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30.精霊王
休みの前日に少しだけ果実酒を飲むようになった。
元の世界ではそこそこ飲めるほうだったけれど、こちらの世界では、飲むようになってからまだ間もないからかそんなに強くない。ちょっと飲んだぐらいでふわふわして気持ちがいい。幸せな気分になれる。『"現実逃避してる"の間違いじゃない?』と聞かれたら、『違う』とは否定できないかもしれないけど。
うとうとしてると
《……ド…ン、シシドリン、宍戸鈴!》
え?ししどりん?どうして私の名前が呼ばれてるの?
《起きたか。ほろ酔い気分の時に悪いが、ちょっといいか》
長い銀の髪を持つ男性が私を見つめていた。『あー、浮いてるなー』
なーんて、思っていたら
《我は、精霊王。精霊界を司るものだ》
精霊王!一気に酔いが覚め、私は居住まいを正した。
《畏まらなくて結構だ。説明責任を果たしに来た》
《説明責任?》
《ああ、レストがお前に酷いことをした》
《レスト?》
《森の精霊だ》
《ああ、アノ》
思い出したら沸々と怒りが。
《アイツは無限空間に隔離した》
《へ?》
思わず間抜けな声が出た。
《失礼しました。そのレスト?が何かしたのですか?》
《お前にしてはならぬことをした》
《ならぬこと?》
《お前を欺いて、私欲のためアナベル・ハートを助けようとした。叶わぬとわかるや否や、いくら死に瀕していたとはいえ、お前の命を奪った》
《制約があって、直接アナベルを助けられないと言っていました》
《制約?制約なんぞないぞ。レストとアナベルは契約していない。護りたければ、契約すればよかったのだ。彼女を気に入ったから勝手に付き纏っていただけだ。めんどくさがって『制約があるからできない』と誤魔化していたんだろう》
《それでアナベルは"精霊"と聞いても、ピンとこなかったんですね》
アノ精霊、アナちゃんのストーカー(?)だったのか。
《もう、元の世界にお前の器はない》
《そのようですね》
《だから、アナベルの魂を転生させた。今度は優しい両親の元だから、お前は心配しなくていい》
《そうなんですね、良かった…》
《だから、今お前が入っているその器は、もうお前だけのものだ。アナベルを慮るような行動をする必要はない。取るでない》
《私だけの……》
《お前は、自由に、自分の幸せのために生きるといい》
《自分が幸せになるために……生きる》
《ああ、もうお前は自由だ。望むがまま進め》
《ありがとうございました……》
もう、アナちゃんの体を乗っ取ったと罪悪感を抱く必要がなくなったのか。
《お前の幸せを祈る。さらばだ》
精霊王様はキラキラとしたあと消えた。
私は脱力した。
………私だけの体
アナちゃんが戻ってくることはもうない。
もう、怯えることなんてしなくていい。
自分の意思で行動していい……
本当にいいの?
迷惑ではない?
ーーーーーーーーーー
今日は定休日。
1週間分の買い出しをして、アパートに戻ろうとすると、ドアの前に誰か立っていた。どうやら男性のようだ。
何用だろう?
女の一人暮らしだ。用心に越したことはない。
物陰からこそりと見る。
あっ
ぼとりと買い物袋を落とした。
後退りし、駆け出しその場から逃げた。
荷物が落ちた音が聞こえたのだろう、その男性が追いかけて来た。
スピードを上げようとしたけど、男性には敵わない。捕まってしまった。
「捕まえた。
迎えに来たよ、ベル。
もう離さない」
後ろから強く抱きしめられ、捕捉された。
探さないでと言いながら、
見つけ出して欲しいと願った人。
元の世界ではそこそこ飲めるほうだったけれど、こちらの世界では、飲むようになってからまだ間もないからかそんなに強くない。ちょっと飲んだぐらいでふわふわして気持ちがいい。幸せな気分になれる。『"現実逃避してる"の間違いじゃない?』と聞かれたら、『違う』とは否定できないかもしれないけど。
うとうとしてると
《……ド…ン、シシドリン、宍戸鈴!》
え?ししどりん?どうして私の名前が呼ばれてるの?
《起きたか。ほろ酔い気分の時に悪いが、ちょっといいか》
長い銀の髪を持つ男性が私を見つめていた。『あー、浮いてるなー』
なーんて、思っていたら
《我は、精霊王。精霊界を司るものだ》
精霊王!一気に酔いが覚め、私は居住まいを正した。
《畏まらなくて結構だ。説明責任を果たしに来た》
《説明責任?》
《ああ、レストがお前に酷いことをした》
《レスト?》
《森の精霊だ》
《ああ、アノ》
思い出したら沸々と怒りが。
《アイツは無限空間に隔離した》
《へ?》
思わず間抜けな声が出た。
《失礼しました。そのレスト?が何かしたのですか?》
《お前にしてはならぬことをした》
《ならぬこと?》
《お前を欺いて、私欲のためアナベル・ハートを助けようとした。叶わぬとわかるや否や、いくら死に瀕していたとはいえ、お前の命を奪った》
《制約があって、直接アナベルを助けられないと言っていました》
《制約?制約なんぞないぞ。レストとアナベルは契約していない。護りたければ、契約すればよかったのだ。彼女を気に入ったから勝手に付き纏っていただけだ。めんどくさがって『制約があるからできない』と誤魔化していたんだろう》
《それでアナベルは"精霊"と聞いても、ピンとこなかったんですね》
アノ精霊、アナちゃんのストーカー(?)だったのか。
《もう、元の世界にお前の器はない》
《そのようですね》
《だから、アナベルの魂を転生させた。今度は優しい両親の元だから、お前は心配しなくていい》
《そうなんですね、良かった…》
《だから、今お前が入っているその器は、もうお前だけのものだ。アナベルを慮るような行動をする必要はない。取るでない》
《私だけの……》
《お前は、自由に、自分の幸せのために生きるといい》
《自分が幸せになるために……生きる》
《ああ、もうお前は自由だ。望むがまま進め》
《ありがとうございました……》
もう、アナちゃんの体を乗っ取ったと罪悪感を抱く必要がなくなったのか。
《お前の幸せを祈る。さらばだ》
精霊王様はキラキラとしたあと消えた。
私は脱力した。
………私だけの体
アナちゃんが戻ってくることはもうない。
もう、怯えることなんてしなくていい。
自分の意思で行動していい……
本当にいいの?
迷惑ではない?
ーーーーーーーーーー
今日は定休日。
1週間分の買い出しをして、アパートに戻ろうとすると、ドアの前に誰か立っていた。どうやら男性のようだ。
何用だろう?
女の一人暮らしだ。用心に越したことはない。
物陰からこそりと見る。
あっ
ぼとりと買い物袋を落とした。
後退りし、駆け出しその場から逃げた。
荷物が落ちた音が聞こえたのだろう、その男性が追いかけて来た。
スピードを上げようとしたけど、男性には敵わない。捕まってしまった。
「捕まえた。
迎えに来たよ、ベル。
もう離さない」
後ろから強く抱きしめられ、捕捉された。
探さないでと言いながら、
見つけ出して欲しいと願った人。
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