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4章 赤髪の男と金髪の男
※ 虜にした話だけ聞かせてくれ(伊織side)
しおりを挟む※伊織side
湊の隣で電車に揺られていた。
ずっと喋り続ける湊に俺は耳を貸し、笑ったり冗談を返したりして過ごした。
電車に乗る前に貴哉がいて、早川と広瀬と揉めていた事は気にはなるけど、追おうとは思わなかった。貴哉がそれを求めていないと分かったからだ。
ずっと貴哉を追いかけていたから分かる事だ。貴哉が俺を求めてくる時は本当に辛い時や寂しい時だ。今はそうじゃないみたいだ。
「あのさ、明日の弁当俺が作ってってもいい?それ一緒に食べよ」
「湊が作ってくれんの?嬉しい~」
今俺の昼飯は兄貴が作った弁当だ。弁当をいらないって言ったら兄貴に理由を聞かれそうだけど、素直に答えようと思う。湊と付き合っている事はまだ言えないけどな。
「おかず何が好き?今日買い物して帰るわ」
「一通りのもんは食えるよ」
「いいね♪なぁ今度一緒に服見に行きたい」
「おー、行こうぜ。俺も買い物久しぶりだから楽しみだわ」
兄貴と暮らすようになってから好き勝手買い物が出来ないからな。たまにはいいだろう。
「伊織に似合う服俺が選ぶから、俺に似合う服を伊織が選んでよ」
「お、センスにはうるさいお前だから期待してるわ」
「任せてよ♪あとコーヒーが美味しいカフェも知ってるからそこでゆっくりもしたい」
「悪くねぇな。あ、本屋も行こう。兄貴にもっと本を読めって言われてんだ」
「俺、本読むの好きよ。それならおすすめ貸してあげる。明日持って行くね」
「湊が本とか意外過ぎ。あ、漫画とかじゃねぇぞ?」
「はは、分かってるって~」
不思議と湊との会話は弾んだ。ちょっと前までは話の通じない宇宙人のような奴だと思っていたけど、こうして話してると普通の高校生って感じがした。
そして学校の外での湊は良い目で見られる事が多い事にも気付いた。
周りからの湊への視線は普段俺に注がれるものと同じ物だった。こんなけ整った顔とスタイルしてたら当然だ。特に女子から好意的に見られる事が多く、男なら悪い気はしない状況。だけど湊はそれに驕る事なく完全に無視していた。むしろ嫌悪しているのか、黄色い声が聞こえると睨む場面もあったり、そこは普通の男子校生とは違うと思った。
今も少し離れた所でこちらを見ている女子高生達を嫌そうに見ている。
「チッ」
「おいおい、別に悪い意味で見られてるんじゃないんだからさ」
湊の悪い面が出たから注意をすると、面白くなさそうに足を組んで態度を悪くした。
本当にこいつは……
「外面しか見てねぇのに評価してんのがムカつくんだ」
「気持ちは分からなくないけど、湊はもう少し笑顔を振り撒いた方がいい」
「何でそんな事しなくちゃなんねぇの?」
「んー、勿体無いから?どんな人でも仏頂面よりも笑顔のが良いじゃん?」
「勿体無い~?俺からしたらどうでもいい奴に愛想振り撒く方が勿体無ぇけどな」
まるで貴哉が言いそうなセリフを言ったから、面白くて笑っていると、湊が「何で笑うの?」と不思議そうな顔して見て来た。
「いや、何でもないよ」
「えー、秘密は嫌だなぁ~?伊織とは何でも言い合いたいし、伊織の事は何でも知りたい」
「これ言ったら怒るぞ?」
「何それ、絶対聞き出さなきゃいけないやつじゃん♡」
「たまに思うんだよ。湊と貴哉は似てるなって。そしたら面白くなった」
「よし♪貴哉を消そう♪そしたら伊織ん中で一番は俺だけになるな♪」
「たまにだよ、たまに。だからかな、お前といると楽しいよ」
俺が本音を言うと、湊は安心したように笑った。
そしていつものように話し出す。
「伊織ってさ、貴哉の前はどんな奴と付き合ってたんだ?」
「いきなりだな!」
「ずっと気になってたんだよな~。貴哉を好きになる前はどんな奴の事を好きになってどんな奴と付き合ってたんかなぁって」
「貴哉の前なんていねぇよ。俺の初めては全部貴哉だ」
「はぁ!?嘘だろ?あの貴哉でさえ取っ替え引っ替えやる事やってるってのに、伊織が貴哉だけだぁ!?」
「声デケェっての」
俺の初めてが貴哉なのは本当の事だ。それは貴哉も知ってるし、別に隠してる事じゃなかった。
だけど、初めて好きになった奴が貴哉なのかと聞かれたら曖昧になる。それと正確には貴哉の前に付き合った奴は中学の時に一人だけいるんだ。
でもそいつとはすぐに終わったし、キスや手を繋ぐとかいう恋人がしそうな事は一切していない。だから俺にとってはほぼ貴哉が初めてだ。
説明するのも面倒だし、何より思い出したくない事だから簡単に話しておく事にした。
「中学の時に好きだなぁって奴はいたよ。でも本当に何もなかった。そいつ転校しちゃったし、そんな事もあったなぁって今思い出したぐらいだ」
「やば♡ますます伊織の株上がったんだけど♡」
「そりゃどうも。今度は湊の過去の恋愛を聞かせてくれよ。お前はいろんな恋愛してそうだよな」
「そりゃ俺レベルになると何人もの男女を虜にしてきたし、何人もの男女を病院送りにしてきたぜ?どれも楽しいと思えるもんはなかったけどな」
「……虜にした話だけ聞かせてくれ」
「いいぜ♪そんじゃあまず幼稚園の時だ!」
「そこからカウントすんのかよ!?それだったら俺もいるけどな!?」
その後も湊と笑い合って語り合った。
俺にとって湊と過ごす時間が楽しいものになるとは思わなかった。
もしこのまま湊と付き合っていって、本当に心から湊の事を好きになれたらもっと楽しいと思えるのかもな。
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