半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

文字の大きさ
107 / 172
第一章

相談

しおりを挟む
「皇女殿下、ご無事で……!」
「えっ?」
 
 塔の地下から出ると、そこにはなぜか、騎士服を着た男の人がいた。どうしてここにいるのだろうと驚いて彼を見上げると、騎士は困った顔をして説明してくれた。
 
「陛下から、皇女殿下を追うよう下命を受けたのです。私ともう一人の騎士で殿下を追いましたが、殿下は立ち入り禁止の尖塔へ入られてしまいました。しかも地下へ向かわれたご様子なので、状況は私どもの手に余ると判断し、一人は陛下へ報告へ向かわせ、私は塔の見張りをしていたのです」
 
 ロドルバンさんはわたしにここへ近づかないようにと言ったけれど、他の人も立ち入りを禁止されている場所だったらしい。あの状態のクロはかなり危険だったので、それも当然かもしれなかった。
 
「キアラ!!」
「あっ、お父さん! お母さん!」
 
 父が母を横抱きにして、何人もの騎士や側近たちをともなって走ってくる姿が見えた。
 
「キアラ、無事で良かっ……ど、どうした!? 泣いているのか、キアラ!? あぁっ、腕をケガしているじゃないか! 服もボロボロだし、何があったんだ!?」
「おとうさん……っ」
 
 すごい速さで駆けつけて、わたしを心配してくれた父を見て、思わず涙目になる。わたしの父はすごい人だから、きっとクロのことを助けてくれるはずだ。そう思って、わたしは必死で言い募る。
 
「お、お父さん。クロが……っ、クロを助けて、お願い!」
「クロ? そのプーニャのことだろう? 眠っているようだが……一体どうしたんだ?」
 
 父が困惑するように眉を下げ、抱いたままだった母を下ろした。
 
「キアラ、クロは眠っているだけじゃないの?」
 
 母がわたしからプーニャを受け取ると、様子を確かめてそう言った。息をしていて温かいのでそう思ったのかもしれないが、わたしが言うクロはもう、そのプーニャではない。
 
「違うの。この塔の中にいる男の子のことなの。あの子が、クロだったのよ。精霊さんの力で、そのプーニャに精神を移してたんだって」
 
 わたしの説明に、周囲の人々が息を呑んだ。
 父も驚いたように目を見張り、眉をひそめる。
 
「彼は今、どんな状態なんだ?」
「か、体のほとんどが黒い風に包まれちゃって、もう顔の半分と、片方の腕くらいしか残ってないの。自分はもう消えるんだって、今までありがとうって……でも、嫌なの。わたし、クロがいなくなるなんて嫌! でも、どうしたらいいのかわからないの。精霊さんたちは、わたしが助けられるって言ったみたいなのに。お父さん、わたし、どうしたらいいの?」
 
 涙がこぼれそうなのを堪えながら、父に訴える。
 
 わたしがクロを救えると、精霊たちは考えているみたいなのに、わたしはどうしたらいいのか、全然わからない。
 魔法も使えないし、お勉強だって、まだ始めたばかりなのだ。そんなわたしが、どうしたらあの状態のクロを助けられるのだろう。
 
 教えてほしくて父を見上げるが、彼は難しそうな顔をして言い淀んだ。その様子を見れば、次に言う言葉が予想できてしまって、わたしはまた涙がこぼれそうになる。
 
「……キアラ。残念だけど、彼を助ける方法はないんだよ」
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

確かにモブ…私モブのはずなんです!

水江 蓮
恋愛
前世の記憶を持つミュリエルは、自分の好きだった乙女ゲームに転生していることに気がついた。 しかもモブに! 自分は第三者から推しを愛でれると思っていたのに… あれ? 何か様子がおかしいな…?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...