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1章 写真ばら撒き事件
※ 放課後演劇部に顔出してもいいかな?
しおりを挟む※紘夢side
口篭る卯月は何かを言いたいけど、上手く言えない。そんな風に見えた。
何となく言いたい事が分かったから、俺から話してみた。
「卯月は部長として上手くまとめられなくて困ってるんだね。違うかな?」
「……そう、だけど」
「前の部長が凄かったから仕方ないよ。あんな人の後じゃプレッシャーもデカいよね。だけど、OBなんて所詮は過去の人。そう考えてみない?今の部長は卯月なんだから、新しい演劇部を作っていったらいいと思うよ」
「一条……」
「俺はそう考えるね。伝統を守っていくのもいいけど、新しい風を吹かせるのも大事だよ。全く同じ人間なんていないんだから。ところで、俺の謝罪はその件をなんとかするってのでオーケーかな?」
「ああ。でも出来るのか?」
「今の話聞いて大体の流れは頭に浮かんでるよ。結果もね。もう少し話聞きたいから、放課後演劇部に顔出してもいいかな?迷惑ならやめとくけど」
「是非来てくれ!みんなが何か言ったら俺が何とかする!あ、二之宮もいる!二之宮は二人に戻って来て欲しくて一人で戦ってるんだ。あいつは本当に凄いと思うよ。俺なんかより全然部長としての器を持ってるのに……」
「茜ちゃんね。あの人にも恨まれてるかもな俺。だって大好きな貴ちゃんを追い込んじゃったの俺だしね」
「貴ちゃん?一年の貴哉くんの事か?」
「そう。茜ちゃんって真っ直ぐで頑固なんでしょ?説教されるのかな俺」
「確かに二之宮は真っ直ぐで頑固だけど、今のあいつは変わったよ。そうだな、秋山貴哉くんが演劇部に来てからかな?なんて言うか、性格はそのままだけど、笑うようになったんだ」
「…………」
「二之宮は不器用なだけなんだ。だから周りに誤解される事が多かったんだけど、貴哉くんと一緒にいるようになって、二之宮の周りにも人が増えてった気がするよ」
「ふーん。そうだったんだ」
貴ちゃんてば茜ちゃんと仲良くなったなぁと思ってたらそんな影響与えてたんだぁ。
ふふ、まるで茜ちゃんは俺みたいだな。
貴ちゃんに救われた。
まだやり直せる光を見せてくれた。
そっかぁ。
茜ちゃんとも仲良くなれるかなぁ?
「よし、茜ちゃんの為にも絶対成功させてやるぞ!」
「ありがとう一条!」
俺にお礼を言うなんて、卯月ってばおかしな奴。
それよりも聞きたいのは卯月の本当の気持ちだ。
部長である卯月は二人をどうしたいのか。
これからの演劇部に大事なのはそれだと思うんだ。
「結局さ、卯月部長はどうなったら嬉しいの?俺を使いたいならそこハッキリさせてくれなきゃ」
「…………」
「部長なんだから遠慮する事ないんじゃない?みんなにも、茜ちゃんにもね」
「俺は……ボランティア部の二人に戻って来て欲しいと思っている。そう思うのは薗田さんの意志を受け継ぎたいからだ。憧れの人が残してくれた最後の脚本を完璧に仕上げたいんだ」
やっと本音言ってくれたか。
それなら考え通り堂々と動けるよ。
あとは素材探しだなー。もうひと押し欲しいんだよなぁ。
「いいじゃん♪面白そう!是非俺に任せてよ♪」
俺と卯月のやり取りをヒソヒソと他のクラスメイト達が見ていたけど、最初の罪滅ぼしが決まって俺はやる気に満ち溢れていた。
無理難題も自分の思惑通りに進めてしまう。シナリオ通りに進み結果も予想済み。俺の得意分野だ。
そんな事は卯月には話さないけど、俺が協力するってなって卯月の表情が明るくなった気がした。
うん。こういうのも悪くないな。
謝罪の意味も込めてってのもあるけど、だれか困ってる人に手を貸して「ありがとう」を言われるのってさ。
何だかとても、くすぐったくて、嬉しい気持ちになる。
その後の俺は放課後を楽しみにしながら、午後の授業に参加した。
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