【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

悪趣味な奴

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 次の日、俺は空と学校へ行く。周りの奴らやすれ違う奴らにすげぇ見られてキレそうになったけど、ぐっと堪えてやっとの思いで玄関まで到着した。


「はぁ、こんなんが続くのかよっ朝からイライラするなぁ!」

「落ち着けって。このまま会議室行くんだろ?送って行くから」

「んー、すぐそこだし平気。一人で行くよ」


 担任が指定した会議室は職員室の横にある所で、数馬が前に過ごしていた第二会議室とは違って人通りのある所にあって、そこに行くには目立つだろうな。


「そうか?なんかあったら電話して。すぐに行くから」

「大丈夫だって。でもありがとな♪」

「あ、もし他の先生達いたら敬語使えよー?少しでも良い子ぶっておいた方がいいからな」

「俺敬語なんて知らねーですよ~」


 敬語は使い慣れないから俺が使ったらきっと変な言葉になるだろう。
 ここで俺を見ていた空の目線が俺の後ろに向けられて顔が強張ったのが分かった。
 俺の後ろに何かあるのかと振り向こうとした時に、背の高い赤い髪の男が俺の左隣を通り過ぎた。そしてフワッと広がる甘くて爽やかな匂い……伊織だった。


「っ!」

「…………」


 俺と空はそのまま固まっていたけど、伊織は動じる事なく、むしろ俺達が見えていないかのようにそのまま通り過ぎて二年の下駄箱の方へ向かって行った。
 伊織とはあれから話してないし、顔すら合わせていなかった。あいつ、最後に声掛けるなとか言ってたけど、本当にシカトしやがった!
 怒りが込み上げて来たけど、空に止められて靴を履き替えて会議室の方へ向かう伊織を見届けた。


「桐原さん、いつもと違ったな。さすがに堪えてんのかな」

「あの野郎!この件が片付いたらボコボコにしてやる!」

「……俺はもう関わって欲しくないけどな」

「あー!クソ!俺も行って来る!」

「待って貴哉」

「っんだよ!」


 朝から周りにジロジロ見られるわ、ムカつく赤髪なんか見ちまうわでまるで空に当たるように言うと、そんな俺に空はニコッと笑ってくれた。


「リラックスリラックス♪そんなんじゃ誰が見ても貴哉が悪者だぞ?貴哉は堂々としてたらいい。桐原さんの事なんて気にしちゃダーメ♡」

「っ分かったよ。ちょっとトイレで頭冷やしてから行くわ」

「うん。行ってらっしゃい」


 笑顔の空に言われて少しだけ、ほんとーに少しだけ落ち着いたから、トイレ入って顔を洗い直してから行く事にした。
 ここから一番近いトイレに入ると、まさかの人物がいて怒りが再び込み上げて来た。伊織が手を洗っていたんだ。中に入った俺に気付いて目が合ったけど、すぐに逸らされてまた透明人間のような扱いを受けた。
 もう我慢出来ねぇ!


「おいテメェ!なんの真似だよ!シカトしてんじゃねぇよ!」

「……貴哉」


 伊織に近寄って怒鳴ると、伊織はやっと俺をまともに見やがった。その顔は真顔だった。でも少し寂しそうにも感じた。
 なんなんだよその顔は!言いてぇ事があるならハッキリ言いやがれ!
 収まらない怒りに思わず手が出そうになった時、誰かトイレに入って来てすぐに俺達の間に入って止めて来た。
 
 赤髪もそうだけど、この学校じゃすげぇ目立つ銀髪。久しぶりに見たな……俺は驚いて固まっちまった。入って来たのは一条紘夢だった。

 銀髪は俺と伊織の両方に手を伸ばしてストップと言うように間に入っていた。


「貴ちゃんが入って行くのが見えたから来てみたけど、入って正解だね。二人共今新たな問題起こしていいと思ってるの?いーくんなら分かってるよね?」

「っ……」

「貴ちゃんも落ち着いてって、これから会議室に行くんでしょ?」

「何でお前が知ってんだよ」

「葵くんに聞いたの。二人が呼び出されるって。いーくん、先に行っててくれるかな?貴ちゃんは任せてよ♪」

「……ああ」


 もう伊織に何かを言おうとは思わなかった。そのまま出て行く伊織の事は放っておいて俺は顔をバシャバシャ洗った。
 くそー!何で俺がこんな思いしなきゃなんねぇんだよ!
 てか顔拭くもん持ってねぇし!直登辺りがいたらハンカチ貸してくれただろーに!
 仕方ねぇから顔を犬みたいに横に振ってると、銀髪がハンドタオルを差し出して来た。


「え、いいのか?」

「もちろん。使ってよ♪」

「サンキュ……」


 俺は特に何も考えずに受け取って顔を拭く。
 ん、少しは落ち着いたってか目が覚めたかな?
 みんなが協力してくれてるのに、それを無駄にするような事は避けなきゃだもんな……
 

「助かったよ銀髪。止めてくれてさ」

「貴ちゃんの為だもん♪てかもっと早くSOSくれればいいのにー」

「お前に?やだよ。その代わりにあれやってとか変な事言って来そうだもんよ」

「言わないよ♪貴ちゃんの事は見てるだけで面白いからね」

「悪趣味な奴。んじゃ俺も行くわ」


 使ったハンドタオルを返して、クルッとドアに振り返って銀髪に手を軽く振ってトイレから出ようとしたら銀髪が喋り出した。


「頑張ってね貴ちゃん。俺が見守ってる事、忘れないで」

「…………」

「正義が必ず勝つとは限らない。どんな屈強にも立ち上がる男。それが俺様……」

「!」


 どこかで聞き覚えのあるセリフに俺は顔だけ振り返って銀髪を見た。
 何だっけ?懐かしくて俺の好きだったそのセリフ……何で銀髪が?


「あはは!早く行きなって~」

「……おう」


 銀髪に笑われたから、思い出せないまま俺はトイレを出て会議室へ向かった。
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