65 / 72
4章 まさかの目覚め!?
64.決まっている勝負の結果
しおりを挟む封筒から中身を取り出して俺に差し出して来るタイガー。
「ん?」
中身は勿論金だった。
俺は普通に受け取るけど、妙に分厚い気がした。
あん時は三万円ぐらい使って、半分返せって話だったから、一万五千円とかでいいんだけど……
俺はいくらあるのか数えてみる事にした。
「……はぁ!?五万!?」
「今回のバイト代全部と、仕送り少し足した!」
「いやいや、払い過ぎだろ!こんなにいらないって!」
「受け取ってくれ!俺にもカッコつけさせてくれよ。今はこれだけしか渡せないけど、来月になったら俺も一日伊吹を買うから!」
「お前、もしかして……尚輝くんと張り合ってんの?」
「そりゃそうだろ!だって土曜丸ごと貸し切るとか羨まし過ぎるだろ!てかズルいだろ!俺だって金さえあれば伊吹を独占できるのにっ!」
「タイガー……」
「もっと稼いで俺も伊吹と長い時間過ごしてぇんだ!ちと時間掛かるけどよ、待っててくれよ伊吹」
これがタイガーの本音か。
いつものヘラヘラした笑顔はどこへやら。
今は眉間に皺を寄せて悔しそうに唇を噛み締めていた。
確かに金を持ってる尚輝くんの方が長い時間俺と過ごせ有利な気もするよ?でも金さえあればって言うけどさ、それ以前にタイガーは性格や素行がアウトだろ。根は悪い奴じゃないんだろうけど、尚輝くんとは違って安定感がない。
こんな風に数回会っただけの俺に大金を出してしまうのもどうかと思うしな。
俺は受け取った金をタイガーに返そうと、そのまま全部渡した。
「伊吹、何で……?」
「お前が俺にホテル代をたかった訳じゃないって分かったし、約束守ってもう危ないバイトはしてないみたいだから今回は俺の奢りにしてやるよ。あん時は寝ちゃった俺も悪かったしな」
「いや!受け取ってくれ!俺、伊吹の事本気なんだよ!本気で好きなんだ!」
「だったら尚更受け取れねぇよ。俺はお前の気持ちに応えてやる事は出来ない。諦めな」
「やだ!諦められねぇ!伊吹がいい!」
「タイガー、お前はまだ若いんだから、フラれた恋なんかさっさと忘れて次行けよ次~。お前なら人脈広そうだしすぐ見つかるだろ」
「伊吹は今ここにいる伊吹しかいないっ」
「……そうだけど」
適当にあしらい過ぎた?
タイガーはデカい体を丸めて落ち込んでるようだった。
寝癖だらけの青い髪にヨレヨレのTシャツ。
まぁこいつなりに本気なのは伝わったよ。
でもさ、俺はもう尚輝くんの事を好きになっちゃったんだ。元々男を好きになるなんて有り得なかったのに、好きになっちゃったんだ。
だからタイガーの気持ちに応えられないのは本当だ。
今は仕事絡んでないし、タイガーには次の予約入れて欲しいとか思ってないし、むしろタイガーには無駄に金を使って欲しいと思わない。これ以上変に期待させるのも酷かと思い始めているんだ。
「俺はナオキングに誓ったんだ。同じ人を好きな者同士頑張ろうって、正々堂々どっちが伊吹を落とせるか勝負しようって!」
「正々堂々って、まぁ二人で好きにやればいいじゃん。とにかくお前はもう俺に予約入れんな。入れたらNG出すからな」
「何でだよ!それじゃあ正々堂々勝負出来ねぇじゃん!」
「する必要ねぇだろ」
「はぁ?どう言う事だよ?」
その勝負の結果は決まってるからだよ。
ほんの少しだけ尚輝くんが早く俺を見付けて、一途に毎週土曜日にデートしてくれた。
予約以外でも高価な物をプレゼントしてくれたり、一緒にいて楽しいなって思えるようなデートをしてくれた。
だから俺は尚輝くんを好きになったんだ。
真っ直ぐで真面目な20歳の男を好きになったんだ。
この勝負はもう尚輝くんの勝ちなんだよ。
そこまでは言えずに俺は目線をタイガーから外して黙っていた。
20
あなたにおすすめの小説
脳筋剣士と鈍感薬師 ~騎士様、こいつです~
季エス
BL
「ルカーシュは、駄目よ」
その時胸に到来した思いは安堵であり、寂しさでもあった。
ルカーシュは薬師だ。幼馴染と共に、魔王を倒すために村を出た。彼は剣士だった。薬師のルカーシュは足手纏いだった。途中で仲間が増えたが、それでも足手纏いである事に変わりはなかった。そうしてついに、追い出される日が来たのだ。
ルカーシュはそっと、瞼を伏せた。
明日、明日になったら、笑おう。そして、礼と別れを言うのだ。
だから、今だけは、泣いてもいいかな。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
【完結】魔王の腹心と厄介な男!
