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1章 写真ばら撒き事件
あー!アレお前がやったのか!!
しおりを挟む夜。伊織も帰ったし、俺は空を待っていた。
だけどなかなか来ねぇし、連絡もねぇ。
パートから帰ってた母ちゃんに空が来るって言ったら寿司を取ろうとか言い出した。
今日は酒が飲みたい気分らしく、空に晩酌してもらうつもりらしい。
早く来いよな空~。
家のインターフォンが鳴って誰かが来たのが分かった。母ちゃんは出る様子はなく、リビングでスマホをいじっていた俺に言った。
「寿司来たかも。貴哉受け取って来て~」
「母ちゃんが行けよ!」
「ほら財布」
「まったく!」
父ちゃんがいないから俺をこき使いやがって!
母ちゃんに逆らっても仕方ねぇから母ちゃんの財布を受け取って玄関に向かう。
そして俺は寿司屋が来たもんだと思って普通にドアを開けた。
「はーい……って、え?空……と誰!?」
「貴哉ー♡遅くなって悪かったな」
外にいたのは寿司屋じゃなくて、制服姿の空。と、後ろには見た事無い男とおばさんが立っていた。
もしかして……
「空の母ちゃんと兄ちゃんか!?」
「ちげぇよ!クラスメイトの倉持と、その母親だ!」
「夜分遅くにすいません。秋山くん、よね?私、倉持瑛二の母です」
丁寧にお辞儀をして挨拶をしてくれるけど、クラスメイトって言ったってこんな奴知らねぇぞ?
それに、そんな奴が何で空とうちに来たんだ?
「貴哉、今回の写真の件でちゃんと話したいんだ。上がってもいいか?」
「へ、どうぞ。あ、倉持?とその母ちゃんもどうぞ」
「お邪魔します」
「…………」
空、倉持の母ちゃん、そして倉持瑛二って言う奴の順で家の中に入って来た。倉持は俺と目が合うとビクッとして目を逸らした。
んー、やっぱ誰だか分かんねぇなぁ。
てか空と倉持の母ちゃんはそれぞれ紙袋持ってた。俺はそれが気になった。
「母ちゃん!お客さーん!」
「客って誰だよ?」
リビングに三人を連れて行くと、既に飲み始めていた母ちゃんは手を止めて客を見た。
そして、倉持の母ちゃんは俺の母ちゃんに向かって深々と頭を下げて挨拶した。
「夜分遅くにすいません。私、倉持瑛二の母の倉持早苗と申します」
そして母ちゃんは隣にいた倉持を見てすぐに俺を睨んだ。
「貴哉ぁ!あんたまた何か悪さしたのか!?」
「ふざけんな!何もしてねぇよ!俺と倉持を見比べて言うんじゃねぇ!」
「あの、大変申し上げにくいのですが、悪い事をしたのはうちの息子でして……秋山くん、そして秋山くんのお母様、本当に申し訳ありませんでした」
「ご、ごめんなさいっ」
今度は倉持も倉持の母ちゃんと一緒に頭を下げた。
突然の見知らぬ客と、突然の謝罪に俺と母ちゃんは何が何やらでどうしたらいいのか分からなかった。
「貴哉、実は写真をばら撒いた犯人は倉持なんだ」
「写真?……あー!アレお前がやったのか!!」
「ひぃっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「落ち着いて、貴哉。ばら撒いたのは倉持なんだけど、命令されて嫌々やっただけなんだ。あの、凛子さん、少し話聞いてもらえますか?倉持のお母さん申し訳ないからすぐにでも謝りたいって聞かなくて」
「お願いです。謝って済む事ではありませんが、息子の話を聞いて欲しいんです」
「ふーん。まぁ貴哉が何で謹慎くらったのかは大体聞いたけどさ、いいよ。そこ座りなよ。それとー、早苗さん?イケる口かい?」
相変わらずな母ちゃんは倉持の母ちゃんに向かって手でクイっと何かを飲むジェスチャーを送る。
倉持の母ちゃんは戸惑いながらも小さく頷いた。そして母ちゃんはさっきの話を聞いていたのか聞いていないのか、とにかく一緒に飲める相手が出来て嬉しそうだった。
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