【完結】虐げられた令嬢に憑依したら、嫁がされた。

咲雪

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31.確信

男性にガッチリ、ホールドされてしまったので、仕方なく部屋にあげた。

その男性というのは、言うまでもなく"ジョシュア・ガルシア"である。



ジョシュ様と2人きりなんて久しぶりで緊張する。


「中はこんなふうになっていたんだな」


部屋の中を見廻しボソリとジョシュ様。


「何もないでしょう」


ベッドとチェストとテーブルと椅子2脚。なんとも殺風景だ。


「どうぞ、お掛けになって」


と促した。


「安物のお茶ですみませんが、どうぞ」


ことりとテーブルにカップに置く。それにお茶請けを添えた。


「これは?」

「ラスクです。オーブンがないので、作れるお菓子が限られてくるんです」

「ベルの手作りなんだな。美味しそうだ。いただくとするよ」

ジョシュ様が、ラスクを口に運ぶ。それを私はじっと見つめた。


「やっぱりベルの手作りお菓子は美味いな」


ニカっとジョシュ様が笑う。


「どういたしまして」


「……………」
「……………」


沈黙が辛い。

仕方ないので、私は口を開いた。


「あの、今日はどのようなご用で?」


ジョシュ様は、ムッとした顔で


「『迎えに来た』と言っただろう?」


と答えた。


「私とガルシア様はもう他人です。一緒に行けません」

「他人なんかじゃない!俺の中では、ベルはずっと妻だ!それに家名でなく名前で呼んでくれ!」

「そういうわけにはいきません。私とガルシア様は、結婚した事実もない他人です。私はただの居候だったのです」


ジョシュ様が、真剣な目で私を見つめ


「俺たちは想い合っていただろう?!俺の勘違いだったのか?」


と問うた。

私は顔を背け

「そうですね、ジョ…、ガルシア様の勘違いじゃありませんか?」


と答えた。


「どうしてそんなに頑ななんだ」


ジョシュ様は一度下に目を落とし、すぐに私を見つめ、



「それは"アナちゃん"のせいなのか?」



と、どきりとすることを言った。

え、どうして?どうしてジョシュ様の口から"アナちゃん"の名前が出るの?!


「な、何を言ってるんですか?あ、"アナ"は私です!"アナちゃん"って呼ばれてます。……確かに私のせいですね。私のせいなんです!」

「違う!」


ジョシュ様はバンッとテーブルに手をついた。

私がビクッとしたので、


「すまない!怖がらせるつもりじゃなかったんだ。ごめん!」

「怖がってないので、気にしなくて結構です」

「俺が言いたいのは、"アナベル"の中には"アナ"と"ベル"がいて、今いるのが"ベル"だ!俺が愛してやまない"ベル"だ!」



「な、何を言ってるんですか?ガルシア様は、何、荒唐無稽なこと言ってるんですか?!正気ですか?!」

「至って正気だ。ベルはずっと"アナ"のことを気にかけていた。違うか?ほとんど表に出ていたのはベルだったが、俺が見た限りでは、食事の時、主に肉を食べていたのは"アナ"の方だ」

「はあ?」

「まるで所作が違うんだよ。気がつかなかった?」


あっ、それでよく、食事の時私の手元見てたんだ……。一緒に食事をするようになってすぐだったような気がするんだけど……。だいぶ前からバレてたってこと?


「まるで、心の中で誰かと会話しているかのように無言になることもしばしばあった。それに、極たまにだが、『アナちゃん』と口にしていたこともあった」


えっ?!口に出してたの?全然気がつかなかった……。


「それで、アナベルの中には、"アナ"と"ベル"がいると確信した。だから、君が泣いていたあの日、『"ベル"と呼んでいいか?』と聞いた」


あぁ、この人ってば………


「あー、もう降参ですっ!"アナちゃん"と"ベル"は別人です!」

「やっと認めたな。ところで"アナ"はどうした?俺が最後に認識したのはあの日の前日だ。当日の朝は肉は出なかったからな」


肉、って…‥。よくそんなこと覚えてるな…。


「……"アナちゃん"は、、、アナベルの中に"アナちゃん"という人格はもうありません」

「え?」

「もうこの体には、ジョシュ様が言う"ベル"しかいない。というか、今ここにいる"ベル"は"宍戸鈴ししどりん"という"アナベル"とは全くの別人です」

「どういう意味だ?!」

「荒唐無稽なことと思うでしょうが、すべてお話しします」






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