花より団子よりもお茶が好き。(応募用)
BL
【これだから……これだから嫌いなんですよ……!】
魔王の腹心であるシュケルは、魔王のもっとも信頼のおける部下だ。
ある日の朝、魔族領に異変を感じとった魔王の命で、シュケルは姿を消した。
だがそれから一月(ひとつき)近く及んでもシュケルは帰って来ない。
それに疑念を抱いた魔王のもう一人の腹心、カボチャが痺れを切らし城の回廊を歩いていると、魔王の恋人カイン(人間)がシュケルを探してやって来た。
二人で姿の見えないシュケルを心配していると、突如として城の壁が破壊され「ワタシの名はマハル。シュケルの〝夫〟になる男」などとのたまう変態、もとい青年が現れる。
彼は風の力を操り一度は帰って来たシュケルをあっという間に拐ってしまい――。
「なんて厄介な奴なんだ!」
〝初恋〟という名の思い込みと執着が物語とカボチャの心をかき乱す。
だけど一番厄介なのは――結局は〝あの男〟。
異界のストーカー王子VS魔王の腹心カボチャ
腹心×腹心(シュケル×カボチャ)
ライトBLラブコメファンタジー。
果たしてカボチャは、シュケルを取り戻すことが出来るのか。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
■特別編:魔王とカインの紙ひこうき!~少年と物語のはじまり~
【それってつまり、セオドアは神様から俺への贈り物ってことだな!】
これは本編から「十年前」のお話。
カインという少年が勇者になると宣言し魔王城を目指していた。
ここまでは普通の話である。だが少年と魔王はなんと紙ひこうきで文通をする仲なのだ。
おまけに魔王は国際会議中だから相手出来ないと断って来て――?
そもそもカインは本当に魔王を倒すつもりがあるのか?カインの本当の目的とは?
カボチャは相変わらず怒っていて、シュケルは相変わらず静かに微笑み、魔王も相変わらず絶妙にそこにいます。
■番外編:Happy Birthday to You
【……俺、寂しくなんかなかったんだ】
突然現れたカインの旧友ユメハ。
彼女は別世界と別世界を行き来する妖精だ。
そんな、彼女がなぜカインの前に現れたかというと……なんと、彼女は大事な大事な誕生日プレゼントを三つ、この世界に落としてしまったのだ。
ことのしだいを知ったカインはカボチャとシュケルと城の皆を巻き込んで、プレゼントを探すのだが……。
ブラック企業の寮で、同期とだけは恋に落ちないと決めていた~同室生活・過労案件・限界メンタル―それでも、唯一の味方が、隣にいる。
中岡 始
BL
「限界社畜、恋に落ちたら終わりだと思ってた――でも、一緒に辞めて起業しました。」
ブラック企業で出会った新卒ふたり。
職場は地獄、寮は同室、心は限界寸前。
“ちゃんとした社会人”を目指す白井と、マイペースに生き延びる藤宮。
恋なんてしない、期待なんてしない――そう思ってたはずなのに、
「お前がいたから、ここまで来られた」
気づけば手を取り、会社を辞め、仲間たちと“理不尽の外側”へと走り出す。
すれ違い、涙、ほうじ茶プリンとキスの夜。
これは、仕事と恋に潰れかけたふたりが、
一緒に人生を立て直していく、再起系BLラブコメディ!
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
過去のやらかしと野営飯
琉斗六
BL
◎あらすじ
かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。
「一級になったら、また一緒に冒険しような」
──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。
美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。
それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。
昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。
「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」
寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、
執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー!
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる