7 / 77
第一部
7
しおりを挟む
「エル。何だか、気分が沈んでいる様だけど……」
「え、そうか?」
自分ではそうは思わないのだが……。
夕刻。授業も全て受け終え、現在は寮へ向かって帰路を歩いているところだ。
気分が沈んでいる……そう言われ考えると、気分が沈む原因はあの出来事しか考えられない。
「……うーん。もしかしたら、転校生に会ったのが原因か?」
「転校生? エル、会ったの?」
「ああ」
忘れる訳がない。
自らのことをヒロインと呼び、風紀委員長を様付けで呼んだりと、忘れたくても忘れられない特徴的な人だった。
黙っていれば美しい女子生徒として人気も出そうだが……あの性格ではダメだな。
「フレ……転校生には近付くなよ」
「え? どうして?」
「いや、関わってもいいことなんて絶対にないから」
「そ、そうなんだ」
俺自身の目標は、フレと共に平穏な日々を過ごすことなのだ。
デュオであり親友でもあるフレディを、酷い目に合わせたくはない。
平穏にほのぼのと、フレディと過ごしたいものだ。
「そういえば僕、明日委員会があるから朝早くに行かなくちゃいけないんだ。……明日、一人でも大丈夫?」
「ん? ああ、大丈夫。心配すんなって」
そう言葉を発したが、何かに引っかかった。
委員会……そうフレは確かに、委員会と言った。
しかし、フレディは生徒会にも風紀委員にも所属していないはずだが……別の委員会に所属しているのだろうか。
確か、生徒会と風紀委員と例外である俺以外は、一人部屋じゃなかったと思うが、フレは人数的な関係で一人部屋だったよな。
なら、他の委員会に属している人は同室者がいるのか?
一人黙考を続けていると、フレディに問い掛ける間もなく、別れてしまう。
……まぁ、別にそんなことはいいかと、エリオットは自分の部屋へ入ると、カツラと丸眼鏡を取る。
「ふぅ……頭が暑い。夏は汗かきそうだ」
髪を拭い、制服を脱ぎ、部屋着へと着替えると、風呂の準備を始めた。
浴槽を洗剤で洗い、水で流すとお湯を入れ、その間に台所へ行き適当に食材を取り出す。
カップラーメンというのもいいのだが、やはり少しながら自炊をするべきだ。
フライパンに油を入れ、コンロに火をつける。
温まってきた所に豚肉を入れ、炒め、火が通ったら皿に盛り付け、和風ドレッシングを掛ける。
白米を炊くのは時間がかかるため、ここはレンチンの白米を使うべきだろう。
小分けにされたパックに入っており、レンジに入れて少し待つだけでホカホカの出来たて白米が出来る代物だ。
あっ、と思い出したかのように風呂を見に行くと、風呂場は湯気で溢れかえっていた。
お湯が溢れる一歩手前で止めると、換気扇をつけ、風呂場を後にする。
白米と豚肉のみだが、昔から大食漢ではないエリオットにとってはこれで充分だ。
一人の食事を終え一息つくと、風呂へ向かった。
脱衣所で服を脱ぐと、湯で満たされた浴槽へ体を沈める。
「ふぅ……極楽極楽」
ぽえーっと天井を見上げる。
もくもくと湯気が現れては、換気扇へと吸い込まれていく。
そんな光景を見ながら、これからの事を考え始めた。
とりあえずあの転校生には近付かない。
担任のオスカーがホールルーム中に何も言っていなかったからことから、別クラスと推測しよう。
そうすれば授業中には会うことはないだろうが、合同授業や、学年、または全学年で集まる場合は何とも言えない。
それに加え、今日は不可抗力だったが風紀委員長に会ってしまった。
けれど普通に生活していれば会うことはないはずだ。
風紀委員も生徒会も役員としての仕事が多く、授業に出ることは免除されている。
テストや実技で進級していく感じだ。
あの人達は学園にいる間は特定の場所に篭もり、下校した後は自室から出ないことが多いらしい。
なら転校生よりも会う確率は低いはず。
そもそも周りには、親衛隊とかいう者達が彷徨いている可能性もある。
そんな虎の尾を踏むような真似はしたくない。
結論、害を成すもの達を避けつつ、今まで通り過ごす。
答えを出すと、湯船から上がり、頭を洗うと風呂場を後にした。
「え、そうか?」
