だからっ俺は平穏に過ごしたい!!

しおぱんだ。

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第一部

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「エル。何だか、気分が沈んでいる様だけど……」
「え、そうか?」

 自分ではそうは思わないのだが……。
 夕刻。授業も全て受け終え、現在は寮へ向かって帰路を歩いているところだ。
 気分が沈んでいる……そう言われ考えると、気分が沈む原因はあの出来事しか考えられない。

「……うーん。もしかしたら、転校生に会ったのが原因か?」
「転校生? エル、会ったの?」
「ああ」

 忘れる訳がない。
 自らのことをヒロインと呼び、風紀委員長を様付けで呼んだりと、忘れたくても忘れられない特徴的な人だった。
 黙っていれば美しい女子生徒として人気も出そうだが……あの性格ではダメだな。

「フレ……転校生には近付くなよ」
「え? どうして?」
「いや、関わってもいいことなんて絶対にないから」
「そ、そうなんだ」

 俺自身の目標は、フレと共に平穏な日々を過ごすことなのだ。
 デュオであり親友でもあるフレディを、酷い目に合わせたくはない。
 平穏にほのぼのと、フレディと過ごしたいものだ。

「そういえば僕、明日委員会があるから朝早くに行かなくちゃいけないんだ。……明日、一人でも大丈夫?」
「ん? ああ、大丈夫。心配すんなって」

 そう言葉を発したが、何かに引っかかった。
 委員会……そうフレは確かに、委員会と言った。
 しかし、フレディは生徒会にも風紀委員にも所属していないはずだが……別の委員会に所属しているのだろうか。
 確か、生徒会と風紀委員と例外である俺以外は、一人部屋じゃなかったと思うが、フレは人数的な関係で一人部屋だったよな。
 なら、他の委員会に属している人は同室者がいるのか?
 一人黙考を続けていると、フレディに問い掛ける間もなく、別れてしまう。
 ……まぁ、別にそんなことはいいかと、エリオットは自分の部屋へ入ると、カツラと丸眼鏡を取る。

「ふぅ……頭が暑い。夏は汗かきそうだ」

 髪を拭い、制服を脱ぎ、部屋着へと着替えると、風呂の準備を始めた。
 浴槽を洗剤で洗い、水で流すとお湯を入れ、その間に台所へ行き適当に食材を取り出す。
 カップラーメンというのもいいのだが、やはり少しながら自炊をするべきだ。
 フライパンに油を入れ、コンロに火をつける。
 温まってきた所に豚肉を入れ、炒め、火が通ったら皿に盛り付け、和風ドレッシングを掛ける。
 白米を炊くのは時間がかかるため、ここはレンチンの白米を使うべきだろう。
 小分けにされたパックに入っており、レンジに入れて少し待つだけでホカホカの出来たて白米が出来る代物だ。
 あっ、と思い出したかのように風呂を見に行くと、風呂場は湯気で溢れかえっていた。
 お湯が溢れる一歩手前で止めると、換気扇をつけ、風呂場を後にする。
 白米と豚肉のみだが、昔から大食漢ではないエリオットにとってはこれで充分だ。
 一人の食事を終え一息つくと、風呂へ向かった。
 脱衣所で服を脱ぐと、湯で満たされた浴槽へ体を沈める。

「ふぅ……極楽極楽」

 ぽえーっと天井を見上げる。
 もくもくと湯気が現れては、換気扇へと吸い込まれていく。
 そんな光景を見ながら、これからの事を考え始めた。
 とりあえずあの転校生には近付かない。
 担任のオスカーがホールルーム中に何も言っていなかったからことから、別クラスと推測しよう。
 そうすれば授業中には会うことはないだろうが、合同授業や、学年、または全学年で集まる場合は何とも言えない。
 それに加え、今日は不可抗力だったが風紀委員長に会ってしまった。
 けれど普通に生活していれば会うことはないはずだ。
 風紀委員も生徒会も役員としての仕事が多く、授業に出ることは免除されている。
 テストや実技で進級していく感じだ。
 あの人達は学園にいる間は特定の場所に篭もり、下校した後は自室から出ないことが多いらしい。
 なら転校生よりも会う確率は低いはず。
 そもそも周りには、親衛隊とかいう者達が彷徨いている可能性もある。
 そんな虎の尾を踏むような真似はしたくない。
 結論、害を成すもの達を避けつつ、今まで通り過ごす。
 答えを出すと、湯船から上がり、頭を洗うと風呂場を後にした。
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