72 / 178
1章 写真ばら撒き事件
待っててくれてありがとな
しおりを挟む電話の音で目が覚めた。
え、電話とか誰?
誰から掛かって来たのか確認するのと同時に時間も見る。12時か……結構寝たな。
てかすげー着信の数だけど……
「あれ、電話伊織じゃん」
あいつ朝電話で準備したら来るとか言ってたのに遅くね?
もう昼じゃん!俺腹減ったんだけど!
少しイラッとしつつ電話に出ると、すぐに伊織の声がした。
『貴哉ー!やっと出たー!なぁ家にいねぇの?』
「は?何言ってんだ。ずっと部屋で寝てたし」
『まじぃ?俺二時間ぐらい玄関にいんだけど』
「はぁ!?あ!寝ててインターホンの音気付かなかった!」
『早く入れてー!』
やべー!家に誰もいねぇから鍵も掛けたままだった!
こりゃ悪い事したなと慌てて下に降りて玄関を開けてやると、地べたに座り込んでクターとしてる伊織がそこにいた。
うわ、この暑さの中二時間も待ってたのか……
「ほんとごめん!今冷たい物出すから!」
「ん、それよりシャワー浴びたい。もう汗だく……」
「おお!好きに使ってくれ!着替えとタオルも用意しておくからな!」
申し訳なさで俺がパシリになっていた。
よろよろ歩いて行く伊織はマックの紙袋をテーブルに置いてそのまま風呂場に向かって行った。
「おい、大丈夫か?」
「なんかクラクラする……」
「まさか熱中症!?」
伊織に近付いて顔を覗き込むと、ニコッと笑った。心なしか元気が無いように見える!
「大丈夫だよ。シャワー浴びて何か食ったら良くなるよ」
「本当か?ごめん……俺、ひでぇ事しちまった……」
「貴哉……あ、マック暑さでダメになっちゃったかも。代わりの買って来ようか?」
「大丈夫!俺少しぐらい腐ってても食う!」
「いや、ダメだろ……」
「じゃあ俺が行ってくる!伊織は休んでて!」
「……待って。一緒に行くから」
「お前はもう外出ちゃダメだ!あ、出前取ろう!な?」
「はは、貴哉が優しー♪」
「だって、お前が弱ってるの俺のせいじゃん!」
「じゃあ良くなるまで側にいて?」
「おう!何でもしてやる!」
「何でも?へー♡」
「とりあえずシャワー浴びて来いよ!俺の部屋冷房効いてるから、冷たい物持ってって待ってるから」
「うん♪」
その後俺は着替えとタオルを用意してやって、部屋で伊織を待つ事にした。
これはやらかしたなぁ。
玄関に屋根があるとは言え、あの暑さの中二時間も待たされたら俺ならブチギレてるな。
いや、二時間も待たねぇで帰るわ。
伊織戻って来たら元気になってねぇかなぁ?
マジで熱中症とかになってたらどーしよ?
病院連れてくしかねぇよなぁ?
何だか落ち着かなかったので部屋をウロウロ歩き回ってると、シャワーを浴びて来た伊織がドライヤーを持って入って来た。
あ、さっきよりは顔色が良さそうだ!
「伊織!大丈夫か?ほら麦茶飲め」
「ありがとう♪汗流したら大分良くなった。なぁ、ワガママ聞いてくれる?」
「何だ?何か欲しい物あるのか?」
「うん。髪乾かして欲しい♪」
手に持ってたドライヤーをチラッと見せてそう言った。
それなら俺にも出来る!
「ああ、いいぜ♪」
「わーい♪」
伊織を俺の部屋の椅子に座らせて髪を乾かしてやる。髪をいじられて気持ちよさそうにしてる伊織を見てホッとした。
体調は悪くなさそうだな。
「よし、乾いた!出前何がいい?今のお前軽めの方がいいだろ?」
「貴哉の好きなのでいいよ」
「ピザとかでも?」
「ピザ好きー♪」
「体調は大丈夫か?気持ち悪いとかねぇの?」
「すげぇ心配してくれるね。貴哉って優しいんだな」
「俺のせいだからな。今度からは待たないで帰れよな?それかどっか涼しい所で待つとかさ」
「だって貴哉に会いたかったんだもん」
「だもんじゃねぇよ!倒れたりしたら大変だろ!」
「分かったよ。ずっと待ってて悪かった」
「……いや、待っててくれてありがとな」
「貴哉♡」
椅子に座ったまま俺を見上げてくる伊織は嬉しそうに笑ってた。
俺は昼飯のピザを頼んで、届くのを待った。
今度は寝ないようにしよう。
伊織の体調はどんどん良くなり、すっかりいつもの伊織に戻っていた。
「あー、やっと体の火照りおさまったわ」
「お前の体ずっと熱かったもんな」
「なぁ貴哉、抱きしめていー?」
「……ダメ」
「何でもするって言ったじゃん!」
「言ったけど、お前もう大丈夫じゃん」
「ああー、目眩がしてきたぁ」
「嘘つけ!病人の振りすんじゃねぇよ」
「ぎゅーってしたい」
「…………」
堪えろ俺!
確かに俺は伊織に悪い事をしたけど、でも今伊織は元気じゃねぇか!
もう言う事を聞いてやる必要はねぇんだ!
でも、でもさ!
伊織に抱きしめたいとか言われたら心が揺らいじまうんだよー!
「貴哉?」
「す、少しだけだぞ」
「!」
俺はその場で両手を広げて待ってると、伊織が飛び付いて来た。
シャンプーとボディソープの匂いがして、いつもの伊織の甘くて爽やかな匂いはしなかった。
強く優しく俺を抱き締める伊織。
何だか伊織とこうするの久しぶりだな。
細い体の空と違って体がしっかりしてる。男って感じ。
俺もそっと伊織の背中に腕を回すと、おでこにキスをされた。
目を閉じて受け入れると、今度はほっぺにされた。
多分次は口にされる。
分かっていた。
分かっていたから俺はそのまま目を閉じて待っていた。
「貴哉……」
「…………」
そして唇にキスをされた。
伊織との久しぶりのキスにドキドキしてると、腰の辺りに腕を回して来て、ビクッとしてしまった。
うう、抵抗しなきゃいけないのに出来ない俺は頭ではずっと葛藤していた。
10
あなたにおすすめの小説
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる