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26.心の痛み
しおりを挟む俺の事を引いた目で見る恋から少し体を離して、悲しい出来事を思い出して表情を作ろうと試みる。そうだな、貴哉に二度目にフラれた時の事でも思い出そう。つい昨日の事だ。
そういや俺泣いたっけな。さすがに今は泣けないけど、悲しい気持ちにはなれるわ。
貴哉の事を想って気持ちを作ると、すぐに恋が気付いて顔を覗き込んで来た。
「楓?泣いてるのか?」
「ごめん。恋に拒否られた事が思いの外辛くて……俺がこんな事言える立場じゃないのに、本当にごめん」
「え……どうして辛いと思うんだよ」
食い付いたな。後は恋の好きなロマンチックなムードを作れば完璧だ。
「恋と別れてからずっと思ってたんだ。やっぱり俺は恋が好きだって。お前が側にいないとダメなんだ」
「楓……」
「初めは気のせいかと思ってたんだ。だって、俺から別れるって言い出したんだから。でも、今日恋が羽賀と過ごしてるって思ったら、二人の仲を壊したくなった」
「本当なのか?まだ俺の事を好きでいてくれてるのか?」
今にも泣き出しそうな顔で見て来る恋を、俺は優しく抱き締める。恋は俺の背中に腕を回してギュッと服を掴んだ。
「本当だ。恋、俺が悪かった。また付き合って欲しい」
「俺も楓が好き!良かったっ本当に良かった!」
「はは、俺も恋と会えて良かった……」
恋から好きと言う言葉が出て心が痛んだ。
会えて良かった。俺は本当に思ってるのか?
多分恋は俺の言葉を信じて、本気で喜んでる。
俺は寂しさを紛らわす為に利用してるだけなのに。
ごめん、でも今の俺はこうするしかないんだ。
恋の真っ直ぐで純粋な気持ちを利用する事でしか俺の心は満たされないんだ。
「あはは、楓ってば泣く程嬉しいのか?もー、それなら早く言ってくれれば良かったのに~」
「いや、泣く程じゃ……え?」
俺の顔を見て微笑む恋に、何を言ってるんだと思ったけど、すぐに理解した。
俺の目から涙が流れていたんだ。
これは何の涙だ?貴哉の事を考え過ぎて出た涙か?それとも恋を利用してる事への罪悪感か?
これは予期してなかった事で、俺自信驚いた。
「それじゃ俺が慰めてやるよ♪楓、改めてよろしくな♪」
「……ああ、よろしく」
俺は複雑な気持ちのまま恋を抱いた。
何ヶ月ぶりかに恋としたけど、ほとんど何も感じなかった。ただ貴哉とは違う。それだけが印象に残っていた。
行為が終わった後、ベッドの上で恋の話を聞いていた。懐かしい光景だ。恋は女みたいに良く喋る。それを俺が聞いていたり聞いていなかったりで良く怒られたんだ。
「って、また人の話聞いてないな!」
「ああ、ごめん。久しぶりにしたからちょっと疲れて」
「俺も~!楓激しいんだもんっなぁ、泊まってっていいか?今日はもう寝て明日一緒に初詣行こうぜ♪」
「いいけど、帰らなくて大丈夫なのか?」
「うん!今日は泊まりの予定で出て来たから親も知ってるし」
「え、羽賀んちに泊まるつもりだったのか?」
「まぁ、そういう事になるな」
「あいつヤル気満々じゃん」
「そう言う事言うなよ!あー羽賀にはちゃんと話さなきゃだなー」
「俺達の事?」
「付き合ってるって言いたいけど、楓は嫌なんだろ?上手く言うよ。羽賀とは付き合えないって」
「…………」
「あ!また話聞いてない!」
「違う違う。今度は公表するか」
俺は何となく言ってみた。前付き合ってた時は周りにはハッキリと言ってなかったけど、別にもう付き合ってるって知られても困る事はないと思うんだ。
恋がいた方が貴哉に近付きやすいから。
恋はポカンとした顔をした後、とても嬉しそうな笑顔を見せた。あ、可愛い。
「するー♡へへ♪すげぇ嬉しい!」
「はは、だから羽賀にも俺との事話していいよ。その方が断りやすいだろ?なんなら俺から言おうか?」
「楓が?なんて言うんだ?」
「恋は俺のだから手出すな♡かな?」
抱き寄せながら言うと、恋は両手で顔を押さえて悶えていた。初めてセックスした時の恋みたいで笑えた。
「なんか楓にすげぇ愛されてる感じがして嬉しい♡でも、楓には迷惑掛けられねぇからちゃんと自分で断るよ」
「そ?流されたりしねぇか?」
「されるかよっ!俺は楓一筋だ!」
「俺にフラれて羽賀に行こうとしてたのにー?」
「だって、楓の事は諦めなきゃダメだって思ってたから……でも、また好きになってもらえて本当に良かった……」
「…………」
恋の事は全く興味がない訳じゃない。ただ貴哉の方が好きってだけだ。つまり恋は俺にとって貴哉の代わり……
貴哉の代わりに俺の寂しさを埋めてくれる都合の良い男。
ズキン……
悪役になるって決めたのにさっきから胸が痛いのは何なんだ。恋の嬉しそうな言葉を聞いたり、笑顔を見る度に痛むんだ。
こんなんで本当に付き合う事を公表なんて出来るのか?俺はみんなの前でも悪役になり切って演技をする事が出来るのか?
何でだろう。今は自信がねぇや。
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