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1章 写真ばら撒き事件
※俺は誰かをいじめた事なんかないけどな
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倉持が泣き止むのを待っていると、先に落ち着きを取り戻した倉持のお母さんにこちらへとリビングに呼ばれた。そして麦茶を出してくれた。
やっと受け入れてもらえた気がしてホッとした。
「早川くん、さっきは失礼な事を言ってごめんなさいね。瑛二って昔から内気だから、いじめられてるんじゃないかって心配だったのよ……ほら早川くんてどちらかと言うと瑛二とは逆のタイプじゃない?」
はは、と軽く笑う倉持のお母さんは俺に謝って来た。
実際倉持とは一言も話した事が無かったし、顔もうろ覚えだったからな。
俺は誰かをいじめた事なんか無いけどな。
「お母さんの気持ち分かりますよ。誰でも我が子が可愛いくて心配ですからね。正直言って倉持とは初めて話しました。実は同じクラスの俺の友達が今謹慎くらってるんです。理由は本人にもあるんですが、その理由を作った犯人を今探してまして」
「そう。それが瑛二なのね」
「あ、息子さんを疑ってすいません。俺もクラスメイトかもってなった時どうしたらいいのか凄く不安になりました」
本当の事を倉持のお母さんに打ち明けると、意外と落ち着いて話を聞いてくれていた。
まるで我が子の事を分かっていたかのように。
「あの子ね、少し前から様子がおかしかったのよ。夏休みに入るちょっと前かしら?帰って来ても部屋に篭るようになったのは。それでも昨日まではきちんと部活に行ってたのよ。それが昨日からは学校へも行かず、部屋に篭りっぱなしで……」
「なるほど、確か演劇部でしたよね」
「そうなのよ。まさか瑛二が演劇部に入るなんて思わなかったわ。今の高校に通うようになって、ちょっと明るくなって来たなって思ってたところだったの。それが突然……」
これはやっぱり何かあるな。
倉持のお母さんの話を聞く限りでは倉持が単独でやれる事だとは思えない。
生徒会長が言うように黒幕がいるって考えた方がいいのかな。
上手く聞き出せればいいけど。
「お母さん、もしかしたらですよ?倉持を巻き込んだ奴がいるかもしれません。俺はそれを倉持から聞きたいんです。倉持が自分一人でやったって言うならそれまでですけど」
「早川くん……ありがとう。あの子の事、頼みます」
そう言って倉持のお母さんは俺にペコッと軽く頭を下げた。
本当に良いお母さんだな。
そんな話をしていると、いつの間にか部屋から出て来た倉持がキッチンの方に立っていた。
「瑛二、落ち着いた?」
「お母さん……ごめんなさい。早川くんの言う事は全部合ってるよ。俺が秋山くんに酷い事をしたんだ」
「……あなたも座りなさい」
「はい」
倉持のお母さんが言うと、倉持も小さいテーブルの席についた。
そしてポツリポツリと話し始めた。
「俺、桐原さんに憧れてて、あんな男の人になりたいって思って目で追ってたらいつの間にか勝手にスマホで写真を撮ってたんだ。初めはすぐに消さなくちゃって思ったんだけど、一枚だけならって、それからもニ、三枚は撮ったんだ」
「桐原さんって?」
「うちの高校の二年生です。みんなから人気があって良い先輩ですよ。倉持、もしかして桐原さんに気に入られてる貴哉が気に入らなくてやったのか?」
「…………」
ここで倉持は下を向いて黙ってしまった。
今の話だけじゃただ憧れの人を陰でこっそり写メ撮っただけの人だ。
絶対続きがある。
倉持は意を決したように俺を見て言った。
「は、早川くんっ俺は秋山くんの事を気に入らないとか全く思ってないよ!これは本当だ。むしろその逆で……秋山くんの事はいつも凄いなって、楽しくて俺も仲良くなりたいなって思っていたんだ。もうそんな事言える立場じゃないけど……」
「それなら何であんな事をしたんだ?」
「そ、それは……」
「瑛二、全部話しなさい」
「……ある人に脅されたんだ」
倉持のその言葉に生徒会長の憶測が確実な物になった。
後はその黒幕が誰なのか聞き出せれば解決するかもしれない。でも倉持の様子がおかしい。その先をなかなか言おうとしないんだ。
脅されたって事は口止めされてるんだろうな。
でも、俺はその黒幕が誰なのか薄々分かって来ていた。
その人の事を良くは知らないけど、あの人ならやりかねない。決めつけるのは良く無いからまだ口に出して言えないけど、きっとあの人だろう……
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