76 / 151
4章 赤髪の男と金髪の男
※ お手柔らかに頼むよ(伊織side)
しおりを挟む学校を出て駅へ向かう。俺は今電車を使っている。桃山も元々電車通学だ。
途中で桃山が思い出したように聞いて来た。
「ところで俺に何か話があったんじゃねぇの?」
「ああ、ちょっとな」
勿論桃山に声を掛けた理由はある。
貴哉から桃山と一緒に行動する事を提案されたからと言って登下校まで一緒じゃなくても良い。
だけど今回俺は思い切った事をしてみようと思ったんだ。
これは貴哉の力になる為に考えた、今の俺にも出来る事だ。
ただ、桃山相手に通用するかは分からない。通用したとしても何かしらの代償は払わなければいけないだろう。
俺は立ち止まると、桃山も足を止めて俺を見て来た。
いつも通りの桃山と目が合うとその綺麗な顔で笑顔を見せた。
「いーくん?」
「桃山、お前って綺麗な顔してるんだな」
「へ!?いきなりどしたん!?」
「改めて良く見ると本当にかっこいいわ。貴哉が学校一って言うのも頷けるな」
「おーい?めちゃくちゃ褒めてくれっけど、意味不なんですけど?」
「……はぁ」
「おい!いくらいーくんでもキレるぞ!」
今から桃山に言おうとしている事を考えたらため息が漏れた。それに対して桃山は俺に近寄って来て顔を覗き込みながらプクッと膨れて見せた。
俺から見たらどんなにかっこよくても桃山は桃山だ。俺の元ストーカーで、俺の姿を見つけては追いかけ回して来てた変人。
覗き込んで来た桃山の目を真っ直ぐに見て俺は意を決す。
「桃山、俺達付き合わないか?」
「……ああん?」
桃山は俺の言葉を聞いて、目を大きく見開いて驚いた後、不思議そうな顔をしたかと思ったらヘラッと笑った。
本当に何を考えてるのか分からない奴だ。
「何それ?それ俺何て言うのが正解なの?」
「出来れば頷いて欲しい」
「……何考えてんの?いーくんが俺と付き合うって、絶対何かあんじゃん。どーせ貴哉絡みだろ?」
「…………」
「図星かよ。貴哉に何か言われたのか?」
貴哉の為だけど、貴哉に頼まれた訳じゃない。
惜しい所をつかれて反応するのに戸惑っていると表情を変えて睨んで来た。
桃山は怒らせると厄介だ。マズいな。
「貴哉に言われた訳じゃない。桃山は一途な所あるし、前と違って頼りになる所もあるから少し気になっただけだ。桃山の気が進まないなら断ってくれて結構だ」
「…………」
近い距離のままジーッと俺の顔を見る桃山。
無理の無い程度に桃山のいいところを挙げて、機嫌をとってみた。断ってくれても構わないってのは本当で、変に疑われて貴哉に迷惑がかかるぐらいなら別に付き合えなくても良かった。
ずっと俺を疑うような目で見ていたと思ったけど、その後すぐにニコッと笑ってみせた。
「なぁいーくん、本当に俺と付き合ってくれるのか?」
「え、ああ本当だよ」
「……嬉しい♪」
「桃山……」
今度はイタズラして楽しんでるような笑顔じゃなくて、安心したようなホッとした顔をして目を細めて笑った。
桃山が喜んでいる。もし俺が訳あって告白したと知ったらどうなるだろう。
考えたらゾッとした。
「下の名前で呼んで♡」
「……湊」
「いいね♡伊織♡今から伊織は俺のものだ♡」
「お手柔らかに頼むよ……」
やべ、あっさり付き合う事になっちまった。
少し手こずるかと思ったけど、桃山はすっかり機嫌を取り戻してとても嬉しそうに笑っていた。
俺はパーカーのフードを被って何となく身を隠す。
これでいいんだよな?良かったんだよな?
俺が桃山と付き合ってずっと側にいれば桃山は浅野と揉める事もなくなるよな?
これで貴哉も安心するよな……?
前なら何をやるにもこんな気にしなかったのに、今ではこんなにも臆病になっている自分がおかしくてフードに隠れて笑ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season
pino
BL
秋山貴哉は口悪し頭悪しのヤンキーだ。
出席日数は崖っぷち、テストの順位は毎回最下位、学年主任からの呼び出しは日常の一部と、退学すれすれの学園生活を送るが、着々と襲い掛かる問題を乗り越えて行きとうとう冬休みに突入!が、ここでも貴哉にとって更なる難題が待ち受けていた。「お前最近周りから評価されてるようだか調子に乗り過ぎだ」まさかの親睦を深めたと思っていた担任からの言葉に貴哉はどう出るのか!?
そしておかしな関係になってしまった元恋人達、伊織と空とは相変わらずな関係を続けているが、貴哉の事を好きなのは二人だけじゃなかった。迫り来るクリスマスに貴哉争奪戦が今始まる!
果たして貴哉は誰とクリスマスを過ごし、誰と年を越すのか?
そもそも貴哉に冬休みは訪れるのか?
6th seasonスタートです!
基本コメディ多めですが、性的描写も有ります。
BLです。
今回の表紙は奇人変人男、桃山湊(5thのその後の後の姿)です。
こちらは6th seasonとなっております。
前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』から『どいつもこいつもかかって来やがれ5thのその後』までを先にお読み下さい。
貴哉視点の話です。
※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる