。
厨房に入った瞬間に血の気がなくなった体を支えられなくなり、へたり込んでしまった。オーナーがすぐに気づいて
「大丈夫!?顔色悪いから、もう帰っていいよ」
「すいません、またご迷惑をおかけして」
「一人で帰れる?」
「友人…に迎えをお願いしますので、大…丈夫です」
力が入らなくなった足を頑張って動かして更衣室に向かった。
(大丈夫。大丈夫。何もされていない。)
頑張って落ち着こうと努力をしていたけれど、一向に不安は消えない。このままじゃ店に迷惑をまたかけると思い、震える手、震える声で大和へ電話した。すぐに電話に大和は出てくれた。
「もしもし、どうした?まだバイト中だったよな。」
「や…まと」
大和の声を聴いた瞬間に安心して涙がでてきた。涙で震える声で「今、家?」と聞いたら、すごい勢いで、
「お前、何があった?!今からお前のバイト先に迎えに行くから、そこで待ってろ」
「うん…」
◇◇◇◇
さすがにバイト先の中で待っているわけにはいかなかったから、先程の津島さんに会わない様に気を付けながら店の外で待っていた。
急いできてくれたようで、向こうから走ってくる大和が見えた。
「はあはあ、悠馬…、どうした?」
大和の姿を見て安心してまた涙がでてきた。そして津島さんに言われた言葉を思い出してまた体が震えた。
(怖い。どうして?あの人と何があったの?)
カタカタと震える体を抱き締めながら、下を向いて考えた。考え事に夢中だったが、ふわっと温かいものに包まれたのを感じてビクッと肩を揺らすと耳元で大和の声が聞こえた。
「大丈夫だから、俺がそばにいるから、俺のことを考えて」
背中をポンポンとあやすように撫でられて震えていた体が落ち着いてきた。大和の胸にもたれかかるようにしていたら、「悠馬、何があったんだ?」と撫でながら聞いてきた。僕もどう説明したらいいかわからなく、このことを知られたら大和に軽蔑されるんじゃないかという不安もあり「んっ、ちょっと体の調子が悪くて不安になったんだよね」と当たり障りのない内容の説明をした。大和は納得していなかったようだが、僕がやっと落ち着いたのがわかったのだろう、それ以上は追求してこなかった。
震えが収まり、大和と一緒に家路についた。
◇◇◇◇
突然、電話があった。俺は、ちょうど風呂から上がり髪を乾かしているところだったが、電話の相手を見ると悠馬だった為、急いで電話に出た。
電話口の悠馬は、おびえているようだった。俺は内容をほぼ聞かないで、急いで悠馬のバイト先へ向かった。向かう最中は(悠馬、何があった。無事なのか。)とずっと不安な気持ちのまま走って悠馬のもとへ向かった。
悠馬が遠目に見えて、無事な姿を確認してホッと一息ついた。でも、明らかに態度はおかしい。何があったんだ。まだ記憶は戻っていないようだが。
悠馬を落ち着かせるために抱き締めたが、嫌がらずに俺の腕の中にいてくれたことに不謹慎にも嬉しくなった。悠馬に事情を聞いたが、明らかに違う説明をしている様子だったがやっと落ち着いたのをまた乱したくなくて追求をすることをやめた。
(俺に話してくれないのか。俺は頼りないのか。またお前を守れないのか。)
悔しい気持ちで悠馬と一緒に帰宅した。
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