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第一章
相談
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「皇女殿下、ご無事で……!」
「えっ?」
塔の地下から出ると、そこにはなぜか、騎士服を着た男の人がいた。どうしてここにいるのだろうと驚いて彼を見上げると、騎士は困った顔をして説明してくれた。
「陛下から、皇女殿下を追うよう下命を受けたのです。私ともう一人の騎士で殿下を追いましたが、殿下は立ち入り禁止の尖塔へ入られてしまいました。しかも地下へ向かわれたご様子なので、状況は私どもの手に余ると判断し、一人は陛下へ報告へ向かわせ、私は塔の見張りをしていたのです」
ロドルバンさんはわたしにここへ近づかないようにと言ったけれど、他の人も立ち入りを禁止されている場所だったらしい。あの状態のクロはかなり危険だったので、それも当然かもしれなかった。
「キアラ!!」
「あっ、お父さん! お母さん!」
父が母を横抱きにして、何人もの騎士や側近たちをともなって走ってくる姿が見えた。
「キアラ、無事で良かっ……ど、どうした!? 泣いているのか、キアラ!? あぁっ、腕をケガしているじゃないか! 服もボロボロだし、何があったんだ!?」
「おとうさん……っ」
すごい速さで駆けつけて、わたしを心配してくれた父を見て、思わず涙目になる。わたしの父はすごい人だから、きっとクロのことを助けてくれるはずだ。そう思って、わたしは必死で言い募る。
「お、お父さん。クロが……っ、クロを助けて、お願い!」
「クロ? そのプーニャのことだろう? 眠っているようだが……一体どうしたんだ?」
父が困惑するように眉を下げ、抱いたままだった母を下ろした。
「キアラ、クロは眠っているだけじゃないの?」
母がわたしからプーニャを受け取ると、様子を確かめてそう言った。息をしていて温かいのでそう思ったのかもしれないが、わたしが言うクロはもう、そのプーニャではない。
「違うの。この塔の中にいる男の子のことなの。あの子が、クロだったのよ。精霊さんの力で、そのプーニャに精神を移してたんだって」
わたしの説明に、周囲の人々が息を呑んだ。
父も驚いたように目を見張り、眉をひそめる。
「彼は今、どんな状態なんだ?」
「か、体のほとんどが黒い風に包まれちゃって、もう顔の半分と、片方の腕くらいしか残ってないの。自分はもう消えるんだって、今までありがとうって……でも、嫌なの。わたし、クロがいなくなるなんて嫌! でも、どうしたらいいのかわからないの。精霊さんたちは、わたしが助けられるって言ったみたいなのに。お父さん、わたし、どうしたらいいの?」
涙がこぼれそうなのを堪えながら、父に訴える。
わたしがクロを救えると、精霊たちは考えているみたいなのに、わたしはどうしたらいいのか、全然わからない。
魔法も使えないし、お勉強だって、まだ始めたばかりなのだ。そんなわたしが、どうしたらあの状態のクロを助けられるのだろう。
教えてほしくて父を見上げるが、彼は難しそうな顔をして言い淀んだ。その様子を見れば、次に言う言葉が予想できてしまって、わたしはまた涙がこぼれそうになる。
「……キアラ。残念だけど、彼を助ける方法はないんだよ」
「えっ?」
塔の地下から出ると、そこにはなぜか、騎士服を着た男の人がいた。どうしてここにいるのだろうと驚いて彼を見上げると、騎士は困った顔をして説明してくれた。
「陛下から、皇女殿下を追うよう下命を受けたのです。私ともう一人の騎士で殿下を追いましたが、殿下は立ち入り禁止の尖塔へ入られてしまいました。しかも地下へ向かわれたご様子なので、状況は私どもの手に余ると判断し、一人は陛下へ報告へ向かわせ、私は塔の見張りをしていたのです」
ロドルバンさんはわたしにここへ近づかないようにと言ったけれど、他の人も立ち入りを禁止されている場所だったらしい。あの状態のクロはかなり危険だったので、それも当然かもしれなかった。
「キアラ!!」
「あっ、お父さん! お母さん!」
父が母を横抱きにして、何人もの騎士や側近たちをともなって走ってくる姿が見えた。
「キアラ、無事で良かっ……ど、どうした!? 泣いているのか、キアラ!? あぁっ、腕をケガしているじゃないか! 服もボロボロだし、何があったんだ!?」
「おとうさん……っ」
すごい速さで駆けつけて、わたしを心配してくれた父を見て、思わず涙目になる。わたしの父はすごい人だから、きっとクロのことを助けてくれるはずだ。そう思って、わたしは必死で言い募る。
「お、お父さん。クロが……っ、クロを助けて、お願い!」
「クロ? そのプーニャのことだろう? 眠っているようだが……一体どうしたんだ?」
父が困惑するように眉を下げ、抱いたままだった母を下ろした。
「キアラ、クロは眠っているだけじゃないの?」
母がわたしからプーニャを受け取ると、様子を確かめてそう言った。息をしていて温かいのでそう思ったのかもしれないが、わたしが言うクロはもう、そのプーニャではない。
「違うの。この塔の中にいる男の子のことなの。あの子が、クロだったのよ。精霊さんの力で、そのプーニャに精神を移してたんだって」
わたしの説明に、周囲の人々が息を呑んだ。
父も驚いたように目を見張り、眉をひそめる。
「彼は今、どんな状態なんだ?」
「か、体のほとんどが黒い風に包まれちゃって、もう顔の半分と、片方の腕くらいしか残ってないの。自分はもう消えるんだって、今までありがとうって……でも、嫌なの。わたし、クロがいなくなるなんて嫌! でも、どうしたらいいのかわからないの。精霊さんたちは、わたしが助けられるって言ったみたいなのに。お父さん、わたし、どうしたらいいの?」
涙がこぼれそうなのを堪えながら、父に訴える。
わたしがクロを救えると、精霊たちは考えているみたいなのに、わたしはどうしたらいいのか、全然わからない。
魔法も使えないし、お勉強だって、まだ始めたばかりなのだ。そんなわたしが、どうしたらあの状態のクロを助けられるのだろう。
教えてほしくて父を見上げるが、彼は難しそうな顔をして言い淀んだ。その様子を見れば、次に言う言葉が予想できてしまって、わたしはまた涙がこぼれそうになる。
「……キアラ。残念だけど、彼を助ける方法はないんだよ」
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