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1章 写真ばら撒き事件
※俺の大事な友達だもん!
しおりを挟む※七海side
俺は焦っていた。
いーくんと、秋山の件なら噂で聞いて知ってる。元々二人が仲良いのは知ってたけど、まさか写真に写ってるような関係だったのは知らなかった。バスの中でキスしてたけど、それはノリとかそういうのだと思ってたし、そんなの馬鹿な男子が集まれば普通にふざけてやるもんだと思ってたんだ。でも二人が本当にデキてたなんて……
そもそも秋山に彼氏がいるなんて知らなかったから聞いた時は驚いたよね。だってあの秋山だよ?生意気だし、馬鹿だし、口悪いし、何でそんなにモテるのって。まぁ顔は悪くないんじゃない?
でもそんなのはどうでも良かった。俺には関係ないしね。
俺が興味あるのは二之宮だけ。周りには話してないからこの事を知ってるのはごく一部だけど、俺は二之宮の事が本気で好きだ。
でも!そんな大好きな二之宮に!今回写真ばら撒いた犯人扱いされて俺はちょー焦ってるのー!
何で俺!?てか二之宮よりも桃山が疑ってんだよ!あいつこえーんだよ!関わりたくないのに、二之宮に前に嫌がらせしたせいで嫌でも目付けられてるんだよぉ!
だから俺はそんな大好きな二之宮からの信頼を取り戻す為に頑張ってるって訳!
「まずは俺のクラス!ここは余裕でしょ!だって俺が声掛ければみんな言う事聞くしね!」
自慢じゃないけど、俺は周りから愛されてる。誰とでも仲良く出来るし、良く声も掛けてもらってる。同じクラスの桃山以外にはね……
幸い、今は桃山は二之宮の所に行ってていないみたいだからとっとと署名集めちゃうよー!
「みんなー!注目ー!お願いがあるの!聞いてー!」
俺が黒板の前に立って教室にいる人達に声を掛けると、みんな何だ何だと集まって来てくれた。
そして俺は昨日の夜に家で作って来た署名してもらう紙と、ペンと朱肉を教卓の上に置いた。丁寧にウェットティッシュまで用意したんだから!
そう、俺がしようとしている事はいーくんと秋山の処分を軽くしてもらう為の署名集め!聞けば二之宮と桃山も昨日からやってるみたいだけど、人気のない二人はかなり苦戦してるみたいなんだ。
そこで人気者の俺がたっぷり集めて二之宮の信頼を取り戻そうとしてるって訳♪
「いーくんがヤバい事になってるのはみんな知ってると思うのー!みんないーくんの事、好きだよね?だからみんなでいーくんを助けよう!ここに紙を用意したから、学年、組、名前、それと拇印押して欲しいんだー!」
「でもさー、桐原って悪い事したんだろ?俺、一年を無理矢理犯したって聞いたけど」
「俺もそれ聞いた!」
「誰だよそんな事言ったの!そんなの嘘に決まってるじゃん!みんなもいーくんの事知ってるでしょ!?」
「七海ちゃんの気持ちも分かるけどさー、自業自得じゃね?」
「それとー、写真に写ってた一年も生意気だから俺協力したくねぇなぁ」
「なっ、どうしたんだよみんな!」
予想外の展開に俺は動揺していた。すぐに快く署名してくれると思ってたのに、これはマズい!
そっか、いーくんの事を良く思ってない人もいたんだ……秋山もあんな奴だから好かれてなくてもおかしくないよね。俺も初めは嫌いだったもん……
でも、でもさー!
「いーくんも秋山も良い奴だもん!俺の大事な友達だもん!署名したくない奴はいい!その代わり、俺の大事な友達をそんな風に言った事、絶対忘れないからな!」
俺はバンっと教卓を叩いてみんなに言うと、驚いていた。
そりゃそうでしょ。俺って愛されキャラだし、こんな風にキレた事なんてないもん。
何でかな、俺って一人になるのが苦手でどんな時でも誰かと一緒にいたいって思っちゃうんだ。だから誰にでも良い顔してくっ付いてたけど、今は違う。
二人の事をそんな風に言われて本当に腹が立ったし、もう愛されキャラとかどうでも良くなった。
ふと我に返って自分のした事にハッとした。
俺、みんなに何て事言ったんだ……
ヤバい、これじゃみんなが離れて行っちゃう!
「はいみんな小平に拍手ー♪」
ここで誰かが教室に入って来て、教室中に響くぐらい大きな音を立てて拍手をしていた。
なんと、強敵の桃山だった。
変人の桃山登場でみんなザワザワし始めたけど、誰一人として拍手をする人なんていなかった。
「小平やるじゃん♪見直した♪さっきのスピーチ、センスあるじゃん。俺、センスある奴好きよ」
「え、も、桃山ぁ?」
「お前が犯人じゃねぇって分かったんだ。ちょっと来いよ」
「えー!どう言う事ぉ!?」
俺は桃山の言う事に驚いて、そのまま教室から出て行く後ろ姿を追った。
それってどういう事だよ!?てか俺にもアリバイあるんだけどな!
でも良かった!これで二之宮の信頼を取り戻せる!
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