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しおりを挟む「ど、どうしてこんな所に……」
おかしい。どうしてセドリック様がこのイベント中に登場したのでしょう。
制裁イベントでは、セドリックよりもディランとジェラールがメインな方であり。特にアランルートでは、その友人として登場するディランが色々と気を利かせるのだ。
親衛隊たちはざわざわとしているが、アリスティアは別の意味で狼狽していた。
……いや、これは好機よ。
例えジェラール様じゃないとしても、イベントはイベント。ここで好感度を稼がなくちゃっ。
「セドリック様ぁ!!」
「アリスティア!?」
アリスティアはセドリックに勢いよく抱きつく。
「わ、わたくし……急にあの人たちに無理矢理連れてこられて……怖かったぁ……」
青い瞳を涙で濡らし、セドリック事の顛末を語る。
「……ふーん、そか。……そりゃぁアリスティア、大変やったな……」
セドリックはアリスティアの頭を軽くぽんぽんと叩くと、ギロッと親衛隊たちを睨みつけた。
あまりの眼光に親衛隊たちはしり込みするが、この場一番の権力を握っているであろう一人の女子生徒が一歩前へ出る。
「セドリック。ここは貴方が出る幕じゃない。お引取りを」
「いやいや。こんな怖がってる一人の女の子に対し、大勢で寄って集るのは流石に見過ごせんわ」
「親衛隊の責務を邪魔するのですか!!」
責務という言葉に、思わずセドリックは鼻で笑う。
「何を笑って——」
「いやぁ、君らが言う責務というのはこんなにもクソみたいなもんやと思わんかったわぁ。これは、会長さんに言わんとアカンなぁ」
「戯言はやめなさい!! これはアラン様のためを思って——」
「だから、それがクソだって言ってるんや」
途端、セドリックから表情が消える。
「アラン様のためとか言ってんけど、そんなのあんたらの自己満や。実際会長さんは新入生歓迎会の時、親衛隊を制しさせていたやろ?」
「そ、それは……」
「会長さんは、あんたらにどうにかしてほしいとか一言も言っておらんわ。なのに、あんたらはこうして近付き過ぎた者に対して制裁を下す。……んなことやったとしても、会長さんはさ感謝するどころか傍迷惑やわ」
「だけど——」
「あぁ、そや。言っておかんとな」
思い出したかのようにポンっと手を叩く。
「こう何回も制裁とか、親衛隊が関わってる事件が起こり続けると風紀委員会も黙ってはへん。そして、事件の責任を背負うのは他でもない会長さんや。親衛隊さえも制御出来ない、上に立つ資格がないと判断されればリコールになるかもなぁ」
リコール。一度そんなことになってしまえば二度と生徒会長の席に座れないどころか、これから先の人生の足枷になってしまう。
この学園の生徒会長でいるということはそういうことなのだ。
まぁ、あの数々の実績を持つ会長さんならそう簡単にリコールにはならへんと思うが。
「会長さんの威厳にも関わるんや。リコールなんて、君らも望んでないやろ?」
「でもっ!! だとしてもっそこにいるアリスティアを殴り飛ばさないと気が済まない!!」
あらあら、劣勢だというのによく吠える駄目犬な子。
アリスティアはやれやれと、軽く息を吐く。
どう頑張ってもあなたたちはヒロインであるわたくしと同じ土俵なんて立てないというのに……。それさえも気が付かないなんて、なんてお可哀想なこと。
でも、そろそろイベントも終わり。セドリック様と共にこの場を後にしましょう。
「セドリ——」
「殴り飛ばす、やと?」
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