自分ではそうは思わないのだが……。
夕刻。授業も全て受け終え、現在は寮へ向かって帰路を歩いているところだ。
気分が沈んでいる……そう言われ考えると、気分が沈む原因はあの出来事しか考えられない。
「……うーん。もしかしたら、転校生に会ったのが原因か?」
「転校生? エル、会ったの?」
「ああ」
忘れる訳がない。
自らのことをヒロインと呼び、風紀委員長を様付けで呼んだりと、忘れたくても忘れられない特徴的な人だった。
黙っていれば美しい女子生徒として人気も出そうだが……あの性格ではダメだな。
「フレ……転校生には近付くなよ」
「え? どうして?」
「いや、関わってもいいことなんて絶対にないから」
「そ、そうなんだ」
俺自身の目標は、フレと共に平穏な日々を過ごすことなのだ。
デュオであり親友でもあるフレディを、酷い目に合わせたくはない。
平穏にほのぼのと、フレディと過ごしたいものだ。
「そういえば僕、明日委員会があるから朝早くに行かなくちゃいけないんだ。……明日、一人でも大丈夫?」
「ん? ああ、大丈夫。心配すんなって」
そう言葉を発したが、何かに引っかかった。
委員会……そうフレは確かに、委員会と言った。
しかし、フレディは生徒会にも風紀委員にも所属していないはずだが……別の委員会に所属しているのだろうか。
確か、生徒会と風紀委員と例外である俺以外は、一人部屋じゃなかったと思うが、フレは人数的な関係で一人部屋だったよな。
なら、他の委員会に属している人は同室者がいるのか?
一人黙考を続けていると、フレディに問い掛ける間もなく、別れてしまう。
……まぁ、別にそんなことはいいかと、エリオットは自分の部屋へ入ると、カツラと丸眼鏡を取る。
「ふぅ……頭が暑い。夏は汗かきそうだ」
髪を拭い、制服を脱ぎ、部屋着へと着替えると、風呂の準備を始めた。
浴槽を洗剤で洗い、水で流すとお湯を入れ、その間に台所へ行き適当に食材を取り出す。
カップラーメンというのもいいのだが、やはり少しながら自炊をするべきだ。
フライパンに油を入れ、コンロに火をつける。
温まってきた所に豚肉を入れ、炒め、火が通ったら皿に盛り付け、和風ドレッシングを掛ける。
白米を炊くのは時間がかかるため、ここはレンチンの白米を使うべきだろう。
小分けにされたパックに入っており、レンジに入れて少し待つだけでホカホカの出来たて白米が出来る代物だ。
あっ、と思い出したかのように風呂を見に行くと、風呂場は湯気で溢れかえっていた。
お湯が溢れる一歩手前で止めると、換気扇をつけ、風呂場を後にする。
白米と豚肉のみだが、昔から大食漢ではないエリオットにとってはこれで充分だ。
一人の食事を終え一息つくと、風呂へ向かった。
脱衣所で服を脱ぐと、湯で満たされた浴槽へ体を沈める。
「ふぅ……極楽極楽」
ぽえーっと天井を見上げる。
もくもくと湯気が現れては、換気扇へと吸い込まれていく。
そんな光景を見ながら、これからの事を考え始めた。
とりあえずあの転校生には近付かない。
担任のオスカーがホールルーム中に何も言っていなかったからことから、別クラスと推測しよう。
そうすれば授業中には会うことはないだろうが、合同授業や、学年、または全学年で集まる場合は何とも言えない。
それに加え、今日は不可抗力だったが風紀委員長に会ってしまった。
けれど普通に生活していれば会うことはないはずだ。
風紀委員も生徒会も役員としての仕事が多く、授業に出ることは免除されている。
テストや実技で進級していく感じだ。
あの人達は学園にいる間は特定の場所に篭もり、下校した後は自室から出ないことが多いらしい。
なら転校生よりも会う確率は低いはず。
そもそも周りには、親衛隊とかいう者達が彷徨いている可能性もある。
そんな虎の尾を踏むような真似はしたくない。
結論、害を成すもの達を避けつつ、今まで通り過ごす。
答えを出すと、湯船から上がり、頭を洗うと風呂場を後にした。
41
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる