【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

待っててくれてありがとな

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 電話の音で目が覚めた。
 え、電話とか誰?
 誰から掛かって来たのか確認するのと同時に時間も見る。12時か……結構寝たな。
 てかすげー着信の数だけど……


「あれ、電話伊織じゃん」


 あいつ朝電話で準備したら来るとか言ってたのに遅くね?
 もう昼じゃん!俺腹減ったんだけど!

 少しイラッとしつつ電話に出ると、すぐに伊織の声がした。


『貴哉ー!やっと出たー!なぁ家にいねぇの?』

「は?何言ってんだ。ずっと部屋で寝てたし」

『まじぃ?俺二時間ぐらい玄関にいんだけど』

「はぁ!?あ!寝ててインターホンの音気付かなかった!」

『早く入れてー!』


 やべー!家に誰もいねぇから鍵も掛けたままだった!
 こりゃ悪い事したなと慌てて下に降りて玄関を開けてやると、地べたに座り込んでクターとしてる伊織がそこにいた。
 うわ、この暑さの中二時間も待ってたのか……


「ほんとごめん!今冷たい物出すから!」

「ん、それよりシャワー浴びたい。もう汗だく……」

「おお!好きに使ってくれ!着替えとタオルも用意しておくからな!」


 申し訳なさで俺がパシリになっていた。
 よろよろ歩いて行く伊織はマックの紙袋をテーブルに置いてそのまま風呂場に向かって行った。


「おい、大丈夫か?」

「なんかクラクラする……」

「まさか熱中症!?」


 伊織に近付いて顔を覗き込むと、ニコッと笑った。心なしか元気が無いように見える!


「大丈夫だよ。シャワー浴びて何か食ったら良くなるよ」

「本当か?ごめん……俺、ひでぇ事しちまった……」

「貴哉……あ、マック暑さでダメになっちゃったかも。代わりの買って来ようか?」

「大丈夫!俺少しぐらい腐ってても食う!」

「いや、ダメだろ……」

「じゃあ俺が行ってくる!伊織は休んでて!」

「……待って。一緒に行くから」

「お前はもう外出ちゃダメだ!あ、出前取ろう!な?」

「はは、貴哉が優しー♪」

「だって、お前が弱ってるの俺のせいじゃん!」

「じゃあ良くなるまで側にいて?」

「おう!何でもしてやる!」

「何でも?へー♡」

「とりあえずシャワー浴びて来いよ!俺の部屋冷房効いてるから、冷たい物持ってって待ってるから」

「うん♪」


 その後俺は着替えとタオルを用意してやって、部屋で伊織を待つ事にした。

 これはやらかしたなぁ。
 玄関に屋根があるとは言え、あの暑さの中二時間も待たされたら俺ならブチギレてるな。
 いや、二時間も待たねぇで帰るわ。

 伊織戻って来たら元気になってねぇかなぁ?
 マジで熱中症とかになってたらどーしよ?
 病院連れてくしかねぇよなぁ?

 何だか落ち着かなかったので部屋をウロウロ歩き回ってると、シャワーを浴びて来た伊織がドライヤーを持って入って来た。
 あ、さっきよりは顔色が良さそうだ!


「伊織!大丈夫か?ほら麦茶飲め」

「ありがとう♪汗流したら大分良くなった。なぁ、ワガママ聞いてくれる?」

「何だ?何か欲しい物あるのか?」

「うん。髪乾かして欲しい♪」


 手に持ってたドライヤーをチラッと見せてそう言った。
 それなら俺にも出来る!


「ああ、いいぜ♪」

「わーい♪」


 伊織を俺の部屋の椅子に座らせて髪を乾かしてやる。髪をいじられて気持ちよさそうにしてる伊織を見てホッとした。
 体調は悪くなさそうだな。


「よし、乾いた!出前何がいい?今のお前軽めの方がいいだろ?」

「貴哉の好きなのでいいよ」

「ピザとかでも?」

「ピザ好きー♪」

「体調は大丈夫か?気持ち悪いとかねぇの?」

「すげぇ心配してくれるね。貴哉って優しいんだな」

「俺のせいだからな。今度からは待たないで帰れよな?それかどっか涼しい所で待つとかさ」

「だって貴哉に会いたかったんだもん」

「だもんじゃねぇよ!倒れたりしたら大変だろ!」

「分かったよ。ずっと待ってて悪かった」

「……いや、待っててくれてありがとな」

「貴哉♡」


 椅子に座ったまま俺を見上げてくる伊織は嬉しそうに笑ってた。
 
 俺は昼飯のピザを頼んで、届くのを待った。
 今度は寝ないようにしよう。

 伊織の体調はどんどん良くなり、すっかりいつもの伊織に戻っていた。


「あー、やっと体の火照りおさまったわ」

「お前の体ずっと熱かったもんな」

「なぁ貴哉、抱きしめていー?」

「……ダメ」

「何でもするって言ったじゃん!」

「言ったけど、お前もう大丈夫じゃん」

「ああー、目眩がしてきたぁ」

「嘘つけ!病人の振りすんじゃねぇよ」

「ぎゅーってしたい」

「…………」


 堪えろ俺!
 確かに俺は伊織に悪い事をしたけど、でも今伊織は元気じゃねぇか!
 もう言う事を聞いてやる必要はねぇんだ!

 でも、でもさ!
 伊織に抱きしめたいとか言われたら心が揺らいじまうんだよー!


「貴哉?」

「す、少しだけだぞ」

「!」


 俺はその場で両手を広げて待ってると、伊織が飛び付いて来た。
 シャンプーとボディソープの匂いがして、いつもの伊織の甘くて爽やかな匂いはしなかった。

 強く優しく俺を抱き締める伊織。
 何だか伊織とこうするの久しぶりだな。

 細い体の空と違って体がしっかりしてる。男って感じ。
 俺もそっと伊織の背中に腕を回すと、おでこにキスをされた。

 目を閉じて受け入れると、今度はほっぺにされた。
 多分次は口にされる。

 分かっていた。
 分かっていたから俺はそのまま目を閉じて待っていた。


「貴哉……」

「…………」


 そして唇にキスをされた。
 伊織との久しぶりのキスにドキドキしてると、腰の辺りに腕を回して来て、ビクッとしてしまった。

 うう、抵抗しなきゃいけないのに出来ない俺は頭ではずっと葛藤していた。
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