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1章 写真ばら撒き事件
※てかそこまで言われて分からないの?
しおりを挟む※紘夢side
放課後、お楽しみの時間がやって来た♪
俺は卯月と一緒に演劇部の活動場所の食堂に来ていた。
皆んなが食事をするデカいテーブルや椅子が片付けられていて、いつもの食堂の雰囲気とは少し違って見えた。
ふーん、ここで活動してるのかぁ。
「メインはここだ。ここには主に役者達がいて、本番間近になると裏方達も増えていくんだ」
「へー、何か本格的~。でも何か人少なくない?役者ってこんな少人数なの?」
「それは……脚本を取り上げられてみんなやる気を無くしてるんだ」
「そう言えば新しい脚本もらったんでしょ?それはどうしたの?」
「それは二之宮が持ってるよ。その脚本のせいでみんなのやる気がなくなってるんだ」
ここで卯月はため息を吐いた。
新しい脚本がどんな話なのか気になるな。
馬鹿にしたようなって言ってたけど、適当に作られた物って事か?
とりあえず茜ちゃんに会いに行く事にした。
「二之宮は今悩んでるんだよ。薗田さんは何で意地悪をしたのか、その意地悪に意味があるんじゃないかってね。多分今日も部室にいると思うよ」
「なるほどね~」
俺が探してるもうひと押しは茜ちゃんが持ってるのかもしれないね。
卯月に案内されて演劇部の部室に入ると、そこには机で頭を抱えている茜ちゃんがいた。
こんな広い教室に一人でいるなんて、茜ちゃんらしいな。
「二之宮、強力な助っ人を連れて来たぞ!」
「卯月……って一条!?」
「あはは、お邪魔しまーす」
俺を見て驚いてる茜ちゃん。
怒られるかなー?怒られるよねー?
怒られてもちゃんと謝ろう。
「その髪どうした!?一瞬誰だか分からなかったぞ!」
「あー、謝罪するなら黒かなって。あのね、ごめんね茜ちゃん」
「え?ああ、二人にした事か。確かに俺は犯人に初めは怒ってたな」
あれ?意外と怒ってない?
あ、そっか。演劇部の非常事態で、副部長だからそれどころじゃないのか。
「まぁちゃんと謝ったんだしいいんじゃないのか?で、こんなとこに何しに来たんだ?」
「二之宮!新しい脚本を見せてくれないか?一条が何とかしてくれるかもしれないんだ」
「一条が?あ、それならここにあるけど」
不思議がってる茜ちゃんは問題の脚本を見せて来た。題名「三匹の子豚」って、こりゃやる気失くすのも分かるわー。
「あはは!薗田さん面白ーい♪」
「笑い事じゃない。何とかしてくれるんじゃないのか?冷やかしに来たのか?」
「い、一条!助けてくれるんだよな!?」
笑う俺を見て怒った茜ちゃんに睨まれた卯月は、不安そうに聞いて来た。
だって三匹の子豚だよ?
面白すぎるでしょ!
あー、はいはい。でも大体は分かったよ薗田さんの考え。
「もちろん♪ねぇ、薗田さん何か言ってなかった?」
「言ってたぞ。この脚本はプレゼントだと。あと、上手く使えって。何の事だか分かるのか?」
「え、てかそこまで言われて分からないの?」
「意地悪されてるとしか思えない」
「んー、やり方は遠回しだから意地悪っちゃ意地悪だよね。でも、俺は違うと思うなー」
「教えてくれ!」
ここで茜ちゃんは俺の肩を掴んで聞いて来た。
本当に分かってないのかなぁ?
こんな簡単な事……
「薗田さんはさ、引退したからやたら口出ししたくないんだよきっと。だから現役の卯月と茜ちゃんに暗号を託した。なんとかしてくれーってね。この脚本はみんながやる気を失くす程の作品だね。これを上手く使えって言ってるんだから使えばいいんだよ♪」
「どうやって使うんだ?」
「まずさ、二人を使うかどうかだけど、それは多数決で決めるのがいいと思う。演劇部って大所帯だからね」
「そんなの二人を外すが多いに決まってるだろ!」
「そうだよね?じゃあその多い票を二人を使うに変えちゃえばいいんだよ♪」
「…………」
「…………」
二人は訳が分からないと言ったような顔をして顔を見合わせていた。
「多数決を取る為の選択肢は二人を使うか外すにするんじゃなくて、前の脚本をやるか新しい脚本をやるかに変えるんだ。前の脚本をやるってなったら勿論薗田さんの許可が必要だね。許可が出る条件は二人を使う事。それが嫌なら新しい脚本を選べばいい。ただし、三匹の子豚だけどね~♪」
「確かに、その選択肢ならみんな前の脚本を選ぶだろ。準備もそっちでして来たし。でも上手くいくかな?」
「……いや、一条の言う通りかもしれない。薗田さんが言っていた言葉の意味、そういう事だったのか!」
「おおー!茜ちゃんレベルアーップ♪俺の計算だと90%上手く行くよ。残りの10%は二人の努力次第じゃないかな?さすがに俺から声を掛けて決を取れないからさ、そこは二人がいかに上手く言えるかにかかってるかな~」
「一条!やっぱりお前は凄いな!早速決を取ろう!」
パァッと嬉しそうにテキパキ動き始める茜ちゃん。
ほんとーに笑ってるー。
茜ちゃんとはこの前初めて話したけど、へー、こんな風に笑うんだぁ。
「卯月!行こう!みんなに聞きに!」
「……ああ」
ポカンとしていた卯月は茜ちゃんに腕を引かれて笑顔で頷いていた。
確かにどっちが部長か分からないかもね。
でもそれはそれでいいんじゃないかな。
実際卯月が俺に声を掛けなかったら茜ちゃんはあのままずっと一人で悩んでただろうし、そもそも部活って部長一人が頑張るものじゃないと思うんだよね~。
卯月もそこに早く気付けばもっと部長らしくなれるんじゃないかな?
俺は部室から出て行く二人を見送った。
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